先週のゴールド:急落の展開

金相場は急落しました。週初は新型肺炎の感染が中国以外でも急拡大する中、世界経済の成長に懸念が広がったことで、安全資産としての金への買いが膨らみました。

2月24日には一時2013年1月以来の高値水準となる1,688.66ドルに達しました。新型肺炎の拡大で市場は動揺しており、この日はダウ平均株価が1,000ドル下げ、債券利回りも低下するなど、典型的なリスクオフ相場になりました。

新型肺炎の感染者は、イタリアや韓国、イランで急増。アフガニスタンとイラクでも初めての感染者が出ました。

しかし、2月24日以後は徐々に値を下げたものの、主要中央銀行の利下げ観測が浮上する中、高値圏を維持しました。

米短期金融市場では、FRB(米連邦準備制度理事会)の0.25%利下げが2回分、12月までにECB(欧州中央銀行)の0.10%利下げも織り込まれるなど、市場からの欧米中銀への利下げ圧力が強まったことが支援材料になりました。しかし、週末2月28日に金相場は急落しました。

FRBのパウエル議長が緊急声明を発表し、「景気を下支えするため適切に行動する」と表明し、利下げの可能性を示唆しましたが、株価の下落が止まらず、金には換金売りが出ました。一時1,565.47ドルまで下落した後、1,584.74ドルで取引を終えています。

世界最大の金上場投資信託(ETF)であるSPDRゴールドトラストの保有高は、2月21日の933.94トンから、2月28日には934.23トンに小幅増加しました。2月25日には940.09トンにまで増加しましたが、そこからは減少しています、投資家は金保有量を維持していますが、今後は換金売りが出るかに注目しておきたいところです。

CFTC(米商品先物取引委員会)が公表するCOMEX金先物市場における2月25日時点の大口投機筋のポジションは33万5865枚のネット買い越しとなり、前週から1万7784枚減少しました。買いポジションが1万9010枚減少し、売りポジションが1226枚減少しました。週末にかけて大きく値を下げており、さらに買い越し幅が縮小しているものと思われます。

円建て金相場は、ドル建て金相場の下落と円高基調を背景に大幅安となりました。

【図表1】先週のゴールド 縦軸:円建てゴールド/グラム(単位:円)
出所:マネックス証券作成

今週のゴールド:下値固めの展開に

今週のゴールド投資をする上での3つのポイント
・新型肺炎の影響による株安に歯止めが掛かるかに注目
・投資家の換金売りの動きに注意
・円建て金相場は円高基調で上値の重い展開に

金相場はこれまでの上昇基調がいったん終了した感があります。先週は新型肺炎の経済への影響を懸念する動きから、世界的に株価が急落しました。これまで世界の投資マネーの集積地だった米国株にも売りが出ており、過去最高値から10%を超える下げに見舞われています。

ダウ平均株価は2月12日にザラ場ベースの過去最高値となる2,9568.57ドルをつけていました。そこからわずか2週間で5,000ドル近い下げになっています。投資家の資金がいかに米国株式市場に集中しすぎていたかがわかります。また、今回の株安局面では、米国債への資金流入が強まり、米国債利回りは過去最低水準にまで低下しています。それだけ投資家の資金が集中したことになります。

一方、金利が下がったことで、金利がつかない金市場にも資金が入るかと思われました。しかし、今回は株安を背景に現金が不足した投資家が金を売却している可能性があります。この動き自体は、決して良いものではありません。今のところ、債券はまだ売られていませんので大丈夫でしょうが、債券も売られるようだと、投資マネーが減少していることになります。

このような動きになった場合には、株式と同時に債券や金など安全資産も同時に売られるような事態にならないか、相当の注意が必要になります。これは、2008年の金融危機の際に見られました。今回の新型肺炎の影響がいつまで続くかはわかりませんが、これらの主要市場の動きには細心の注意が必要と考えます。

米国株は大きく下落しましたが、いつどの水準で下げ止まるかはわかりません。水準的には下げ止まってもおかしくないところまで売り込まれたように見えます。

株式市場に落ち着きが戻らないと、金市場も不安定なままとなりそうです。本来であれば、株式と金は別の動きをするものですが、世界的に株式と金を同時に投資する分散ポートフォリオの投資スタイルが拡大しているものと思われ、最近では株価と金が同時に上昇する光景が多く見られます。

これまでの投資ポートフォリオは債券中心で、株式が残りといったイメージでしたが、最近は株式の割合が増える一方、金を必ず取り込む運用スタイルがはやり始めています。つまり、投資家がこのようなスタイルのファンドに投資すれば、株式と同時に金も買われます。

そして、ファンドを換金するまで金投資も継続されることになり、売りが出てきません。このようなフローが今後の金相場を支える可能性があることも理解しておくとよいでしょう。

一方、「相場としての金」の動きを想定すると、まずは1,560ドル前後で下げ止まるかがポイントになります。ここには中期的な上昇トレンドラインがあります。これを割り込むと、次のターゲットは1,525ドルになるでしょう。テクニカル的にはまだ下げ余地がありますので、このあたりまでの調整は念頭に置いておきたいところです。

もっとも、現在の米実質金利をベースにした金相場の理論値は1,530ドル程度です。したがって、上記の1,525ドル前後まで下げると、おおむね底値になりそうです。また、米金利が下げていますので、実質金利はさらに低下しています。そのため、ここからさらに下げると、金相場は金利に対して割安になっていきます。

「歴史的な大相場」はいったん終わりましたが、ここからの下げは理論的には割安感が強まることを念頭に置いておきたいところです。

円建て金相場は為替相場の動きに注意が必要です。ドル建て金相場の下値余地は限られますので、為替相場が円高基調にならなければ、大きな下げにはならないでしょう。6,000円の大台を目前に調整した格好ですが、5,700円から5,600円でのサポート形成が確認できれば、再び上向くでしょう。

前回のコラムで、「短期間で大きく上昇していることから、いったんは利益確定売りが出ることも想定されます」としていましたが、いまのところ指摘通りの動きです。下げましたが、上記の水準での下げ止まりを確認したうえで、押し目買いを検討したいところです。また、資産運用におけるリスク分散の観点からも、長期的な視点で金への投資を継続したいところです。

プラチナ:大幅安の展開

プラチナは大幅安となりました。米国を中心とした株安傾向につれる形で下げ基調が強まり、週末には一時844ドルまで値を下げました。引けは863.59ドルでした。

CFTC(米商品先物取引委員会)が公表するNYMEXプラチナ先物市場における2月25日時点の大口投機筋のポジションは5万201枚のネット買い越しとなり、前週から買い越し幅が1万1414枚縮小しました。買いポジションが8,086枚減少し、売りポジションが3,328枚増加しました。

プラチナ相場は短期間で大きく下げました。値動きを見る限り、株安に連れていることがわかります。先々週の2月19日には1,017ドルの高値を付ける場面もありましたが、わずか1週間で様相が一変しました。

このような動きを見る限り、プラチナ相場は貴金属である一方で、工業用需要がメインであり、株安に連動しやすいことがわかります。平常時は貴金属の側面から金相場に連れることが多いといえますが、今回の歴史的な株安からは逃れることができませんでした。

したがって、今後は株安が止まり、反発が確認されるまでは、プラチナ相場の底打ちからの戻りは難しいといえそうです。まずは米国を中心とした株価動向を見極めることが肝要です。

そのうえで、プラチナ相場自体の値動きが戻り始めるのを待ちたいところです。長期的なトレンドラインも下抜けていますので、当面は安値圏での推移が続くことになりそうです。

また、同じ白金族系メタルのパラジウム相場は、2月27日に2875.50ドルの過去最高値を付けましたが、翌28日には急落しています。パラジウム相場はまだ上昇基調を維持していますが、これも崩れるようだと、プラチナ相場にも影響がありそうです。引き続きパラジウム相場の動向にも注意しておきたいところです。

円建てプラチナ相場も急落しました。ドル建てプラチナ相場の急落と円高基調が押し下げています。これまでのサポートだった3,500円前後を割り込んでおり、さらに安値を更新しています。このような動きになると、まずは下げ止まりを確認するのが先決です。いったん急落すると、回復には時間がかかりそうです。

まずは底値固めの動きを確認したうえで、投資のタイミングを見極めたいところです。3,200円を超える動きになるのを確認したうえで、買いを検討したいところです。

【図表2】プラチナ 縦軸:円建てプラチナ/グラム(単位:円)
出所:マネックス証券作成

シルバー:大幅下落の展開

シルバーも大幅下落となりました。株安基調につれる形で値を下げました。2月24日には一時18.93ドルの高値を付けましたが、そこから大きく下落し、2月28日には一時16.35ドルの安値を付けました。引けは16.66ドルでした。

CFTC(米商品先物取引委員会)が公表するCOMEX銀先物市場における2月25日時点の大口投機筋のポジションは7万4793枚のネット買い越しとなり、前週から買い越し幅が3,084枚縮小しました。買いポジションが450枚減少し、売りポジションが2,634枚増加しました。週末にかけてさらに値を下げていることから、買い越し幅はさらに縮小しているものと思われます。

銀相場は大きく水準を切り下げました。結局は株安につれて下げたといえそうです。銀も貴金属の1つであり、平常時は金相場との連動性が高いのが普通ですが、今回のような歴史的な株安局面になると、工業用需要の側面がクローズアップされ、売られやすくなります。

前回のコラムでは、「高値を更新した場合でも、2019年9月につけた19.64ドルを超えるのはきわめて難しいでしょう」とし、「銀相場は金相場のファンダメンタルズと背景が異なりますので、単純に「金買い=銀買い」にはならないことも併せて理解しておきたいところです」としていました。

今回の下げは、まさに指摘していたことが起きたことになります。今回のような下げが頻繁に起きるわけではありませんが、起きたときには極めて大きな変動になりやすいことも事実です。したがって、今回のようなパターンを念頭に置きながら、今後の銀相場の動向を見ていきたいところです。

テクニカル指標を見ると、売られすぎ感が強まっていますので、株価が戻せばいったんは戻りを試す可能性がありそうです。長期トレンドの16.45ドルを維持できれば、反発の可能性が高まりそうです。まずは株価の下げが落ち着くのを確認したいところです。そのうえで、17.60ドルを回復できれば、上昇基調に戻したと判断できると考えています。

円建て銀相場も急落しました。69円を超えられずに下げに転じ、直近の下値水準である64円も割り込みました。こうなると、まずは下値を固めるのを待つことになります。為替相場も円高基調ですので、これも併せて見ておくことが必要です。

下値固めから反発基調に転じ、64円を回復してからでも買うのは遅くないでしょう。いまは安易な押し目買いは避け、値固めからの反発をじっくり待ちたいところです。

【図表3】シルバー 縦軸:円建てシルバー/グラム(単位:円)
出所:マネックス証券作成