先週のゴールド:続落の展開

金相場は続落しました。先週からの利益確定売りが続き、5月27日には一時1,693.2ドルまで下落し、節目の1,700ドルを割り込む場面がありました。主要国の間で新型コロナウイルスの感染拡大を抑えるための封鎖措置を緩和する動きが一段と広まっているのを背景に、景気回復への期待からリスク選好姿勢が強まっており、安全資産である金に売りが出ました。

ただし、米国と中国の間の緊張関係に対する懸念が根強く、各国による景気刺激策の拡大もあり、下落幅は限定的でした。中国政府は香港の統制を強化する「国家安全法」の導入方針を採択したことで、米中関係が悪化するとの見方が金相場を支えました。一方で、世界的な低金利環境が安全な資金の逃避先とされる金相場を押し上げ、月間ベースで3%超上昇しました。

世界最大の金上場投資信託(ETF)であるSPDRゴールドトラストの保有高は、5月29日に1,123.14トンとなりました。投資家のETF保有高は増加傾向が続いています。

CFTC(米商品先物取引委員会)が公表するCOMEX金先物市場における5月26日時点の大口投機筋のポジションは23万7914枚のネット買い越しとなり、前週から買い越し幅が1万3874枚縮小しました。買いポジションが7,246枚縮小し、売りポジションが6,628枚増加しました。

円建て金相場はドル建て金相場の下落を受けて反落しました。

【図表1】先週のゴールド 縦軸:円建てゴールド/グラム(単位:円)
出所:マネックス証券

今週のゴールド:投資家の買いが続くかに注目

今週のゴールド投資をする上での3つのポイント
・投資家のETF金購入継続
・米中対立への懸念の拡大
・円建て金相場は底堅い展開へ

金相場は一時的に調整しましたが、下値の堅さが鮮明です。投資家の買いが下値を支えているといえます。以前から指摘しているように、過去の金融危機や今回のコロナ危機の際に、大きく値を崩した後に最初に危機以前の水準に値を戻したのは、株式ではなく金です。この過去の確固たる事実が、投資家を金投資に向かわせているといえます。

株価は3月の安値から戻していますが、その間にも安全資産である金は売られるどころか、買いが膨らんでいます。各国政府・中銀による大量の資金供給であふれかえった資金は、株式市場に向かっているとの指摘がありますが、より顕著なのは金市場であると考えます。

世界経済が新型コロナウイルスから回復し、今後も成長を続けるという前提に考えるのであれば、長期には株式投資が最も報われるとの考えは、これまでの長期的なデータをもとにすれば正しいといえます。この点はジェレミー・シーゲル教授が理論的に証明しています。

シーゲル教授によると、200年以上にわたる米国株の長期投資がもっとも儲かるとの結論に至ったとしています。その背景には、人々が努力する限り、それが企業活動にとってプラスとなり、そのプラスは企業の利益を生み出し、その利益は株価を押し上げるという循環があると考えています。

一方、債券や金や不動産では、このような人々の夢や希望を追うための努力が価格に反映されるということは少ないとしてます。確かに指摘する通りでしょう。

シーゲル教授は、1802年に米国株に1ドルを投資していれば、現時点で150万ドルになっているとしています。これは、217年間で米国株はインフレ控除後で平均6.7%上昇したことを示しています。一方、米国長期債に1ドル投資していれば、現在価値は2,000ドル、金は3.5ドル程度にしかすぎないということです。

つまり、国債と金の場合の実質利回りは、年間平均でそれぞれ3.5%と0.6%でしかないということになります。このように、数値で見れば、株式投資と債券・金への投資のリターンはあまりに違います。そのため、米国株への長期投資が理にかなっているとの結論になるのは当然のように見えます。

しかし、今後も米国が成長するかは誰にもわかりません。明確なことは、経済成長率が明らかに鈍化している点でしょう。また、米国株のリターンそのものも低下しています。1920年代以降のS&P500の投資リターンをみると、1920年代以降で20年間を保有した場合の年率の平均リターンは11.0%でしたが、直近20年の年率の平均リターンは5.6%に低下しています。世界の株価指数でもっとも大きく上げているといわれる米国でさえ、1年間のリターンはいまや5.6%でしかないという事実があります。

シーゲル教授が示した、過去217年間での平均リターンである6.7%と比較しても、明らかに低下してきているわけです。このように、米国の主力企業で構成されるS&P500に投資をしても、以前ほどには収益を得ることが難しくなってきているようです。これは、米国の潜在成長率が以前の3.5%から現在の2.0%に低下していることが背景にあるといえます。

一方で、近年の金のパフォーマンスは良好といえます。金に関する調査機関のワールド・ゴールド・カウンシル(WGC)が公表した「戦略的資産としての金の重要性」レポートでは、過去の金融危機時における主要資産と金のパフォーマンスを比較しています。

WGCが2019年末までのデータを検証したところ、通常の景気拡大期と景気後退期では、金と世界株式の相関係数は-0.05および+0.1、日本株の代表的な指数であるTOPIXとは-0.01および+0.1、世界の債券とはそれぞれ+0.05および+0.2、日本国債とは-0.25および+0.02となっています。

つまり、景気が良くても悪くても、金は他の資産とほとんど相関がなく、値動きが違うことが証明されています。また、過去20年の金の平均年間リターンは10%程度であり、実際には株式や債券よりも高いリターンを得られています。過去10年および過去5年でも、それぞれ6%および3.5%と、堅調です。

シーゲル教授は長期間の株式、債券、金のリターンを調査しましたが、直近ではむしろ株式のリターンは低下しており、金が高くなっています。さらに、金投資を加えると、分散効果も得られます。

WGCによると、円で運用した場合、金を資産の4-13%程度保有することで、運用パフォーマンスが向上することがわかっています。つまり、金を長期の資産運用に加えたほうが良いということなのです。これは数値が示す事実です。

金は金利がつかず、配当もないため、保有しているだけではリターンもキャッシュフローも生まないとの指摘がよく聞かれます。しかし、現在のような低金利下では、金投資の効果はこれまで以上に高まるでしょう。

一般的に資産運用は株式と債券が主たる対象になることが多いのすが、時代は大きく変わっています。今後は株式リターンが世界の経済成長率の低下とともに徐々に低下し、金のリターンがそれを上回る時代になるでしょう。

円建て金相場は節目の6,000円前後での推移が続いています。ただし、底堅さが感じられます。ドル建て金相場が下値を固めつつありますので、円建て金相場も徐々に下値を固め、上向いていくでしょう。6,000円を固めながら、次の上昇相場に向けた動きを鮮明にする時が来るものと思われます。

前述のように、資産運用におけるリスク分散の観点から、長期的な視点で金への投資を継続することは、これからの資産運用において不可欠な要素になるでしょう。株式を購入する際には、金もその半分から同金額を購入するとリスク分散につながるでしょう。

金を保有しておけば、株安リスクにも対応できます。金相場に大きな押し目が来た場合には、その押し目を逃さずに徐々に買いを積み上げておきたいところです。

プラチナ:横ばいでの推移

プラチナは横ばいでの推移となりました。5月26日には一時858ドルまで上昇する場面がありましたが、上値を抜け切れませんでした。一方で下値も堅く、810ドル水準を下値に底堅い推移となりました。結果的に810ドルから860ドルという直近のレンジでの推移になりました。

CFTC(米商品先物取引委員会)が公表するNYMEXプラチナ先物市場における5月26日時点の大口投機筋のポジションは2万3023枚のネット買い越しとなり、前週から買い越し幅が1,010枚拡大しました。買いポジションが747枚減少し、売りポジションが1,757枚減少しました。

プラチナ相場は株式や金に比べて依然として安値からの戻りは限定的です。その背景には、プラチナへの注目度の低さや需要減退への懸念があるものと思われます。

需給面については、先週解説した通りです。2020年はこれまでの供給過剰感が多少改善されるとの見通しですが、自動車触媒向け需要が増加する可能性はほとんどなく、需給バランスの劇的な改善は難しい状況です。

価格見通しも低めに予想されており、金市場とは対照的であるといえます。金に対する割安感や、希少性を背景に上昇余地があるとの見方もありますが、このような指摘はすでに数年前から聞かれています。しかし、結果は金との価格差はむしろ拡大しています。

このように、プラチナ価格の上昇の可能性を見出すのは簡単ではありません。世界最大のプラチナ生産国である南アフリカで、新型コロナウイルスの影響で生産が止まっているとの報道もありますが、市場ではそれほど材料視されていないようです。

需給ファンダメンタルズ面には大きな変化は見られませんが、引き続きこれらの材料を注視しつつ、突発的な上昇の動きを見逃さないようにしたいところです。

プラチナ相場は、短期的には860ドルから880ドルにあるチャート上の節目を超えるかに注目することになるでしょう。これを超えることができれば、節目の900ドルを超え、一気に1,000ドルを試す可能性も出てきそうです。

その場合には、投機的な資金がつくかがカギになるでしょう。しかし、870ドルを超えられないと、再び下値を試すことになるでしょう。調整した場合には750ドルから725ドル程度まで下げる可能性がありますので注意しておきたいところです。また、株価が調整した場合の連れ安の動きにも要注意です。

円建てプラチナ相場は上昇し、2,900円と3,000円のレンジでの推移になっています。下値を固めつつあるように見えましが、方向感がない状態とも言えます。

そのため、まずはこのレンジをどちらに抜けるかを見極めるのが先決でしょう。そのうえで、上抜けるようであれば、その動きに追随する形で上値を買いたいところです。もっとも、2,900円を割り込んだ場合には、すぐに押し目買いを行うのではなく、まずは下値の確認を優先したいところです。

【図表2】プラチナ 縦軸:円建てプラチナ/グラム(単位:円)
出所:マネックス証券

シルバー:急伸の展開

シルバーは急伸しました。先週の終値付近でもみ合っていましたが、その後は徐々に水準を切り上げ、週末には17.90ドルの高値を付けるなど急伸しました。

CFTC(米商品先物取引委員会)が公表するCOMEX銀先物市場における5月26日時点の大口投機筋のポジションは3万7189枚のネット買い越しとなり、前週から買い越し幅が6,261枚拡大しました。買いポジションが7,134枚増加し、売りポジションが873枚増加しました。

銀相場は直近高値を上抜き、強い動きになりつつあります。これは銀相場特有の投機的な上昇です。短命に終わるときも少なくありませんが、大相場に発展することが少なくないこともまた事実です。株価が堅調に推移しているだけに、この基調が崩れなければ一段高につながる可能性は十分にあります。

節目の18ドルを超えると、直近高値の18.80ドル水準を試すことになりそうです。さらに19ドルを超えると、昨年9月の高値である19.64ドルを試すことになるでしょう。興味深い動きになりつつあるため、銀相場の動きに注目しておきたいと思います。

一方、一時112倍にまで拡大した金/銀レシオは、直近では96倍にまで低下しています。金相場の上昇に対して、銀相場の上昇が大きくなっています。このような銀相場の金への相対的な強さに着目する向きが増えると、銀相場の一段の押し上げにつながり可能性もありそうです。17.50ドルを割り込むまでは、堅調地合いが続くと考えておきます。

円建て銀相場も上昇し、直近高値を更新しました。ドル建て銀相場が高値を狙う動きになっており、円建て銀相場も同様の動きに移行する可能性がありそうです。

64円を上抜いてくれば、さらに強い動きがみられそうです。64円を超えて上値を切り上げるようであれば、その流れに追随する形で買いを検討してもよさそうです。逆に60円を割り込んだ場合には、調整が続く可能性がありますので、押し目買いは避け、まずは下値を確認することを優先したところです。そのうえで、下げ止まったと判断できれば、買いを検討したいところです。

【図表3】シルバー 縦軸:円建てシルバー/グラム(単位:円)
出所:マネックス証券