先週のゴールド:小幅反落の展開

金相場は小幅に反落しました。週初は小幅に上昇しました。米中貿易合意をめぐって懐疑的な見方が新たに生じたことから買われました。また、トランプ米大統領への弾劾調査による米政局の不透明感や、さえない決算を背景に米国株が過去最高値から下落したことから、1週間ぶりの高値を付ける場面もありました。

11月20日には10月のFOMC(米連邦公開市場委員会)議事要旨が発表されましたが、ほとんど材料視されず、米中の「第1弾」の貿易合意の署名が遅れるとの報道が金相場を下支えしました。その後は下落しました。中国が米国の交渉官に新たな協議を打診したと報じられたことで、両国間の貿易合意への期待が高まり、金に売りが出ました。

ただし、米中協議進展について強弱双方の材料が交錯したことから下値は限られました。週末は下落しました。米中貿易協議の進展に懐疑的な見方が広がる中、強含む場面がありましたが、対ユーロでのドル高に下押されました。

米国の11月の製造業購買担当者景気指数(PMI)が市場予想を上回ったことを受けて、対ユーロでドル高が先行したことから、ドル建てで 取引される金に割高感が強まりました。

世界最大の金上場投資信託(ETF)であるSPDRゴールドトラストの保有高は、11月15日の896.77トンから、11月22日には891.79トンに減少しました。株高基調を背景に、投資家が金への投資を減らす動きを続けていると考えられます。

CFTC(米商品先物取引委員会)が公表するCOMEX金先物市場での大口投機筋の11月19日時点のポジションは28万5859枚のネット買い越しとなり、前週から1万8793枚増加しました。買いポジションが1万4107枚増加し、売りポジションが4,686枚減少しました。

円建て金相場は小幅反発しました。ドル建て金相場が小幅に下げたことに加え、為替相場がわずかながら円高水準で推移したことが上値を押さえました。

【図表1】先週のゴールド 縦軸:円建てゴールド/グラム(単位:円)
出所:マネックス証券作成

今週のゴールド:下げ渋る展開に

金相場は引き続き下げ渋りから下値固めの展開を想定しています。米国を中心とした株式市場の堅調さもあり、投資家は金市場から資金を引き揚げているようです。ただし、先週前半は投機筋が買いを継続するなど、現在の水準で買っている市場参加者も見られます。

株式市場は堅調な値動きを見せていますが、一方でリスクを感じて金を購入している市場関係者が少なくないことを意味しています。その背景には、米国を中心として主要株価指数が上昇し、過去最高値を更新する動きになる中でも、その背景などに疑念を持つ投資家がいることがあると考えられます。

米中小型株指数が高値を更新せずに下げに転じており、米国の株式市場全体が買われて上昇しているわけではありません。また、リスクが高いとされる社債を集めたハイイールド債の価格も、直近では下落基調にあり、投資家のリスク回避姿勢が鮮明になりつつあります。

このように、市場から発せられるきわめて現実的かつ有効なデータが、株価のピーク感を示していることは、無視しないほうが良いでしょう。

今の金市場は、単純に買いが入ってくる局面ではなさそうです。まずは株価の調整が起きるのかどうかを確認することになります。そのうえで、金の買い場を探ることになるでしょう。株価の調整が進めば、投資家は慌てて株式を売却し、金に資金をシフトする可能性がきわめて高いと考えています。

金利は依然として低い水準にとどまっており、金利がつかない金を購入する場合でも、コスト的には大きな負担にはなりません。昨年、10月以降に株価が大きく調整したとき、投資家はそれまでの株高基調を背景に売却し続けてきた金を慌てて買い始め、昨年第4四半期には大きく買い越しました。この動きからも、投資家がリスク回避先として金を選好する傾向が強いことがわかります。

一方で、株高基調が続き、金相場が調整した場合でも、中銀などの安値を拾いたい向きの買いが下値を支えるでしょう。彼らは基本的にバーゲンハンターですので、安値になれば確実に買いを入れてきます。近年はロシアや中国などが、米国債を売却する一方、外貨資産の中核に金を据えようとしています。ドル離れの動きが鮮明になりつつある中、これらの中銀の買いは確実に下値を支えるでしょう。

これらからも、金相場は下がりにくい構図になっており、その中で株価調整などがあれば、金相場は短期間で値を上げていく可能性が常にあると考えられます。現在は1,490ドルに上値抵抗がありますが、これを超えると大きく上昇する可能性があります。下げた場合でも、米実質金利から見た金価格の理論値が1,440ドル程度であることを考えると、下値も限定的といえそうです。

円建て金相場は引き続き5,200円を割り込んだ水準で推移していますが、下値は堅そうです。現在の水準で下値を固めることができれば、5,200円超えから再び上値を試す可能性が高まりそうです。そのような展開になれば、流れに乗る形で買いを検討したいところです。先週同様、現在の水準で買いを検討してもよいと思われますが、より安全性を重視すれば、上記のような対応が賢明と判断します。

プラチナ:小幅上昇の展開

プラチナは上昇しました。週初から週末にかけて大きく上昇し、11月21日には一時926.5ドルまで上昇し、節目の900ドルを超える場面もありました。しかし、週末11月22日には金相場の下落などを背景に急落し、900ドルを割り込み、891ドルで取引を終えました。

CFTC(米商品先物取引委員会)が公表するNYMEXプラチナ先物市場における11月19日時点のポジションは4万2085枚のネット買い越しとなり、前週から3,626枚増加しました。買いポジションが1,044枚減少し、売りポジションが4,670枚減少したことで、ネットの買い残が増加しました。ただし、週末に急落していることから、投機筋が買いポジションを縮小しているかを確認したいところです。

プラチナ相場は860ドルをサポートし、順調に上昇していましたが、先週末に急激に値を下げました。明確な材料があったわけではありませんが、金相場の上値が重かったことや、それまでの上昇ペースが速かったことなどが、手仕舞い売りを誘った可能性があります。

また、後述するように、来年は需給バランスが供給過剰に転じるとの見通しが示されたことも売り材料視された可能性がありそうです。一方、世界最大のプラチナ生産国である南アフリカの通貨ランドは引き続き堅調さを維持していることから、これが材料視されたわけではなさそうです。

需給面では引き続き、欧州の自動車販売等の材料に注目しておく必要があります。欧州自動車工業会(ACEA)が発表した10月の欧州連合(EU)の新車販売台数は前年同月比8.7%増の117万7746台となりました。プラスは2ヶ月連続です。

欧州で発効した乗用車等の国際調和排出ガス・燃費試験法(WLTP)導入前の駆け込み需要への反動で販売減となった昨年から回復し、10月としては120万台超だった2009年以来、欧州連合(EU)の新車販売台数は最高となりました。欧州景気の底打ちの兆しがみられる中、自動車販売台数の回復がプラチナ相場を支えるかに注目したいところです。

一方で、弱気な見通しもあります。ワールド・プラチナム・インベストメント・カウンシル(WPIC)は、2020年のプラチナ市場の需給バランスが供給過剰に転じるとの見通しを示しています。投資向け需要が頭打ちになり、自動車向けなど実需の減少が影響するとしています。一方、2019年は産業向けや宝飾品向けの需要が減少する一方で、投資向けが伸びることで3年ぶりの供給不足になる見通しです。

WPICは、2020年の総需要は231トンと2019年比で10%減を予想しています。主に投資向け需要が減少し、21トンの供給過剰になるとみています。

2019年はプラチナETFの残高が年初から9月までで29トンと大幅増となっており、過去最高水準に達していますが、この増加ペースが鈍ると、需給バランスは供給過剰になるとの見立てです。WPICは、2020年の投資需要は16トン増にとどまるとする一方、産業向けも自動車向けが2019年比3%減の89トンと4年連続で減少するとみており、需要鈍化見通しがプラチナ相場の上値を抑えそうです。

目先は先週末の急落の動きを受けて、軟調に推移しそうです。860ドル前後にあるサポートを維持できるかが重要なポイントになりそうです。ここを維持できれば、再び反発の可能性も出てくるでしょう。

しかし、上記のように、需給面が弱材料として意識されやすい地合いは続きそうです。底値確認でも戻り局面では売られることになりそうです。そのため、当面は860ドルと960ドルのレンジを想定しておきたいところです。

円建てプラチナ相場は上昇しました。ただし、ドル建てプラチナ相場が週末に下げており、この動きへの警戒が必要です。戻り局面では3,300円を試しましたが、いったん頭打ちになった格好です。まずは3,200円をサポートできるかを確認し、そのうえで買いを検討したいところです。

3,200円を維持できなかった場合には、3,100円まで下げる可能性があります。その場合には、押し目買いを避け、まずは3,100円でのサポートを確認したうえで買いを検討したいところです。また、為替相場の動向にも注意したいところです。

【図表2】プラチナ 縦軸:円建てプラチナ/グラム(単位:円)
出所:マネックス証券作成

シルバー:小幅続伸の展開

シルバーは小幅に続伸しました。ただし、上昇幅はわずかであり、ほぼ横ばいといってよい値動きでした。金相場が明確な方向性を示さず、週末に下げたことから、銀相場も週末に下げており、17ドルちょうど付近で週末の取引を終えました。

CFTC(米商品先物取引委員会)が公表するCOMEX銀先物市場における11月19日時点のポジションは4万4716枚のネット買い越しとなり、前週から買い越し幅が7,352枚増加しました。買いポジションが571枚増加し、売りポジションが6,781枚減少したことで、ネット買い越し幅が拡大しました。ただし、週末に値を下げていることから、投機筋が買いポジションを減らしているかを確認したいところです。

銀相場は金相場につれる形で底堅く推移しましたが、上値を追う材料もなく、目先はいったん調整する可能性がありそうです。株式市場は好調ですが、銀は工業用需要の増加などの期待があまりないこともあり、株高への反応は限られているようです。むしろ、金相場の値動きに連動しやすく、動いた場合の変動率が大きくなりやすいのが特徴です。

現状では短期的な買われすぎ感があり、調整しやすい地合いにあります。まずは16ドル台半ばでのサポートを維持できるかがポイントになりそうです。そのうえで、金相場の動向を見極めることになりそうです。

上昇した場合には、17.50ドル前後が重要な上値抵抗になりそうです。これを上抜けるような上昇になれば、18ドル超を試すことになりそうです。ただし、そのためにはまずは金相場の反転・上昇が不可欠でしょう。

金/銀レシオは86倍前後で大きく変化しているわけではありませんが、依然として歴史的高水準を維持しています。銀の金に対する割安感は依然として残っていますが、今は金市場への関心が高いため、この状況は当面続きそうです。

円建て銀相場は続伸しました。ただし、下値をわずかに切り上げただけであり、明確な方向性は見出せません。62円を超えるようだといったん上値を試しそうですが、61円を割り込むと下げ基調が続きそうです。今は慎重な対応が必要でしょう。62円を超えて、63円を超えるくらいの強さが確認できれば、その時点で買いを検討すればよいと考えます。

61円を割り込む場合には、押し目買いは避け、底値を確認することを優先させたいところです。60円まで下げたあと、サポートを形成できれば、その時点で買いを検討することも可能でしょう。

【図表3】シルバー 縦軸:円建てシルバー/グラム(単位:円)
出所:マネックス証券作成