先週のゴールド:反落の展開

金相場は約7年ぶりの高値から反落しました。5月18日には一時1,764.55ドルと、2012年10月以来の高値を付けました。しかし、新型コロナウイルスのワクチン開発をめぐる楽観的な見方で株価や原油価格が急伸したことを受け、リスク選好意欲が高まり、安全資産である金に売りが出ました。

また、欧米の経済指標が改善したことや、欧米において新型コロナウイルスの感染拡大で停滞していた経済活動を再開する動きが着実に広がったことで、景気回復への期待感から投資家のリスク回避姿勢は後退しました。さらに、主要通貨に対してドル高が進んだことも、ドル建てで取引される金に売り圧力がかかりました。

その後、5月22日には金相場は上昇しました。米中間の緊張の高まりで、新型コロナウイルスで強い打撃を受けている世界経済の回復に時間がかかるとの懸念が買いを誘いました。また、香港の国家安全に対する中国の積極関与姿勢が米国との緊張関係をさらに悪化させるとの見方が下値を支えました。さらに、ベネズエラに向かうイランの貨物船が米軍艦と対峙する可能性があることも懸念材料になり、安全資産としての買いが入りました。

世界最大の金上場投資信託(ETF)であるSPDRゴールドトラストの保有高は、5月22日に1,116.71トンとなりました。投資家のETF保有高は毎週着実に増加しており、買い意欲が強いことが確認できます。

CFTC(米商品先物取引委員会)が公表するCOMEX金先物市場における5月19日時点の大口投機筋のポジションは25万1788枚のネット買い越しとなり、前週から買い越し幅が8,960枚拡大しました。買いポジションが1万7623枚増加し、売りポジションが8,663枚増加しております。

円建て金相場はドル建て金相場の下落を受けて反落しました。

【図表1】先週のゴールド 縦軸:円建てゴールド/グラム(単位:円)
出所:マネックス証券

今週のゴールド:投資家の買いが続くかに注目

今週のゴールド投資をする上での3つのポイント
・投資家のETF金買いの動向
・米国株の上昇基調の継続
・円建て金相場は底堅い展開へ

金相場は高値圏を維持しているものの、上値がやや重くなっています。米国を中心に株価が堅調に推移していることもあり、これまでの買いの勢いがやや落ちているように見えます。

一方で米国株が非常に堅調に推移しています。米政府の財政出動と米連邦準備制度理事会(FRB)による資産買い入れが投資家に安心感を与えています。一部には株価の割高感を指摘する声もあり、上昇基調の持続性に疑問を投げかける向きもいますが、いまのところ投資家はあまり気にしていないようです。

これらの株買いの動きをみていると、積立投資などの相場水準や割高感などを気にしない機械的な買いが入っているように見えます。これらの買いが下値を支えることになれば、よほど弱い材料が出てこない限り、株価が大きく崩れにくいように思われます。

もっとも、株価はコロナ危機の3月安値からかなり戻しており、そろそろ上値が重くなってもおかしくない頃でしょう。このタイミングで悪い材料が出てくると、手仕舞い売りが出る可能性は十分にありそうです。

米中関係の悪化が懸念され始めています。これに英国も加わり始め、米英対中国という構図になりつつあります。英国は欧州連合(EU)から離脱したことで、政治面でのフリーハンドを手にしました。これにより、米英関係の強化を自由に行うことができるようになりました。つまり、今後は新しい枠組みでの対立が起きることになります。国際政治の面ではこの点には注意が必要でしょう。

無論、状況が悪化すれば、安全資産である金は買われやすくなるものと思われます。もっとも、FRBなどの中央銀行は過去最大級の量的緩和策を講じ、金利の上昇を抑制し、株価を支えようとしています。「国策に売りなし」「FEDに逆らうな」と格言を信じるのであれば、これらの政策に追随するほうが賢明かもしれません。

米国では新型コロナウイルスの感染拡大を抑制するための外出禁止がすでに解除になっており、一部の州では早くも経済活動が再開されています。しかし、一方で感染者数が増え始めているとの報道もあります。この傾向が続き、州知事単位で再度外出禁止が宣言されるようなことになれば、市場は再び不安定化しそうです。

もっとも、トランプ米大統領はこれを受け入れないものと思われます。その場合、米国内の政治は不安定化しそうです。トランプ米大統領は11月の大統領選挙を前に、新型コロナウイルスへの対応の誤りから国民の目をそらさせようと必死になっています。経済も悪化することは確定的であり、自らの実績を訴える材料がなくなってしまいました。

その一方で、工場などの見学の際には、本来は着用が必要なマスクもせず、中国に屈したと見られないように自らも大きく見せようとしています。また、中国のファーウェイを排除する動きを一層強め、さらに中国企業の米国株式市場への上場に制限を加えようとするなど、様々な面から中国叩きをしています。これらの方策は、あまりに短絡的であり、むしろトランプ米大統領の再選には逆効果に見えます。

一方の民主党はオバマ前大統領が登場し、トランプ米大統領の失政を強く非難しています。トランプ米大統領がもっとも苦手とするオバマ氏の登場で、選挙戦はさらに混乱しそうです。このように、米国内の混乱は、いずれ金市場にはポジティブな材料になりそうです。

米政府の財政出動とFRBによる資産買い入れで、長期的にはドル安傾向が続かざるを得ないことも、ドル建てで取引される金には追い風になるでしょう。目先は調整しそうな動きですが、その後は過去最高値である1,920ドルを目指して上昇に向かうことになりそうです。

円建て金相場は節目の6,000円台を維持しています。ただし、ドル建て金相場が調整する可能性がありますので、まずは下値を確認することを優先したいところです。そのうえで、6,000円を固めることができれば、その時点で買いを検討するとよいでしょう。

6,000円を割り込んだ場合には、まず下げ止まるのを待つべきでしょう。長期的には上昇する可能性が高いとみていますが、安い水準で買うことを考えたいところです。また、引き続き資産運用におけるリスク分散の観点から、長期的な視点で金への投資を継続したいところです。

株式を購入する際には、金もその半分から同金額を購入するとリスク分散につながるでしょう。金を保有しておけば、株安リスクにも対応できます。金相場に大きな押し目が来た場合には、その押し目を逃さずに徐々に買いを積み上げておきたいところです。

プラチナ:大幅続伸の展開

プラチナは大幅続伸しました。先週末からの流れを受けて買いが優勢となり、21日には863ドルまで上昇する場面がありました。CFTC(米商品先物取引委員会)が公表するNYMEXプラチナ先物市場における5月19日時点の大口投機筋のポジションは2万2013枚のネット買い越しとなり、前週から買い越し幅が3,858枚拡大しました。買いポジションが2,418枚増加し、売りポジションが1,440枚減少しました。

プラチナ相場は金相場の上昇に端を発した買いの勢いが18日以降も続きました。しかし、金相場の上値がやや重くなってきたことや、プラチナ相場もチャート上の節目である870ドルを超えられなかったことから、調整する可能性があります。

また、短期間での上昇により、買われすぎ感も強まっており、まずは警戒が必要です。また、プラチナ相場が上昇した背景には、世界最大のプラチナ生産国である南アフリカの通貨ランドが対ドルで上昇したことが挙げられるでしょう。

4月初めにつけた安値から大きく上昇しており、これが潜在的なドル建てプラチナ相場の押し上げ要因になっているものと思われます。したがって、今後のプラチナ相場の値動きについては、金相場の動向に加え、南アランドの動向にも注意を払っておきたいところです。

金属調査会社メタルズ・フォーカスは5月20日のレポートで、プラチナ市場は今年、新型コロナウイルス感染拡大の影響で需給が均衡状態に近付くとの見通しを示しました。プラチナは供給過剰が緩和されると見込んでいます。それでも供給過剰が解消されないプラチナの価格は値下がりすると予想しています。

メタルズ・フォーカスは今年のプラチナ市場について、生産量が需要よりも速いペースで減少し、供給過剰は昨年の80万オンスから24万7000オンスに縮小すると予想。価格は700ドル近辺で推移すると予想しました。現在の価格水準からはかなり下であり、弱気な見方が示されている点は念頭に置いておきたいところです。

一方、プラチナが自動車触媒の原料として使用されるディーゼル車の販売は、欧州市場では引き続き低調です。欧州自動車工業会(ACEA)が公表した4月の欧州連合(EU)の新車販売台数は前年同月比76.3%減の27万682台となりました。新型コロナウイルスの感染抑制のため、各国が導入した店舗休業などの制限措置が響きました。

単月での下落幅は1990年の統計開始以来で最大でした。国別では、イタリアが97.6%減、スペインが96.5%減、フランスが88.8%減と落ち込みが激しく、ドイツも61.1%減でした。このような状況も、プラチナ相場の上値を抑えやすい点には要注意です。

プラチナ相場は、短期的には870ドルを超えるかに注目しておきます。これを超えることができれば、節目の900ドルを超え、一気に1,000ドルを試す可能性もありそうです。しかし、870ドルを超えられないと、短期的な買われすぎ感が強まっているだけに調整しやすいといえます。調整した場合には785ドル程度まで下げる可能性がありますので要注意でしょう。また、株価が調整した場合には、下げやすい点にも注意しておきたいところです。

円建てプラチナ相場は上昇し、節目の3,000円を回復する場面もありました。しかし、ドル建てプラチナ相場に調整の可能性がありそうですので、まずは押し目の水準を確認したいところです。

3,000円を割り込むと、2,700円から2,600円を試す可能性がありますので、安易な押し目買いは避けたいところです。そのうえで、下げ止まった場合には、徐々に買いを検討するのが良いと思われます。もっとも、3,000円を大きく上回る動きになれば、その流れに乗って買っていきたいところです。

【図表2】プラチナ 縦軸:円建てプラチナ/グラム(単位:円)
出所:マネックス証券

シルバー:続伸の展開

シルバーは続伸しました。先週の上昇の流れを引き継ぐ形で買いが続き、5月20日には17.62ドルまで上昇する場面がありました。CFTC(米商品先物取引委員会)が公表するCOMEX銀先物市場における5月19日時点の大口投機筋のポジションは3万928枚のネット買い越しとなり、前週から買い越し幅が5,155枚拡大しました。買いポジションが9,634枚増加し、売りポジションが4,479枚増加しております    。

銀相場は節目の17ドルを超えています。強い動きに見えますが、短期的な過熱感が強まっています。そのため、17ドルを割り込んでくると、売り圧力が強まりそうです。上昇に向かうにしても、その前にいったんは調整が入りそうです。

金相場の上値は重くなっていますので、まずは金相場の動向を見るようにしたいところです。16.50ドルを割り込むようだと、今回の上昇相場はいったん終了すると判断できそうです。その場合には、16ドル程度まで調整しそうですので、まずは下値を確認することになるでしょう。

一方、4月に一時112倍にまで拡大した金/銀レシオは、直近では100倍にまで低下しています。金相場の上昇に対して、銀相場の上昇が大きかったことが背景にあります。しかし、銀相場の上値が重くなると、レシオは再び上昇しそうです。

銀相場は目先はかなり投機的な動きになっていただけに、いったん下げ始めると投機筋のポジション調整で売られる可能性がありますので要注意です。16ドルを割り込むと、15ドル台前半までの下落となる可能性もありそうです。

円建て銀相場も小幅に上昇しました。しかし、ドル建て銀相場の調整の可能性がありますので、まずは押し目を確認したいところです。節目の60円前後で押し目を形成できれば、その時点で買いを検討したいところです。

ただし、60円を割り込んで下げた場合には、まずが下げ止まりを確認しましょう。大きく上げた後だけに、下げると手仕舞い売りが入りやすい点は念頭に置いておきたいところです。逆に64円を超えて上値を切り上げるようであれば、その流れに追随する形で買いを検討してもよさそうです。ただし、その可能性はいまは低いと考えています。

【図表3】シルバー 縦軸:円建てシルバー/グラム(単位:円)
出所:マネックス証券