先週のゴールド:反落の展開

金相場は反落しました。前週末の1月31日には米国株が急落し、投資家のリスク回避姿勢が強まったことで買いが集まり、高値で引けました。

しかし、週明け2月3日の市場では、中国政府が新型コロナウイルスによる肺炎の急拡大が経済へ与える圧力を緩和する措置を取ったことが好感され、投資家がリスク資産に資金を振り向ける動きが強まり、株価が大きく上昇する中、安全資産である金には売りが出ました。

2月5日には一時1,546.90ドルの安値を付ける場面がありました。その後も株価は上昇しましたが、金には安値拾いの買いが入り、下げ渋りました。

世界的な低金利環境と長引く新型肺炎拡大への懸念を受けて、金相場の上昇基調を見込む買いが入ったことで、週末にかけて水準を切り上げました。

2月7日には新型肺炎の拡大による景気失速懸念が台頭したことや世界的な低金利への期待が高まったことで金市場に資金が流入し、値を戻して引けました。ただし、週間ベースでは約1.2%の下落となりました。

米雇用統計では、1月の非農業部門の就業者数が前月比22万5000人増と、市場予想の16万人増を上回るなど堅調な内容でしたが、あまり材料視されませんでした。一方、新型肺炎による死者数は600人を超えており、投資家のリスク選好意欲を圧迫したことが金市場への関心を高めたといえます。

世界最大の金上場投資信託(ETF)であるSPDRゴールドトラストの保有高は、1月31日の903.21トンから2月7日は916.08トンに増加しました。投資家は再び金保有量を増やしており、リスクに備えているようにみえます。

CFTC(米商品先物取引委員会)が公表するCOMEX金先物市場における2月4日時点の大口投機筋のポジションは29万9806枚のネット買い越しとなり、前週から3万286枚減少しました。買いポジションが2万492枚減少し、売りポジションが9,794枚増加しました。株価が急速に反発する中、投機筋が手仕舞い売りと新規売りを進めたことが確認できます。

円建て金相場は小幅に下落したものの、高値圏を維持しました。ドル建て金相場は急騰したものの、ドル円相場が円高基調で推移したことで上値を抑えられました。

【図表1】先週のゴールド 縦軸:円建てゴールド/グラム(単位:円)
出所:マネックス証券作成

今週のゴールド:堅調地合いが続く展開を想定

今週のゴールド投資をする上での3つのポイント
・新型肺炎の影響はこれから
・投資家のリスク回避姿勢は変わらず
・円建て金相場は底堅い、レンジ上抜けで急騰の可能性も

金相場は底堅い展開が続きそうです。中国政府の資金供給拡大の発表は投資家心理を好転させましたが、新型肺炎の拡大懸念は払しょくされていません。先週前半から急速に強まった投資家のリスク選好の姿勢は、先週末の金融市場の動きを見ると一時的なものにとどまった可能性があります。

米雇用統計は堅調な内容でしたが、すでに株価が大きく戻していたこともあり、手仕舞い売りの材料になったといえます。米国株は堅調に推移しているものの、S&P 500の株価収益率(PER)見通しが18.8倍と過去10年平均を大きく超えるなど、割高感も目立っています。

現在進行している昨年第4四半期の企業業績の発表を見る限り、減益見通しが増益に変わりつつあるものの、株価の割高感を払しょくするには至っていません。

一方で、新型肺炎の景気・経済への影響については、多くのエコノミストがきわめて楽観的な見通しを出しています。彼らは、過去のウイルス感染の際の経済指標や株価推移をベースに判断しているもようですが、以前と違って世界における中国の経済規模の大きさは比較になりません。

また、サプライチェーンにおける中国の位置づけは極めて重要であり、それが今回のウイルス感染拡大により完全に麻痺しています。また、航空・旅行業界などのサービス産業では、将来ウイルスが落ち着いた場合でも、失った収益機会を取り戻すことは物理的にできません。

このように考えると、世界的に経済活動が停滞することで、経済規模が縮小せざるを得ず、成長率は確実に低下するでしょう。無論、企業業績に直接的かつ一定の影響があることは間違いありません。これまでの収益見通しは下方修正せざるを得ず、株式市場はまだそれを全く織り込んでいないようです。

このように考えると、ウイルス感染の実体経済や企業業績に与える影響はこれから出てくることになります。大手企業の経営者も決算発表でその影響は不透明としています。今は楽観的な市場も、いずれ調整を強いられるときが来るでしょう。一部の投資家は、このようなリスクを先読みし、金を購入しているようです。

米短期金融市場では、連邦準備制度理事会(FRB)が早ければ7月にも利下げを余儀なくされるとの見方が強まっています。米国を含めた世界の中央銀行・金融当局は低金利政策を維持しており、金利は上昇しづらい状況にあります。

このような状況から、金市場には資金が流入しやすいといえます。投資家のリスク回避姿勢が再び強まる可能性が高く、今後も金相場は高値圏を維持することになるでしょう。

一方、インドの1月の金輸入量は前年同月比48%減の36.26トンと、4ヶ月ぶりの低水準となりました。国内価格が史上最高値近くまで高騰したことで、買い控えの動きが出たとみられています。

このように、新興国では金価格が高くなると、買い手控える傾向があります。しかし、安くなれば買ってきます。このような「バーゲンハンター」の買い興味が安値で控えていることもあり、金価格は下げにくい状況が今後も続くといえます。

中国やロシアは継続的に金を購入しており、売却を行う気配はありません。市場から金を吸収する主体がいることは、金価格を確実に支えることになるでしょう。

また、投資家も金購入を継続しています。ワールド・ゴールド・カウンシル(WGC)によると、1月の金を裏付けとした上場投資信託(ETF)および同類の金融商品への資金フローは31億ドルとなり、トン換算では61トン増でした。

ほぼすべての地域で増加し、保有量は過去最大の2,947トンになりました。金価格は約5%上昇し、ドルベースの金資産額が1ヶ月で8%増加しました。

地域別では、北米の金資産額が1.9%増(29.2トン増)となり、欧州は2.4%増(33.0トン増)でした。一方、アジアは1.4%減(1.2トン減)となり、その他は1.8%増(0.7トン増)でした。合計では2.1%増(61.7トン増)となっています。

国別では、英国の保有高が欧州の44%、世界全体の21%を占めています。また、米国では過去20ヶ月のうち、19ヶ月で資金流入が確認されており、その間に保有高は220%増えています。欧米の金購入の勢いが強いことがわかります。

このように、欧米の投資家の金購入姿勢は堅調です。日本の投資家は逆張りで、安くなったところを買いますが、欧米の投資家は順張り(トレンドフォロー)です。高くなればなるほど買ってきます。

このような投資家が金市場に存在していることも、金相場を押し上げる要因になりそうです。そのため、金融市場が再び不安定になれば、金相場は再び1,600ドルを超える可能性もありそうです。

円建て金相場も底堅い推移を想定しています。5,600円がきわめて重いレジスタンスになっており、これを超えるかどうかがきわめて重要な局面にあります。

無論、ドル建て金相場が急騰すれば、この水準を超えて新たなステージに入るでしょう。その際には、ドル円相場は投資家のリスク回避姿勢から円高基調が強まる可能性がありますが、あまり気にする必要はないでしょう。

一方で、円建て金相場は5,500円台を維持しており、きわめて底堅く推移しています。押し目があれば買い、5,600円を超えた場合にはポジションを維持して利を伸ばしていきたいところです。現時点で金相場そのものが軟化する理由はあまり見当たりません。資産運用におけるリスク分散の観点からも、金のヘッジ機能に着目し、長期的な視点から金への投資を継続したいところです。

プラチナ:反発の展開

プラチナは反発しました。前週までの下落の流れから週初は947ドルの安値をつける場面があったものの、重要なトレンドラインをかろうじて維持したことから反発し、2月6日には987ドルまで上昇する場面がありました。週末は964ドルで引けました。

CFTC(米商品先物取引委員会)が公表するNYMEXプラチナ先物市場における2月4日時点の大口投機筋のポジションは6万2780枚のネット買い越しとなり、前週から買い越し幅が4,816枚縮小しました。買いポジションが4,460枚減少し、売りポジションが356枚増加しました。

プラチナ相場は1月16日に1,041.05ドルの高値を付けて以降、下落基調が強まりましたが、辛うじて950ドル水準で下げ止まっています。その後は戻したものの、987ドルにあるレジスタンスで見事に打たれており、これを上抜けるかがきわめて重要な局面にあります。

金相場の堅調さと、新型肺炎の世界経済への影響に対する懸念から、市場参加者も対応を決めかねているように見えます。いずれにしても、950ドルと990ドルのレンジを抜けたほうに動きやすい地合いにあることを確認したうえで、次の動きを確認したいところです。

レンジを上抜けた場合でも、1,000ドル台を維持できるかも併せて確認したいところです。一方、注意したいのは、これまで市場の注目を集めていたパラジウムが、1月20日に2,582ドルの高値を付けたあと調整し、2月5日に2,498ドルまで戻したものの、再び下げている点です。直近安値の2,250ドルを明確に下抜けると、手仕舞い売りが急加速する可能性がありますので、併せて注意しておきたいところです。

ドイツ連邦自動車局(KBA)が5日発表した乗用車統計によると、2020年1月の新車登録台数は前年同月比7.3%減の24万6300台にとどまりました。

1月はハイブリッド車(HV、PHVも含む)の販売が倍増し、新車全体に占める比率が12.5%に跳ね上がりました。電気自動車(EV)も61.2%急増し、比率は3.0%。これに対し、ガソリン車は17.2%、ディーゼル車は12.4%落ち込み、市場における比率はそれぞれ51.5%、32.6%となりました。

従来の自動車のシェアが着実に低下しており、これはプラチナを含む白金族系メタルの需要減退リスクにつながりやすい点にも注意が必要です。

円建てプラチナ相場は下落基調が止まり、反発しています。辛うじて3,500円を回復しており、大幅安は回避されています。そのため、3,600円を超えると再び3,700円を試す可能性が高まりそうです。もっとも、3,500円を割り込むと下げ基調が強まることになるでしょう。

3,600円を超えたところで買いを検討する一方、3,500円割れでは買いポジションを減らすあるいは解消し、下値を確認したいところです。そのうえで、3,400円で下げ止まれば、再び買いを検討したいと考えます。

【図表2】プラチナ 縦軸:円建てプラチナ/グラム(単位:円)
出所:マネックス証券作成

シルバー:反発の展開

シルバーは反発しました。2月3日には一時18.09ドルまで上昇する場面がありましたが、その後は徐々に上値が重くなりました。ただし、17.50ドルでは下げ止まっており、下値の堅い展開が続きました。

CFTC(米商品先物取引委員会)が公表するCOMEX銀先物市場における2月4日時点の大口投機筋のポジションは6万7803枚のネット買い越しとなり、前週から買い越し幅が4,386枚増加しました。買いポジションが8,559枚減少する一方、売りポジションも1万2945枚減少したことで、買い越し幅が拡大しました。

銀相場は徐々に動きに乏しい展開になってきました。金相場の底堅さもあり、下値は堅いものの、上値を買い上げる材料がなく、徐々に上値は切り下がってきています。

このような展開になると、次にレンジを抜けたほうに大きく動きやすいといえます。今はその動きに備えておくステージといえるでしょう。銀は工業用需要がメインですが、新型肺炎の影響がどの程度あるかは見通しにくい面があります。したがって、まずは連動性が高い金相場の展開を見ながら、銀相場の変動を見ていくことになるでしょう。

今は金相場の底堅さに下値を支えられているものの、米国株の下げが上値を抑えているように見えます。したがって、今後は両方の材料の強弱にも注目しておきたいところです。そのうえで、18ドルを明確に超えると再び18ドル台後半を試す一方、17.50ドルを割り込むと17ドル近辺に急落する可能性がありそうです。テクニカル面でも今は中立にあるだけに、上昇・下落の両面で見ておきたいところです。

円建て銀相場は反発しました。目先は65円を超えるかがポイントになりそうです。超えてくれば、66円、さらに67円を目指す展開が想定されます。65円を明確に超えるのを確認したうえで買いを検討するのがよさそうです。

一方で63円を割り込むと下値が見えなくなりそうです。リスクを考慮すれば、、64円割れでは早めに手仕舞いを行い、下値を確認するようにしたほうが良いでしょう。

今は三角保ち合いの状況ですので、レンジを抜けたほうについていったほうがよさそうです。ドル建て銀相場と為替相場の動きをよく見たうえで判断したいところです。

【図表3】シルバー 縦軸:円建てシルバー/グラム(単位:円)
出所:マネックス証券作成