先週のゴールド:大幅続伸の展開

金相場は大幅上昇しました。週初から急伸し、1,600ドル台を回復しました。アップルが新型肺炎の感染拡大の影響について警告したことを受けて、世界経済の低迷に対する懸念が高まり、低リスク資産への逃避がみられました。金相場は上昇し、7年ぶりの高値を付けました。

1,600ドルの水準を上抜けたことで、多くの投資家やトレーダーがポジションを構築し始めたことも、金相場を大きく押し上げました。さらに、新型肺炎拡大による経済への影響を緩和するため、各国中央銀行が金融緩和を実施するとの思惑が強まったことも材料視されました。週末には一時2013年2月13日以来の高値となる1,648.75ドルを付ける場面がありました。

週明け2月24日の市場では1,685ドルを超える水準にまで上昇しており、節目の1,600ドルを超えてわずか1週間で1,700ドルに達しそうな勢いです。

世界最大の金上場投資信託(ETF)であるSPDRゴールドトラストの保有高は、2月14日の923.99トンから、2月21日には933.94トンに増加しました。投資家が金保有量を増やす傾向がこれまで以上に鮮明になっています。新型肺炎の拡大で、投資家のリスクヘッジの動きがさらに加速しているといえます。

CFTC(米商品先物取引委員会)が公表するCOMEX金先物市場における2月18日時点の大口投機筋のポジションは35万3649枚のネット買い越しとなり、前週から4万5675枚増加しました。買いポジションが5万1814枚増加し、売りポジションが6,139枚増加しました。投機筋が買いポジションを大量に積み上げている様子がうかがえます。

円建て金相場は、ドル建て金相場の急伸と円安基調を背景に大幅上昇しました。

【図表1】先週のゴールド 縦軸:円建てゴールド/グラム(単位:円)
出所:マネックス証券作成

今週のゴールド:高値更新の動きが継続

今週のゴールド投資をする上での3つのポイント
・新型肺炎の経済への影響が懸念材料に
・投資家のリスク回避姿勢の継続
・円建て金相場は円安基調もあり上値追いへ

金相場は想像を超えるスピードで上昇しています。その背景には、新型肺炎の経済への影響に対する懸念があります。

つい最近まで市場では、新型肺炎の経済への影響は限定的との見方が大勢を占めていました。そのため、株式市場も一時的に影響を受けるものの、SARSの際のデータを根拠に早期の回復が見込めるとの見方を示す向きが大半を占めていました。

しかし、実際にはSARSとは比較にならないほどの感染者数および死者数となっており、その拡大ペースもきわめて速い状況にあります。どうやら、市場関係者の見方は正しくなかったようです。

それを証明しているのが金相場の上昇でしょう。世界で最も安全とされる資産である金が買われている背景には、現在の新型肺炎のリスクを正しく理解している賢明な投資家がいるからといえます。1,600ドルを超えて、1,700ドルに迫る上昇になっていることからも、今回の金相場の上昇はこれまでとは異質のものであることがわかります。

その意味でも、現在の金相場の上昇は「歴史的な上昇局面」であるといって間違いないでしょう。金相場は年内に1,600ドルを超えるとみていましたが、想定外の新型肺炎の問題が台頭したことで、きわめて速いペースで上昇しています。

今回の金相場の高値がどの水準になるかはわかりませんが、現時点で金を手放す理由はないでしょう。これまで以上に多くの投資家が金市場に参入し始めています。まだピークではないといえそうです。2011年9月には1,920ドルの高値を付ける場面がありましたが、そのような勢いを感じる相場展開です。

これまでも株価が高く、ドルが強い中で金相場は上昇してきました。この構図自体に違和感があったわけですが、それは結局のところ市場参加者が単純に「カネ余り」を背景に、リスク資産も安全資産も同時に買っていたからにすぎません。本来であれば、リスク資産への投資がここまで膨れ上がるような局面ではないのですが、まさに低金利に押し上げられていたといえます。

一方、投資家はリスク資産への投資を進めていました。米国債利回りは低水準で推移するなど、投資マネーは米国債に流入しています。同時に金市場にも資金が流入しており、「株高・金高」の状況が続いてきました。また、最近では、ヘッジファンドなどが利回りを求めてイタリアやギリシャなどのリスクのある国債も買っています。

その結果、これらの債券利回りは米国債の利回りを下回るといった、非常に不思議な状況も見られます。これも「低金利・金余り・利回り追求」の動きの結果です。

しかし、これらの投資戦略は金利が急騰すればすべて終わりになります。そのような事態になった場合には、投資家はあらゆる資産を売却し始めるでしょう。

この動きがすでに始まっているのかを判断するのは極めて難しいといえます。しかし、いずれそのような局面は到来します。その際には、今度は一転して「歴史的な暴落相場」が示現するでしょう。2020年後半から2021年前半をそのタイミングとみていますが、それまでは現在の「チキンレース」についていく動きがまだまだみられそうです。

とはいえ、金に対する投資スタンスは、長期的な視点が重要でしょう。ポートフォリオ運用において金を保有するという意識はますます高まっているように思います。そのため、押し目があれば買われる場面が今後も続きそうです。

株高局面でも株安局面でも関係なく、資産の8%から10%程度を金で保有することで、ポートフォリオの安定が担保されます。相場として金市場を見ることも重要ですが、それ以上に資産として金を見ることが重要です。今回のようなことがあれば、金を保有することも意味を理解することができるでしょう。

今回の新型肺炎の影響で、世界の経済成長率が低迷するとみられています。

国際通貨基金(IMF)のゲオルギエワ専務理事は2月22日声明を発表し、新型肺炎の感染拡大を受け、2020年の世界経済成長率見通しを1月時点から0.1ポイント程度下方修正し、約3.2%にすると明らかにしました。発生源となった中国は0.4ポイント低い5.6%と、1990年の3.9%以来、30年ぶりの低成長に落ち込む見通しです。

新型肺炎が世界経済に及ぼすリスクは、サウジアラビアの首都リヤドで開幕したG20財務相・中央銀行総裁会議の主要議題でした。

専務理事は新型肺炎に関して「不確実性が極めて高く、信頼性のある予測は困難」と指摘。経済的な影響評価は、感染拡大や打撃を受けた中国などがどれだけ早期に回復するか次第で「多くのシナリオが考えられる」としました。

これから徐々に経済指標にも影響が顕在化するでしょう。金市場から目を離さないようにしたいところです。

円建て金相場も上昇基調が続きそうです。すでに6,000円の大台が視野に入っています。ドル建て金相場の上昇に加え、為替相場が円安基調になっており、円建て金相場は上昇しやすい地合いにあります。どの水準が高値になるかはわかりませんが、まずは節目の6,000円を突破できるか確認したいところです。

ポジションを保有している場合には、利を伸ばすことを考えたいところです。ただし、短期間で大きく上昇していることから、いったんは利益確定売りが出ることも想定されます。そのような一時的な動きにつられないようにしたいところです。

一方、現時点で金相場が大きく軟化する理由はあまり見当たりませんので、押し目は逃さずに買いたいところです。また、資産運用におけるリスク分散の観点からも、長期的な視点で金への投資を継続したいところです。

プラチナ:小幅上昇の展開

プラチナは小幅に上昇しました。金相場の上昇を受けて、2月19日には一時1,017ドルまで上昇し、節目の1,000ドルを超える場面がありました。しかし、高値を維持できず、973ドルまで下落して引けました。

CFTC(米商品先物取引委員会)が公表するNYMEXプラチナ先物市場における2月18日時点の大口投機筋のポジションは6万1615枚のネット買い越しとなり、前週から買い越し幅が225枚縮小しました。買いポジションが321枚増加しましたが、売りポジションが546枚増加しました。

プラチナ相場は一時上昇する場面がありましたが、高値水準は続きませんでした。株価が不安定化したことで、プラチナの実需の減退懸念が台頭したことが上値を抑えたといえます。

先週末時点では中期的な上昇トレンドは維持されていますが、965ドルを割り込むと、地合いが変わる可能性があります。今週はこの水準を注視することになります。

株式市場が新型肺炎の影響でかなり不安定になってきていますので、プラチナ売りが加速するようだとこれまでの地合いが一変し、下値を試す可能性が高まるでしょう。その際には、945ドル、930ドル、900ドル、880ドルなどの重要なサポートラインを試すことになりそうです。

一方、同じ白金族系メタルのパラジウム相場は、2月19日に2841.54ドルの過去最高値を付けました。しかし、その後は上値が重くなっており、上昇の勢いがやや低下しています。このような状況が続くようだと、プラチナ相場への影響がありそうです。引き続きパラジウム相場の動向にも注意しておきたいところです。

円建てプラチナ相場は上昇しました。ドル建てプラチナ相場の上昇は限定的でしたが、円安基調が押し上げました。3,500円前後での推移から大きく上放れ、3,700円水準をうかがう展開になっています。ただし、直近高値を超えられずにやや下げているだけに、まずは下値を確認することになりそうです。

押し目を形成した際に、3,600円で下値を固めることができるかを注視します。そのうえで、下値が堅いことが確認されれば、その時点で押し目買いを検討したいところです。ただし、下げ基調が続き、3,500円を割り込んだ場合には、買いを見送り、下値確認を優先するのが良いでしょう。

【図表2】プラチナ 縦軸:円建てプラチナ/グラム(単位:円)
出所:マネックス証券作成

シルバー:大幅続伸の展開

シルバーは大幅続伸しました。金相場の上昇につれる形で値を上げ、週末21日には18.62ドルの高値を付ける場面がありました。

CFTC(米商品先物取引委員会)が公表するCOMEX銀先物市場における2月18日時点の大口投機筋のポジションは7万7877枚のネット買い越しとなり、前週から買い越し幅が1万240枚拡大しました。買いポジションが1万1545枚増加する一方、売りポジションが1,305枚増加しました。

銀相場は大きく水準を切り上げています。週明けの市場でも高値を更新し、1月8日につけた高値の18.84ドルを超える場面があるなど、買い意欲の高まりが確認されます。銀相場は投機的な動きになりやすい傾向がありますが、今は金相場の上昇につれて、かなり勢いのある上昇相場になっています。この地合いがいつまで続くかは不明ですが、いずれにしても、現在の銀相場の上昇の持続性を確認することになりそうです。

高値を更新した場合でも、2019年9月につけた19.64ドルを超えるのはきわめて難しいでしょう。銀相場は金相場のファンダメンタルズと背景が異なりますので、単純に「金買い=銀買い」にはならないことも併せて理解しておきたいところです。

当面は、短期的な上昇基調が継続するかを注視することになります。そのうえで、高値を更新するのか、あるいは17.60ドルを下回り、これまでの上昇トレンドが終了するのかを確認したいところです。

繰り返しですが、銀は金とは異なり、安全資産としての買いが入らないことを考えると、今後金相場が大きく上昇した場合でも、上値は限界的になりそうです。特に株式市場が崩れた場合には、大きく値を下げるリスクもありますので要注意でしょう。下落に転じた場合には、17ドルちょうどから16.50ドルといったサポート水準が意識されそうです。

円建て銀相場は急伸しました。64円から一気に69円をうかがう水準にまで上昇しており、さすがに短期間での上昇幅は大きいといえます。したがって、今後は調整のリスクも念頭に置きながら見ていく必要がありそうです。ロングしている場合には、67円割れで利益確定売りを行うなど、利益を確保することも肝要でしょう。

64円を割り込むような調整になった場合には、いったん買いを見送り、下値を確認したいところです。引き続きドル建て銀相場と為替相場の動きをよく見たうえで判断するようにしたいところです。

【図表3】シルバー 縦軸:円建てシルバー/グラム(単位:円)
出所:マネックス証券作成