先週のゴールド:小幅反落の展開

金相場は小幅に反落しました。ただし、米国の新型コロナウイルスの感染者が急増するなど、経済活動の縮小に伴う景気先行き不安から安全資産としての金需要は根強く、下値は限られています。

新型コロナウイルスのパンデミックを封じ込めるため、世界的に封鎖措置やその他の行動制限が広がる中、最新の米経済指標の内容が相次いで景気悪化への懸念を強めさせるものとなっていることも金の下値を支えました。米国の新規失業保険申請件数が2週連続で過去最高を更新したことや、3月の米雇用統計が大幅に悪化したことも、金買いを後押ししています。3月の米非農業部門就業者数は70万1000人減と、9年半ぶりにマイナスに転じました。

新型コロナウイルスの感染拡大を抑え込むため厳しい措置が取られたことで、企業は打撃を受けており、失業率も4.4%に急伸するなど、雇用情勢に対する不安感が強まっています。金相場は6四半期連続で上昇し、第1四半期は4.6%高となりました。

世界最大の金上場投資信託(ETF)であるSPDRゴールドトラストの保有高は、3月27日の964.66トンから、4月3日には978.99トンに増加しました。この水準は2016年8月5日の980.34トン以来の高水準です。投資家の金買いが再び拡大傾向にあることがうかがえます。

CFTC(米商品先物取引委員会)が公表するCOMEX金先物市場における3月31日時点の大口投機筋のポジションは25万8849枚のネット買い越しとなり、前週から買い越し幅が2万9517枚縮小しました。買いポジションが3万399枚減少し、売りポジションが882枚減少しました。

円建て金相場は、為替相場の円安基調を背景に小幅に上昇しました。

【図表1】先週のゴールド 縦軸:円建てゴールド/グラム(単位:円)
出所:マネックス証券

今週のゴールド:堅調地合いから高値トライへ

今週のゴールド投資をする上での3つのポイント
・新型コロナウイルスの動向と株価の安定化
・低金利の継続や原油相場の反発も支援材料
・円建て金相場は円安が下支えに

金相場は堅調に推移しています。今は次の動きに備える展開に見えます。株式市場が安値圏で推移しており、不安定な状態からなかなか抜け出すことができない中、さすがに大きく下げた後だけに現在は小康状態にあります。

一方で、株価の下落による投資家のマージンコールに備えた現金化の動きに伴い、金が売られる動きは一段落しています。むしろ、投資家は株価の膠着状態の中、金のポジションを増やし始めています。

米連邦準備制度理事会(FRB)によるゼロ金利政策と「無制限」の資産購入の導入により、金利は長期的に低い水準で推移することが半ば確定的になっています。中央銀行はいったん低金利政策や量的緩和策を導入すると、景気や株価が不安定化するのを恐れて、簡単にはその政策を転換することができません。

近年でもFRB議長の「不用意」とも言える発言で、株価が急落する場面がみられています。このような過去の例もあり、低金利状態は長期化し、金の相対的な優位性はますます高まるとみています。

今は新型コロナウイルスの影響で、将来がどのようになるのかが全く見えない不安な状況にあります。直近の米新規失業保険申請件数や3月の米雇用統計の内容を見るまでもなく、企業は雇用を一時的に絞るなど、経済活動が止まった状態にあります。こうなれば、当然のように消費が落ち込み、GDPは想像もできないレベルで落ち込むことはほぼ確実な情勢です。

また、企業業績の予想も発表されるたびに大幅に下方修正されるなど、正確なバリュエーションを把握できない状況にあります。こうなると、投資家は動けなくなります。一方で、一時的に落ち着いたかに見えた世界的なドル資金需給は依然としてひっ迫しているもようであり、為替市場ではドル高基調が続いています。そのような状況の中でも、金相場が高値圏を維持している事実をよく見ておく必要があるでしょう。

新型コロナウイルスの影響で経済が大きく落ち込むことは確定的ですが、それに対してトランプ米政権の大胆な経済政策とFRBによる過去最大級の緩和策は、政策のミスによるさらなる経済の落ち込みは回避するとの強いメッセージであるといえます。

したがって、新型コロナウイルスの感染拡大のペースが鈍化する兆候が見られれば、実際の経済活動の回復を前に株式市場はいち早く反応し、株価は反転する可能性があります。その場合、投資家心理は大きく好転し、余裕資金を保有する投資家は株式の購入を再開するでしょう。

一方で、今回の教訓もあり、投資資金の大半を株式に投入することはないでしょう。むしろ、債券や金に振り向ける意義を再認識し、金市場への資金流入がむしろ増える可能性があります。すでに世界の中銀が大胆な緩和策を実施しており、経済が拡幅基調に入るころには、再び資金が市場にあふれかえることになるでしょう。そうなると、低金利下でのドル安と金相場の上昇が示現することになることは目に見えています。

世界最大の金ETFであるSPRDゴールド・トラストの保有高の推移を見れば、賢明な投資家が金投資を増やしていることが確認できます。繰り返し述べているように、株式を購入する際には、同時に金を保有したほうがリスク分散になります。この重要かつ基本的な投資スタイルを再確認した投資家が増えてきている可能性があります。

多様な資産に分散して投資するポートフォリオ運用では、このように金投資を加えるのが世界の常識です。日本ではまだまだ広がっていないように感じますが、いずれこのような世界の潮流が日本における投資スタイルの主流になっていくことでしょう。

短期的な金相場の動きですが、ひとまず節目の1,600ドルを回復したことで、上向きの展開にあります。直近高値の1,640ドル水準を超えてくると、3月9日につけた1,702ドルを試す動きになる可能性は十分にありそうです。

現時点の米実質金利から計算した金価格の理論値は1,650ドル程度ですので、金相場はもう少し高い水準でもよいといえます。インフレ率は低水準で推移しているため実質金利は低下しづらく、金相場の上昇にはさらなる名目金利の低下が必要になります。名目金利はすでにかなり低くなっていますので、今後の金相場の上昇にはインフレ率の上昇が不可欠といえます。

現在は原油相場が安値圏で推移しているため、インフレ率の上昇は想定しづらい面がありますが、新型コロナウイルスの影響で将来的な物資不足が強まれば、インフレ率が上昇することも想定されます。その場合には、理論的には金相場は上昇しやすくなりますので、今後はこの点にも注目しておきたいところです。

円建て金相場は下げる場面もありましたが、5,500円を維持して反発しています。5,700円を超えると,5900円を試す展開になりそうです。短期的には円安基調もあり、上値を試しやすいと考えられます。

ドル建て金相場が堅調に推移する中、ドル円も下げにくい地合いになりつつありますので、円建て金相場が上昇しやすい組み合わせになっています。前回超えられなかった5,900円を超えると、節目の6,000円を試す可能性もありそうです。6,000円を超えるといよいよ大相場に発展しそうです。すぐにそうなるかはわかりませんが、いずれその方向に行くとみています。

ただし、それ以上に重要なことは、資産運用におけるリスク分散の観点から、長期的な視点で金への投資を継続することでしょう。この点を常に念頭に置きつつ、押し目をしっかりと拾いたいところです。

プラチナ:反落の展開

プラチナは反落しました。先週は一時698ドルまで下げる場面がありましたが、崩れることはなく、一方で上値も重く、狭いレンジでの推移にとどまりました。

CFTC(米商品先物取引委員会)が公表するNYMEXプラチナ先物市場における3月31日時点の大口投機筋のポジションは1万9848枚のネット買い越しとなり、前週から買い越し幅が2,448枚縮小しました。買いポジションが2,156枚減少し、売りポジションが292枚増加しました。

プラチナ相場は売られすぎの水準から値を戻したあとは、レンジでの横ばいの動きにあります。株価も同様の動きになっていることからも、株価動向次第の展開に見えます。したがって、次の明確な方向性が出るときには、株式市場の動きが大きく作用しそうですので、株価動向に要注目といえます。

一方、需給面では、世界最大のプラチナ生産国である南アフリカを拠点とする世界的なプラチナ生産大手3社のアングロ・アメリカン・プラチナム、シバンエ・スティルウォーター、インパラ・プラチナム(インプラッツ)が、顧客へのプラチナ供給契約に不可抗力条項を発動しました。

南ア政府は新型コロナウイルス感染拡大防止のため、3週間の外出禁止措置を実施しています。資源各社もこれに伴い、多くの業務を休止し、鉱山の保守点検などに充てているとしています。また、加工作業も縮小しています。これらの材料で、プラチナ相場は多少は上昇するかと思われましたが、ほとんど材料視されなかった点はかなり衝撃的でした。それだけ、現在の新型コロナウイルスの影響による株価の低迷や需要サイドの低迷への懸念が強いといえそうです。

特に、自動車部品として使用されるプラチナ需要の鈍化は今後より鮮明になりそうです。プラチナが自動車の排気ガス等を抑制する触媒に利用されるディーゼル車が中心の欧州市場は、新型コロナウイルスの影響を直接的に受けています。

ドイツ連邦自動車局(KBA)が発表した乗用車統計によると、3月の新車登録台数は前年同月比37.7%減の21万5119台に急減しました。この数値は、ドイツ統一以降で最大の落ち込みです。企業の時短や外出自粛など新型コロナウイルスの影響で市場がまひ状態に陥っているもようです。

また、3月の生産台数は37%減の28万7900台、輸出台数は32%減の23万4500台で、不調が顕著です。国内向け受注は30%、輸出向けは37%いずれも激減しており、世界的にも需要が落ち込んでいることがわかります。

この結果、第1四半期の生産台数は前年同期比20%減の101万7700台、輸出台数は21%減の77万1300台、新車登録台数は20%減の70万1300台となりました。第2四半期はさらに落ち込むことが想定されますので、プラチナ需要の激減は不可避と考えられます。

このように、現在のプラチナ市場は、ファンダメンタルズ面でのサポート要因はほとんどないと言ってよい状況です。また、価格水準はかなり低いといえますが、一方で世界最大のプラチナ生産国の南アフリカの通貨ランドが対ドルで過去最安値を更新しており、これもドル建てプラチナ相場の重石になっています。

したがって、当面は上値の重い展開が続くことを大前提に見ていくほうが無難でしょう。そのうえで、株価の反発や南アランドの反発などの材料が見られるかを常に注視し、プラチナ相場の反転・上昇のタイミングを逃さないようにしたいところです。戻した場合には、前回もみ合った水準である870ドルから900ドルの水準が重くなりそうです。

円建てプラチナ相場は安値圏での横ばいでの推移となっています。ただし相場としては崩れておらず、次の動きを模索する展開に見えます。現在の水準を維持して下値を固めることができれば、2,700円を超える動きに移行し、上値を試す場面も見られそうです。その場合には、3,000円から3,100円あたりがいったんは重くなりそうです。

いずれにしても、まずは現行水準で下値を固め、上向きになるかを確認し、そのうえで上昇に乗る形で買いを検討したいところです。逆に現行水準を下回った場合には、押し目買いは避け、下値を確認することを優先したいところです。今は反発したところを買うほうがリスクは小さいと考えます。

【図表2】プラチナ 縦軸:円建てプラチナ/グラム(単位:円)
出所:マネックス証券

シルバー:小幅反落の展開

シルバーも小幅に反落しました。ただし、前週末の水準である14.60ドルを高値に、下値は13.77ドルと狭いレンジでの横ばいの動きに終始しました。

CFTC(米商品先物取引委員会)が公表するCOMEX銀先物市場における3月31日時点の大口投機筋のポジションは3万878枚のネット買い越しとなり、前週から買い越し幅が2,809枚縮小しました。買いポジションが6,027枚減少し、売りポジションが3,218枚減少しました。

銀相場は次の動きを探る展開にあるといえます。株式市場と同様の値動きになっていることからも、次の動きは株価の動向次第となりそうです。株式市場は安値圏での膠着状態にありますが、新型コロナウイルスの影響を大きく受けており、次の展開がつかみづらい状況にあります。

ただし、そのような膠着状態が長く続くこともないでしょう。そのため、ひとたび動き出すと、大きな値幅をもって変動する可能性がありそうです。銀相場もその動きに連れる展開が想定されますので、今は金市場以上に株式市場の動向に目を配っておきたいところです。

そのうえで、株価が回復すれば、銀相場の投機色の強さから大きく値を上げる可能性もありそうです。現在のレンジ上限である14.60ドルを明確に上抜いてくると、大幅な上昇になりそうですので、そのような動きになるかに注目しておきます。逆に13.70ドルを下回ると、大きく水準を切り下げることになりますので要注意です。その場合には、株式市場も大きく崩れているものと思われます。

円建て銀相場は小幅上昇しました。ただし、安値圏でのレンジ相場の域を出ていません。まずは、54円を明確に超えるかを確認したいところです。そのような動きになれば、買いを検討したいところです。

一方で下げた場合でも50円で下げ止まれば、反発の可能性は残るでしょう。ただし、その場合でも押し目買いよりも、54円を超えたところを買うほうがより安全でしょう。逆に50円を割り込むと、かなり大きな下げになる可能性がありますので、その場合には安易に押し目を買うことは避けたいところです。

【図表3】シルバー 縦軸:円建てシルバー/グラム(単位:円)
出所:マネックス証券