先週のゴールド:小幅反落の展開

金相場は反落しました。新型コロナウイルスの感染拡大による世界経済や米国の企業決算への影響が懸念され、安全資産とされる金に買いが入り、4月14日には2012年後半以来の高値となる1746.50ドルを付けました。

ただし、その後は上値での利益確定の売りが出たことや、ドル高などに圧迫されたことから下落に転じました。週末には、トランプ米大統領の経済再開に向けた新たな指針や新型コロナウイルス治療薬に関する希望的なデータの公表が材料視されて売りが優勢になりました。金と株価がネガティブな関係に転換し、株高が金相場を圧迫する展開になり、週末は1,684ドルで引けました。

世界最大の金上場投資信託(ETF)であるSPDRゴールドトラストの保有高は、4月9日の994.19トンから、4月17日には1021.69トンに増加しました。この水準は2013年5月21日の1,023.08トン以来の高水準です。投資家の金買いが続いていることがわかります。

CFTC(米商品先物取引委員会)が公表するCOMEX金先物市場における4月14日時点の大口投機筋のポジションは25万2501枚のネット買い越しとなり、前週から買い越し幅が3,559枚拡大しました。買いポジションが6,737枚増加し、売りポジションが3,178枚増加しました。ただし、その後週末にかけて金相場が下落しており、買い方の手仕舞い売りが出ている可能性がありそうです。

円建て金相場は、一時節目の6,000円を超える場面がありましたが、週末にかけてドル建て金相場の下落もあり、高値から下げて引けました。

【図表1】先週のゴールド 縦軸:円建てゴールド/グラム(単位:円)
出所:マネックス証券

今週のゴールド:下値を模索する展開に

今週のゴールド投資をする上での3つのポイント
・新型コロナウイルスと株価動向
・米ドルと米金利動向
・円建て金相場は調整リスクに注意

金相場は先週末に調整したことから、今週はまず下値を確認することになりそうです。先週は米国株が戻りを試したことから、投資家がやや楽観的になっているように見えます。

トランプ米大統領が4月16日に経済活動の再開に向け、実施手順を定めたガイドラインを公表しました。各地の感染収束の度合いに応じ、州知事が外出禁止や休校などの制限の緩和・解除を3段階で進めることを盛り込みました。

トランプ米大統領は29程度の州がまもなく経済活動を再開できるとの見方を表明しており、一部の州は制限解除に向けた工程表を公表する予定です。また、4月16日に米バイオ医薬品メーカーのギリアド・サイエンシズが開発した抗ウイルス薬「レムデシビル」の臨床試験(治験)で、新型コロナウイルスに感染した患者が急速に回復していると報じられたことも、投資家のリスク選好意欲を高めています。

このように、これまでは新型コロナウイルスに関するネガティブな報道に市場は慎重姿勢を見せていました。しかし、投資家の現金化の動きが止まると株価は順調に値を戻し始めています。この動きを受けて、市場では楽観的な見方も聞かれるようになっています。

このような状況から、安全資産である金は値を下げています。投資家の金ETFの買いは続いていますが、短期筋の手仕舞い売りが出ています。金相場はこれまで株式との連動性が比較的高かったものの、直近ではこの関係に変化が見られます。つまり、これまでのセオリーにのっとった動きになりつつあり、金融市場が正常な状況になってきたとも言えます。

しかし、新型コロナウイルスの状況が大きく改善したといえる状況ではなく、楽観できないともいえます。トランプ米大統領は秋の大統領選再選をにらんで、早期の経済活動の再開を目指しています。一方で各州知事は状況を冷静に把握しながら、慎重に進めるものと思われ、すぐに経済及び企業活動が正常化に向かうと考えるのは早計でしょう。

また、新薬の治験に関する報道は明るいニュースですが、今後の動向を確認する必要がありそうです。いずれにしても、先が見えない中で、市場参加者が少しでも良い材料を探そうとする姿勢が感じられ、それが株価の上昇につながっている面がありそうです。このような傾向が強まれば、金相場の上値が重くなる可能性がありそうです。

一方、インドの2020年の金消費量が前年に比べ半減し、約30年ぶりの低水準に落ち込む可能性があるとみられています。インドの宝石・宝飾品の業界団体GJCは、2020年の金消費は350-400トンと、前年の690.4トンから約50%減少し、1991年以来の低水準となる可能性があるとしています。

重要な祭事や婚礼の多い時期に、全国的なロックダウンで宝飾店が閉店していることが響いているもようです。インド政府はロックダウン措置を少なくとも5月3日まで延長し、約13億人が影響を受けています。このように、世界第2の金消費国であるインドでの需要減少は、今月初めに7年超ぶりの高値を付けた金相場の上値を抑える可能性がありそうです。

一方で、金の輸入量が減少することで、インドの貿易赤字を減少させ、通貨ルピーの下支えにつながる可能性もあります。ルピー安によるルピー建て金相場の上昇も金需要の減退の背景にあると考えられ、ルピー相場の反転も重要なポイントになりそうです。

世界最大の金消費国である中国の第1四半期GDPは物価変動の影響を除いた実質ベースで前年同期比6.8%減少しました。マイナス成長は四半期ごとの数値公表を始めた1992年以降で初めてです。

成長率はプラスだった前期の6.0%増から一転大幅に縮小し、新型コロナウイルスの感染拡大に伴う経済への打撃の大きさが浮き彫りになりました。ウイルスの発症地とされる中国では、一部の経済活動が既に再開されるなど、早期の景気回復への期待が高まっているようですが、封鎖解除によるウイルス拡大の第2波のリスクがあります。

過去に起きたスペイン風邪の流行の例も念頭に置いておきたいところです。いずれにしても、経済状況がすぐに以前の水準に戻るとは考えにくく、金需要も前年割れになることは必至と考えられます。この点も需給面から金相場の上値を抑える要因になる可能性がありますので、注意しておきたいところです。

これまで金相場は順調に水準を切り上げてきましたが、短期的には少し慎重に見ていきたいと考えます。その背景には、米実質金利が上昇したことにより、金相場の理論値が低下していることがあります。

3月の米CPI(消費者物価指数)が急低下しており、今後はデフレリスクにも注意が必要と考えます。特に原油相場の下落で、インフレ率が低下する可能性があり、これが金相場の上値を抑える可能性があるとみています。3月時点での金相場の理論値は1,550ドル程度であり、現在の金価格は理論値から100ドルも上の水準にあります。

また、今後さらにインフレ率が低下すれば、理論値はさらに低下します。無論、投資家がリスク回避の金買いを続ければ、下値が支えられる可能性があります。しかし、これはあくまで新型コロナウイルスの状況とそれに対する投資家の投資行動次第です。したがって、状況の変化や市場参加者の反応に注目しておきたいところです。

短期的には、1,650ドルをサポートできるかがポイントでしょう。さらに、節目の1,600ドル前後も重要なサポート水準になるものと思われます。これらを維持できれば、押し目買いが期待できそうです。逆に、これらを割り込むと手仕舞い売りが出てくる可能性が高いため、一段安には注意が必要と考えます。

円建て金相場は目先は調整の可能性を念頭においておきます。そのうえで、まずは5,800円前後で下げ止まるかを確認します。これを下回り、さらに5,600円前後で下げ止まり、下値を固めることができれば、押し目買いを検討したいところです。

今回は節目の6,000円超えに失敗した格好ですので、次は押し目買いのタイミングを探りたいところです。また、資産運用におけるリスク分散の観点から、長期的な視点で金への投資を継続することを考え、分散しながらゆっくりと押し目買いを実行したいところです。

プラチナ:小幅続伸の展開

プラチナは小幅続伸しました。徐々に下値を切り上げ、上昇基調を維持し、週末は775ドルで引けました。

CFTC(米商品先物取引委員会)が公表するNYMEXプラチナ先物市場における4月14日時点の大口投機筋のポジションは1万7796枚のネット買い越しとなり、前週から買い越し幅が1,225枚縮小しました。買いポジションが1,433枚減少し、売りポジションが208枚減少しました。

プラチナ相場は3月の株安局面につけた安値の570ドル水準から、徐々に水準を切り上げてきました。ただし、株価の戻りや金相場の強さに比べると、戻りの鈍さは否めません。
その背景には、新型コロナウイルスの感染拡大が大きく影響していることがあります。

世界的に経済活動が停止し、特に欧州での感染者数の拡大が目立ちます。世界的に自動車販売台数が大きく減少していることで、欧州で主流のディーゼル車に搭載される自動車触媒の原料に使用されるプラチナの需要は大幅な落ち込みが懸念されています。

欧州自動車工業会(ACEA)が発表した3月の欧州連合(EU)の新車販売台数は前年同月比55.1%減の56万7308台と、半減以下となりました。新型コロナウイルスの感染拡大を抑制するため、各国が店舗休業などの厳しい制限措置を導入した影響で、大幅な落ち込みを記録しました。

国別では、感染による死者数が欧州最多のイタリアで85.4%減ときわめて大きな減少になっています。また、フランスは72.2%減、スペイン69.3%減、ドイツも37.7%減と主要市場が軒並み大幅な縮小に見舞われました。これらの国は全て、新型コロナウイルスの感染者が多い国です。このような状況からも、プラチナ需要の減少が強く懸念される状況にあります。

現在は株価の反発につれる形で上昇していますが、上値は限定的になる可能性があると考えられます。目先は830ドル程度までの上昇は見込まれますが、それ以上の上昇があった場合は880ドル前後が上値になりそうです。一方、調整基調に転じた場合、725ドルを割り込むと再び700ドル割れから下値を試すリスクがあります。その可能性を念頭に置いておきたいところです。

円建てプラチナ相場は2,700円を超えましたが、2,800円が重くなっています。今後はドル建てプラチナ相場の値動き次第です。まずはその動きを確認し、そのうえで、2,600円前後でサポートできれば買いを検討したいところです。もっとも、この水準を割り込むと、直近安値の2,200円水準まで調整する可能性もありますので、安易な押し目買いは避け、下値の確認を優先すべきでしょう。

【図表2】プラチナ 縦軸:円建てプラチナ/グラム(単位:円)
出所:マネックス証券

シルバー:小幅反落の展開

シルバーは小幅反落しました。当初は上昇し、4月14日には15.83ドルの戻り高値を付ける場面がありました。しかし、その後は徐々に水準を切り下げ、安値で引けました。

CFTC(米商品先物取引委員会)が公表するCOMEX銀先物市場における4月14日時点の大口投機筋のポジションは3万554枚のネット買い越しとなり、前週から買い越し幅が837枚拡大しました。買いポジションが1,532枚増加し、売りポジションが695枚増加しました。

銀相場は株価の戻りに連れるように値を戻しましたが、戻り高値を付けた可能性が高まっています。金相場も週末に大きく値を下げるなど、調整基調に入りつつあることもあり、銀相場も目先は調整する可能性がありそうです。

今回は16ドルを超えることができなかったため、いったんは下値を試す動きを想定しておきます。14.75ドルで下げ止まることができるかがポイントになりそうです。

株価が堅調に推移していることは、銀相場を心理的に支える可能性がありますが、それだけで下げ止まれるかは不透明です。むしろ、金相場が調整した場合に連れて下落するリスクを念頭に置いておきたいところです。目先のサポートと考える14.75ドルを割り込むと、直近安値の13.75ドルがサポートになりそうです。

ただし、これを割り込むと、チャート上は3月18日につけたザラ場安値の11.61ドルまでターゲットがないため、注意が必要と考えます。また、反発した場合でも、16ドルちょうど、さらに16.50ドルから17ドルが上値になりそうです。

円建て銀相場は小幅に下げました。徐々に上値が切り下がる展開にあり、いったん調整に向かう可能性があります。まずはサポートを確認したいところです。50円程度で下げ止まれば、反発に可能性は残りそうです。

いずれにしても、ドル建て銀相場の動向を見ながら、押し目買いのタイミングを計ることになりそうです。50円を割り込むと、直近安値の42円水準まで下げる可能性があるため、明確な形で下値確認ができるまでは、安易に押し目を買うことは避けたいところです。

【図表3】シルバー 縦軸:円建てシルバー/グラム(単位:円)
出所:マネックス証券