先週のゴールド:大幅続伸の展開

金相場は大幅続伸となりました。新型コロナウイルスの感染拡大に伴う根強い景気減速懸念を背景に買いが優勢となり、週初の4月6日には1日で2.8%もの大幅な上昇となりました。

その後は下落する場面もありましたが、新型コロナウイルスのパンデミックによる経済的な損害に対抗するため、米連邦準備制度理事会(FRB)が大規模な景気刺激策を発表したことが支援材料となりました。4月10日には一時3月9日以来の高値となる1,695.50ドルを付けています。

世界最大の金上場投資信託(ETF)であるSPDRゴールドトラストの保有高は、4月3日のは978.99トンから、4月9日には994.19トンに増加しました。この水準は13年6月20日の995.35トン以来の高水準です。投資家の金買いの動きがさらに加速していることがわかります。

CFTC(米商品先物取引委員会)が公表するCOMEX金先物市場における4月7日時点の大口投機筋のポジションは24万8942枚のネット買い越しとなり、前週から買い越し幅が9,907枚縮小しました。買いポジションが7,649枚減少し、売りポジションが2,258枚増加しました。

円建て金相場は、ドル建て金相場の上昇を背景に水準を切り上げました。

【図表1】先週のゴールド 縦軸:円建てゴールド/グラム(単位:円)
出所:マネックス証券

今週のゴールド:高値更新を試す展開に

今週のゴールド投資をする上での3つのポイント
・新型コロナウイルスの動向と株価動向
・投資家の金購入拡大の持続性
・円建て金相場は円高リスクに注意

金相場は直近高値を更新できるかに注目しています。先週は節目の1,700ドルをうかがうところまで上昇しましたが、これを超えた場合、ターゲットになるのは3月9日につけた1,702ドルでしょう。これを超えると、さらに上値を追う展開が想定されます。そのためには、投資家が金買いを続ける材料が不可欠でしょう。

先週までは米国を中心に株式市場が安定化しはじめ、米国の主要株価指数の直近安値からの上昇率は27%に達するなど、順調に値を回復する展開にあります。しかし、直近高値からは依然として大きく下落した状態にあり、多くの投資家が痛んだ状態は依然として変わっていないものと思われます。

また、米雇用統計や新規失業保険申請件数などでも確認できるように、新型コロナウイルスの影響で多くの雇用者がレイオフにあっており、今後は雇用情勢の悪化と消費の低迷が懸念されます。

もっとも、失業保険の申請が増えている背景には、米政府による失業者への手当てがあるため、経営側も思い切ったレイオフを行っている面がありそうです。とはいえ、これから発表になる3月の主要経済指標や第1四半期の主要企業の業績は、過去に見たことのないような激しい悪化が想定されます。

これらの数値に驚く必要はありませんが、今後の経済活動の再開や景気回復がいつ始まるかがみえてこないことは、投資家心理をきわめて不安定なものにするでしょう。

このような状況でもあることから、投資家は徐々に金のポジションを積み上げているようです。ワールド・ゴールド・カウンシル(WGC)によると、世界の金上場投資信託(ETF)が価値の裏付けとして保有する金現物の残高が3月末時点で過去最高となりました。

新型コロナウイルスの感染拡大による景気不安を背景に、安全資産である金への流入が続いています。米国など各国の金融緩和策も金の需要を高めており、3ヶ月連続で最高を更新しています。

3月末時点で世界の金ETFが保有する金現物の残高は3,185トンと、前月末から151トンも増加しています。また、ドル建てベースの運用資産残高も過去最高となっています。今後もこのような状況が続くかどうかは、市場環境次第ですが、現状を考慮すれば、この傾向はますます強まりそうです。

FRBが過去最大の資産購入や雇用の回復が見られるまでゼロ金利を維持することなどを約束していることを考慮すれば、今後もドル資金が相当の量で供給されることになります。また、米政府が過去最大級の財政出動を行っており、それらの資金を賄うために巨額の国債を発行することになります。

これらの金融・財政の大胆な政策は、景気の回復過程で大幅な米ドル安につながる可能性があります。景気の回復は相当先になると考えられますが、その過程でこれまでの米ドル不足から米ドルの過剰供給に転換し、急激な米ドル安が進む可能性があると考えられます。

すぐにそのような状況になることは考えにくいと言えますが、将来的には米ドルの価値の著しい減価が金相場の価値を押し上げる可能性を頭の片隅に置いておきたいところです。

短期的には高値を更新できるかに注目しておきます。直近高値の1,702ドルを超えられないとトリプルトップになる可能性がありますので、今週の動きには要注意でしょう。株価は戻してきましたが、そろそろ調整に入ってもおかしくありません。

株価との連動性についても見ておきたいところです。1,650ドルを割り込むと1,600ドル程度までの調整が一気に進みそうです。この動きには注意が必要です。また、1,600ドルを割り込むと、短期的な上昇基調がいったん終了することになります。その場合には、おそらく株価が相応に調整しているものと思われます。引き続き株価動向を注視しておきたいところです。

また、米政府の追加的な経済支援策の動きにも注目しておきます。インフラ投資を目的に、追加的に2兆ドルの財政出動の可能性が示唆されています。この材料に市場がどのように反応するかを確認したいところです。無論、新型コロナウイルスの感染者の増加ペースなどにも引き続き目を配っておきたいところです。

円建て金相場は目先は5,900円を超えるかに注目しておきます。上昇基調が続き、さらに節目の6,000円を超えると、一気に上向くことになりそうです。それにはドル建て金相場の上昇が不可欠です。したがって、まずはドル建て金相場の動向に注目したいところです。

為替相場は円高気味ですので、上値が重くなる可能性もありそうです。そのため、高値更新に失敗し調整した場合には押し目を買うのではなく、まずは下値確認が優先になります。そのうえで、最大で5,500円で下げ止まり、反発に向かえば、その時点で買いを検討したいところです。また、資産運用におけるリスク分散の観点から、長期的な視点で金への投資を継続することも考えたいところです。

プラチナ:反発の展開

プラチナは反発しました。大きく上昇したわけではありませんが、少しずつ値を回復する動きにあり、下値が徐々に固まりつつあります。先週末は748ドルで引けました。

CFTC(米商品先物取引委員会)が公表するNYMEXプラチナ先物市場における4月7日時点の大口投機筋のポジションは1万9021枚のネット買い越しとなり、前週から買い越し幅が827枚縮小しました。買いポジションが492枚減少し、売りポジションが335枚増加しました。

プラチナ相場は3月の株安局面で大きく値を崩し、一時570ドルを割り込むところまで売られました。しかし、その後は株価の戻りに歩調を合わせるように徐々に値を戻しています。

しかし、750ドルが重い状況にあり、株価の戻りに比べるとかなり上値が重い印象もあります。前回解説したように、世界最大のプラチナ生産国である南アフリカを拠点とする世界的なプラチナ生産大手3社が、顧客へのプラチナ供給契約に不可抗力条項を発動し、供給を停止したことなどはほとんど材料視されていないようです。

むしろ、新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、経済活動の停止期間が長期化することで、企業活動が抑制されることから、プラチナ需要が低迷するとの思惑が上値を抑えているように見えます。特に、自動車部品として使用されるプラチナ需要の鈍化は今後より鮮明になりそうであり、プラチナ市場の需給環境の改善は見込みづらそうです。

世界的な自動車の生産・販売台数の落ち込みは、プラチナ相場に暗い影を落としそうです。値動きの面では、節目の700ドルがきわめて重要なサポートであると考えます。これを維持できるかが、今後の方向性を決めることになりそうです。これを維持できれば、850ドルまでの上昇の可能性がありそうです。

もっとも、それ以上の水準に切り上がるには、新型コロナウイルスの問題がある程度みえてこないと難しいでしょう。むしろ、700ドルを再び割り込み、再び大きく下落する可能性もありますので要注意でしょう。

円建てプラチナ相場は2,700円前後で上値を抑えられています。ドル建てプラチナ相場が上値を切り上げる動きにならないかぎり、円建てプラチナ相場の上昇も見込みづらいといえます。したがって、まずは2,700円を超えるかを確認したいところです。2,700円を超えていけば、その流れに乗る形で買いを検討したいところです。

逆に調整に入り、2,500円で下げ止まれば、反発の可能性もでてくるでしょう。ただし、2,500円を割り込むと、下げ圧力が強まる可能性があります。ドル建てプラチナ相場が700ドルを割り込むかを同時に見ておきたいところです。いずれにしても、いまは押し目買いは避け、上昇基調に転じた時に買うというスタンスを維持したいと考えます。

【図表2】プラチナ 縦軸:円建てプラチナ/グラム(単位:円)
出所:マネックス証券

シルバー:大幅反発の展開

シルバーも大幅反発となりました。週初から順調に値を上げ、9日には一時15.53ドルまで上昇する場面がありました。

CFTC(米商品先物取引委員会)が公表するCOMEX銀先物市場における4月7日時点の大口投機筋のポジションは2万9717枚のネット買い越しとなり、前週から買い越し幅が1,161枚縮小しました。買いポジションが579枚減少し、売りポジションが582枚増加しました。

銀相場は株価の順調な回復や、金相場の安定などもあり、水準を切り上げる動きにあります。これまでと同様に、株価との連動性が高まっていることから、目先は株価の動向次第となりそうです。

その株価もリバウンド局面ではありますが、新型コロナウイルスの問題が解決したわけではなく、あくまで一時的なものでしょう。まだ経済や景気への影響が見えない中で、価格水準だけが切り上がると考えるのは、現状からすればまだ時期尚早であるといえます。

株価の上昇が続いた場合には、16ドル程度までの戻りは十分に考えられますが、それ以上となれば、相当高いハードルがあると考えています。ファンダメンタルズ材料も不足しており、多少上げた場合でも、いったんは調整することになりそうです。また、短期的には買われすぎ感も強まっており、これも上値を抑える要因になる可能性がありそうです。

円建て銀相場は続伸しました。56円水準を明確に上抜けると、一気に水準を切り上げ、60円から62円までの上昇につながる可能性がありそうです。ただし、円安基調が転換しつつあることもあり、為替相場が下値を支える可能性は低いのではないかと考えられます。

したがって、まずはドル建て銀相場の動向を見ながら、56円を超えるかを注視したいところです。そのうえで、超えた場合には買いを検討したいところです。一方、50円を割り込むと、再び安値を試す動きになり、44円程度までの下げも想定せざるを得ないでしょう。とにかく、いまは安易に押し目を買うことは避けたいところです。

【図表3】シルバー 縦軸:円建てシルバー/グラム(単位:円)
出所:マネックス証券