先週のゴールド:反落の展開

金相場は下落しました。弱い米製造業景況感指数などが景気鈍化への懸念を再燃させたことや、米中貿易協議の進展に不透明感が広がる中、株安もあり、週前半は堅調に推移しました。

トランプ米大統領は12月3日、米中貿易協議の合意について「期限は設けていない」とした上で、来年秋の米大統領選の後に結論を持ち越す可能性を示唆しました。新たな対中制裁関税の発動期限が迫る中、年内の実現を目指していた貿易協議「第1段階」の最終合意の行方に不透明感が広がりました。

投資家のリスク回避姿勢が強まる中、米国株が売られ、安全資産としての金が買い進まれました。また、トランプ米大統領がブラジルとアルゼンチンから輸入する鉄鋼とアルミニウムに追加関税を課すと表明したことも金には追い風となりました。

しかし、その後は米中貿易協議の進展を示唆する一部報道が伝わると、リスク選好の動きが再燃し、安全資産の金に売りが広がりました。週末は小幅に下げました。

堅調な米雇用統計を受けて、米連邦準備制度理事会(FRB)が政策金利を据え置くとの見方が強まりました。また、雇用統計の結果を受けて、リスク性の高い資産への選好が高まったことも金売りにつながりました。11月の雇用統計は、米経済の力強さが確認できる内容でした。これを受けてドル相場が押し上げられたことも、ドル建てで取引される金を圧迫しました。

トランプ米大統領が中国との貿易協議について「順調に進んでいる」と発言したことで、米国株が上昇したことも金の下落につながりました。

世界最大の金上場投資信託(ETF)であるSPDRゴールドトラストの保有高は、11月29日の895.6トンから、12月6日には886.23トンに減少しました。株高基調が続く中、投資家は金への投資を減らしているのがわかります。

CFTC(米商品先物取引委員会)が公表するCOMEX金先物市場における12月3日時点の大口投機筋のポジションは29万705枚のネット買い越しとなり、前週から1万9071枚拡大しました。買いポジションが2万1239枚増加し、売りポジションが2,168枚増加しました。投機家が積極的に買いポジションを増やす一方、売りポジションを増やす向きがいることがわかります。

円建て金相場は上昇しました。ドル建て金相場は下落し、為替相場が円高基調で推移しましたが、辛うじて値を維持しました。

【図表1】先週のゴールド 縦軸:円建てゴールド/グラム(単位:円)
出所:マネックス証券作成

今週のゴールド:下値を試す展開を想定

金相場は下値を試す調整含みの展開を想定します。市場参加者の関心は、12月10・11日開催の米連邦公開市場委員会(FOMC)に移るでしょう。

FOMCでは政策金利は1.50-1.75%で据え置かれると予想されています。すでに3回の利下げを実施する一方、月額600億ドルの短期国債の買い入れを実施しており、現在は実質的には量的緩和策を行っている状態です。この安心感もあり、株式市場は堅調に推移しています。

一方で、12月15日には米国による対中追加関税の期限が来ます。来年の米大統領選をにらみながら、トランプ米大統領が最終的に追加関税の実施に踏み切るのか、あるいは米景気に配慮するために見送るのかを注視することになります。

また、「第1段階」の合意の行方にも注目が集まります。クドロー米国家経済会議(NEC)委員長は12月6日、「協議が進展した」としつつも、第1段階の合意の成果文書に署名する準備はできていないとしています。しかし、いつどのような形で合意に至るかは全く不透明です。これを先読みして投資判断を下すことはできません。あくまで報道を見たうえで、判断するしかないでしょう。

一方、米雇用統計の数値が強い内容だったことは、大いにサプライズでした。景気動向を示す非農業部門の就業者数は季節調整済みで前月から26万6000人も増加しました。

米自動車大手ゼネラル・モーターズ(GM)のスト収拾など製造業が持ち直し、1月の31万2000人増以来、10ヶ月ぶりの大きな伸びとなりました。好調の目安とされる20万人を3ヶ月ぶりに上回ったことで、雇用情勢の堅調さが確認されました。

また、失業率は約50年ぶりの低水準であった9月の雇用統計の3.5%まで、2ヶ月ぶりに低下しました。さらに、10月の就業者数の伸びも15万6000人増と、当初発表の12万8000人増から上方修正され、景気を支える堅調な雇用情勢が維持されていることが示されました。

雇用情勢の堅調さが確認できたことで、投資家はリスク資産である株式への投資を拡大させる可能性があります。その際には、債券売りによる金利上昇が金相場を圧迫する可能性があります。その結果、金相場は重要なサポート水準である1,450ドルを試す可能性がありそうです。これを割り込むと、短期的には下げやすくなるものと思われます。

金相場は11月から2月に上昇しやすい傾向があるものの、株式市場の堅調さが続けば、上値を抑えられる可能性は十分にあります。この点を念頭にいれて見ていくことが肝要でしょう。米実質金利からみた金価格の理論値は1,440ドル程度とみていますので、調整した場合にこの水準で下げ止まるかを見ておく必要がありそうです。

円建て金相場は下落に転じる可能性があります。ドル建て金相場の下落に加え、やや円高傾向にある米ドル/円が上値を抑えることが想定されます。それでも、現時点では上昇基調が維持されています。したがって、直近安値を維持できているうちは、買いポジションを維持する方針で良いと考えます。

ただし、5,100円を下回るような下げに見舞われるようだと、いったん手仕舞いを検討すべきでしょう。その場合には、押し目買いを控え、まずは下値を確認することを優先したいと考えます。

プラチナ:小幅反落の展開

プラチナは小幅に反落しました。前週末の反発の動きを引き継ぐ形で週初は上昇し、12月4日には一時915.4ドルまで上昇する場面がありました。しかし、買いは続かず、5日には879.9ドルまで下落し、週末は895.8ドルで引けました。

CFTC(米商品先物取引委員会)が公表するNYMEXプラチナ先物市場における12月3日時点の大口投機筋のポジションは4万5529枚のネット買い越しとなり、前週から460枚拡大しました。買いポジションが904枚増加し、売りポジションが444枚増加しました。投機家が買いポジションを増やす一方、売りポジションを増やしています。

プラチナ相場はこのところのレンジ上限である920ドルを試したものの、買いが続かずに下げています。レンジ下限は870ドルと考えられますが、これを下回るようであれば、850ドルへの下落が想定されます。上値は重いものの、下値をどんどん切り下げる展開ではないと考えられますが、金相場が軟調に推移すれば、少なくとも上値の重い展開は続きそうです。

一方、実需面では、世界需要の6割を占める中国での減少が続いているようです。中国では2014年以降、需要が減少しているようです。汚職の取り締まり強化で、贈呈用需要が減少したことが影響しているもようです。

ただし、インドでは需要が徐々に増えているもようです。インドは従来から金需要が多い構図にありますが、従量制である金の小売りマージンは単価の10%程度であるのに対して、プラチナは宝飾品の単価でマージンが決まる方式で、マージンは単価の40%程度と利幅が厚いとされています。そのため、小売業界がプラチナ販売を強化しているとの見方があります。

さらに、都市部の若年富裕層は金ではなくプラチナを購入する傾向にあるとされています。しかし、2020年も中国のプラチナ需要の減少は続くとみられており、これを日本やインドなどがどの程度補えるかがポイントになりそうです。

プラチナ相場は実需のサポートがみられないだけに、現状の需給構造が大きく改善しない限り、プラチナ独自の材料で高値を切り上げていく状況は想定しづらいでしょう。

円建てプラチナ相場は下落しました。ドル建てプラチナ相場の下落に円高傾向が加わったことで、上値の重い状況にあります。結果的に3,300円を超えることができずに下げており、目先は3,200円でサポートされるかを確認することになりそうです。

ここでサポートされれば、再び反発に転じる可能性は残ると考えられます。その場合には、押し目を買いたいところです。流れに乗る形で買いを検討したいところです。逆に3,200円を下回った場合には、3,100円までの下げとなる可能性があります。その場合には、押し目買いは控え、下げ止まりを確認したうえで買いを検討したいところです。

【図表2】プラチナ 縦軸:円建てプラチナ/グラム(単位:円)
出所:マネックス証券作成

シルバー:大幅続落の展開

シルバーは続落しました。12月4日には一時17.29ドルまで上昇する場面がありましたが、週末に金相場が下げると、つれる形で下落し、16.50ドルの安値を付ける場面がありました。

CFTC(米商品先物取引委員会)が公表するCOMEX銀先物市場における12月3日時点の大口投機筋のポジションは5万227枚のネット買い越しとなり、前週から2,283枚縮小しました。買いポジションが1,654枚減少し、売りポジションが629枚増加しました。投機家は全体的に買いポジションを減らしていることがうかがえます。

銀相場は独自の材料がない中、金相場につれる形で直近安値を更新しています。重要なサポートとみていた16.70ドルを下抜けたことから、16.25ドル、さらに15.90ドルまで下落するリスクが高まっています。

上値を試したものの、抜け切れなかったダメージもあり、目先は投機筋の手仕舞い売りが優勢となり、下値を試しそうです。それらの売りがいつまで続くかをまずは見極めることになりそうです。

今は株価が上昇基調にあるものの、工業用需要の高まりがイメージできない状況にあり、実需面からも相場を押し上げるのは難しそうです。したがって、まずは下げ止まりの水準を確認する一方で、金相場の動向を注視することになりそうです。17.50ドルを明確に上抜けない限り、上昇基調への回帰とは判断できないと考えておきます。

円建て銀相場も下げています。ドル建て銀相場の下落と円高基調により、節目の61円を試す展開にあります。辛うじて直近安値付近で下げ止まっています。安値更新となった場合には、いったんは手仕舞いしたほうが無難でしょう。まずは下げ止まりを確認し、そのうえで62円を回復したところで買いを検討したいところです。

【図表3】シルバー 縦軸:円建てシルバー/グラム(単位:円)
出所:マネックス証券作成