先週のゴールド:上昇の展開

金相場は上昇しました。週初は一時2週間ぶりの高値を付けたことで、利益確定の売りが出たが、中国での新型コロナウイルスによる肺炎の拡大への懸念から株価が下落したことで、金の下げ幅は限定されました。その後は新型コロナウイルスへの懸念がいったん後退し、リスク選好意欲が回復したことや、ドル指数が対主要通貨で上昇したことで、上値が重くなりました。

しかし、1月23日にはウイルスによる肺炎の拡大や世界経済への影響に対する懸念が強まり、投資家のリスク選好意欲が減退したことで、安全資産とされる金の需要が高まりました。週末1月24日に一時、今月8日以来の高値となる1,575.03まで買われました。米10年債利回りが一時2週間ぶりの低水準となったことも金相場を支えました。

世界最大の金上場投資信託(ETF)であるSPDRゴールドトラストの保有高は、1月17日の898.82トンから、24日には900.58トンに増加しました。投資家はリスク回避姿勢の中で金保有量を増やしているようです。

CFTC(米商品先物取引委員会)が公表するCOMEX金先物市場における1月21日時点の大口投機筋のポジションは31万7695枚のネット買い越しとなり、前週から1,540枚減少しました。買いポジションが2,016枚減少し、売りポジションが476枚減少しました。

金相場の上値の重さから手仕舞い売りが入る一方、売り方の買い戻しも入っています。しかし、週末にかけて金相場が上昇しており、投機筋が買い姿勢を強めているかに注目したいところです。

円建て金相場は下落しました。ドル建て金相場は高値圏を維持しましたが、米ドル/円相場が円高基調で推移したことで上値を抑えられました。

【図表1】先週のゴールド 縦軸:円建てゴールド/グラム(単位:円)
出所:マネックス証券作成

今週のゴールド:高値圏を維持する展開を想定

今週のゴールド投資をする上での3つのポイント
・株価調整に対するリスクヘッジ需要の増加
・FRBによる低金利政策の継続
・円建て金相場は下値の堅い展開を想定

金相場は株式市場の不安定さを背景に、再び買われやすい地合いにあります。新型コロナウイルスの被害が世界的に拡大しているとの報道が連日のようになされており、これを受けて世界経済が停滞するとの見方から、株式市場が変調をきたす可能性が高まっているようです。

投資家は株式ポジションを縮小する動きを加速させており、これらの資金が金市場に流入する可能性が高いといえます。投資家のリスク回避姿勢の強まりで、債券市場の資金流入が増えており、金利が低下していることも金利がつかない金相場には優位に働きやすいといえます。

ウイルスが発生した中国では、1月24日に春節(旧正月)を向かえ、多くの国民が日本を中心に世界に出かけており、これが感染拡大の懸念につながってます。実際にウイルスは世界中に拡大を見せ緊張感が高まっています。ウイルスの収束には時間がかかる可能性が高く、当面はこの材料が金融市場の最大の材料になりそうです。

米連邦準備制度理事会(FRB)は1月28・29日に連邦公開市場委員会(FOMC)を開催します。今年は利上げはないとの前提で金融市場は動いており、FRBもこの見方に合わせるように政策を維持する可能性が高いと見られています。

トランプ大統領は1月22日、「ドルは非常に強く、金利を下げるべきだ」と発言し、米国の輸出競争力に不利になるドル高を是正するため、FRBに改めて政策金利の引き下げを要求しました。さらに、「FRBが行った利上げは大間違い」と断じた上で、「金融引き締めがなければ、米成長率は4%近くになっていた」と主張しています。

また、連邦政府債務が膨らんでいることを念頭に、「国債借り換えの費用を抑えるためにも利下げを期待している」としています。今年は大統領選挙も控えており、トランプ大統領は今後もFRBに対して利下げを要求し続けるでしょう。このような状況からも、少なくとも利上げは見送られる可能性が高いと考えられ、これは金相場の下支え材料になるでしょう。

一方、中国黄金協会によると、2019年の中国の金消費量は3年ぶりに減少したもようです。高価格と景気鈍化が購入減につながったとみられています。

中国は世界最大の金市場です。中国黄金協会は、2019年の金消費量が1,002.8トンと、前年比12.9%減少したとしています。経済に対する下振れ圧力と、下半期の金価格の上昇が押し下げ要因としています。

これらから、中国は金相場が高値水準で推移しているときは買い姿勢を弱めることがわかります。逆に言えば、金相場が下げると買い姿勢を強めるため、これが金相場の下値を支えることになります。このような「バーゲン・ハンター」の潜在的な買い意欲が下値を支えることになるでしょう。

このような状況から、ポートフォリオに金を含めながら運用することは、リスク分散の観点から非常に重要であると考えられます。現在の市場環境では、理論的には資産の8%から10%前後の割合で金を保有するのが理想的であると考えられます。一定の資金は金に確実に配分しておきたいところです。

円建て金相場も堅調な推移を想定しておきます。為替相場は投資家のリスク回避姿勢からも円高基調になっています。この点は、円建て金相場の上値を抑える要因になりますが、一方でドル建て相場が上昇しやすい地合いにあります。ドル建て金相場が堅調さを維持していれば、多少の円高を気にする必要はないといえます。

円建て金相場は5,500円前後を維持できれば、買いポジションを維持したいと考えます。そのうえで、5,600円の大台を再び突破すれば、さらに上値を試すことになるでしょう。もっとも、5,500円を割り込んだ場合でも、5,400円を維持できれば基調は維持されていると判断してよさそうです。

それ以上に、金には株式投資のヘッジ機能があることを忘れずに、短期的な値動きに振り回されないようにしたいところです。やはり長期的な視点を維持し、資産の一部を金で保有するとの考え方を重視したいところです。

プラチナ:下落の展開

プラチナは下落しました。週初の1月20日には一時1,029.22ドルまで上昇する場面もありましたが、株価が調整したこともあり、前週16日につけた高値の1,041.05ドルを超えることができませんでした。ただし、週末は,1001.50ドルで引け、1,000ドルの大台を辛うじて維持しました。

CFTC(米商品先物取引委員会)が公表するNYMEXプラチナ先物市場における1月21日時点の大口投機筋のポジションは6万7391枚のネット買い越しとなり、前週から2,866枚拡大しました。買いポジションが1,485枚増加し、売りポジションが1,381枚減少しました。週末にかけてプラチナ相場が下落しており、投機筋の売りが出ている可能性がありそうです。

プラチナ相場は辛うじて1,000ドルの大台を維持しています。プラチナ相場の上昇のきっかけになったのが同じ白金族系メタルのパラジウムですが、そのパラジウムも1月20日に2,582ドルの高値を付けた後はやや上値が重くなっています。

前週は2,380ドル前後を下値に底堅い動きが続いていますので、トレンドが変わったわけではありませんが、これまでの需給ひっ迫を背景とした上昇に一服感がみられるようだと、プラチナ市場にも多少の影響はありそうです。

プラチナは985ドル前後に重要なサポートが控えており、これを割り込むような状況になれば、950ドル程度までの調整となる可能性が高そうです。上昇トレンドが維持できるかを注視しておきたいところです。逆に買いの勢いが戻ってきた場合には、1,020ドルが重要なポイントになりそうです。終値ベースでこの水準を超えてくると、再び投資マネーが流入しやすくなると考えられます。

材料面では特段のものはありません。ユーロ圏経済の上向き期待が高まってきており、これ自体はプラチナ相場にはポジティブでしょう。

ただし、金のところでも触れたように、新型ウイルスの拡大懸念の影響で、中国経済の停滞リスクが高まってきています。これが世界経済の後退への影響の拡大につながるようだと、プラチナ需要の減退懸念の高まりにつながり、相場が下向きに転じる可能性もあります。新型ウイルスの状況には引き続き注目しておく必要がありそうです。

円建てプラチナ相場は3,700円の高値を超えたところから調整気味です。3,600円を維持しており、基調は崩れていませんが、これを下回ると下げ足が早まる可能性もありそうです。その場合には、いったん買いポジションを手仕舞いしたいところです。

もっとも、3,500円までの下げで止まれば、上昇基調継続と判断できるため、その段階で押し目買いを検討することができそうです。ただし、3,500円も割り込むようだと、下値リスクがさらに高まりそうです。その場合には、完全に下げ止まったのを確認できるまで状況を見極めたほうがよさそうです。

円高リスクもありますので、ドル建てプラチナ相場がしっかりとした動きになることが、円建てプラチナ相場の上昇の条件であることも再確認しておきたいところです。

【図表2】プラチナ 縦軸:円建てプラチナ/グラム(単位:円)
出所:マネックス証券作成

シルバー:小幅反発の展開

シルバーは小幅に反発しました。1月23日には17.58ドルの安値を付ける場面がありましたが、週末24日に金相場が上昇したことで値を上げ、週末は18.08ドルと、18ドルの大台を回復して引けました。

CFTC(米商品先物取引委員会)が公表するCOMEX金先物市場における1月21日時点の大口投機筋のポジションは6万8875枚のネット買い越しとなり、前週から1,502枚拡大しました。買いポジションが1,618枚縮小し、売りポジションが3,120枚減少しました。銀相場が高値圏を維持しており、投機筋がさらに買いポジションを拡大している可能性があります。

銀相場は引き続き金相場次第に展開になるでしょう。1月8日に18.84ドルの高値を付けた後は17.60ドルと18.15ドルのレンジ相場に入っています。

新型ウイルスの拡大懸念を背景に金は安全資産として買われやすいものの、銀にはそのような役割がないことから、価格変動に格差は見られやすい状況です。したがって、金相場がこのような理由で上昇した場合でも、銀相場が連れて上昇しても上値は限定的になりそうです。

明確な上昇基調に回帰するには、現在のレンジ上限の18.15ドルを明確に上抜き、さらに18.40ドルを上抜くことが必要でしょう。そうなれば、投機筋の買いなども入りやすくなり、一段高となる可能性も高まりそうです。

逆にレンジ下限の17.60ドルを下回り、さらに17.50ドルを割り込むと、目先のトレンドが崩れることになりそうです。17.35ドルには長期の上昇トレンドラインも控えており、これも割り込むようだと、いったんは上昇トレンドが終了したと判断することになりそうです。

銀独自の材料に欠けるだけに、金相場の値動きを注視しつつ、銀相場独自の値動きに注目しておきたいところです。

円建て銀相場は下落しました。66円を高値に急落していますが、円高の影響が大きくなっているようです。このような円高局面における円建て銀相場の上昇には、ドル建て銀相場の上昇が不可欠となります。

65円を明確に回復できれば、再び上値を試す展開に戻すことができますが、65円を割り込むといったんは下げ相場になりそうです。その場合に、今回の上昇基調の起点となった63円まで調整することも想定されます。ここで下げ止まれば、再び反発する可能性がありそうですが、まずはそのような展開になるかを見極めたいところです。

したがって、65円を維持しているうちは買いポジションは維持し、割り込んだ場合にはいったん手仕舞いして、底値を見極めるのが賢明でしょう。無論、65円を維持して上向けば、ポジションは維持して利益を伸ばすことを考えたいところです。

【図表3】シルバー 縦軸:円建てシルバー/グラム(単位:円)
出所:マネックス証券作成