先週のゴールド:大幅続伸の展開

金相場は大幅続伸となり、2012年以来の高値を付けました。新型コロナウイルス感染拡大を受けた制限措置で打撃を被った景気を支えるため、米連邦準備制度理事会(FRB)が追加策を打ち出すとの期待から、低金利政策が継続するとの思惑が強まり、金利のつかない金に買いが入りました。

また、新型コロナウイルスの感染発生地である中国の武漢で封鎖解除以来、初めて感染者が報告され、感染拡大の「第2波」への警戒感が高まったことや、米中間の貿易摩擦再燃をめぐる懸念が高まったことも、安全資産である金を買う動きにつながりました。週末の5月15日には一時1,751.25ドルまで上昇し、2012年11月以来、7年6ヶ月ぶりの高値を付けました。

世界最大の金上場投資信託(ETF)であるSPDRゴールドトラストの保有高は、5月15日に1,113.78トンとなりました。この水準は2013年4月19日の1,123.06トン以来の高水準です。投資家の金買いは依然として続いています。

CFTC(米商品先物取引委員会)が公表するCOMEX金先物市場における5月12日時点の大口投機筋のポジションは24万2828枚のネット買い越しとなり、前週から買い越し幅が7,176枚縮小しました。買いポジションが2,200枚増加し、売りポジションが9,376枚増加しました。

円建て金相場はドル建て金相場の上昇を受けて高値引けとなりました。

【図表1】先週のゴールド 縦軸:円建てゴールド/グラム(単位:円)
出所:マネックス証券

今週のゴールド:強気な見方が下値を支える展開

今週のゴールド投資をする上での3つのポイント
・投資家の金買い継続
・主要中銀の緩和政策の拡大観測
・円建て金相場は上昇へ

金相場はさらに上値を試す展開になりそうです。投資家は依然として金を買う動きを緩めていません。世界的に金を物色する動きが流行になりつつあるようです。直近高値を更新したことで、投資家の注目が金に集まりやすくなるでしょう。

マスコミも金価格の高値更新を取り上げることが増えそうです。こうなると、買いが殺到しやすくなり、買い遅れた投資家が慌てて金市場に参入し、高値を付けるようになります。

このような買いが金相場を高値に押し上げる動きがしばらくは続きそうです。このような動きは、2011年9月に金価格が1,920.30ドルまで上昇したときにも見られました。いまは株式市場が戻り局面にありますが、経済環境や企業業績との乖離が歴史的な乖離を見せています。

著名投資家は現状の米国株の水準を「異常な割高水準」などとし、懸念を示しています。その見方が正しいかどうかは別として、実体経済がこれから悪化する可能性がある中で、現在の金融市場は政府や中央銀行が最後は助けてくれるという期待や希望で支えられている可能性が高いことは否定できないでしょう。このような不健全な状況がいつまで続くかは不明ですが、投資家がそのように考えるうちは株価も高値圏で推移しそうです。

FRBなどの中央銀行が過去最大級の量的緩和策を講じていることで、金利が著しく低い水準で維持されています。低金利は最終的には負債の拡大につながり、将来に大きな禍根を残す政策になることは明白ですが、いまは新型コロナウイルスを背景とした危機的な状況であるという理由で正当化されています。

しかし、いずれこのような政策は行き詰まり、そのツケは金融市場の混乱や経済の大幅な落ち込みといった形で示現することになるでしょう。そのことを想定し、資産ポートフォリオのリスク管理を厳密に行っている投資家は、金に資産を振り向け、混乱に備えているようです。

リーマンショックの際や今回のコロナ危機に端を発した株価急落の際に、金も同時に売られて大きく値を下げましたが、いち早く値を戻したのはほかでもない金でした。今回も金がいち早く値を戻し、直近高値を更新しています。賢明な投資家は、過去の経験を活かし、今回も金を安値で買い入れ、リスク管理をしっかりと行っているようです。

これまでは、株式に対するヘッジとして選択されていたのが債券でしたが、すでに金利がこれ以上下げようがないところにまで下げており、インカムゲインが得られない状況にあることから、これまでのようなリターンは見込みづらくなっています。こうなると、資金の逃避先としては、金利のつかない金も同じステージに立つことになります。

世界的に金はインフレヘッジや安全資産など、様々な局面で注目を集めることがありますが、近年ほどポートフォリオに組み入れるという考え方が浸透し、投資家層が広がった時代はないでしょう。

このような世界的な金投資の潮流がいまの金相場を支えています。この動きはもはや止められないでしょう。金に資金の一定量を投資しておいたほうが、ポートフォリオのリスクが低減できることを理解している投資家も増えており、彼らの買いが根雪のように積み上がることで、金価格が支えられ続けることになります。

また、世界情勢を見渡すと米国と中国の関係が不安定化しそうです。トランプ米大統領が中国との関係断絶の可能性も示唆するなど、米中間のあつれきが再燃しており、景気シナリオに改めて暗雲が漂っています。世界の先行きはきわめて不透明であり、このような時期に金が資産を守ってくれるとの見方が強まりやすいといえます。

さらに、新型コロナウイルスの感染第2波のリスクを常に念頭に置いておく必要があります。新型コロナの感染者は世界で446万人に上り、30万1445人が死亡しています(5月15日執筆時点)。世界中の経済活動が打撃を受けたことで、各国の中央銀行や政府は巨額の経済刺激策を迅速に打ち出しており、低金利状態は当面維持されるでしょう。

このように、現在の金市場を取り巻く環境は、金にとってきわめてポジティブな状況です。現在はコロナ後の景気回復への期待が株式市場を支えていますが、いずれ「実態悪」に直面し、冷静さを取り戻す事態になるでしょう。その際に、資金の逃避先として金が選択されやすくなることは言うまでもありません。

このような市場環境の中、現在の金相場は2011年の過去最高値まで10%以内の水準にあります。到達は時間の問題かもしれません。私自身、金についてこの数年間、金投資の重要性と価格水準の切り上げの可能性がきわめて高い点について各所で解説してきました。結果を見れば、その通りの展開になっています。

コロナ危機を契機に、米政府の財政拡張とFRBの量的緩和策の拡大により、ドルの価値は今後さらに減価し、金の価値がこれまで以上に高まる可能性がありそうです。ドルの金に対する価値は、この50年で50分の1以下になっています。ドルの価値が今後確実に低下していく中、金の相対的な価値はさらに高まることになるでしょう。

その結果、金に対して株式や債券以上の価値を見出す投資家が今後は増えていくのではないかと考えています。そうなれば、一時的に「金バブル」のような相場展開が示現してもおかしくないでしょう。そうなった場合でも、金相場は上下動を繰り返しながらも持続的な拡大を続け、ドルに対する価値がさらに高まっていくことになるとみています。

円建て金相場は節目の6,000円を超えました。為替相場に比較的動きがないことから、目先はドル建て金相場の動きがそのまま円建て金相場の値動きに反映されることになりそうです。

6,000円を固めることができれば、今度は6,000円が下値になり、さらに上値を試すことになりそうです。ドル建て金相場が歴史的な動きに入りつつあることから、その動きについていくとよいでしょう。

また、繰り返すように、資産運用におけるリスク分散の観点から、長期的な視点で金への投資を継続することを考えたいところです。

株式を購入する際には、金もその半分から同金額を購入するとリスク分散につながるでしょう。金を保有しておけば、株安リスクにも対応できます。金相場に大きな押し目が来た場合には、その押し目を逃さずに徐々に買いを積み上げておきたいところです。

プラチナ:急伸の展開

プラチナは急伸しました。週初から週中は前週までのレンジ内での小幅な値動きでしたが、週末に金や銀が急騰したことから、これに連れる形で一時800ドルを付ける場面もありました。

CFTC(米商品先物取引委員会)が公表するNYMEXプラチナ先物市場における5月12日時点の大口投機筋のポジションは1万8155枚のネット買い越しとなり、前週から買い越し幅が91枚縮小しました。買いポジションが386枚減少し、売りポジションが295枚減少しました。

プラチナ相場は特段の材料がない中、膠着状態が続いていましたが、金相場の堅調さに連れ、ようやくレンジを上抜いてきました。また、世界最大のプラチナ生産国である南アフリカの通貨ランドがこのところ下げ渋っていることも、プラチナ相場を支えたものと考えられます。

プラチナに関する需給面の材料は、これまでも解説したようにあまり芳しくないといえます。しかし、これらの弱材料が織り込まれる一方、同じ貴金属である金や銀が上昇したことに連れる展開に移行したことは、一時的にせよファンダメンタルズ材料から投機的な材料に関心が移行したことを示しているといえます。

こうなると、値動きだけを材料に相場が上昇することがあります。特にプラチナはこれまで停滞し、金相場との価格差が開いていただけに、両者の価格差が大きすぎるとのロジックから買いを入れる動きが強まり、高値を目指す可能性も否定できません。

市場とは都合の良いもので、自分に都合が良い材料を見つけ出し、その材料を都合の良いように解釈し、買いを入れてくることがあります。現在の米国株がそのような状況にあるといえますが、プラチナ市場は完全に出遅れており、そのような動きになった場合に思わぬ高値を付けていたということにもなりかねないでしょう。

ファンダメンタルズ材料は数日間や数週間では変わりません。したがって、短期的に上昇基調が続けば、それは完全に投機的な動きであると考えるべきでしょう。その大前提で市場に参入することは決して間違った投資行動ではありません。

実際にヘッジファンドなどはそのような値動いを狙って投資機会を探し続けています。これまで相場低迷していただけに、目を付けるヘッジファンドが出てきても不思議ではありません。したがって、金相場の動向と合わせてみておきたいところです。

短期的には800ドルを上抜けると、次のターゲットは節目の1,000ドルになります。ここを超えるような動きになれば、1月につけた高値の1,041ドルを超えて、2014年につけた1,518ドルを目指すことになりそうです。

現段階ではこのような値動きは想定しづらいところですが、金相場が歴史的な高値を付けた2011年9月の前月の8月には1,912ドルまで上昇しています。何が起きるかわからないのが相場です。今回の局面がどのような展開になるのかをじっくりとみておきたいと思います。

円建てプラチナ相場は引き続き狭いレンジでの推移が続いています。しかし、ドル建てプラチナ相場が高値を抜けてきていますので、いったんは上値を試すことになるでしょう。

これまでのレンジを上抜けることができれば、その動きについていくことを考えたいところです。レンジ上限の2,800円を上抜けると、節目の3,000円を試し、さらに3,500円を試す展開になる可能性は十分にあるといえます。

これまでプラチナ相場はなかなか大きな動きになりませんでしたが、金相場が動意づいているため、これまでとは違った見方をしておきたいと考えています。

【図表2】プラチナ 縦軸:円建てプラチナ/グラム(単位:円)
出所:マネックス証券

シルバー:大幅続伸の展開

シルバーは大幅続伸しました。週初から徐々に水準を切り上げ、週末には金相場の急伸も手伝い、15ドル台後半から一気に16ドル台に入り、16.71ドルまで上昇しました。

CFTC(米商品先物取引委員会)が公表するCOMEX銀先物市場における5月12日時点の大口投機筋のポジションは2万5733枚のネット買い越しとなり、前週から買い越し幅が2,858枚拡大しました。買いポジションが705枚増加し、売りポジションが2,153枚減少しました。

銀相場もこれまでのレンジを上抜けてきました。金相場の上昇が大きく影響していることは間違いのないとことでしょう。金相場が動意づくと、銀相場はさらに大きく変動するケースが多いことは、これまでも何度も指摘してきました。今回まさにそのような動きになりつつあります。

節目の17ドルを超えるようだと、さらに水準を切り上げ、2019年の高値水準だった19ドルを試す可能性もありそうです。ただし、繰り返すように、銀独自のポジティブな材料はありません。あくまで金相場や株価の堅調さなどが上昇の背景にあることを常に念頭に置きながら、割り切ってみていくことが肝要です。

一方、4月に一時112倍にまで拡大した金/銀レシオは、直近では104倍台にまで低下してきました。それだけ、銀相場の上昇が金に対して相対的に大きくなっていることを示しています。このようなレシオの修正的な動きが続くようだと、銀相場は思わぬ大相場に発展する可能性もあるでしょう。

いまの値動きは、先週に指摘していた「突如とした投機マネーの流入」が背景にあります。投機筋は銀相場を比較的好む傾向があります。それは、いったん動き出すと値動きが大きくなり、短期間で上昇することが少なくないことを知っているからです。今回は、このような銀相場の特徴を利用するのにふさわしい状況が到来している可能性がありそうです。

円建て銀相場もこれまでのレンジを上抜けてきました。このままドル建て銀相場が順調に上昇すれば、節目の60円を超えてさらに68円を目指す可能性もありそうです。直近高値を超えたことで買いやすい地合いにあるといえます。金相場の動向を見ながら、この流れに乗ることを考えたいところです。

【図表3】シルバー 縦軸:円建てシルバー/グラム(単位:円)
出所:マネックス証券