先週のゴールド:小幅上昇の展開

金相場は小幅に上昇し、1,700ドルを維持しました。米国を中心に株価が堅調に推移したことから、上値の重い展開となっております。

米バイオ医薬品メーカーのギリアド・サイエンシズが、新型コロナウイルスの治療薬として食品医薬品局(FDA)の緊急認可を受けた「レムデシビル」について、「近日中に米国の医療現場で使用が始まる」との見通しを示したことが、株式市場に安心感を与えました。

また、イタリアなどの国々やカリフォルニアなど米国の一部の州で外出制限を緩和する動きが出ていることなどから、経済活動再開への期待が広がったことも株価を押し上げました。これらから、投資家の関心が安全資産である金からリスク資産に向かっており、金は買われにくい地合いになりました。

5月8日に発表された4月の米雇用統計では、新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、失業率は14.7%と前月の4.4%から急上昇し、戦後最悪となりました。景気動向を反映する非農業部門の就業者数は2050万人減で、こちらも1939年の集計開始以来で最大の落ち込みとなりました。

新型コロナウイルス感染拡大の影響で、米経済が深刻な不況に陥っていることが浮き彫りになりましたが、市場の反応は限定的となっています。そうした中、この日の株価が力強く上昇したことや、金利が上昇したことなどから金相場は下落しております。

世界最大の金上場投資信託(ETF)であるSPDRゴールドトラストの保有高は、5月8日には1081.65トンにまで増加しました。この水準は2013年4月26日の1,083.05トン以来の高水準であり、投資家の金買いは依然として続いています。

CFTC(米商品先物取引委員会)が公表するCOMEX金先物市場における5月5日時点の大口投機筋のポジションは25万4枚のネット買い越しとなり、前週から買い越し幅が1万2725枚縮小しました。買いポジションが1万1811枚減少し、売りポジションが914枚増加しました。

円建て金相場は一時下げる場面もありましたが、小動きでした。

【図表1】先週のゴールド 縦軸:円建てゴールド/グラム(単位:円)
出所:マネックス証券

今週のゴールド:調整の可能性を視野に

今週のゴールド投資をする上での3つのポイント
・堅調な株価と投資家行動
・中国・インドの実需の鈍さ
・円建て金相場はドル建て金相場次第

金相場は調整場面になりそうです。米雇用統計は歴史的な水準に悪化したものの、市場では想定よりも悪くなかったと受け止められたようです。それ以上に、新型コロナウイルス後の経済の回復への期待が強まっており、これが株価を押し上げるなど、楽観的な見方が優勢になっています。

そのため、安全資産である金は買われにくくなっている面がありそうです。もっとも、投資家はETFを経由して金を購入しており、金相場の上値を抑えているのは投機筋による先物市場での売りが中心と考えられます。

また、これまで買い手だったロシアが当面金の購入を見送る姿勢を見せていることも、金の上値を抑えている可能性があります。さらに、新型コロナウイルスの感染拡大で、中国やインドなどの主要金需要国による金買いが大きく減少していることも、実需の軟調さにつながっている可能性がありそうです。

これまで金相場は力強い上昇を見せてきましたが、欧米の主要金融機関から強気な見方が出始めたとたんに上値が重くなってきました。このようなことは市場ではよくあることで、金市場でも2011年9月に過去最高値の1,920ドルを付けた際にも聞かれました。当時は「金相場は2,500ドルまで上昇する」といった見方が米系金融機関から出されるなど、強気一辺倒でした。しかし、この水準が高値となり、現在までこの水準を超えることができていません。

低金利状態が続けば、上昇余地も出てきそうですが、米国がマイナス金利を導入する可能性は低そうであり、そうなると金価格が押し上げられるにはインフレ率の上昇が不可欠となります。

しかし、原油相場の低迷や新型コロナウイルスからの経済活動の回復には時間がかかることから、消費が落ち込む可能性があり、需要不足からインフレ率も低迷しやすいと考えられます。つまり、これまで繰り返してきたような実質金利の低下がデフレリスクにつながり、これが金相場の上値を抑える可能性がありそうです。

このように、理論的には金相場の上値は重くなりやすい地合いです。したがって、金相場が上昇するには、現在の株式市場と同じように、投資家の買いが入ることが不可欠です。投資家の買いが入る状況とは、経済や市場が不安定になっているときと言えるでしょう。いまの状況は、どちらかと言えば将来への期待が強まりつつあるときといえます。

しかし、その状況のまま回復し続けるとは考えにくいでしょう。トランプ米政権は「景気は7-9月期に持ち直し、10-12月期は非常に良くなる」と強気の姿勢を崩していませんが、失業者の急増は11月の米大統領選で大きな逆風になりかねないでしょう。

また、いったん落ち込んだ経済が回復したとしても、年初の水準にまで戻るには数年かかる可能性も指摘されています。現在の株式市場の戻りが期待だけであり、実態とかけ離れている可能性があるかもしれません。そのようなリスクも念頭に置きながら、市場動向全体を見ていくようにしたいところです。

短期的には、1,675ドルと1,740ドルのレンジでの推移になっています。このレンジを抜けたほうに動きやすいといえます。ただし、直近では株価が堅調に推移しているため、投資家動向に注意が必要でしょう。これまでの金相場の上昇を後押ししてきた投資家の買いが、株高で鈍るようだと、上値は重くならざるを得ないといえます。

いずれにしても、いまは次の動きを待っている状況であるといえます。いまは株価との連動性が外れており、金相場の上昇は株安が到来したときになる可能性もありそうです。あらゆるパターンを想定しながら、上昇に向かう場面を逃さないようにしたいところです。

円建て金相場は引き続き調整基調となる可能性を念頭に置いておきます。6,000円が上値となり、その後は調整したものの、5,800円では下げ止まっています。このレンジの下限を固めることができるかをまずは確認します。そのうえで、下げづらくなってくれば、その時点で押し目買いを検討します。ドル建て金相場が調整する可能性がありそうですので、買い場は慎重に見極めたいところです。

一方、資産運用におけるリスク分散の観点から、長期的な視点で金への投資を継続することを考えておきます。株式を購入する際には、金もその半分から同金額を購入するとリスク分散につながるでしょう。今回の新型コロナウイルスの感染拡大をきっかけとした株安でも金相場は堅調でした。このように、金を保有しておけば、株安リスクにも対応できます。金相場に大きな押し目が来た場合には、その押し目を逃さずに徐々に買いを積み上げておきたいところです。

プラチナ:小幅上昇の展開

プラチナは小幅に上昇しました。ただし、狭いレンジでの推移であり、明確な方向性は見いだせない展開となり、765ドルで引けました。

CFTC(米商品先物取引委員会)が公表するNYMEXプラチナ先物市場における5月5日時点の大口投機筋のポジションは1万8246枚のネット買い越しとなり、前週から買い越し幅が912枚拡大しました。買いポジションが28枚減少し、売りポジションが940枚減少しました。

プラチナ相場は、株価の調整に連れて下げましたが、その後も株価の戻りに合わせて水準を回復させてきました。しかし、株価の戻りに比べるとプラチナ相場の戻りは鈍いといえます。その背景には、実需が戻る可能性への不安感があるものと思われます。

ドイツ自動車工業会(VDA)が6日発表した乗用車統計によると、4月の同国の生産台数は1万900台となり、前年同月比97%減となりました。VDAは「生産はドイツ建国史最大の打撃を受け、ほぼ完全に休止した」としています。また、輸出台数も同じくほぼ休止状態に陥り、94%減の1万7600台と大きく落ち込みました。

国内の販売台数(新車登録台数)は61%減の12万800台でした。4月は外出自粛や在宅勤務、販社店舗閉鎖など各種制限の影響が一段と強まり、需要減退に加え、新車を購入しても登録手続きができない例も多発しました。1-4月累計の新車登録台数は前年同期比31.0%減の82万2202台となりました。実需の軟調さは、プラチナ相場に重くのしかかりそうです。

プラチナ相場は740ドルと790ドルのレンジでの推移になっています。レンジでの動きが長くなってきており、いずれ近いうちにこのレンジを抜けて動き出すでしょう。現在の金融市場の雰囲気を見ていると、株価の上昇もあり、790ドルを上抜けて上に向かう可能性が高いように見えます。

しかし、それが実需の不透明感を払しょくできるほどの動きになるかは不透明です。そのため、上昇した場合でもテクニカル主導の短期的なものになる可能性がありそうです。もっとも、力強い動きになれば、840ドル程度まで戻すことも想定されます。まずは株価動向を見ながら、プラチナ市場の反応を見極めることになりそうです。

逆に、株価が下げるようであれば、プラチナ相場もつれる形で下げることが想定されます。その場合には、740ドルを下回り、再び700ドル割れを試す可能性がありそうです。

円建てプラチナ相場はきわめて狭いレンジでの推移が続いています。これはドル建てプラチナ相場と同じといえます。したがって、まずはドル建てプラチナ相場の動きを見極めたうえで、引き続き2,600円と2,800円のレンジを抜けたほうに動きやすい状況にあることを理解しておきたいところです。

そのうえで、2,800円を超えていくようであれば、買いを検討したいところです。逆に2,600円を割り込んだ場合には、安易な押し目買いは避け、サポートを形成するのを待ちたいところです。動きが鈍いだけに、動きだすと大きな値動きになるのは円建てプラチナ相場も同じでしょう。2,600円を割り込むと、直近安値の2,200円水準まで調整する可能性もあります。その場合には、押し目買いよりも下値形成の確認を優勢したいと考えます。

【図表2】プラチナ 縦軸:円建てプラチナ/グラム(単位:円)
出所:マネックス証券

シルバー:続伸の展開

シルバーは続伸しました。14.75ドル前後のサポートを維持したことで、週末にかけての株価の上昇につれる形で値を上げ、15.45ドルで引けました。

CFTC(米商品先物取引委員会)が公表するCOMEX銀先物市場における5月5日時点の大口投機筋のポジションは2万2915枚のネット買い越しとなり、前週から買い越し幅が2,590枚縮小しました。買いポジションが968枚減少し、売りポジションが1,622枚増加しました。

銀相場は株価がもたついているときも下げ渋り、14.75ドルを維持しました。この水準を維持したことが、反発につながったといえます。このように、現在の銀相場は株価のポジティブな動きに連動しているといえます。

直近高値は4月14日につけた15.83ドルですが、これを超えるような動きになれば、市場の地合いも大きく好転することになりそうです。その場合には、株価が上昇するなどポジティブな状況がみられるものと思われます。今後もまずは株価動向を確認したうえで、銀相場の動向を見極めるようにしたいところです。

また、4月に一時112倍にまで拡大した金/銀レシオは、直近では111倍にわずかに低下しました。しかし、依然として過去最高水準に拡大しています。すでに過去の水準との比較は参考にならなくなっており、この点には要注意でしょう。それだけ、市場の関心は金に向かっており、銀への関心は低いといえます。

しかし、銀相場はいったん動き出すと、突如として投機マネーが流入することがあります。逃げ足の速い資金ではありますが、ひと相場を形成する可能性は常にあります。そのため、金相場に合わせて銀相場の値動きも常に見ておきたいところです。一方、14.75ドルを割り込んで下落した場合には、14ドル割れの水準に下げる可能性がありますので、株価動向と合わせて注意深く見ておきたいところです。

円建て銀相場は引き続き狭いレンジでの小動きとなっています。52円と56円のレンジでの推移は継続しており、これを抜けたほうに動きやすい状況にあります。ドル建て銀相場の動向を見ながら、まずは方向性を確認したいと考えます。

そのうえで、56円を明確に上抜いた場合には、その動きに追随する形で上値を買いたいところです。一方、52円を下回るようだと、大きく値を下げる可能性があります。したがって、下げた場合には安易な押し目を買う前に、下値形成の動きを確認してから買うことを考えたいところです。

【図表3】シルバー 縦軸:円建てシルバー/グラム(単位:円)
出所:マネックス証券