先週のゴールド:続伸の展開

金相場は上昇しました。週初は下落しました。米中貿易交渉への楽観的な見方を背景にS&P 500が過去最高値を更新するなど、リスクオンの動きになっていることが材料視され、安全資産である金に売りが出ました。その後も1,483.50ドルに下落し、1週間ぶりの安値を付けました。

米中貿易協議合意への期待からリスク選好が強まりました。その後は上昇しました。10月30日の米連邦公開市場委員会(FOMC)を控えて買い戻しが優勢となりました。FOMCの結果と声明の発表後は売り買いが交錯し、1,500ドルを下回る水準で推移しました。

しかし、翌10月31日には急伸し、一時1,514.20ドルまで上昇。1週間ぶりの高値を付けました。月間ベースでは2%超の上昇となりました。米利下げに加え、米中貿易交渉の不透明感が安全資産としての金の魅力を高めました。

週末は小動きでした。米雇用統計と中国の景況指数を好感してリスク資産の買い意欲が回復し、株価は上昇しましたが、安全資産とされる金への売りは限定的でした。

世界最大の金上場投資信託(ETF)であるSPDRゴールドトラストの保有高は、10月25日の918.48トンから、11月1日には914.67トンに小幅減少しました。株高基調を背景に、投資家が金への投資をわずかながら減らしています。それでも、高水準を維持しています。

CFTC(米商品先物取引委員会)が公表するCOMEX金先物市場での大口投機筋の10月29日時点のポジションは27万6515枚のネット買い越しとなり、前週から1万7383枚増加しました。買いポジションが1万2506枚増加し、売りポジションが4,877枚減少しました。金相場が底堅い推移を続ける中、投機筋は買いポジションを増やし続けています。

円建て金相場は小幅に下落しました。ドル建て金相場は上昇しましたが、為替相場が円高基調になったことで下げました。

【図表1】先週のゴールド 縦軸:円建てゴールド/グラム(単位:円)
出所:マネックス証券作成

今週のゴールド:上昇基調継続へ

金相場の上昇基調はより明確になっていくと考えます。米中通商交渉の進展期待や、米雇用統計の強さを背景に、先週末の米国株はS&P 500とナスダック指数が過去最高値を更新しました。また、世界的にも主要株価指数が高値を付けるなど、リスク資産を買う動きが強まっています。

市場の関心を集めていた10月29・30日開催のFOMCでは、政策金利を0.25%引き下げ、年1.50~1.75%にすると決定しました。米中貿易摩擦を受けて米経済の減速感が強まる中、7月以降3会合連続となる利下げで景気を支える方針を示しました。ただし、今後は様子見姿勢を取り、金融緩和をいったん停止する可能性を示唆しました。

会合後に発表した声明は、米景気が「緩やかに拡大した」との評価を踏襲しました。追加利下げを示唆した「景気拡大の持続へ適切な行動をとる」との従来の表現を削除し、経済情勢を見極めて「適切な政策金利の道筋を評価する」と改めました。

パウエル議長は記者会見で「これまでの政策は景気を大きく下支えした」と強調し、「米中貿易協議が部分合意に達したことで、景気へのリスクが後退した」とし、「現在の政策スタンスが適切であり続ける公算が大きい」と、当面は様子見が適切との考えを示しました。ただし声明では「先行きに不透明感が残っている」とも指摘し、経済指標などが明確に景気悪化を示せば利下げを辞さない構えも見せました。

政策決定は賛成多数でしたが、投票権を持つ10人のち、ボストンとカンザスシティーの2地区連銀総裁が9月会合に続いて据え置きを主張して反対しました。前回は大幅利下げを主張したセントルイス連銀のブラード総裁は今回、賛成に回りました。

このように、利下げ判断について、米連邦準備制度理事会(FRB)内で見解が割れていることが改めて示されました。金融政策については、トランプ米大統領が「さらに景気刺激策を講じなければ職務怠慢だ」などと執拗に批判し、マイナス金利を導入している日本や欧州に対抗するため、FRBに大幅な利下げを迫る可能性が高いとみられています。

クラリダFRB副議長は、「FRBは今年3度目の利下げに踏み切ったばかりだが、米景気は良い状態にあり、金融政策も良い位置にある」とし、金融緩和の一時停止を示唆しました。ただし、「先行きには明確なリスクがある」とし、経済情勢を様子見する姿勢を示しました。

さらに、「米中貿易摩擦や英国のEU離脱をめぐる不確実性が米製造業、企業の設備投資に響くなど、先行きに逆風が吹いている」と指摘し、「見通しに重大な再評価をもたらす状況が起きれば、それに沿った対応をとる」として、追加利下げの可能性も排除しませんでした。

一方、貿易が米国経済に及ぼす影響に関連し、「ドル相場が昨年以降の米輸出の急減で大きな要因になったとは説明できないようだ」としています。トランプ政権が仕掛けた貿易摩擦が、輸出の落ち込みを招いたとの認識を示し、明言は避けつつドル高が要因と訴えるトランプ米大統領に反論しています。

今後のFRBの政策には不透明感が残りますが、これまでの利上げ姿勢から7月以降は利下げ姿勢に転換せざるを得なかった点や、トランプ米大統領や市場からの圧力で利下げを強いられていることを考慮すれば、FRB自身が機能していないとも言えます。

金融当局の機能不全が市場を不安定化させるリスクが高まっているように感じます。FRBは月額600億ドルでの短期国債の買い入れを開始していますが、これを「量的緩和ではない」としていますが、このような説明の仕方もFRBへの信認低下につながりやすいと考えられます。

一方で今回の株高基調にもかかわらず、債券利回りの上昇は限定的であり、さらに金市場からの資金流出もみられていません。投資家は株価が高値を更新する中でも、安全資産への資金移動を続けており、リスク回避的な姿勢も維持しているように見えます。

米経済指標はここ数ヶ月はやや弱い指標が続いていることも、その背景にあるものと思われます。2019年7~9月期の実質GDP速報値は年率換算で前期比1.9%増と、2期連続で減速し、前期の2.0%増から落ち込んでいます。

米中貿易摩擦の影響で設備投資や個人消費が鈍化しています。また、10月のISM製造業景況感指数は48.3と、9月の47.8から上昇しましたが、市場予想の48.9は下回り、景気の拡大・縮小の節目とされる50を3ヶ月連続で割り込んでいます。

住宅指標も再び小幅ながら軟化しており、今の株高を肯定するのはかなり無理がある状況といえます。これは、企業業績からみたバリュエーション面で株価を評価すれば、容易にわかることでしょう。

このように考えると、米国株の割高感を背景とした調整リスクが今後は高まる可能性が高いと考えられます。実際に株価調整が進めば、リスク回避先として金が選好される可能性はきわめて高いと考えます。それは、繰り返すまでもなく、これまでの投資家行動を考慮すればそのように考えるのが常識的であるといえます。

さらに、繰り返すように、季節性の面からも金価格は11月から2月は上昇しやすい傾向が鮮明です。今後は季節性からの上昇のしやすさに加え、株安リスクを背景とした投資資金の流入も加わり、金相場は今年の高値である1,557ドルを再び目指す動きになるものと考えます。株安基調がさらに強まれば、この水準を超える可能性も十分にあるでしょう。11月は今年最大のリスクオフの動きに要注意と考えます。

円建て金相場は5,300円を維持できませんでしたが、5,200円を維持できれば押し目買いを検討したいところです。リスクオフの動きが鮮明になれば、円高基調が強まり、円建て金相場の上値は抑えられやすくなりますが、一方でドル建て金相場が大きく上昇する可能性が高いため、円高の動きを過度に気にする必要はないでしょう。

10月は11月以降の上昇に向けた買い場であることを指摘してきました。5,300円を再び回復すれば、そのまま上昇基調が続く可能性がありそうです。その場合でも、上昇の流れに乗る形で買いを検討したいところです。これから上昇しやすい期間に入るため、投資タイミングを逃さないことが肝要です。

プラチナ:大幅続伸の展開

プラチナは大幅続伸しました。週初は金相場に合わせる形で下落し、一時904ドルまで下落する場面がありました。ここには重要なトレンドラインが控えていましたが、これを維持したことから反発し、その後は金相場の底堅い展開につれる形で買いが入り、週末にかけて上昇の勢いが強まりました。週末には一時954ドルまで上昇し、946ドルで引けました。

CFTC(米商品先物取引委員会)が公表するNYMEXプラチナ先物市場における10月29日時点のポジションは4万2297枚のネット買い越しとなり、前週から6,581枚増加しました。買いポジションが1,383枚増加し、売りポジションが5,198枚減少しました。プラチナ相場の上昇に合わせる形で投機筋も買いポジションを積み上げていることがわかります。

金相場が高値圏を維持するものの、やや膠着状態にある中、今はプラチナ相場の強さの方が際立っています。株価が短期的に上昇していることも、工業用需要の多いプラチナには追い風になりやすいといえます。

このように、今のプラチナは連動性の高い金相場の上昇と、株価の上昇の両方を材料とする強いパターンにあるといえそうです。したがって、これらの状況が変わるときが、相場の変調のタイミングになりそうです。

直近高値の960ドルを超えるような動きになれば、9月5日につけた高値の997.1ドルを付ける可能性が高まりそうです。ただし、ここまで上昇した場合には、1,000ドルの大台を前に利益確定売りが出ることも想定されます。

一方、これまで注目点としてきた、世界最大のプラチナ生産国である南アフリカの通貨ランドの対ドル相場の動向にも引き続き注目しておきたいと考えます。

ランド相場は10月28日に1ドル=14.5050ランドまで上昇しましたが、その後は急速に下落し、10月31日に15.1848ランドまで下落しました。しかし、週末には一時14.74ランドまで上昇したことで、これがドル建てプラチナ相場を押し上げている可能性があります。

南アランドは再び上昇に向かう展開が想定されるため、引き続きプラチナ相場への影響も見ながら対処したいところです。

また、最大の需要先であるディーゼル車の自動車触媒向けの需要が頭打ちになるとの見方は根強いものがあります。欧州景気の鈍化もこれに拍車をかけています。したがって、この材料には引き続き注意が必要と考えます。

一方で、調整した場合には910ドルから920ドルで下げ止まるかを確認したいところです。ここでサポートされれば、押し目買いが入りやすいと考えます。

円建てプラチナ相場は小幅に上昇しました。ドル建てプラチナ相場は上昇しましたが、ドル円相場が円高基調となったことで、3,300円近辺での横ばいの動きになりました。今後はドル建てプラチナ相場の上昇を想定しつつ、再び3,500円を試す展開を想定しておきます。そのため、まずは3,300円を維持している状態の中で買いを検討したいところです。

また、下げた場合でも、3,200円で下げ止まれば、押し目買いを検討します。ただし、市場がリスクオフになった場合には要注意です。ドル建てプラチナ相場が売られやすくなることに加え、為替相場は円高になりやすく、これらが円建てプラチナ相場に大きな影響を与える可能性があります。そのため、3,200円を割り込むようであれば、いったんは手仕舞いをしたほうがよさそうです。

【図表2】プラチナ 縦軸:円建てプラチナ/グラム(単位:円)
出所:マネックス証券作成

シルバー:続伸の展開

シルバーも続伸しました。週初は下落し、金相場が軟調に推移する中、連れる形で17.55ドルまで下落する場面がありました。その後は金相場の上昇を背景に買われ、週末は18.08ドルで取引を終えました。

CFTC(米商品先物取引委員会)が公表するCOMEX銀先物市場における10月29日時点のポジションは5万3678枚のネット買い越しとなり、前週から買い越し幅が6,935枚増加しました。買いポジションが5,621枚増加し、売りポジションが1,314枚減少しました。

底堅く推移したことから、新規の買いが増える一方、売りポジションを買い戻す動きがみられました。週末にかけて値を上げていることから、さらに買いが増えている可能性が高いと考えられます。銀市場は引き続き独自の材料が見えない中、徐々に下値を切り上げています。

金相場の堅調さに加え、株高基調も押し上げ要因と考えられます。上昇しているとはいえ、大きく値を上げているわけではなく、上昇余地があります。また、下値が徐々に切り上がっており、急伸しやすい値動きにあるといえます。

そのため、まずは金相場の動きを見ながら、銀相場の値動きを見極めたいと考えます。8月下旬には17ドル台前半から9月4日に19.64ドルの高値をつけました。今回もこのときのような急騰相場になるかを確認したいところです。

一方、下落した場合でも、17.70ドルを維持できれば上昇基調が継続していると判断します。ただし、これを割り込んだ場合でも、17.25ドル前後で下げ止まれば、反発の可能性は残ると考えます。

円建て銀相場は小幅に下落しました。ドル建て銀相場は上昇しましたが、円高基調が上値を押さえました。64円を維持しており、基調は崩れていません。65円を超えるような動きになれば、上昇に勢いがつきやすい地合いは維持されています。その場合には、その流れに乗る形で買いを検討したいところです。

また、下げた場合でも、64円を維持できれば、押し目買いを検討したいところです。ただし、63円を割り込んだ場合には、手仕舞い売りを行い、状況を見極めたいところです。

【図表3】シルバー 縦軸:円建てシルバー/グラム(単位:円)
出所:マネックス証券作成