先週のゴールド:下値を切り上げる展開

金相場は上昇しました。週初から徐々に下値を切り上げる展開でした。米国を中心とした株価の大幅上昇は売り材料とみられましたが、週初はドル安が支援材料となりました。また、米中貿易に関する懐疑的な見方も支援材料となりました。

一方で、堅調な米製造業統計を受けてリスク選好意欲が強まったことで、上値は抑えられました。その後は連邦準備制度理事会(FRB)が近く利下げを実施しないとの観測が高まる中、ドルの上昇が金相場を圧迫したものの、米国でトランプ米大統領が弾劾追訴されたことが、政局不安を想起させたことから下値を支えました。

週末は小動きでした。株式相場が過熱気味な中、一部の投資家には警戒感もあり、株価反転に備えた安全策として金を買っているとみられています。一方、年末を控えて米景気が緩やかな拡大ペースを維持する中、7~9月期の米GDP確定値が年率換算で前期比2.1%増と、米景気の底堅さが示されたことが上値を押さえました。

世界最大の金上場投資信託(ETF)であるSPDRゴールドトラストの保有高は、12月13日の886.22トンから、12月20日には885.93トンへ小幅に減少しました。株高基調が続く中、投資家は金への投資をほとんど変化させていないもようです。

CFTC(米商品先物取引委員会)が公表するCOMEX金先物市場における12月17日時点の大口投機筋のポジションは28万6275枚のネット買い越しとなり、前週から1万5355枚拡大しました。買いポジションが1万5324枚増加し、売りポジションが31枚減少しました。

前週は買い越し幅が大きく縮小していましたが、今回発表分では再び買い越し幅を拡大させていることがわかります。金相場の底堅い推移から、投機家は再び買いポジションを増やしていることがわかります。

円建て金相場は高値圏を維持しました。ドル建て金相場の堅調さ、為替相場が円安水準を維持したことが、高止まりにつながりました。

【図表1】先週のゴールド 縦軸:円建てゴールド/グラム(単位:円)
出所:マネックス証券作成

今週のゴールド:堅調地合いの継続を想定

金相場は今後も底堅い動きから、徐々に水準を切り上げる展開を想定します。先週は米国の主要株価指数が軒並み過去最高値を更新し、世界の主要国の株価指数も堅調に推移したものの、金相場は堅調に推移しました。

株価が上昇する中でも金相場が下げない状況は、株高の持続性への疑念を持つ投資家の心理を表している可能性がありそうです。

金相場が11月初めに大きく下落した後は、株高基調が続く中、徐々に下値を切り上げており、突発的な事象が起きればすぐにでも急伸しそうな雰囲気があります。すぐに株価が大きく値を下げるような事態は想定していないもののの、そのような動きが見られれば、金相場は重要な節目である1,480ドルから1,490ドルを突破し、一気に1,500ドルを超える可能性もありそうです。

先の米連邦公開市場委員会(FOMC)でも示されたように、連邦準備制度理事会(FRB)は当面の間、政策金利を変更しない可能性が高そうです。これ自体は、金相場には中立といえますが、低金利状態が維持されるという面からはポジティブ材料とも言えます。

一方で、米中通商協議の第1段階の合意後、米中両国は依然として署名をしていません。しかし、ムニューシン米財務長官は12月19日、対中貿易協議の「第1段階の合意」への署名が1月初めに実施されることに「非常に自信を持っている」と発言しました。さらに、合意文書が技術的な見直しを経ている段階で、再協議の余地はないとの見方も示しています。

署名にはまだ数週間がかかる見通しであり、実際に署名がなされるまで市場心理が不安定になる可能性もあります。その場合には、金相場はやはり底堅く推移することになりそうです。

一方、米下院本会議は12月18日、トランプ米大統領を弾劾訴追しました。ウクライナ疑惑をめぐる「権力乱用」と「議会妨害」のいずれの訴追状案の条項も民主党の賛成多数で可決しました。米大統領の弾劾訴追は米史上3人目となりました。トランプ米政権に影を落としてきた与野党の対立は頂点に達したといえます。

米大統領弾劾は1998年のクリントン氏以来で21年ぶりのことです。トランプ米大統領は同日夜、ミシガン州で選挙集会を開催し、「弾劾されているような気がしない。私たちは何も間違ったことをしていない」と反発しました。

本会議の審議中にも「何もしない極左の民主党による恐ろしいうそが続いている」などと繰り返しツイッターに投稿するといった反発の姿勢を鮮明にしています。本会議の討論では、民主党のペロシ下院議長が、「われわれの建国者が構想した共和国が、脅威にさらされている」と弾劾訴追する理由を説明しました。

弾劾訴追状によると、トランプ米大統領はウクライナのゼレンスキー大統領に対し、政敵バイデン前副大統領の捜査を要求。ゼレンスキー氏が望んだ軍事支援を「取引材料」にするなど米大統領権限を乱用して圧力をかけた疑いが持たれました。

また、下院の調査権限を「史上類を見ない形で完全否定した」とされました。上院は年明けに弾劾裁判を開始する方針です。

しかし、トランプ米大統領が「有罪」となり、罷免されるには、上院議員3分の2以上の賛成が必要となります。53人の共和党上院議員のうち20人以上の造反が必須事項となりますので、現時点では実現の可能性はきわめて低いといえます。このように考えると、弾劾に関する材料は、金市場には中立と考えるのが妥当でしょう。

金相場は重要なサポート水準である1,460ドルのサポートを受けながら、徐々に下値を切り上げています。この水準が維持されているうちは、上昇基調が維持されると判断できます。今の金価格の理論値は1,420ドルと判断していますが、万が一1,450ドルを割り込んでも、1,420ドル前後では割安感が出てきますので、買いが入りやすくなると考えられます。

また、繰り返すように、11月から2月にかけては金を保有しておくとリターンが出やすい期間です。この点も常に念頭に置きながら、市場動向を見ていきたいところです。

円建て金相場も堅調な推移が想定されます。基本的な考え方は先週と同じです。ドル建て金相場の堅調さに加え、為替相場が円安傾向を維持しており、これらの動きが下値を支えるものと思われます。これまで通り、買いポジションを維持しながら、上値追いを狙っていきたいと考えます。

調整した場合でも、5,200円でサポートされれば、押し目買いの好機となるでしょう。ただし、この水準を割り込んだ場合には、5,100円での下げ止まりを確認したうえで、押し目買いの判断をしたいところです。

プラチナ:急反落の展開

プラチナは急反落しました。週初から堅調な金相場の動きに加え、パラジウムが過去最高値を更新する動きを見せたことで、プラチナ相場も再び高値をうかがう展開となりました。

しかし、週末にパラジウムが5%超の下落となったことから、プラチナもこの動きにつれる展開となり、週末には一時904ドルまで値を下げ、最終的には908ドルで引けました。パラジウムは供給不足を背景に、12月17日には1,998.43ドルの過去最高値を付けていましたが、その後は利益確定の売りが出ています。

CFTC(米商品先物取引委員会)が公表するNYMEXプラチナ先物市場における12月17日時点の大口投機筋のポジションは5万4276枚のネット買い越しとなり、前週から4,699枚拡大しました。買いポジションが4,927枚増加し、売りポジションが228枚拡大しました。

投機家が買いポジションを増やす一方、売りポジションを増やしています。週末にかけて大きく値を下げていることから、買い越し幅が大きく縮小している可能性もありそうです。最新のデータで確認したいところです。

プラチナ相場は、前週までは主要生産国である南アフリカにおける大規模停電により、生産・供給が途絶するのではないかとの懸念から高値圏での推移が続いていました。しかし、この材料に追加的な報道がみられない中、連動性が高いパラジウム相場が急落したことで、大きく値を下げています。

これまでパラジウム相場は供給懸念を背景に急伸してきましたが、節目の2,000ドル目前で下げたことは、供給懸念が残る中でも心理的には売りを誘いやすいと考えられます。

このまま調整が続いた場合、長期的に重要なトレンドとみられる1,800ドルを維持できるかが極めて重要になると考えます。これを維持できれば、再び反発する可能性は残るでしょう。

しかし、割り込むようだと、基調が変わる可能性があります。その場合には1,650ドル程度までの下落となる可能性もあるだけに、注意したいところです。その場合には、プラチナ相場もつれる形での下落を想定することになるでしょう。

まずは節目の900ドル、さらに重要なサポート水準の875ドルを維持できるかを確認したいところです。一方で、反発に向かう場合には、950ドルを明確に上抜けるかがポイントになりそうです。これを上抜けると、1,000ドルを試す可能性が高まりそうです。ただし、現状では、まずは下値を確認することが先決といえそうです。

欧州自動車工業会(ACEA)が発表した11月のEUの新車販売台数は、前年同月比4.9%増の117万5959台となりました。国際統一燃費試験法(WLTP)導入に伴い販売数が落ち込んだ昨年から持ち直し、3ヶ月連続でプラスとなりました。

1~11月の累計販売台数は前年同期比0.3%減の1412万3228台でした。自動車販売は徐々に底打ちの機運が高まっています。プラチナを自動車触媒の原料に使用するディーゼル車の比率が多い欧州での販売台数の回復は、需要面からプラチナ相場を支える材料になりそうです。

円建てプラチナ相場は高値圏でのもみ合いとなりました。ただし、ドル建てプラチナ相場が先週末に急落しているため、大幅な調整となる可能性が高そうです。そのため、まずは下値を確認する必要があります。3,300円で下げ止まるようであれば、その時点で買いを検討できるでしょう。

ただし、3,300円を割り込むと、3,200円までの調整となる可能性が高いと考えられますので、押し目買いは慎重に検討したいところです。逆に3,400円を超えるような上昇基調が強まれば、その流れに乗る形で買いを検討したいところです。

【図表2】プラチナ 縦軸:円建てプラチナ/グラム(単位:円)
出所:マネックス証券作成

シルバー:続伸の展開

シルバーは続伸しました。金相場の上昇に支えられる形で下値を切り上げ、週末には一時17.25ドルまで上昇する場面がありました。最終的には17.19ドルで引けました。

CFTC(米商品先物取引委員会)が公表するCOMEX銀先物市場における12月17日時点の大口投機筋のポジションは4万5781枚のネット買い越しとなり、前週から5,039枚拡大しました。買いポジションが2,598枚拡大し、売りポジションが2,441枚減少しました。

投機家は買いポジションを増やす一方、売りポジションを減らしており、再び強気な姿勢に転換しています。また、週末にかけて上昇していることから、さらに買い越し幅を拡大させている可能性がありそうです。最新のデータで確認したいところです。

銀相場は独自の材料がない中、金相場につれる展開が続いています。金相場が徐々に下値を切り上げる中、株価の上昇もあり、銀相場も上昇しやすい地合いにあるといえそうです。

チャートでは17.25ドルに重要なレジスタンスがあります。先週末にはこの水準を試す場面がありましたが、これを明確に上抜けるようだと基調がさらに上向きになり、17.50ドルを試す展開になる可能性がありそうです。また、17.50ドルを超えるようだと投機的な動きが強まり、短期間で大きく値を上げる可能性もありそうです。

一方、サポートは16.85ドルにありますが、これを割り込むような下げになれば、直近安値で16.50ドルで下げ止まるかを確認することになります。これまで通り、まずは金相場の値動きを確認したうえで、銀相場そのものの強さを見極めることが重要であると考えます。

円建て銀相場も高値圏での推移が続いてます。ドル建て銀相場の上昇と円安基調で節目の62円前後での推移が続いています。この水準をどちらに放れるかを確認したうえで、戦略を検討してもよいでしょう。

62円を上に放れるようであれば、その流れに乗る形で買いを検討することができます。逆に62円を下回るようであれば、まずは買いは手控え、61円でサポートを形成できるかを確認したいところです。

【図表3】シルバー 縦軸:円建てシルバー/グラム(単位:円)
出所:マネックス証券作成