先週のゴールド:反発の展開

金相場は反発しました。週初から米国が12月15日に新たな対中制裁関税の発動を予定していることから、米中貿易協議の先行き不透明感が材料視され、底堅く推移しました。

米連邦準備制度理事会(FRB)は12月10・11日開催の米連邦公開市場委員会(FOMC)で、政策金利を年1.50~1.75%に据え置くことを決定しました。ただし、パウエル議長が会見で、将来の利上げを示唆しなかったことを受けて金利が低下したため、金への買いが優勢となりました。

12月12日には一時約1ヶ月ぶりの高値圏まで上昇したあと、下落しました。トランプ米大統領が中国との貿易協議が合意に近づいているとツイッターに投稿したことがきっかけとなり、安全資産とされる金を売る動きが広がりました。

米国が中国製品への追加関税発動を予定する12月15日を前に、金相場は不透明感から上昇してきましたが、中国との協議について「合意がとても近い」とするトランプ米大統領のツイートで上昇の勢いがそがれた格好となりました。

週末12月13日には上昇しました。米中貿易協議の進展に対して慎重な姿勢が続く中、米下院司法委員会がトランプ米大統領の弾劾訴追状案を可決したことから、安全資産としての金の需要が高まりました。その後、米中は貿易協議の「第1段階」で正式合意したと発表。トランプ米大統領は12月15日に予定していた対中制裁関税の発動を見送るとともに、中国が米国産農産物500億ドルを購入するとの見通しを示しました。

合意は市場の期待通りでしたが、詳細を欠いていることから依然として多くの懸念が残るとの見方が強まり、質への逃避を招いた結果、金が買われる展開となりました。週間ベースでは1.2%高となりました。

世界最大の金上場投資信託(ETF)であるSPDRゴールドトラストの保有高は、12月6日の886.23トンから、13日には886.22トンにわずかながら減少しました。株高基調が続く中、投資家は金への投資をあまり変化させていないことがわかりました。金融市場に対して相応の警戒をしているといえそうです。

CFTC(米商品先物取引委員会)が公表するCOMEX金先物市場における12月10日時点の大口投機筋のポジションは27万920枚のネット買い越しとなり、前週から1万9785枚縮小しました。買いポジションが1万7356枚減少し、売りポジションが2,429枚拡大しました。投機家が買いポジションを手仕舞う一方、新たに売りポジションを増やしていることがわかります。

円建て金相場は大幅上昇しました。ドル建て金相場の底堅さに加え、為替相場が円安基調で推移したことから水準を切り上げました。

【図表1】先週のゴールド 縦軸:円建てゴールド/グラム(単位:円)
出所:マネックス証券作成

今週のゴールド:水準を切り上げる展開を想定

金相場は水準を切り上げる展開を想定します。先週は重要なイベントが目白押しでしたが、結果的に金相場は堅調さを維持しました。

FOMCでは、景気悪化に備えた7月以降の「予防的利下げ」を休止し、経済情勢を様子見する姿勢に転換しました。来年の金利水準の中心的なシナリオも現状維持を見込みました。

会合後に発表した声明は、「米景気が緩やかに拡大」との判断を踏襲し、「現行の金融政策スタンスは持続的な景気拡大を支える上で適切」としました。また、「適切な政策金利の道筋を見極めるため、海外情勢や弱いインフレ圧力を含めて今後の情報を注視し続ける」と、当面の間は米中貿易摩擦などが雇用や物価に及ぼす影響を分析する方針を示しました。

決定は5会合ぶりに投票権を持つ10人による全会一致となりました。米経済の拡大局面は過去最長となる11年目に入っています。企業の設備投資や生産活動が弱含んでいますが、失業率は50年ぶりの低さとなり、個人消費も底堅い状況にあります。金利を7月以降、3会合連続で計0.75%引き下げた効果が景気を下支えしているといえそうです。

会合参加者17人による政策金利の中心的なシナリオについては、来年が据え置き、2021・2022年はそれぞれ1回の利上げ予想となりました。来年については4人が利上げを見込み、景気に対して強気な見方も残っていることが示されました。景気を過熱も冷やしもしない中立的な金利水準は2.5%のままでした。

一方、実質経済成長率(10~12月期比較)は今年が2.2%、来年2.0%、21年1.9%、22年1.8%と、9月時点の緩やかな減速予想を維持しました。失業率は来年が3.5%(9月時点は3.7%)へと下方修正し、長期的な水準も4.1%(同4.2%)に引き下げました。物価上昇率は2021年に目標の2.0%に到達するとの見方を据え置きました。

政策金利については、2020年は米大統領選が控えていることもあり、政権サイドから利上げ見送りあるいは利下げの圧力がこれまで以上に強まることが想定されます。パウエルFRB議長は、FRBの独立性の重要さを強調しますが、米トランプ政権にとっては関係のないことです。米景気を悪化させるようなドル高は受け入れられないとのスタンスは明確であり、今後もことあるごとに利下げを要求するでしょう。

一方、現状の経済環境であれば利上げを急ぐ理由は見当たらないといえます。景気が過熱し、株価がバブル的な動きにならない限り、FRBは多少のインフレ率の上昇を放置し、市場金利の上昇を受け入れるでしょう。その結果、目標とするインフレ率2%が安定的に維持されるようになれば、その時点で次の金融政策を検討するものと思われます。

このように考えると、当面は金相場を圧迫するような金利引き上げといった状況にはなりにくく、金相場は底堅い展開が続きそうです。

一方、市場の関心を集めていた米国による対中追加制裁関税については、第1段階の合意が成立しました。市場はすでにこの状況を織り込んでいたため、株価の上昇は限定的となり、金を売る動きも限られました。

むしろ、合意内容を中国が履行する可能性への疑念や、懸案の知的財産権・ハイテク分野の問題、さらに不当な補助金問題など、中国サイドがかたくなに拒否している事項についての交渉は進んでいません。不透明感が残っていることは、金市場にはポジティブといえます。

また、米下院司法委員会が12月13日、トランプ米大統領弾劾訴追状案に関する採決を実施し、権力乱用と議会妨害の弾劾条項を賛成多数で可決したことも、不透明要因といえます。同案は今週にも野党・民主党が多数を占める下院本会議で採決に掛けられ、可決される公算が大きいとみられています。その後、数週間以内に上院で弾劾裁判が開始される見通しですので、この動きにも注意が必要といえます。

一方、12月12日に実施された英総選挙では、ジョンソン首相率いる保守党が単独過半数を制して歴史的勝利を決めました。ジョンソン首相は来年1月末のEU離脱を実現するため、EUと10月に合意した国際条約「離脱協定案」の議会承認に向けた手続きに着手することになります。この結果を受けて、ポンド相場が上昇していますが、これはドル建て金相場の割安感が強まるため、ポジティブ要因と考えることができます。

金相場は重要なサポート水準である1,450ドルをサポートしながら、徐々に下値を切り上げています。この水準が維持されているうちは、上昇基調が維持されると判断できます。今の金価格の理論値は1,420ドルと判断していますが、万が一1,450ドルを割り込んでも、1,420ドル前後では割安感が出てきますので、買いが入りやすくなると考えられます。

一方で株価が下げるような局面では、投資家は安全資産である金に資金をシフトする動きを強めるでしょう。また、繰り返すように、11月から2月にかけては金を保有しておくとリターンが出やすい期間です。この点も常に念頭に置きながら、市場動向を見ていきたいところです。

円建て金相場は堅調さが戻ってきました。ドル建て金相場の堅調さに加え、為替相場が円安傾向を維持すれば、さらに上値を切り上げる可能性があります。これまで通り、買いポジションを維持しながら、上値追いを狙っていきたいと考えます。

調整した場合でも、5,200円でサポートされれば、押し目買いの好機と考えます。ただし、この水準を割り込んだ場合には、5,100円で下げ止まるかを確認したうえで、押し目買いの判断をしたいところです。

プラチナ:小幅反落の展開

プラチナは急伸しました、堅調な金相場の動きに加え、世界最大のプラチナ生産国である南アでの計画停電により、生産が滞るとの見方が強まったことや、同じ白金族系メタルのパラジウムが連日のように最高値を更新したことが材料視されました。12月12日には一時948.1ドルまで上昇する場面がありました。週末は927.8ドルで引けました。

CFTC(米商品先物取引委員会)が公表するNYMEXプラチナ先物市場における12月10日時点の大口投機筋のポジションは4万9577枚のネット買い越しとなり、前週から4,048枚拡大しました。買いポジションが3,499枚増加し、売りポジションが549枚減少しました。投機家が買いポジションを増やす一方、売りポジションを減らしており、強気な姿勢になっていることがわかります。

プラチナ相場は南アの材料で急伸しています。ただし、11月4日につけた直近高値の955.75ドルは上抜けていません。次のステージに入るには、この水準を超えることが不可欠でしょう。

ところで、今回の世界最大のプラチナ産出国である南アでの大規模停電により、市場では生産途絶による供給懸念が強まっており、これがプラチナ相場を押し上げています。

南アでは全国的な計画停電が実施され、連日のように輪番停電が実施されているもようです。南アではここ10年以上で最も深刻な停電となっており、12月10日までに主要鉱山が相次ぎ操業を停止しました。各地を襲った大雨と洪水のため、国営電力大手エスコムの主要施設が被害を受けています。そのため、南アの主要産業である鉱業資源の輸出が損なわれ、既に減速している景気が一段と悪化する恐れが指摘されています。

南アの第3四半期のGDPは前期比年率0.6%減となり、第2四半期の3.2%増からマイナス成長に転落しました。マイナス成長は第1四半期に続き、今年2回目です。

このような背景から、プラチナ相場は急伸していますが、プラチナ相場以上に堅調に推移しているのがパラジウムです。南アはパラジウムの主要産出国でもありますが、これまでの需給ひっ迫に加え、この材料を背景に史上初めて1,900ドルを突破しました。

南アは世界のパラジウムの40%を生産していますが、停電を背景に供給逼迫への懸念が強まっており、南アの鉱山企業は減産に迫られています。パラジウム価格は今年に入ってから50%もの上昇となり、何度も高値を更新する動きを続けています。

ガソリン車に対する世界的な排出規制が広がる中、来年はさらにこうした流れが強まる見通しで、市場関係者の間では、パラジウム現物価格は2,000ドルへ向かうとの見方も聞かれ始めています。

一方、ディーゼル車用の触媒原料であるプラチナは、これまでも需給緩和観測を背景にさえない相場展開が続いてきました。しかし、南アのこの材料でこれまでの供給に対する楽観的な見方が低下し、需給逼迫が連想されると、一段高につながる可能性もありそうです。南アの停電の続報に注目しておきたいところです。

まずは、上記でも指摘した955.75ドルを上抜けるかを見極めることになりそうです。一方、崩れた場合でも、900ドル台を維持できれば、反発の可能性は残ると判断します。

円建てプラチナ相場は大幅上昇し、11月の高値を更新しました。ドル建てプラチナ相場の上昇に加え、円安が加わったことで、急伸しています。節目の3,300円を超えており、かなり強い動きにあります。結果的に3,200円でサポートされた格好であり、非常に強いといえます。

押し目で買えた場合には、ポジションを維持しながらさらに利を伸ばしたいところです。3,300円割れではいったん手仕舞いし、再び3,200円での押し目買いを狙いたいところです。ただし、3,200円を下回った場合には、押し目買いは控え、3,100円で下げ止まるのを確認したうえで買いを検討したいところです。

【図表2】プラチナ 縦軸:円建てプラチナ/グラム(単位:円)
出所:マネックス証券作成

シルバー:反発の展開

シルバーは反発しました。金相場の上昇に支えられる形で下値を切り上げ、12日には一時17.12ドルまで上昇する場面がありました。週末は16.93ドルで引けました。

CFTC(米商品先物取引委員会)が公表するCOMEX銀先物市場における12月10日時点の大口投機筋のポジションは4万742枚のネット買い越しとなり、前週から9,485枚縮小しました。買いポジションが3,624枚減少し、売りポジションが5,861枚増加しました。投機家は買いポジションを減らす一方、売りポジションを積み上げており、弱気な姿勢であることがわかります。

銀相場は独自の材料がない中、金相場につれる展開が続いています。前週の下げでこれまでの上昇トレンドが崩れたかに見えましたが、辛うじて支えられて反発しており、今年の夏以降のトレンドは継続していると判断できます。

ただし、上値の重さも鮮明であり、上昇基調を強めるためには17.20ドル水準を明確に上抜くことが求められます。そのうえで、17.50ドルを超えるようだと、さらに上値を試しやすくなるものと思われます。いずれにしても、銀独自の材料で変動する可能性は低く、引き続き金相場の動向を注視しながらの対処になるでしょう。

円建て銀相場も反発しました。ドル建て銀相場の上昇と円安基調で節目の60円割れは回避されました。これで62円を超えるようだと、上昇に勢いがつく可能性があります。そのタイミングを狙って買いを検討したいところです。逆に62円が重いようだと、上昇の余地がないと判断できるため、買いは見送り、61円でのサポートを確認したうえで押し目買いを検討したいところです。

【図表3】シルバー 縦軸:円建てシルバー/グラム(単位:円)
出所:マネックス証券作成