2019年のNYダウは28,538ドルで取引を終了。

夏までは米中貿易摩擦に対する懸念から不安定な値動きでしたが、FRBは7月以降のFOMC(米連邦公開市場委員会)で3度連続利下げし、政策金利を0.75%引き下げました。

いわゆる「予防的利下げ」が行われ、終わって見れば2010年代でみても記録に残る好成績の年になったのです。

2019年の1年間でNYダウは22%の上昇。機関投資家が運用の目安とするS&P500種株価指数は29%の上昇でした。

さらにハイテク株の比率が高いナスダック総合株価指数は、12月に11連騰して節目の9,000台を突破。

年間上昇率は35%に達しました。S&Pとナスダックは、2010年代で2013年に次ぐ2番目の上昇率。NYダウは5,210ドル上昇し、この10年で最大の上昇幅となりました。

それでは、2020年の米国株式市場はどうなるのでしょうか。

注目のイベントを確認しながら見ていきましょう。

米大統領選

2020年の最大の注目イベントは、11月3日に投票を迎える米大統領選挙です。

米国第一主義とディール外交で世界を振り回してきたトランプ大統領が再選されるのか、それとも民主党が政権を奪還するかが焦点になります。

2019年に過去最高値を更新した米国株や失業率の低さはトランプ大統領の再選に追い風になりますが、医療保険改革や移民問題などが大統領選の主要な争点です。

また、これまでのトランプ大統領の支持率は45%程度が精一杯で、共和党の支持基盤は盤石なものの、無党派層への広がりは見られません。

つまり、現職のトランプ大統領が圧倒的に有利というわけではないのです。もし民主党の大統領が誕生すると、米国の政策は大きく変わります。

バイデン氏などの主要候補はパリ協定への再参加、銃規制強化、TPP(環太平洋経済連携協定)に参加の方針を示し、移民受け入れにも前向きです。

ただ、対中強硬策は超党派の流れで、根本的な変化はなさそうです。大統領選挙が終われば、再び米中の対立が深まることが予想されます。

米中貿易摩擦

2016年に行われた米大統領選挙において、トランプ氏は「米国に対する不均衡の是正」を政策の1つとして上げていました。

そして、2017年に大統領に就任したトランプ氏は、2018年になっても中国の対米黒字が減少していないことから、3月1日に鉄鋼とアルミニウムの輸入制限を発動。

それぞれ25%と10%の追加関税を課すことにしました。

これは必ずしも中国を対象にしたものではありませんでしたが、3月23日に追加関税措置が発表されると、4月1日に中国は128品目の米国製品に対する追加関税を課す報復措置を発表。

こうした貿易摩擦解消のために米中閣僚会議が開催され問題の解決策を模索しましたが、状況は悪化し、2018年7月6日に追加関税第一弾、8月23日に第2弾、9月24日に第3弾が発動されたのです。

2019年の前半も米中貿易摩擦が重荷になりましたが、10月に米中が貿易協議で第一段階の部分合意にこぎ着け、年末にかけて景気減速に対する過度な警戒感が和らぎました。

さらに米中の「第一段階」の合意文書が2020年1月15日に署名されるとのニュースが投資心理を明るくしましたが、これは一時的な休戦で、今後もトランプ大統領は景気に配慮しつつ対中圧力は続くでしょう。

中東情勢

2020年になって、米中貿易摩擦の行方と11月の大統領選以外に、中東の地政学リスクにも警戒が必要になりました。

米軍によるイラン司令官攻撃が、マーケットの雰囲気を変えたからです。

米軍がイラン革命防衛隊の精鋭組織のソレイマニ司令官を殺害したことをきっかけに、1月3日には過去最高値圏にあるNYダウが一時350ドル安まで下げました。

原油先物は64ドル台まで上昇して2019年4月以来の高値、安全資産とされる金も約4カ月ぶりの高値をつけました。

米国とイランの対決は根が深く、簡単に解決しそうにありません。イランはもともと米国の中東戦略の要でしたが、1979年のイスラム革命のあとは急進的な反米国家となりました。

米国はイラク、サウジと組んでイランを封じ込めようとしましたがイラクとも対立し、2003年のイラク戦争につながりました。

その後、中東でイランの勢力が拡大する中、オバマ政権時代の2015年にイラン核合意が成立。

イランの核技術開発を制限する一方で、米国や欧州はイランへの制裁を緩和しました。

しかし、2017年に就任したトランプ大統領はそれらを全面否定。一方的に核合意から離脱した後に、制裁を発動しました。

そして、制裁により経済的に追い詰められたイランは、制裁解除を求めてアラムコ石油施設への攻撃などで米国に揺さぶりをかけていたのです。

トランプ大統領はソレイマニ司令官の殺害について、「我々は、戦争を止めるための行動を取った。戦争を始めるための行動ではない」と述べ、侵攻ではなく抑止を目的とする判断だったと強調しています。

ただ、イランと米国や中東の同盟国との緊張は大きくなっており、中東地域が一段と不安定化するリスクが高まっています。

米国の金融政策の行方

FRB(米連邦準備制度理事会)は、2018年に3回行った利下げの効果を見極めるため、2020年は政策金利を据え置く見通しです。

FRBは2019年に米中貿易摩擦による世界景気減速を警戒し、7月から3回連続で政策金利を引き下げました。

その結果、景気の軟着陸が実現し、米国株式市場が過去最高値を更新する原動力となりました。

ただ、12月は年1.5~1.75%に据え置き。2020年の成長率は、潜在成長率(2%弱)並の成長となり、現状の緩和的な金融政策が続くとの見方が強まっているからです。

12月のFOMCでは、参加者17人のうち13人が2020年の政策金利について横ばい、4人が0.25%の利上げを予想しました。

1月3日に公表されたFOMC議事録でも、景気の下振れリスクが長く続いているものの、米金融政策は「当面」なお適切である公算が大きいと当局者が認識していることが示されました。

米景気拡大は過去最長を更新中で、2020年の夏まで続けば12年目に入ります。パウエル議長は利下げの効果の発揮には時間がかかるとし、今年は利下げも利上げも必要ないとの考えです。

ただ、日銀やECB(欧州中央銀行)の大規模金融緩和で世界景気が持ち直すからは不明で、米中貿易摩擦や中東の地政学リスクなどで世界景気が悪化リスクもあり、FRBが追加利下げを迫られるシナリオも排除できないでしょう。

米国株式市場予想

米国株式市場に関しては、米中貿易摩擦の緩和期待や、トランプ大統領が支持率向上のために景気をよくする政策を取りやすいことなどから、前半は高いと判断していたものの、中東情勢の緊迫化から不透明感が強くなっています。

イランはソレイマニ司令官殺害による報復を予告していて、米国との緊張が高まっているからです。

もともと過去最高値圏にある米国株式市場では、高値警戒感が強まっていました。中東情勢の緊迫化により、しばらく軟調な展開が予想されます。

ただ中東情勢が落ち着けば、米国株式市場は6月ごろに高値を取るというのがメインシナリオです。

そして、大統領選挙を控える9月以降は買い手控えから安くなると予想しています。

また11月の大統領選挙後は、トランプ大統領が再選されても民主党の候補が勝っても、米中貿易摩擦の再燃の可能性があるので、年末にかけて警戒が必要と見ています。

 

転載元:モトリーフール