先週のゴールド:大幅反発の展開

金相場は大幅反発しました。週初から4%超の上昇となりました。米連邦準備制度理事会(FRB)が、新型コロナウイルスの経済的影響を抑え込むために追加の景気刺激策を講じると表明したことで、先週までの下落に対して反転・上昇に転じました。

FRBは3月23日、臨時のFOMC(米連邦公開市場委員会)で、米国債などの資産を「必要な量」買い入れる無制限の量的金融緩和を決定。新型コロナウイルスの感染拡大による「深刻な混乱」を打ち消すため、家計や中小企業などに資金を供給する異例の緊急対策を講じると発表しました。これを受けて、米金利が低下したことから、金に買いが戻りました。

為替市場ではドル安・ユーロ高が進行し、ドル建てで取引される金には割安感からの買いも入りました。また、新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、スイスの複数の金精錬所が生産を停止したとの報道も需給面からの支援材料となったといえます。さらに、米政権による大型経済対策が米議会で可決される見通しとなったことなどを背景に売られる場面がありましたが、高値圏を維持しました。

3月26日には、3月21日までの週の新規失業保険申請件数は新型コロナウイルス感染拡大が直撃し、328万3000件と前週の28万2000件から劇的に増加しました。これにより金が買われ、一時1642.39ドルまで上昇しました。週末の3月27日には反落しましたが、週間ベースの上昇率は2008年以来の大きさになりました。

世界最大の金上場投資信託(ETF)であるSPDRゴールドトラストの保有高は、3月20日の908.18トンから、27日には964.66トンに急増しました。この水準は2016年10月20日の970.17トン以来の高水準です。株価が落ち着いたことや、金相場の上昇で、投資家の買いが戻ってきたことがうかがえます。

CFTC(米商品先物取引委員会)が公表するCOMEX金先物市場における3月24日時点の大口投機筋のポジションは28万8366枚のネット買い越しとなり、前週から買い越し幅が6450枚拡大しました。買いポジションが523枚増加し、売りポジションが5927枚減少しました。

円建て金相場は、ドル建て金相場の反発と下落を背景に大幅反発後やや下落しました。

【図表1】先週のゴールド 縦軸:円建てゴールド/グラム(単位:円)
出所:マネックス証券

今週のゴールド:反発も株価動向に注意

今週のゴールド投資をする上での3つのポイント
・株価の反発基調の持続性に注目
・短期間での急騰による過熱感が上値抑制の可能性も
・円建て金相場は円高基調に注意

金相場は急激に反発しました。トランプ米政権の大胆な経済政策とFRBによる過去最大級の緩和策を背景に、先週は株価が大きく戻しました。この動きに呼応するかのように、金相場は反発しました。

現在の金相場は、リスク資産であるかのように動いています。それまでは、株価が下げたことで株式ポートフォリオの調整が進む中、金へはレバレッジをかけた投資が行われていました。このことから、株価の急落で現金不足に陥った一部の投資家が保有していた金を売ったため、金相場は株価の下落に引っ張られるように下げました。

しかし、株価がやや持ち直したこともあり、金市場に買いが戻ってきました。世界最大の金ETFであるSPRDゴールド・トラストの保有高は、3年半ぶりの高水準に達するなど、強い買い意欲が見てとれます。株価急落時には、株式と同時に金を保有しておいたほうがリスク分散になると再確認した投資家が、金への投資を増やしている可能性がありそうです。

従前より解説しているように、株安の際に金に売りが出る状況は、きわめて危険といえます。リーマン・ショックの際には、株価の大幅な下落がみられる一方で、安全資産である債券と金も売られ、ドルが買われました。前週までの市場では、まさにこのような光景が繰り広げられていました。

しかし、株価もさすがに売られすぎたことや、世界の政府・中銀による大胆かつ過去最大級の政策が矢継ぎ早に繰り出されたことから、株価はいったん底打ちの状況にあります。もちろん、米国株が過去に高値から3割以上下げたケースでは、さらにそこから2割から3割下落するという過去データがありますので、楽観はできません。投資家としては、少なくともそこまでのリスクを念頭に入れたうえで、新型コロナウイルスの感染拡大の沈静化や経済対策等の効果を見極めながら、株価と金相場の動向を見ていくことが肝要です。

リーマン・ショックの際には、金相場がリーディング・インディケーターとなりました。その意味では、株式投資をする際にも金相場の反転・上昇が本物であるかを確認する必要があるでしょう。また、新型コロナウイルスの感染拡大が止まれば、市場センチメントは一気に好転するでしょう。

今回の経済不安や株価下落の元凶が新型コロナウイルスにあることが明白であり、この問題が解決されれば状況は一気に改善します。この点を常に念頭に置いておくことが肝要です。感染者数の伸びの鈍化が確認されれば、市場センチメントはいち早く好転し、実体経済の回復を前に株価は上昇に転じるでしょう。それでも、当面の間はFRBを中心とした中銀は、金融引き締めを行うことはないでしょう。この点からも金相場は下げにくい状況が続くといえます。

先週は1,450ドルを維持できるかがポイントになるとしましたが、まさにその通りにサポートして反発に転じました。しかし、短期的に戻りすぎたこともあり、上値が重くなりやすいといえます。その意味では、目先は1,650ドルを目前にいったんは上値が重くなりそうです。ただし、調整した場合でも、1,585ドル前後でサポートされれば、再び上向くでしょう。

また、現時点の米実質金利から計算した金価格の理論値は1,650ドル程度と考えられます。さらに、安値圏では近年の大口の買い手である中国やロシアの買いが入ることで、下値が支えられることも想定されます。このように、投資家の換金売り以外、金相場が下落すると考えられる材料はいまのところ見当たりません。市場が落ち着きを取り戻せば、金市場への関心は再び高まり、価格推移も堅調なものになりそうです。

一方で、新型コロナウイルスの感染拡大が止まらず、世界的にさらに被害が広がるようであれば将来の経済への懸念が高まり、株式市場が混乱することが想定されます。その場合はまさに「リーマン・ショックの再来」が想起され、金相場も大きく下げる可能性があるでしょう。

まずは1,450ドルを長期的なサポートとして認識していますが、これも下回るようだと、1,400ドル、さらに1,350ドルなどの節目を目指して下げていくことになるでしょう。そのような展開になった場合には、1,200ドルから1,175ドルまで下げる可能性も最大のリスクとして念頭に置いておきたいところです。

円建て金相場は大幅反発しました。ドル建て金相場の急騰を背景に、節目の5,900円目前まで水準を取り戻しました。しかし、直近高値を超えられなかったこともあり、目先は手仕舞い売りが出やすいといえます。ドル円相場が円高に振れていることも上値を抑える材料になります。したがって、ドル建て金相場の上昇に加え、ドル円相場の動きも含め総合的に見ていくことが肝要です。調整した場合でも、5,600円程度で止まり、反発できれば買いを検討したいところです。また繰り返しになりますが、資産運用におけるリスク分散の観点からも、長期的な視点で金への投資を継続したいところです。

プラチナ:大幅反発の展開

プラチナは大幅反発しました。株安基調に歯止めがかかる中、これまで歴史的な暴落相場に陥ったプラチナ相場は急激な戻りを見せました。先週末には611ドルだったプラチナ相場は、3月27日には一時755ドルまで上昇するなど、24%もの急騰となりました。週間ベースでも21%の上昇となり、過去最大の上昇率を記録しました。16日には一時558ドルまで下落し、リーマン・ショック時の安値を下回り、2002年以来の安値を付ける場面もありましたが、さすがに売られすぎだったといえます。

市場では、プラチナの主産地である南アフリカの外出規制による供給不安が相場を押し上げたとみられています。また、同じ白金族系メタルのパラジウムも急伸し、週間ベースで36%超の上昇となるなど、これまでの株価の下落につれて下げていた貴金属全体に買い戻しの動きがみられました。

CFTC(米商品先物取引委員会)が公表するNYMEXプラチナ先物市場における3月24日時点の大口投機筋のポジションは2万2296枚のネット買い越しとなり、前週から買い越し幅が5,351枚縮小しました。買いポジションが4,611枚減少し、売りポジションが740枚増加しました。

プラチナ相場は売られすぎの水準から値を戻してきました。安値から戻したものの、プラチナ市場を取り巻く環境が劇的に改善したわけではなく、あくまで自律反発的な動きである可能性が高いでしょう。そのため、他の貴金属市場や株価動向に目を配りながら、現在の回復基調が続くのかを冷静に見ておく必要がありそうです。また、短期間での急伸により、買われすぎ感が強まっています。

そのため、チャートポイントがある760ドルを超えられないといったんは売られる可能性があります。また、715ドルを下回ると、再び下げ基調に転じるリスクもあります。この点にも注意が必要です。

またプラチナ相場に関しても、最終的には新型コロナウイルスが沈静化し、経済の活動が正常化することが、相場の回復・上昇には不可欠でしょう。それまでの道のりは長いかもしれませんが、一方で世界最大のプラチナ生産国である南アフリカの生産者にとって、現在のプラチナ相場の水準はきわめて低いことも事実でしょう。今後、生産量が低下するようであれば、これが下値を支える材料として意識される可能性もあるでしょう。

今は需要サイドに目が向きがちですが、コモディティは本来は生産者に価格支配力があります。この点も考慮したうえで、今後のプラチナ相場の動向を見ていくようにしたいところです。

円建てプラチナ相場は大幅反発しました。ドル建てプラチナ相場の上昇が寄与しました。今後の動向もドル建てプラチナ相場の動向次第になるでしょう。目先は2,700円前後の水準を維持し、さらに上値を試す素地が出来上がるかに注目しておきます。そのうえで、水準を切り上げていけば、買いを検討したいところです。逆に下げるようであれば、押し目買いは慎重にしたいところです。

現時点ではサポート水準の節目を確認するのが難しい状況です。したがって、まずはドル建てプラチナ相場の反転を待ちたいところです。2,200円を割り込むと、下値が見えないことから、大幅な下げにつながる可能性も否定できません。下値リスクはそれほど大きくないと考えますが、今は反発したところを買う方がリスクは小さいと考えます。

【図表2】プラチナ 縦軸:円建てプラチナ/グラム(単位:円)
出所:マネックス証券

シルバー:大幅反発の展開

シルバーも大幅反発しました。金やプラチナと同様に週明けから急伸しました。3月18日には一時11.61ドルまで下げ、2009年以来の安値を付ける場面がありましたが、そこから3月25日には14.70ドルまで回復するなど、上昇率は26.6%に達しました。ただし、それ以降は週末にかけて上値の重い展開になり、14.47ドルで週の取引を終えました。

CFTC(米商品先物取引委員会)が公表するCOMEX銀先物市場における3月24日時点の大口投機筋のポジションは3万3687枚のネット買い越しとなり、前週から買い越し幅が8,281枚縮小しました。買いポジションが8,138枚減少し、売りポジションが143枚増加しました。

銀相場も大きく値を戻しましたが、売り方の買い戻しが中心とみられ、上記のように戻したあとは上値が重くなっています。銀独自の買い材料がないことや、株式市場が依然として不安定であることも上値を抑えている可能性があります。また、短期間での急激な反発で、買われすぎ感が強まっています。

そのため、15ドルを超えられないと売られやすいといえます。最終的には新型コロナウイルスの感染拡大が止まり、金融市場全体に安心感が戻ってこない限り、銀相場の本格的な反発は見込みづらいでしょう。したがって、今後も慎重に見ていく必要があると考えます。

一方、金/銀レシオは前週には119倍に拡大していましたが、先週末には111倍にまで低下しました。しかし、それでも過去平均から見れば突出した水準であり、金相場に対する銀相場の弱さが目立ちます。金と銀の関係はすでに崩れている可能性が高く、過去のレシオはもはや通用しないといえそうです。

そのため、金相場との連動性は維持されるものの、銀相場独自の値動きを注視したほうが賢明といえそうです。目先は14ドルを割り込むと、再び13ドル台前半の下値を試すことになりそうです。

円建て銀相場も大幅反発となりました。ただし、週半ば以降は上値が重く、さらに円高に押される動きがみられました。ドル建て銀相場に上昇の力がなくなると再び下落する可能性がありますので、安易な押し目買いは避けたほうが賢明といえます。

下げた場合には、42円で下げ止まるかを確認したうえで買いを検討したいところです。逆に55円を超える動きになれば、上昇基調への回帰も期待できます。その場合には、その流れに乗る形で買いを検討したいところです。

【図表3】シルバー 縦軸:円建てシルバー/グラム(単位:円)
出所:マネックス証券