先週のゴールド:反発の展開

金相場は反発しました。週初に歴史的な動きを見せた原油価格の急落を背景に株価が急落し、投資家の関心が安全資産としての金に向かったことを受け、買いが先行しました。

4月21日には、原油相場の急落でコモディティ相場全般が弱含む中、損失補填の換金売りが膨らむ場面もありました。しかし、その後は新型コロナウイルスによる経済的な打撃を緩和するため、世界的に進む財政出動や金融政策への期待感を背景に反発しました。

週末は利益確定売りで下落しました。ただし、世界的な景気鈍化への懸念や主要中央銀行による大規模な金融刺激策を支えに底堅い動きでした。

世界最大の金上場投資信託(ETF)であるSPDRゴールドトラストの保有高は、4月17日の1021.69トンから、4月24日には1,048.31トンに増加しました。この水準は2013年5月14日の1,051.65トン以来の高水準です。投資家の金買いが続いていることがわかります。

CFTC(米商品先物取引委員会)が公表するCOMEX金先物市場における4月21日時点の大口投機筋のポジションは24万9571枚のネット買い越しとなり、前週から買い越し幅が2,930枚縮小しました。買いポジションが4,354枚減少し、売りポジションが1,424枚減少しました。

円建て金相場は節目の6,000円を超えるなど、堅調な値動きでした。

【図表1】先週のゴールド 縦軸:円建てゴールド/グラム(単位:円)
出所:マネックス証券

今週のゴールド:直近高値更新を狙う展開

今週のゴールド投資をする上での3つのポイント
・新型コロナウイルスと株価動向
・米ドルと米金利動向
・円建て金相場は円高リスクに注意

金相場は再度高値を目指す展開にあります。市場の関心は、世界の中央銀行が進める緩和策の拡大です。これによりバランスシートが膨らむことから、金市場にはリスクを警戒した投資家の買いが入り続けています。

また、世界の経済見通しが引き続き極めて不透明なことから、個人と機関投資家の双方が買い続けており、金相場は高値圏を維持しています。低金利状態が続く限り、現在の堅調なトレンドが崩れる可能性は低そうです。

先週の市場では、WTI原油先物の動きに注目が集まりました。先物価格が一時マイナスになるなど、歴史的なことが起きましたが、徐々に落ち着きを取り戻しているように見えます。

金融市場では、原油相場の動きを強い関心をもってみているもようです。投資家心理の改善には、原油相場の回復が不可欠といえます。ただし、世界的な経済活動の停止に伴う石油需要の著しい現象を背景に、需給バランスの改善には相当の時間がかかると思われます。

原油相場が一時的に回復したとしても、生産者が最低限の水準として望んでいる40ドル以上を回復するには、相応の時間がかかりそうです。

このように、原油相場が低迷することで、インフレ率が低下することが懸念されます。実際に米CPIは低下しています。また、経済活動の停滞による需要不足を背景としたデフレリスクが懸念材料です。金相場は投資家の買いで堅調に推移しているものの、デフレによる実質金利の上昇が金相場の上値を抑える要因になる可能性があります。

現在の米実質金利から筆者が計算した金相場の理論値は4月の推計値で1,530ドル程度であり、現在の水準は割高です。ただし、実勢値が理論値よりも上にあるときは強気相場、下にある時は弱気相場のときが多いため、いまはそのような観点で見ることも重要であると考えます。

一方、これまで金保有高を増やしてきたロシアが、金に対するスタンスを変化させています。ロシア政府は、産金業者による金輸出に対して1回限りの認可を付与する方式を改め、無期限の認可を与える方針を決めました。

既存の取引網での需要が新型コロナウイルスによって打撃を受けたため、業者が独力で外国に輸出できるようにし、その支援をすることにしました。ロシアの銀行各行も、中央銀行が今月に入り、市中銀行からの金購入を一時停止すると決定したことを受け、国内需要が抑制されていると指摘していました。

ロシア産金最大手ポリュスは、「民間銀行と同等の権利を得ることができ、市場インフラは一段と改善される。国際市場で需要が高まる金市場の環境を支えることになる」としています。

これまでロシアは、中国と競い合うかのように金保有高を積極的に増やしてきました。しかし、今回の決定は、原油相場の下落で収入が大きく低下したことによる外貨不足が背景にあるものと考えられます。

これまで政府・中央銀行の金購入が金相場を支えてきた面があるだけに、原油相場の下落により新興国の金買いが減少するリスクがある点にも注意が必要です。今後はむしろ、彼らが保有している金の換金売りの動きに注意が必要かもしれません。

市場では、スイスから米国への金輸出の動きに注目が集まる場面がありました。スイスの税関のデータによると、3月の米国への金輸出が43.2トンと、過去最大になりました。

COMEXでは3月下旬に、先物取引の引き渡しに必要な量がないとの懸念から、金の先物価格が現物を最大で4%上回る場面がありました。これを受け、金取引の主要拠点であり多くの精錬所を抱えるスイスからニューヨークへの金の出荷が急増したようです。

2月のスイスから米国への金輸出は361キログラムでした。3月の水準は12年の統計開始以来最大で、過去40カ月分の対米輸出量に相当します。このように、現物市場は各地域で価格にずれが生じることがあります。しかし、金は飛行機で容易に空輸できますので、アービトラージ取引(裁定取引)が容易であり、地域間の価格差はすぐに解消されるケースといえます。

短期的には、1,740ドルを超えてくると上昇に勢いがつきそうです。まだ上昇余地も残っていますので、その可能性は十分にありそうです。株価との連動性が外れてくるのか、引き続きこの点に注目しておきます。

欧米の経済指標が軒並み悪化と外出禁止の解除の動きに対して、市場がどのように反応するかに注目しておきます。調整した場合には、1,675ドルで下げ止まるかが重要なポイントになるとみています。

円建て金相場は、前回は「調整の可能性を念頭においておきます」とし、「まずは5,800円前後で下げ止まるかを確認します」としました。

辛うじて5,800円で下げ止まり、反発しましたので、押し目買いのタイミングだったといえます。さらに、節目の6,000円を超えていますので、この水準を固めることができれば、上向く可能性がありそうです。ただし、円高リスクには注意しておきたいところです。

また、資産運用におけるリスク分散の観点から、長期的な視点で金への投資を継続することを考え、分散しながらゆっくりと押し目を逃さずに買いを積み上げておきたいところです。

プラチナ:反落の展開

プラチナは反落しました。4月21日には一時709ドルまで下落するなど、売り込まれる場面がありました。結局、先週の高値水準である795ドルを超えることなく推移し、週末は759ドルで引けました。

CFTC(米商品先物取引委員会)が公表するNYMEXプラチナ先物市場における4月21日時点の大口投機筋のポジションは1万5287枚のネット買い越しとなり、前週から買い越し幅が2,509枚縮小しました。買いポジションが2,651枚減少し、売りポジションが142枚減少しました。

プラチナ相場は800ドル前後が重くなっているようです。現時点で明確な方向を示す材料はなく、引き続き自動車販売台数の低迷を背景としたプラチナ需要の減退リスクを懸念する状況にあります。

また、世界最大のプラチナ生産国の南アフリカの通貨ランドが過去最安値近辺で推移しており、ランド建てプラチナ価格も同様に過去最高水準で推移していることから、ドル建てプラチナ相場は上昇しづらいといえます。

このように、プラチナ市場を取り巻く環境は決して良いとは言えません。金相場が堅調に推移するなか、過去のようなプラチナ価格が金価格を上回る状況になるのは、きわめて難しいでしょう。あるとすれば、生産者が生産を停止するなどの需給面の改善が不可欠でしょう。

需要面の大幅な伸びが期待できない中、需給改善には生産・供給量の改善が不可欠であることはいうまでもありません。目先は750ドルを割り込むと、基調は下向きになりそうです。当面は上値の重い展開が続く可能性を念頭に置いて市場動向を見ていきたいところです。

円建てプラチナ相場はきわめて狭いレンジでの推移となりました。おおむね2,700円と2,800円のレンジでの推移となっており、方向感がない状況です。したがって、まずはこのレンジのどちらに抜けるかの判断が必要です。

そのうえで、2,800円を超えていくようであれば、買いを検討したいところです。逆に2,700円を割り込んだ場合には、安易な押し目買いは避け、2,600円で下げ止まるかを確認します。

そのうえで、下げ止まったところで、徐々に買いを検討したいところです。ただし、2,600円を割り込むと、直近安値の2200円水準まで調整する可能性もありますので、その場合には下値確認を優先すべきでしょう。

【図表2】プラチナ 縦軸:円建てプラチナ/グラム(単位:円)
出所:マネックス証券

シルバー:小幅反発の展開

シルバーは小幅反発しました。当初は下落し、4月21日には14.48ドルの安値をつけましたが、完全に崩れることなく反発し、辛うじて値を戻して引けました。

CFTC(米商品先物取引委員会)が公表するCOMEX銀先物市場における4月21日時点の大口投機筋のポジションは2万8508枚のネット買い越しとなり、前週から買い越し幅が2046枚縮小しました。買いポジションが1,315枚減少し、売りポジションが731枚増加しました。

銀相場は下げ渋りましたが、上値も切り下がっています。その結果、徐々に値幅が狭くなっており、近いうちに方向性が出るパターンにあります。

これまで連動性が高かった金相場は、すでにはるか上の水準に上昇しており、銀相場はその動きに連れて上げていません。チャートの形状を見ると、むしろ株価の動きにきわめて似ています。この点を注視すれば、銀相場は株価次第で変動しやすいといえます。

したがって、まずは金相場の動きに加え、株価動向をしっかりとみておきたいところです。現時点では、15.75ドルを超えられないと基調は上向かないと判断できそうです。また、15ドルを終値ベースで割り込むと、基調は下向きになります。

このように、重要なポイントが接近しており、今週にも方向性が出てくると考えられます。上昇・下落の可能性は同程度と考えられますので、まずはこれらのレンジをどちらに抜けるかを見極めたうえで、次の投資行動に移るのが賢明でしょう。

円建て銀相場は小動きでした。ドル建て銀相場と同様に、方向感のない展開でした。いまは52円と56円のレンジでの推移になっており、これの抜けたほうに動きやすいといえます。
ドル建て銀相場の動向を見ながら、その方向性を確認したいと考えます。いまは押し目買いよりも、56円を明確に上抜いたときに、それに追随する形で上値を買うほうが賢明でしょう。

一方、52円を下回り、さらに50円も割り込むようだと、直近安値の42円水準まで下げる可能性があるため、明確な形で下値確認ができるまでは、安易に押し目を買うことは避けたいところです。

【図表3】シルバー 縦軸:円建てシルバー/グラム(単位:円)
出所:マネックス証券