先週のゴールド:大幅反発の展開

金相場は反発しました。新型肺炎の感染拡大で打撃を受けた世界景気の押し上げを目的に、米連邦準備制度理事会(FRB)が3月3日に緊急利下げを実施したことで、2016年6月以来、1日の上昇率として最大を記録しました。金利の低下で、利子を生まない金地金を保有する機会費用が低減したことも買い材料になりました。

その後も、新型肺炎の世界的な拡大をめぐる懸念から安全資産とされる金に対する買いが広がりました。週末には一時1,691.72ドルまで上昇し、2013年1月以来の高値を付ける場面がありました。しかしながら、米国株が急落し、S&P 500は3,000を割り込むなど、投資家がマージンコールに充てる資金を捻出するため、手仕舞い売りを出したことで、高値からは下げて取引を終えました。ただし、1,673.85ドルの高値を支持しております。

この日発表された2月の米雇用統計によると、景気動向を示す非農業部門の就業者数は前月比27万3000人増と、伸びは上方修正された前月の27万3000人増に続いて、好調の目安とされる20万人を上回りました。

失業率は3.5%に低下し、労働市場の底堅さが示されましたが、材料視されませんでした。物価上昇の先行指標として注目される平均時給の伸びは前年同月比3.0%と、3%台を維持しております。

世界最大の金上場投資信託(ETF)であるSPDRゴールドトラストの保有高は、2月28日の934.23トンから、3月6日には955.60トンに小幅増加しました。これは、2016年10月以来の高水準です。株安基調を背景に、投資家は資金をリスク資産から安全資産である金にさらに移しているのがわかります。

CFTC(米商品先物取引委員会)が公表するCOMEX金先物市場における3月3日時点の大口投機筋のポジションは31万9733枚のネット買い越しとなり、前週から1万6132枚減少しました。買いポジションが2万3166枚減少し、売りポジションが7,034枚減少しました。

円建て金相場は、ドル建て金相場の上昇を背景に反発しました。

【図表1】先週のゴールド 縦軸:円建てゴールド/グラム(単位:円)
出所:マネックス証券作成

今週のゴールド:上値トライの展開

今週のゴールド投資をする上での3つのポイント
・世界的な株安に歯止めが掛かるかに注目
・金利低下で金の魅力度は大きく上昇
・円建て金相場は円高の動きがポイントに

金相場は世界的な株安を背景に、再び上昇基調に入っています。新型肺炎の経済や企業業績への影響を懸念する動きがさらに強まり、米国を中心に世界の主要株価指数が連日のように乱高下しています。

新型肺炎の感染拡大は世界的に広がりを見せており、中国以外の国でも感染者数が増え、世界の感染者数が10万人を超えるなど、当初の想定をはるかに超えるペースで増加しています。

このような状況の中、投資家は資金を株式から引き出し、金市場に移す動きを鮮明にしています。現在の金融市場は歴史的な株価下落に見舞われていますが、新型肺炎の終息の兆しが見えるまでは、現在の市場の混乱は沈静化しないものと思われます。

FRBによる利下げも、ウイルスの死滅に効くわけではなく、経済を支えるには限界があるとの見方が主流になっています。3月3日に0.50%ポイントの緊急利下げを決めたものの、その後の株価動向を見る限り、市場も利下げの効果を懐疑的に見ています。

その一方で、米金利市場ではさらに0.50%ポイントの利下げを織り込んでおり、FRBには利下げ余地がないとの見方が強まっています。このように、金融政策に限界が見える中、財政出動により景気悪化に歯止めが掛けられるかがポイントになりそうです。

いずれにしても、現状では金融市場の混乱が早期に沈静化する可能性はないでしょう。また、金利も当面は低いままで維持されることになります。この状況下では、投資家はまず投資資金をリスク資産から引き上げ、安全資産に移します。すでにこの動きは加速しており、投資マネーは株式市場から大量に流出し、金市場に向かっています。結果として金相場が堅調さを維持することになります。

株式市場の混乱はきわめて憂慮されますが、安値で買う好機でもあります。しかし、現在のような混乱期に株式を購入する際には、金も同時に買うことが肝要です。そうすることにより、リスク分散ができることになります。このようなスタンスで金を買うことが、ポートフォリオ運用の入り口になります。

現在のような混乱期には、金に換金売りが出ることもあります。株価の値下がりで現金が不足する投資家が多く出た場合、それまで利益が出ていた金を売却して穴埋めをすることもあります。2月末の下げ局面では、まさにそのような動きがみられたといえます。しかし、このような動きはまだ本格化していません。したがって、今後、株安と金相場の下落が同時に起きたときには要注意です。

目先は1,650ドルが重要なサポートになりそうです。この水準を維持できれば、上昇基調継続と判断できるでしょう。また、現在の米実質金利をベースにした金相場の理論値は1,590ドルにまで上昇しています。米金利の低下が実質金利の低下につながり、金相場の理論値を押し上げているわけです。この点も念頭に入れつつ、押し目買いの好機を逃さないことが重要でしょう。

インド政府筋によると、2月の金輸入量は46トンと、前年同月の77.64トンから41%減少しました。国内価格が過去最高水準まで高騰し、消費が抑えられたことが背景にあります。輸入額は23億6000万ドル。2月前半の消費はまずまずの水準にとどまっていたようですが、半ば以降は価格上昇を受けて消費が落ち込んだもようです。

インドの金先物相場は2月に10グラム当たり4万3788ルピーの高値を記録。19年には25%上昇していました。3月は国内価格が依然高水準で推移するため、輸入は35トンを下回る見通しです。前年同月は93.24トンでした。価格がある程度修正されなければ、消費は回復しないとみられています。

円建て金相場はドル建て金相場が高値をつける中、為替相場が円高基調になっていることで上値が明確に抑えられています。したがって、まずは円高基調が解消されることが、円建て金相場の上昇には不可欠です。円高基調が反転する際には、株式市場が好転している可能性が高く、その場合にドル建て金相場が高値を維持することができるかがポイントになるでしょう。

直近では最近の安値水準である5,500円の大台を維持しています。ここを維持していれば、再び上向く可能性が高まりそうです。今はそのような動きになるのを確認したうえで、買いを検討したいところです。また、資産運用におけるリスク分散の観点からも、長期的な視点で金への投資を継続したいところです。

プラチナ:大幅反発の展開

プラチナは大幅反発しました。米国を中心とした世界的な株安を背景に、プラチナ相場も安値圏でもみ合いが続きました。

しかし、先週末につけた安値の844ドルを維持したことで徐々に下値が固まる中、週末には世界第2位のプラチナ生産大手の南アフリカのアングロ・アメリカン・プラチナム(アムプラッツ)が、先月の爆発事故で加工施設が稼働停止に陥ったことから不可抗力条項の適用を宣言。これに伴い、生産見通しを下方修正したことが買い材料視され、節目の900ドルを回復して引けました。

CFTC(米商品先物取引委員会)が公表するNYMEXプラチナ先物市場における3月3日時点の大口投機筋のポジションは3万4037枚のネット買い越しとなり、前週から買い越し幅が1万6164枚縮小しました。買いポジションが1万4042枚減少し、売りポジションが2,122枚増加しました。

プラチナ相場は安値圏で推移したものの、850ドルを割り込まずに反発したことから、再び上昇に転じる可能性が出てきました。節目の900ドルを明確に超えてくれば、930ドル前後までの上昇が期待できそうです。

南アフリカのプラチナ生産大手アムプラッツは、2020年のプラチナ生産予想を90万オンス下方修正し、従来予想の420万~470万オンスから330万~380万オンスとしました。これにより、需給緩和状態が多少でも解消されれば、相場の下支え要因になる可能性がありそうです。

一方、プラチナの国際調査機関ワールド・プラチナム・インベストメント・カウンシル(WPIC)は、2020年のプラチナ市場について、供給過多の状況が続くとの見通しを示しています。自動車用のプラチナ需要は4年ぶりに回復するとみられているものの、投資需要の落ち込みを相殺するには至らない見通しです。

WPICによると、2020年のプラチナの供給超過幅は11万9000オンスとなる見通しです。2019年は6万5000オンスでした。コロナウイルス感染拡大による影響は含まれていません。WPICは数ヶ月以内の終息を見込んでいるようです。

プラチナは主にディーゼル自動車の排ガス浄化触媒に使用されます。各国で自動車の排ガス規制が強化されていることがプラチナ需要の追い風となり、2020年の自動車用需要は前年比4%増の301万オンスとなる見込みです。一方、投資需要は19年に119万オンスと急増しましたが、20年は63万3000オンスに減少するとみています。このように、プラチナの需給見通しは芳しくありません。

また、ドイツ連邦自動車局(KBA)が発表した乗用車統計によると、2月の新車登録台数は前年同月比10.8%減の23万9943台と低調でした。ハイブリッド車(HV、PHVも含む)の販売が98.1%、電気自動車(EV)が75.8%それぞれ急増しましたが、ガソリン車は22.0%、ディーゼル車は13.4%それぞれ減少しました。

プラチナが原料となる自動車触媒を使用するディーゼル車の減少傾向が顕著であり、これが引き続き需給面でのプラチナ相場の重石になりそうです。

円建てプラチナ相場は続落しました。ドル建てプラチナ相場は上昇しましたが、節目の3,000円まで下げる場面があるなど、円高基調が上値を抑えています。

したがって、まずは円高に歯止めが掛かることが反発の条件になりそうです。そのうえで、3,200円を超える動きになるのを確認したうえで、買いを検討したいところです。今は押し目買いを避けて、上昇に転じるのを待ったほうが賢明であると考えます。

【図表2】プラチナ 縦軸:円建てプラチナ/グラム(単位:円)
出所:マネックス証券作成

シルバー:大幅反発の展開

シルバーも大幅反発となりました。前週末は株安の影響で大きく売られましたが、売られすぎ感が強まる中、重要なサポートだった16.50ドルで辛うじてサポートされたことで反発し、金相場の上昇にもつれる形で値を上げました。

CFTC(米商品先物取引委員会)が公表するCOMEX銀先物市場における3月3日時点の大口投機筋のポジションは4万8303枚のネット買い越しとなり、前週から買い越し幅が2万6490枚縮小しました。買いポジションが2万4920枚減少し、売りポジションが1,570枚増加しました。

銀相場は何とか反発しました。先月末の下げで大きく崩れましたが、何とか17ドル台を回復しました。ただし、基調が転換するには17.50ドル~17.70ドル前後に密集する重要なテクニカル・ポイントを明確に超えることが必要でしょう。

これらの水準を超えるには金相場のさらなる上昇などの後押しがないと難しいでしょう。常に指摘しているように、銀相場独自の材料はないだけに、やはり金相場の動向がすべてといえそうです。もっとも、世界的な株安基調は少なからず銀相場の上値を抑える材料になっているといえそうです。

銀は貴金属の1つであるものの、今回のような歴史的な株安局面になると、工業用需要の側面がクローズアップされ、売られやすくなります。したがって、毎週のように解説しているように、「銀相場は金相場のファンダメンタルズと背景が異なるため、単純に「金買い=銀買い」にはならないことがある」点は常に念頭に置いておきたいところです。

そのうえで、17.70ドルを超える動きになれば、再び直近高値の18ドル台後半を目指す可能性もありそうです。

円建て銀相場は上値の重い展開が続いています。節目の60円は維持していますが、やはり円高基調が上値を抑えているといえます。ドル建て銀相場は底割れを回避して反発しており、円建て銀相場の反転にはやはり円高に歯止めが掛かることが不可欠といえそうです。

今は62円を明確に超えるような動きがみられれば、その時点で買いを検討すればよいでしょう。現時点で押し目買いを行うのはまだリスクがありそうです。基調回復を待つのがより安全であると考えます。

【図表3】シルバー 縦軸:円建てシルバー/グラム(単位:円)
出所:マネックス証券作成