モトリーフール米国本社、2020年2月6日投稿記事より

米国の大手通信会社AT&T(NYSE:T)の株は長年にわたり増配を続けてきた結果、1株当たりの年間配当額が2.08ドル、配当利回りは5.5%に達しています。

さらに、次世代通信規格「5G」人気もあり、同社の株価は2019年に37.1%上昇しました。

しかし、2020年に入り株価は下落しています。

激しい競争や多額の設備投資が投資家に懸念されているようですが、今後の見通しはどうでしょうか。

配当性向の高さ

AT&Tは電話やインターネット、そして有料テレビといった安定した事業により、過去35年間にわたり増配を続けてきた実績があるため、同社の配当は一見堅調に見えるかもしれません。

しかし、同社の配当性向(税引後純利益に対する配当の割合)を見ると108.5%に達しており、将来も配当を継続できるのか懸念を抱く投資家もいます。

これに対しライバルであるベライゾン(NYSE:VZ)の配当性向は52.47%です。

戦略的な取り組みと財務負担の増加

20世紀後半に上昇を続けたAT&Tの株価も、ITバブルがはじけた後は下落し、ピーク時の水準は回復していません。

かつて安定したキャッシュフローを生んでいた固定電話は衰退し、2010年代以降は、同社の有料テレビサービスも、台頭してきたネットフリックス、アマゾン、ディズニーなどの動画配信サービスに何百万人もの顧客を奪われています。

ディレクTVをそのピーク時に債務も含め670億ドルで購入したことなどから借り入れも急増し、時価総額2,651億ドルに対し、負債総額は1,849億ドルに達しています。

同社はさらに、戦略的観点から、5Gの構築に数千億ドルを費やしています。アナリストの予測によれば、5Gインフラの構築には2019年から2025年までに世界全体で約1兆ドルの投資が必要になります。

もちろんライバルのベライゾンやTモバイル(NASDAQ:TMUS)もこうしたコスト高に直面してはいますが、配当を支払っているもう1社のベライゾンはAT&Tとは違い、メディア事業の拡大は狙わず、5Gに賭ける戦略を取っています。

これが、時価総額2,400億ドルのベライゾンの負債総額が1,331億ドルにとどまっている理由です。

同社の配当利回りは4.1%とAT&Tより低いものの、配当能力の面ではより安全です。

AT&T株のポテンシャル

一方で、2020年に入って株価が下落したため、投資家の目が再び同社に向く可能性はあります。2019年に株価が上昇したものの、現在の予想株価収益率(PER)は約9.7倍(執筆時点)です。

また、配当額が純利益の額を上回りはしたものの、同社の直近四半期のキャッシュフローは81億9,100万ドルであり、同四半期の配当額37億2,600万ドルを支払うには十分でした。

また直近の年間配当増加率は1.96%でしたが、ウォール街は当社の平均増益率を年4.9%と予想しており、配当性向は徐々に低下していくと考えられます。

従って、同社には配当性向の数字が示すよりも確実な配当支払い能力があるようです。

面白いことに、25年以上増配を続けている企業(いわゆる「配当貴族」)には、増配を続ける傾向があります。

増配を止めると、短期的に、場合によっては長期的に株価が低迷しかねないためです。

かつて配当貴族であった金融大手のバンク・オブ・アメリカ(BAC)や大手複合企業のゼネラル・エレクトリック(GE)も長期的に苦しみました。

AT&Tの経営陣も同じ轍を踏みたくはないでしょう。

5Gネットワークの構築には莫大な費用がかかるため、ベライゾンも Tモバイルも3G、4G時代のような価格戦争をする気はないでしょう。

利用者の5Gへの移行が進めばAT&T、ベライゾンおよびTモバイルは価格決定力を持ち利益を得るはずです。

また、AT&TはディレクTVの売却を検討したことがあり、もし実現すれば赤字部門を整理し、負債を圧縮することも可能です。

AT&T株への投資を検討してみては

配当を守ることがAT&Tにとっては重要であり、5Gの成長性と高利回りの配当が今後もさらに成長を続ける可能性を考えれば、同社の株はインカム重視の投資家には一見すると魅力ある銘柄に見えます。

ですが、かつての安定していた事業が衰退する一方で、5G構築のための投資負担もあり、同社にとって増配路線の維持は負担が大きくなっています。

しかし5Gへの移行は、長らく失っていた価格決定力を取り戻す機会になるかもしれません。

また、ディレクTVなどの資産を売却できれば、債務を適正な水準まで引き下げられるでしょう。

 

転載元:モトリーフール