先週のゴールド:大幅反落の展開

金相場は大幅反落しました。米中貿易協議に対する楽観的な見方や、世界的な景気減速に対する懸念の後退を受けて、市場ではリスク資産に対する投資意欲が高まりました。

週初は米国が中国製品に対する関税を引き下げるとの観測を背景に株価が上昇し、安全資産である金に売りが出ました。さらに、米国と中国が第1段階の貿易合意の一環として追加関税の一部撤廃で合意したと米政府筋が明らかにしたことを受けて、安全資産とされる金への投資意欲が減退しました。

週末には一時8月5日以来の安値となる1,455.80ドルを付けました。 週間ベースでは約3.4%下落し、2016年11月以来の大きな下落率となりました。

ホワイトハウスの報道官は、米中貿易協議が合意に至れば制裁関税が解除される可能性があるとしましたが、トランプ米大統領は「対中関税の撤回には合意していない」と発言するなど、 貿易協議の不透明感も広がっています。

世界最大の金上場投資信託(ETF)であるSPDRゴールドトラストの保有高は、11月1日の914.67トンから8日には901.19トンに減少しました。株高基調を背景に、投資家が金への投資を大幅に減らしており、リスク資産に資金を回している様子がうかがえます。

CFTC(米商品先物取引委員会)が公表するCOMEX金先物市場での大口投機筋の11月5日時点のポジションは27万9828枚のネット買い越しとなり、前週から3,313枚増加しました。買いポジションが9,168枚増加し、売りポジションが5,855枚増加しました。ただし、週末にかけて金相場が下落基調となったことから、投機筋が買いポジションを減らしている可能性があります。

円建て金相場は大幅に下落しました。ドル建て金相場の下げが影響し、節目の5,200円を割り込みました。

【図表1】先週のゴールド 縦軸:円建てゴールド/グラム(単位:円)
出所:マネックス証券作成

金相場は底値探りから底値固め、さらに反発・上昇に転じると考えます。短期的には、米中通商協議への期待でリスク資産への投資が進んでいます。しかし、この材料に対する現在の市場の反応は、あくまで憶測に基づいたものであり、確かな証拠や特定されたものはありません。

また、先週末にトランプ米大統領が中国側からの発言を否定するなど、市場の反応はあまりに楽観的になりすぎているようです。今後もこの材料に市場は一喜一憂するものと思われますが、この問題の本質は関税ではなく、ハイテク分野・知的財産権にあります。

ファーウェイやZTEへの制裁に関する米国内での協議も依然として継続されています。かなり先の長い材料になることは確実であり、目先の報道に振り回されないことが重要です。

もっとも、株式市場の状況をみると、ファンダメンタルズ面やテクニカル面からみて割高感・過熱感が際立ってきました。世界の主要株価指数は高値を付けるなど、リスク資産を買う動きが強まっています。

このように、株式市場が行き過ぎた水準である中、投資家が安全資産である金を売り、株式を買っている状況は、リスクを取りすぎている可能性を示しているように見えます。したがって、今後は相応の注意が必要と考えます。

ワールド・ゴールド・カウンシル(WGC)が発表した第3四半期の世界の金需要は1,107.9トンと、前年同期比3%増加しました。世界経済の減速懸念を背景に、資産運用担当者やヘッジファンドが安全資産とされる金への資金シフトを進めました。

世界の上場投資信託(ETF)が価値の裏付けとして保有する金の需要は258.2トン増加し、過去最高を更新しました。ETFの需要が引き続き堅調で、他部門の需要低迷を補った格好です。1~9月期の金需要は3,317.5トンで、同期間としては2016年以来の高水準でした。

第3四半期の宝飾品用の金需要は460.9トンで、前年比16%減少でした。地金・コインの需要は半減し、150.3トンでした。第3四半期の各国中銀の金購入量は156.2トンで、前年水準を大幅に下回りました。ただし、1~9月では547.5トンで、前年同期の水準を12%上回っています。

WGCは、中銀の2019年通年の金需要は600~700トンと、50年超ぶりの高水準となる651.5トンを記録した昨年とほぼ同水準になるとの見方を示しています。第3四半期の金の供給は前年比4%増の1,222.3トンでした。リサイクルによる金の供給が大幅増加し、2016年以来の高水準を記録しました。

一方、2019年のインドの金需要は3年ぶりの低水準に落ち込むとの見通しを示しています。金を好む傾向にある農村地域の収入が減少している中で、国内の金価格が過去最高値を付けたことが響くとみられています。

WGCは、インドの2019年の金需要は前年比8%減の約700トンと、2016年以来の低水準に落ち込む可能性を指摘しています。7~9月期のインドの金消費量は前年同期から3分の1程度落ち込み、123.9トンにとどまったとしています。価格上昇に加え、金需要は農村地域の弱いセンチメントの影響を受けつつあるとみられています。

インドの金需要の3分の2は、農村地域が占めています。農村では、宝飾品は伝統的に貯蓄手段とされています。インドは、6~9月のモンスーン期に過去25年で最も多い降水量を記録しました。降雨は10月も続き、綿花や大豆などの作柄に打撃を与えています。

9月のインドの金先物相場は、10グラム当たり3万9885ルピー(563.85ドル)と過去最高値を付けています。2019年は年初来で約22%上昇しており、通貨ルピー安が反映されています。このように、世界第2位の金消費国であるインドの需要動向には注目しておきたいところです。

上記のように、今年も金需要は堅調なもようです。特に、中銀の購入意欲が堅調です。彼らはいったん購入すると、基本的にすぐに売却することはありません。したがって、市場に供給された金は、市場から消えてなくなることになります。この購買力は金市場の需給を確実に引き締め、金相場の根本的な下支え要因になります。

中銀は2010年以降、ネットで買い越しを続けています。彼らがこの姿勢を変えないうちは、金相場は下げにくいと考えるのが自然でしょう。特に中国とロシアの買いがきわめて堅調です。外貨準備の構成を大きく転換させていますが、対米政策の一環であることはいうまでもないでしょう。

このように、金は中銀によって戦略的に買われています。この背景をよく理解したうえで、中長期的な視点で金市場を見ていくことが肝要です。

さて、今後の目先の金相場ですが、繰り返すように、株価の割高感・過熱感がどの程度意識されるか次第でしょう。とはいえ、金相場は11月から2月に上昇しやすい傾向があります。そのため、今の時期に金を手放すのは得策ではないでしょう。

また、株価が調整すれば、安全資産として金が買われる可能性はきわめて高いと考えられます。1,450ドル前後にあるサポートを試す展開にありますが、この水準を維持できれば、再び上向くものと考えます。

短期的には売られすぎ感が出始めていますので、そろそろ反発を想定しておきたいところです。株安リスクを背景とした投資資金の流入も加わり、金相場は今年の高値である1,557ドルを再び目指す動きになるものと考えます。株安基調がさらに強まれば、この水準を超える可能性も十分にあるでしょう。11月は今年最大のリスクオフの動きに要注意と考えます。

円建て金相場は5,200円を割り込み、下げ基調が鮮明です。まずは次の節目である5,100円で下げ止まるかを確認したいところです。繰り返すように、11月から2月は金相場が上げやすい期間です。現在の下げ基調が収まり、反発に転じれば買いやすいといえます。

そのため、まずは底値固めから反発に転じるのを確認したうえで、買いを検討したいところです。また、5,100円を割り込むまでは、保有ポジションを維持して状況を見守りたいと考えます。

プラチナ:大幅反落の展開

プラチナは大幅反落しました。週初には一時955.75ドルまで上昇する場面がありましたが、そこが高値になり、そのまま週末にかけて下落する展開となりました。株価は上昇しましたが、プラチナ相場は金相場の下落につれる形で下げ相場が続き、週末には一時882.46ドルまで下落し、886.64ドルで取引を終えました。

CFTC(米商品先物取引委員会)が公表するNYMEXプラチナ先物市場における11月5日時点のポジションは4万5695枚のネット買い越しとなり、前週から3,398枚増加しました。買いポジションが3,479枚増加し、売りポジションが81枚増加しました。ただし、週末にかけて大きく下落しているため、投機筋がポジションを大きく削っているものと思われます。

これまでプラチナ相場は、金相場の堅調さと株価の上昇に合わせる形で上昇基調にありました。また、株価が短期的に上昇していることから、工業用需要の多いプラチナには追い風になりやすいと考えていました。しかし、連動性の高い金相場の下落が株価の上昇よりも材料視され、強い下落相場になったといえそうです。

このように、金相場が下げてしまうと、高値を維持できないのが今のプラチナ相場の弱さといえます。そのため、まずは金相場が底打ちから反発に向かうことができるかを確認すること重要でしょう。

短期的には、サポートレベルとみられる890ドルを割り込んだため、目先は865ドルを維持できるかを確認することになります。これを割り込むと、830ドルさらに790ドルまでの下げになる可能性があります。まずは865ドルを維持できるかを確認し、反発に転じることができるかを見ておきたいところです。

一方、プラチナ需要の重要な位置を占めるディーゼル車の自動車触媒向け需要の状況にも注目しておきたいところです。ドイツ連邦自動車局(KBA)が発表した乗用車統計によると、10月の新車登録台数は前年同月比12.7%増の28万4593台でした。

10月もスポーツ用多目的車(SUV)の人気が堅調で、29.7%増加しました。一方で、エコカーの需要も高まり、電気自動車(EV)は46.9%、ハイブリッド車(HV)とプラグインハイブリッド車(PHV)は138.6%それぞれ急増しました。

ドイツ自動車工業会(VDA)が発表した乗用車統計によると、10月の輸出台数は30万3700台と、前年同月比10%減でした。9月は2%増に改善していましたが、再び悪化しました。

国内販売台数(新規登録台数)は28万4600台で、国際統一燃費試験法(WLTP)による試験を通過したモデルが不足していた前年同月から13%回復しました。生産台数は5%減の40万5400台でした。受注台数は国内向けが1%、輸出向けが4%それぞれ減少し、市場回復の兆しは依然として表れていないようです。

1~10月累計の生産台数は前年同期比9%、輸出台数は12%それぞれ減少し、国内販売は3%増でした。このように、欧州の自動車市場は依然として低迷しており、需要面ではプラチナ相場の上昇を後押しする材料は見当たらないのが現状です。この点は常に念頭に入れておきたいところです。

一方、これまで注目点としてきた、世界最大のプラチナ生産国である南アフリカの通貨ランドの対ドル相場は、上値が抑えられています。ランド相場は1ドル=14.65ランドを超えることができず、このあたりで上値が抑えられると、いったん下げる可能性があります。その場合には、少なからずドル建てプラチナ相場の上値抑制要因になりそうです。この点にも注意しながらプラチナ相場の動向を見ていくことが肝要です。

円建てプラチナ相場は下落しました。先週末時点では、手仕舞いの基準としていた3,200円を維持しています。この水準を維持して反発に転じることができれば、そのままポジションを維持して上昇を待てばよいと考えます。

ただし、3,200円を割り込んだ場合には、いったん下げを試す可能性が高まります。その場合には、3,100円で下げ止まるかを確認したうえで対応を検討したいところです。

【図表2】プラチナ 縦軸:円建てプラチナ/グラム(単位:円)
出所:マネックス証券作成

シルバー:大幅反落の展開

シルバーも大幅反落しました。週初は18.22ドルの高値を付ける場面がありましたが、その後は金相場が軟調に推移する中、連れる形で下落基調が強まり、週末にかけて下落が続きました。週末には16.67ドルの安値を付け、16.79ドルで引けました。

CFTC(米商品先物取引委員会)が公表するCOMEX銀先物市場における11月5日時点のポジションは4万7997枚のネット買い越しとなり、前週から買い越し幅が5,681枚減少しました。買いポジションが1,806枚増加しましたが、売りポジションが7,487枚増加したことで、ネット買い越し幅が縮小しました。週末にかけて、銀相場が下落していることから、さらに売りポジションが積み上がっている可能性があります。

銀市場は引き続き独自の材料が見えない中、金相場の変動につれる形で動いてきました。金相場の上昇と株高は銀相場の押し上げ要因でしたが、その1つの要因である金相場の下落が銀相場を大きく押し下げました。

株高はほとんど材料視されていないことを考えると、今はやはり金市場の動向が非常に大きく影響していることがわかります。したがって、今後も銀相場の動向を見極めるためには、引き続き金相場の動向を見極めることが肝要といえます。

銀相場は16.35ドルにあるサポートを割り込むと、心理的節目の16ドル、さらに直近の安値レベルである15ドルちょうどを目指すことになります。その場合には、金相場が相応に弱い展開になっているものと思われます。15ドルを割り込むと、5月に安値である14.25ドル水準がターゲットになるでしょう。しかし、さすがにここまでの下落は想定しづらいといえます。

したがって、まずは金相場の下げ止まりを確認し、そのうえで銀相場の動向を見ていきたいところです。また、今回でも再確認できたように、金相場の変動に対して銀相場のほうが大きく動くのが一般的なパターンです。この点にも注意が必要と考えます。

円建て銀相場も大きく値を下げました。ドル建て銀相場の下落が反映されました。63円割れでは手仕舞いを検討したいとしましたが、その水準を下回りました。一方、直近安値の61円から節目の60円が下値の目途になりますが、現状ではまだ底値を確認できる状況にはありません。

まずはこれらの水準での下げ止まりを確認し、反発に転じるのを待つのが賢明と考えます。反発に転じた場合には、その流れに乗る形で再度買いを検討したいと考えます。62円を回復した場合には、早めに買いを検討したいところです。

【図表3】シルバー 縦軸:円建てシルバー/グラム(単位:円)
出所:マネックス証券作成