先週のゴールド:小幅下落の展開

金相場は小幅に下落しました。週初は米国と中国による貿易協議「第1段階の合意」の署名が迫っていることや、中東情勢の緊張緩和の兆候を受けてリスクオンムードが強まり、安全資産とされる金の需要が減退するとの見方から下落し、1月14日には1,535.63ドルまで下げました。

1月15日には米中貿易協議において「第1段階」の合意文書への署名が行われ、その詳細が明らかになりました。米政府は一部中国産品に対する関税を維持したため、貿易紛争をめぐる投資家らの懸念を和らげることはできなかったとの判断から金相場の下値は支えられました。

週末1月17日には20日のキング牧師生誕記念日の米国祝日に伴う3連休を控えて、ポジション調整の買い戻しが入りました。ただし、週間ベースでは6週間ぶりの下落となりました。

世界最大の金上場投資信託(ETF)であるSPDRゴールドトラストの保有高は、1月10日の874.52トンから、1月17日には898.82トンに増加しました。株価が高値を更新する中でも、投資家は金保有量を再び増やし始めています。

CFTC(米商品先物取引委員会)が公表するCOMEX金先物市場における1月14日時点の大口投機筋のポジションは31万9235枚のネット買い越しとなり、前週から3,056枚減少しました。買いポジションが6,671枚減少し、売りポジションが3,615枚減少しました。金相場の上値の重さから手仕舞い売りが入る一方、売り方の買い戻しも入っています。

円建て金相場は上昇しました。ドル建て金相場は小幅に下げましたが、米ドル/円相場が円安基調で推移したことで高値圏を維持しました。

【図表1】先週のゴールド 縦軸:円建てゴールド/グラム(単位:円)
出所:マネックス証券作成

今週のゴールド:高値圏を維持する展開を想定

今週のゴールド投資をする上での3つのポイント
・株高に対するリスクヘッジのニーズ
・FRBによる低金利政策の継続
・円建て金相場も堅調な推移を想定

金相場は1月16日に1,610.90ドルの高値を付けた後は、一服感があります。材料面でも相場水準を押し上げるものが徐々に見当たらなくなっています。米イランの緊張が急速に和らぐ一方、米中貿易交渉の第1段階の合意に関する署名が行われたことで、目先の不安材料はいったん沈静化した格好です。

現時点で見えているものであえて挙げるとすれば、ブレグジットが1月31日に迫っていることぐらいでしょう。完全な離脱に至るまでの交渉が今後も続きますが、基本的には1月31日をもって英国はEUから離脱します。

2016年6月に実施された国民投票の結果、英国民は離脱を選択したわけですが、それ以降の混乱にようやく終止符が打たれます。これにより、金融市場の不透明感の一部は払しょくされることになりそうです。

とはいえ、政治的、地政学的、経済的な懸念が世界的に広がっていることや、通貨の安い国では安全な資金逃避先を求める買い意欲は根強く、金買いへの関心は依然として持続しています。この傾向は今後も変わらないでしょう。

米国株が過去最高値を更新する中でも、金相場は堅調さを維持しています。これまでであれば、「株高=金利上昇=債券売り=金売り」の構図でしたが、いまはそのようなパターンになっていません。

その背景には、投資家の債券や金に対するヘッジニーズがあるからでしょう。株価は堅調に推移していますが、最近ではリスク分散のため多くの投資先に資金を振り向けた形のファンドも販売されています。

このようなファンドでは、債券に15%から30%程度、金に8%から10%程度の資金を配分するものがあります。株式投資と同時にこれらの安全資産への投資を行うことから、主要な投資対象の価格が同時に上昇することになります。これは、これまであまり見られなかった事象でしょう。これまでの常識を疑ってみることも必要といえます。

このような状況になった一因には、米金融当局による緩和的な姿勢が大きく寄与していることはほぼ間違いのないところでしょう。また、現在の株高基調の継続についても、米連邦準備制度理事会(FRB)の緩和策が大きく寄与していることは言うまでもないはずです。この点からも、市場の関心は再び米国の金融政策とトランプ米政権の動向に向かわざるを得ないといえます。

1月28・29日には米連邦公開市場委員会(FOMC)が開催されます。金融政策には変更はないと考えられますが、今後の金融政策に対する考え方について、よく見ておくことが肝要です。

前回のFOMCでは、今年は利上げをせず、昨年の3回の利下げの効果を見極める姿勢を鮮明にしました。この姿勢が継続される限り、緩和的姿勢も維持され、これがあらゆる資産価格を支えることになるでしょう。

一部には「市場に流入する潤沢な資金が主要な資産価格を押し上げており、いまはバブルになっている」との声も聞かれますが、過去のバブルに比べるとフェアバリューとの乖離はあまり大きくありません。バブルと呼ぶには程遠い状態であることを認識しておく必要があるでしょう。

これらの状況から、今後も金相場は高値圏を維持しながら、上値をうかがう展開が続きそうです。株高基調が継続する中では、上値も重くなりそうですが、下値では各国政府・中銀の買いが入りやすく、これが下値をしっかりと支える構図にあります。そう簡単には崩れないと考えておいたほうがよさそうです。

もっとも、金はリスク分散の観点から、常に保有することを検討したいところです。もっとも、今は長期的なトレンドも維持されていますので、高値にあるという理由で金を売却する意味はないでしょう。

また、本連載で繰り返してきたように、少なくとも11月から2月は金を売ってはいけない期間です。結果的に、11月に買っておけば、過去のデータ通りに相応の収益を上げることができたことになります。

いずれにしても、目先の変動に振り回されず、まずはしっかりと保有しておくことを優先したいところです。現在の市場環境では、理論的には資産の10%前後の割合で金を保有するのが理想的でしょう。一定の資金は金に確実に配分しておきたいところです。

円建て金相場も堅調な推移を想定しておきます。為替相場も円安基調が続いており、これも高値圏での維持を支えるでしょう。ドル建て金相場は伸び悩む可能性もありますが、下値も堅いことから、円建て金相場は5,500円前後で下値を固めつつ、5,600円の大台を再び突破できれば、新たな価格水準に切り上げていく可能性がありそうです。

繰り返すように、金には株式投資のヘッジ機能があります。長期的な視点を重視しながら、資産の一部を金で保有するようにしたいところです。

プラチナ:急伸の展開

プラチナは高値を更新しました。同じ白金族系メタルのパラジウムが高値を更新した動きに連れる形で、1月16日には一時1,041.05ドルまで値を上げました。週末は1,018ドルで引け、1,000ドルの大台を維持しました。

CFTC(米商品先物取引委員会)が公表するNYMEXプラチナ先物市場における1月14日時点の大口投機筋のポジションは6万4525枚のネット買い越しとなり、前週から2,244枚拡大しました。買いポジションが2,883枚増加し、売りポジションが639枚増加しました。プラチナ相場の上昇に伴い、トレンドを重視する投機家は買いを進める一方、割高と判断する向きは高値とみて売りを出しているのがわかります。

プラチナ相場はとうとう1,000ドルの大台を超えました。独自の材料があったわけではありませんが、上昇基調を鮮明にしています。

その背景には、やはりパラジウムの高値更新の動きがあるといえるでしょう。パラジウムは需給ひっ迫が伝えられており、これが価格を押し上げているもようです。

パラジウムは週を通して上昇し、1月17日にも一時2,500ドルの節目を初めて突破し、最高値となる2,537.06ドルを付けました。供給不足に加え、世界経済が危機を脱しつつあるとの見方が相場を押し上げているようです。昨年5月には1,263ドルの安値を付けていましたが、そこから2倍もの上昇になったということです。

しかし、チャートの形をみると、単に需給ひっ迫だけでここまで上げてきたようには見えません。相応の投機資金が流入していることは間違いないでしょう。

したがって、このような相場は崩れると大きく下げることも少なくありません。その意味では、パラジウムが高値から下落に転じた際には、プラチナ相場もつれて下落する可能性がありますので要注意です。

もっとも、需給ひっ迫を背景に買われる相場は、どこが高値になるかは全く見当がつきません。そのため、下げ始めるまでは値動きについていくしかないでしょう。そのうえで、リスクがあることを十分に認識しながら、上昇トレンドについていくことが肝要です。

一方、欧州自動車工業会(ACEA)が発表した2019年のEUの新車販売台数(マルタを除く27ヶ国、乗用車)は、前年比1.2%増の1,534万188台でした。2019年前半は前年9月の乗用車等の国際調和排出ガス・燃費試験法(WLTP)導入に伴う需要低迷が続きましたが、第4四半期は持ち直し、6年連続でプラスとなりました。

ドイツが5.0%増、フランスが1.9%増、イタリアが0.3%増となっています。一方、スペインは4.8%減、英国は2.4%減でした。

2019年12月単月のEUの販売台数は、前年同月比21.7%増の121万5076台と、4ヶ月連続でプラスでした。エコカーの優遇制度見直しを2020年に控えた駆け込み需要もあり、12月としては過去最多となっています。このようなデータがプラチナ相場をどの程度押し上げるかは不透明ですが、少なくともネガティブな材料ではなくなりそうです。

相場はいったん上向くと、これまでの弱材料を見るよりも、強材料を探そうとします。そして、現在の上昇相場を肯定しようとします。

プラチナ相場はそのようなサイクルに入ったかどうかはまだ判断できませんが、少なくとも1,000ドルの大台を維持していれば、そのような機運が高まることは十分に考えられるでしょう。したがって、今後の展開は、節目の1,000ドルでサポートされるかに注目することになるでしょう。短期的には買われすぎ感が強まっており、調整リスクもありますが、直近高値を超えたことで地合いは好転すると考えられます。

円建てプラチナ相場は高値圏を維持しました。3,500円から3,600円、さらに3,700円と上値を大きく切り上げています。円安基調も押し上げにつながっています。上げ方が急であることから、警戒しながらの対処が肝要です。

もっとも、下げ始めるまでは保有し続けるのが得策です。少なくとも、3,500円まではポジションは維持したいところです。その一方で、高値を更新した場合には、徐々に利益確定売りも入れていきたいところです。しばらくは激しい値動きになりそうですので、十分な注意が必要です。

【図表2】プラチナ 縦軸:円建てプラチナ/グラム(単位:円)
出所:マネックス証券作成

シルバー:小幅安の展開

シルバーは小幅に下落しました。金相場に明確な動きがなかったことから、方向性を見出しにくい展開でした。週末は17.99ドルと、18ドルの大台をわずかに下回って引けました。

CFTC(米商品先物取引委員会)が公表するCOMEX銀先物市場における1月14日時点の大口投機筋のポジションは6万7373枚のネット買い越しとなり、前週から120枚拡大しました。買いポジションが1,538枚増加し、売りポジションが1,418枚増加しました。銀相場がおおむね横ばいで推移する中、方向感が見出せないことから売り買いが交錯しているようです。

銀相場は引き続き金相場次第の展開になるでしょう。昨年12月初めに底値を付けてからは、徐々に下値を切り上げており、順調に水準を回復してきたといえるでしょう。ただし、金相場も高値圏で推移しており、金に対する割安感も引き続き強い状況が続いています。

とはいえ、金相場が調整した場合にはそれ以上に下げやすい面もありますので、そのような動きになった場合には要注意でしょう。ただし、現状では金相場が大きく値を崩す可能性は低そうです。その意味では、金相場が上昇した際に、それ以上に上昇することができるかに注目しておきたいところです。

銀相場は依然として出遅れ感が強いように感じます。投機資金の流入を誘うような値動きになれば、金相場を超える上昇は十分に期待できるでしょう。そのためには、少なくとも17.90ドルに位置する上昇トレンドを維持することが不可欠です。そのうえで、直近高値である18.85ドルを終値ベースで超えることが必要でしょう。

短期的にも上昇余地があるため、まずはそのような動きになるかを確認したいところです。現時点で悲観的になる必要は全くないと考えています。

円建て銀相場は上昇しました。円安傾向にあることが大きいでしょう。節目の65円を維持しており、基調は維持されています。すぐに直近高値を超えるのは難しいかもしれませんが、65円を維持しているうちは上値を目指す展開を想定しておきます。

割り込んだ場合には、いったん手仕舞いをして様子を見るもの良いでしょう。無論、上げ続けた場合には、徐々に利益確定売りを入れながら、上昇基調についていくようにしたいところです。

【図表3】シルバー 縦軸:円建てシルバー/グラム(単位:円)
出所:マネックス証券作成