先週のゴールド:急伸後に反落の展開

金相場は大幅上昇となり、一時は約7年ぶり高値を付けました。米軍によるイラン革命防衛隊コッズ部隊のソレイマニ司令官殺害を受けて、中東での対立拡大が懸念されたことが材料視され、1月6日には一時2013年4月以来の高値となる1,582.59ドルを付けました。

その後もイラン高官が米軍によるイラン革命防衛隊司令官殺害に対する報復措置として、イラン政府は13のシナリオを検討しているとするなど、緊張が走りました。

また、イランがイラクにある米軍基地へミサイルを発射したとの報道で、一時1,610.90ドルまで急伸するなど、地政学的リスクに市場が敏感に反応する場面がみられました。

しかし、トランプ米大統領が演説で戦争回避の姿勢を鮮明にしたことを受けて、米国とイランの対立拡大をめぐる懸念が和らぎ、金相場は1%超下落しました。ただし、週末には米国がイランに対して新たに制裁を科したことを受けた不透明感の高まりが下値を支えました。

世界最大の金上場投資信託(ETF)であるSPDRゴールドトラストの保有高は、1月3日の895.3トンから1月10日には874.52トンに減少しました。株価が高値を更新する中、投資家は金保有量を削減しています。

CFTC(米商品先物取引委員会)が公表するCOMEX金先物市場における1月7日時点の大口投機筋のポジションは32万2291枚のネット買い越しとなり、前週から5,634枚減少しました。買いポジションは1,860枚増加しましたが、売りポジションが7,494枚増加しました。金相場の上昇に伴い、売り乗せを行っている投機筋がいるもようです。

円建て金相場は急騰し、一時5,600円を超えました。ただし、その後はドル建て金相場の調整を受けて5,500円まで下げるなど、激しい値動きとなりました。

【図表1】先週のゴールド 縦軸:円建てゴールド/グラム(単位:円)
出所:マネックス証券作成

今週のゴールド:高値圏を維持する展開を想定

今週のゴールド投資をする上での3つのポイント
・米イラン間の緊張状態の継続リスク
・FRBによる低金利政策の継続
・円建て金相場も堅調な推移を想定

金相場は米イラン間の緊張を背景に急伸したように、今後もこの材料が金相場を動かすことになりそうです。トランプ米大統領は戦争回避の立場を鮮明にする一方、イラン側も戦争を望んでいない旨の発言をするなど、一触即発の事態は今のところ回避されています。

しかし、当面は両国間の動向からは目が離せないでしょう。一部の民兵などが、イラン側の指示を受けずに米軍基地などに攻撃を仕掛ける可能性が指摘されています。米国は一定のラインを超えるまでは静観するものと思われる一方、イランへの制裁を強化する姿勢を鮮明にしています。

イランが核開発を停止するまでは、この状況は続くことになるため、安全資産である金相場は心理面からも支えられることになるでしょう。

また、米連邦準備制度理事会(FRB)は今後も緩和的な姿勢を継続する可能性が高いことも、金利がつかない金相場を支えることになりそうです。12月の米連邦公開市場委員会(FOMC)の議事要旨でも確認されたように、当面は昨年行った3回の利下げの効果を見極めるとともに、経済状況を見極める姿勢を鮮明にしています。

さらに、今年は米大統領選挙の年でもあり、拙速な利上げは見送られる可能性が高いといえます。クラリダFRB副議長は、「景気動向に関する情報がおおむね見通しを保った場合、現行の金融政策が適切であり続ける公算が大きい」との認識を示しました。経済・金融情勢に大きな変化がなければ、今月末の金融政策会合では昨年12月に続いて金利の据え置きが望ましいとの考えを示したといえます。

また、2020年のFOMCで投票権を保有し、FRB高官の中で金融緩和に積極的なハト派に位置付けられている米ミネアポリス連銀のカシュカリ総裁は、「見通せる将来、政策金利を据え置くと思う」とし、「FRBによる次の政策変更は利下げであり、利上げはないだろう」との認識を示しています。これらの金融当局の姿勢は、金相場の支援材料になるでしょう。

金相場は短期間で急伸した後に大きく値を下げているだけに、目先は上げにくい状況になる可能性があります。それでも、下値では上記のような背景もあり、買いが入りやすいといえます。

また、大きく下げた場合には、ロシアや中国などの政府・中央銀行の買いが下値を支えるものと思われ、1,480ドルを割り込むような動きにはならないでしょう。そのため、日柄調整が完了すれば、材料次第では再び上向く可能性が高いと考えられます。

円建て金相場も堅調な推移が想定されます。為替相場はやや円安で推移しており、これが下値を支えるでしょう。また、ドル建て金相場も底堅さを維持する見通しであり、円建て金相場は5,500円前後で下値を固めると、再び上値を試しやすいといえます。まずはそのような動きになるかを確認し、そのうえで買いを検討したいところです。

すでに購入している場合には、5,400円を割り込むまでは保有し続け、再び上向くのを待ちたいところです。金には株式投資のヘッジ機能もありますので、長期的な視点を重視しながら、資産の一部を金で保有するようにしたいところです。

プラチナ:小幅反落も高値圏を維持

プラチナは小幅に下げましたが、高値圏を維持しました。金相場の乱高下で下げる場面がありましたが、週末にかけて下げ止まりから反発の動きを見せており、再び高値を目指そうかという展開にあります。1月9日には一時942ドルまで下げる場面がありましたが、週末は戻して978ドルで引けました。

CFTC(米商品先物取引委員会)が公表するNYMEXプラチナ先物市場における1月7日時点の大口投機筋のポジションは6万2281枚のネット買い越しとなり、前週から118枚拡大しました。買いポジションが2,009枚増加し、売りポジションが1,891枚増加しました。

投機家は買い・売りの両方のポジションを増やしており、市場に対する見方が分かれていることがわかります。今後の値動き次第では、大きくポジションが巻き戻され、相場変動も大きくなる可能性がありそうです。

プラチナ相場は上下しながらも徐々に下値を切り上げており、徐々に上向きの動きが強まっているように見えます。そのため、1月3日につけた直近高値の995ドルを超えると、9月5日の高値である997.15ドルを超えて、1,000ドルの大台超えが視野に入りそうです。

また、同じ白金族系メタルのパラジウム相場が、需給ひっ迫を背景に9日に2,149.50ドルの過去最高値を付けるなど、きわめて強い展開になっています。このような背景も、プラチナ相場を押し上げる可能性がありそうです。

一方、プラチナの最大需要先である、ディーゼル車の触媒向け需要は伸び悩むリスクから解放されにくい状況が続いています。ドイツ自動車産業連合会(VDA)によると、2019年の生産台数は前年比9%減の466万1800台だったもようです。

2019年は国際的な貿易摩擦や中国市場の冷え込み、一部地域での不確実要因を反映して輸出台数が13%落ち込み、348万500台にとどまりました。

一方、国内販売(新規登録台数)は5%増の360万7258台となり、2009年の約380万台以来の高水準に達しました。受注台数は国内向けが6%増加する一方、輸出向けは2%弱減少しました。12月単月の実績は、生産台数が前年同月比7%減の27万6400台、輸出台数が14%減の21万3400台といずれも不調でした。

このように、現状はかなり厳しいものの、自動車生産・販売が多少でも回復するような兆しが見えると、プラチナ市場の参加者の期待も高まるでしょう。当面は950ドルを下値に、上記で示した価格水準に到達するかを確認したいところです。

円建てプラチナ相場は高値圏を維持しました。節目の3,500円を超えており、今後はこれを維持してさらに上値を試すことができるかがポイントになります。現状の水準を固めることができれば、一段高につながるでしょう。下げた場合でも、3,400円でサポートされれば、格好の押し目買いの好機になりそうです。

下値が切り上がっているうちは、買い目線で押し目を拾うことを考えたいところです。ただし、3,400円を下回るようだと、下げ足が速まる可能性があります。その場合には、早めに手仕舞いを行い、次の押し目買いのタイミングを探るのがよさそうです。

【図表2】プラチナ 縦軸:円建てプラチナ/グラム(単位:円)
出所:マネックス証券作成

シルバー:小幅続伸の展開

シルバーも小幅ながら続伸しました。金相場の急伸につれる形で値を上げ、1月8日には一時18.84ドルまで上昇する場面がありました。週末は18.09ドルと、18ドルの大台を維持して引けました。

CFTC(米商品先物取引委員会)が公表するCOMEX銀先物市場における1月7日時点の大口投機筋のポジションは6万7253枚のネット買い越しとなり、前週から2,475枚縮小しました。買いポジションが2,914枚増加しましたが、売りポジションが5,389枚増加しました。

投機家は銀相場の上昇を背景に買いを増やしていますが、一方で売りポジションも増やしており、強弱感が対立している様子がわかります。

銀相場は引き続き金相場次第の展開になりそうです。全般的に金相場の動きに劣後する展開が続いていますが、変動する際には大きく動くのが銀相場の特徴です。今回も金相場が急伸した際には大きく値を上げており、特徴的な動きがみられています。

目先は17.60ドル前後を維持できれば、上昇基調が継続していると判断できるでしょう。当面は不安定な値動きになりそうですが、長期的な基調は上向きと判断できます。また、金に対する割安感も引き続き強い状況が続いています。そのため、金相場の上昇がより強まったときに、銀市場への関心が高まるかが、今後の市場動向を見極めるポイントになるでしょう。

金に比べて出遅れ感があるといえますので、上値抵抗の18.80ドルを明確に超えて、さらにその水準を固めるかに注目しておきたいところです。

円建て銀相場は下落しました。ただし、節目の65円を維持しています。この展開が続くかが当面の展開を決めることになりそうです。維持できれば、再び66円から67円を目指す展開が期待できます。まずは65円を維持できるかを確認したうえで、新規の買いを検討したいところです。

逆に65円を割り込んだ場合には、相応の調整相場になりそうです。64円あたりで下げ止まれば、押し目買いを検討したいところです。ただし、この水準も維持できずに急落するようであれば、まずは底打ちするのを待つのが得策でしょう。

上記のように、変動するときは大きくなりがちです。特に下げに転じると、62円程度まで一気に下げる可能性もありますので要注意でしょう。

【図表3】シルバー 縦軸:円建てシルバー/グラム(単位:円)
出所:マネックス証券作成