先週のゴールド:急伸の展開

金相場は上昇しました。新型コロナウイルスによる肺炎の拡大で、経済的低迷に対する懸念が高まり、1月31日に米国株が急落したことで、投資家は安全資産へ逃避しました。31日には1,589.81ドルの高値をつけ、高値引けしました。週中には米経済指標を背景に株価が反発する場面もありました。

また、1月28・29日に開催された米連邦公開市場委員会(FOMC)では、市場の予想通り金融政策は据え置かれました。世界保健機関(WHO)の会見で株価が戻す場面があったものの、世界第2位の経済大国である中国の経済成長に打撃を与えるとの不安感から金融市場では急速に売りが強まり、安全資産としての金や日本円、スイスフランなどへ資金を退避させる動きが強まりました。

世界最大の金上場投資信託(ETF)であるSPDRゴールドトラストの保有高は、1月24日のは900.58トンから1月31日には903.21トンに増加しました。投資家はリスク回避姿勢を強める中、引きづづき金保有量を増やしています。

CFTC(米商品先物取引委員会)が公表するCOMEX金先物市場における1月28日時点の大口投機筋のポジションは33万92枚のネット買い越しとなり、前週から1万2397枚増加しました。買いポジションが1,608枚増加し、売りポジションが1万789枚減少しました。金相場が高値圏で推移する中、売り手の投機筋は買い戻しを強いられています。

円建て金相場は小幅に下落したものの、高値圏を維持しました。ドル建て金相場は急騰したものの、米ドル/円相場が円高基調で推移したことで、円建て金相場は上値を抑えられました。

【図表1】先週のゴールド 縦軸:円建てゴールド/グラム(単位:円)
出所:マネックス証券作成

今週のゴールド:高値更新の展開を想定

今週のゴールド投資をする上での3つのポイント
・新型ウイルスの金融市場への影響
・投資家のリスク回避姿勢の強まりと金需要の増加
・円建て金相場は下値切り上げの展開を想定

金相場は先週末に急伸しました。新型ウイルスの拡大懸念が強まっていることで、前週末に米国株が大きく値を下げるなど、投資家のリスク回避姿勢が急速に強まっています。こうなると、投資家はまずリスク資産である株式の売却を進めることになります。

その一方で、投資資金は米国債や金などの安全資産に向かいやすくなっています。米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長は1月29日のFOMC後の会見で、中国経済だけでなく、米国経済の短期的な減速リスクについても言及しています。市場では当面の間、低金利環境が続き、これが金利を生まない金の魅力を高め、金相場を下支えするとの見方が強まっています。

一方、世界最大の金消費国である中国でのウイルスの拡大懸念で、金需要が停滞するとの見方もあります。また、春節(旧正月)が延長されたことで、中国での金取引が停滞するとの指摘もあります。

しかし、世界の主要市場が混乱に陥る可能性があり、投資家が金市場への関心をこれまで以上に強めると考えておくのが無難でしょう。より注意が必要なのは、投資家が株式だけでなく、債券や金などの安全資産も併せて売却を進めるときでしょう。

今はFRBなど世界の主要中銀が潤沢な資金供給を行っています。そのため、投資家は株式に投資する一方、債券や金に投資する資金があります。このように、今までは「株高・債券高・金高」の状況でしたが、この関係が崩れるときがもっともリスクが高まるときといえます。

投資家が市場の動きに合わせてポートフォリオの組み入れ比率を変更する、いわゆる「リスクパリティ戦略」のもとで、ボラティリティが高まった投資対象を売却する戦略を強めれば、資金流出の動きが強まる可能性があるだけに、そのような展開になったときには相応の注意が必要です。

もっとも、今のところそのような動きは見られていません。しかし、市場は現在のウイルス拡大と景気への影響を懸念するでしょう。今回のウイルス拡大が経済へどれだけ影響を与えるかの試算することは難しく、投資家もまずはリスク回避的な姿勢にならざるを得ません。

しかし、ウイルスの拡大はいずれ止まるでしょう。そこまでは市場は不安定な値動きになると割り切り、金投資を維持することが肝要です。

一方、FRBは1月28・29日に開いたFOMCで、フェデラルファンド(FF)金利の誘導目標を1.50~1.75%に据え置くことを全会一致で決定しました。ただし、銀行の超過準備に適用する付利(IOER)は1.60%とし、5ベーシスポイント(bp)引き上げました。

FRBはFOMC声明で、雇用の伸びは堅調で、失業率は低水準にとどまったとの見方を表明。現行の金融政策が「経済活動の持続的な拡大」を支えるために「適切だと判断する」とし、前回12月のFOMC声明の文言をほぼ踏襲しました。

今回の声明では、中国の湖北省武漢市を発生源とする新型コロナウイルスによる肺炎の感染拡大が及ぼす経済的なリスクについては特に言及はありませんでした。パウエルFRB議長は金融システムに潤沢な準備金を確保するため、引き続きバランスシートを拡大する考えを表明。準備金は1兆5000億ドルが最低水準とし、第2四半期に目標水準を達成するとしました。

今年は米大統領選挙もあり、FRBはできるだけ利上げを遅らせようとするでしょう。一方で、今回の新型ウイルスの感染拡大で景気後退のリスクが高まるようであれば、追加緩和の可能性も浮上しそうです。金融当局にできることは限られるのかもしれませんが、中銀は今後も全力で市場を支えようとすると思われます。

一方で、主要政府もウイルスの感染拡大を防ごうと努力するでしょう。また、必要であれば財政出動もいとわないはずです。このように考えると、新型ウイルスが沈静化すれば、いずれ株価も反発することになるでしょう。

株式市場が安定するには少し時間がかかるかもしれません。このような状況でもあり、当面は金市場への関心は高まらざるを得ません。繰り返すように、「金を保有しておく」という基本的な考え方を忘れず、ポートフォリオの分散効果を考慮しながら、資産の10%前後を金に振り向けておくことを考えたいところです。

また、11月から2月は金を売ってはいけない期間です。今月末までにいったん大きく値を上げる可能性があります。その際には、株価が最も安くなる可能性があります。その際に、金の一部を売却し、それを株式に振り向けることも考えたいところです。その場合でも、長期的な視点で金を一定の割合で保有し続けることが肝要です。

円建て金相場も底堅い推移を想定しています。上記のように、当面はドル建て金相場の堅調さが想定されます。一方で、米ドル/円相場は投資家のリスク回避姿勢から円高基調が強まる可能性があり、これが円建て金相場の上値を抑えることになるでしょう。それでも、基本的には円建て金相場の方向性を決めるのはドル建て金相場の動きです。

金相場そのものが堅調であれば、円建て金相場は5,500円台を維持し、いずれこれまで重かった5,600円を超えてくるでしょう。5,600円を超えるような動きになれば、金相場は歴史的な上昇相場に移行すると考えられます。

現時点で金相場そのものが軟化する理由はあまり見当たりません。資産運用におけるリスク分散の観点からも、金のヘッジ機能に着目し、長期的な視点から金への投資を継続したいところです。

プラチナ:大幅続落の展開

プラチナは大幅下落しました。週初から下げ基調が鮮明となり、上値を切り下げる動きになる中、週末には一時952ドルまで下落しました。週末は956.50ドルで引け、1,000ドルの大台を下回り、軟調な動きになりました。

CFTC(米商品先物取引委員会)が公表するNYMEXプラチナ先物市場における1月28日時点の大口投機筋のポジションは6万7596枚のネット買い越しとなり、前週から205枚買い越し幅が拡大しました。買いポジションが512枚減少し、売りポジションが717枚減少しました。ただし、週末にかけてプラチナ相場の下落基調が鮮明となっており、投機筋が買いポジションを大きく削っている可能性があります。

プラチナ相場は1月16日に1,041.05ドルの高値を付けて以降、ほぼ一貫して上値を削る展開となっています。その結果、節目の1,000ドルを割り込み、下げ基調が鮮明になっています。

重要なサポートの985ドルも割り込んでおり、このまま945ドルを割り込むと、中期的なトレンドを下抜けることになります。すでに売られすぎの水準にまで下げていると考えられますが、今は外部要因がきわめて弱く、買い上がる力はないように見えます。

また、これまで供給懸念を背景に堅調に推移していたパラジウムも、1月20日に2,582ドルの高値を付けたあと、下げ基調が続いています。先週末時点では2,278ドルで引けており、辛うじて基調を維持しています。

ロシア非鉄金属生産大手ノリリスク・ニッケルが1月29日に、自社で運営するグローバル・パラジウム・ファンドが現在の在庫から3トンのパラジウムを市場へ供給し、供給不足を一時的に緩和する方針を発表したことが、パラジウム相場の下落につながっています。

このまま2,275ドルを割り込むようだと、2,000ドル近辺にまで下げる可能性があるだけに、注意が必要と考えます。プラチナ相場は、独自の材料に欠ける面があるだけに、パラジウム相場が崩れたときには注意が必要です。逆に990ドルを回復できれば、再び相場が上向く可能性も出てくるでしょう。最終的には株価動向次第になりそうです。

円建てプラチナ相場は下落基調が続きました。3,600円からさらに3,500円も割り込み、基調は崩れつつあります。ただし、3,500円割れで下げ渋っているようにも見えます。安値で買いが入ってくれば、堅調さを取り戻す可能性もありそうです。今は非常に弱い基調ですが、3,500円前後で下値を固めることができれば、反発の目も出てくるでしょう。

まずはドル建てプラチナ相場の下げ止まりを確認し、さらに円高リスクを考慮したうえで買いを検討したいところです。テクニカル面からも、徐々に買い場が近づいている可能性がありそうです。

【図表2】プラチナ 縦軸:円建てプラチナ/グラム(単位:円)
出所:マネックス証券作成

シルバー:横ばいでの推移

シルバーはほぼ横ばいでの推移でした。1月27日には一時18.32ドルまで上昇する場面がありましたが、その後は反発し、週末は18.03ドルと節目の18ドル台を維持して引けました。

CFTC(米商品先物取引委員会)が公表するCOMEX銀先物市場における1月28日時点の大口投機筋のポジションは6万3417枚のネット買い越しとなり、前週から5,458枚買い越し幅が減少しました。買いポジションが3,507枚減少し、売りポジションが1,951枚増加しました。ただし、週末にかけて銀相場が急伸しており、投機筋が買いポジションを拡大させている可能性があります。

銀相場は乱高下しながらも、17.40ドルのサポートを維持して反発しています。金相場の上昇が大きく影響しているように見えます。銀は工業用需要場メインですが、米国株が急落したにもかかわらず、銀相場が上昇していることを考慮すれば、下値は堅いように見えます。

これで18.10ドルを超えるようだと、テクニカル面でも上げやすくなりそうです。今後も新型ウイルスの影響を受ける可能性がきわめて高いといえますが、金相場の動向に注意しながら下値の堅さを確認し、上値を抜けるかを見極めたいところです。逆に18ドルを割り込むようだと、これまでのレンジが一段切り下がり、17ドルを目指す可能性が高まるだけに、注意が必要と考えます。

円建て銀相場は続落しました。ドル建て銀相場は横ばいだったことから、下落は円高の影響が大きかったといえます。今後も円高は上値を抑える要因になりますが、ドル建て銀相場が堅調さを維持すれば、65円を回復し、再び上値を試す展開になりそうです。

しかし、64円を割り込むようだと、下げ圧力が強まることになりそうです。その場合には、買いポジションは手仕舞いし、底値を見極めたいところです。

【図表3】シルバー 縦軸:円建てシルバー/グラム(単位:円)
出所:マネックス証券作成