先週のゴールド:小動きの展開

金相場は小幅に上昇しました。週初は反発しました。米国と中国が貿易合意に達するとの楽観的な見方が後退したことで、買いが入りました。

その後は下落しました。投資家のリスク選好意欲が高まり、株式への需要が強まったことで売りが出ました。しかし、香港に関する米国の姿勢が米中貿易交渉の妨げになるとの懸念が高まると、再び買われました。

また、米国から弱い内容の経済統計が出たことで景気減速懸念が再燃したことや、英国とEUの新離脱案合意への懸念が材料視されて小幅に上昇しました。

週末は反落しました。ただし、中国の第3四半期のGDP成長率が1992年の統計開始以来の低水準となったことや、米中貿易合意に向けた進展への疑念、さらに10月19日に英国と欧州連合(EU)が合意した新たな離脱協定案の議会採決を前に、リスク回避の買いが入ったことで下落は抑制されました。

7~9月期の中国のGDPは前年同期比6.0%増と鈍化し、市場予想を下回りました。製造業の軟調や、長期化している米国との貿易摩擦が影響しました。 ただし、9月の中国における製油所の原油処理量は前年同月比9.4%増加しました。経済に対する逆風の中、中国の石油需要が引き続き堅調であることが示されました。

また、米中の「第1段階」の貿易合意について、ムニューシン米財務長官は、両国首脳による来月の署名を目指して双方の担当者が作業中と発言するなど、ポジティブな材料がみられる中、金相場は底固く推移しました。

世界最大の金上場投資信託(ETF)であるSPDRゴールドトラストの保有高は、10月11日の921.71トンから10月18日には924.64トンに増加しました。週末の株価急落や英国とEUが合意した新たな離脱協定案の議会採決を前に、リスク回避の買いが入った可能性があります。

CFTC(米商品先物取引委員会)が公表するCOMEX金先物市場での大口投機筋の10月15日時点のポジションは25万3027枚のネット買い越しとなり、前週から2万2536枚減少しました。買いポジションが1万5013枚減少し、売りポジションが7,523枚増加しました。上値の重さから買い方の手仕舞い売りと売り方の新規売りが出ています。

円建て金相場は小幅上昇しました。ドル建て金相場が下げる一方、為替相場が円安になったことで上昇しました。

【図表1】先週のゴールド 縦軸:円建てゴールド/グラム(単位:円)
出所:マネックス証券作成

今週のゴールド:上昇に向けた初動へ

金相場は底値固めから上昇に向けた初動に移行すると考えます。米中通商交渉では「第1段階の合意」に達したことで市場に楽観的な見方が広がり、株式市場が上昇するなど、リスクオンの動きとなりました。

また、中国商務省は、米国との通商交渉について、可能な限り早期に段階的な合意に達し、双方の製品に対する関税の撤回を進展させたいと表明したことも、市場に安心感を与えました。

さらに、本格化し始めた第3四半期の米主要企業の決算発表の内容が、市場予想に比べて堅調なことも、株式の買い安心感につながっています。

一方、週末に発表された中国の第3四半期のGDPについての内容は、中国の成長力の弱さを確認することになりました。米中貿易戦争の影響を受けている可能性が示され、今後の通商協議の進展具合次第では、さらなる景気の落ち込みへの懸念が高まる可能性があります。

12月15日には幅広い品目への追加関税の実施が控えており、米中通商交渉は引き続き市場の最大の注目点になるものと思われます。

一方、米連邦準備制度理事会(FRB)が月額600億ドルの米財務省証券の買い入れを発表して以降、短期金利と長期金利の差が拡大し始めています。一時は「逆イールド化」が懸念された時期もありますが、徐々に長短期利差が拡大する一方、短期金利の上昇が抑えられるようだと、金市場にはポジティブな材料となります。

また、第3四半期の米主要企業の決算発表の内容が確認されるにつれて、上がりすぎた株価の調整が入る可能性があると考えられます。株価の割高感もあり、徐々に投資家のリスク回避姿勢が強まり、安全資産としての金への関心が高まると考えられます。

また、繰り返すように、季節性の面からも買い場にあると考えられます。11月から2月は上昇しやすい傾向が明確であり、10月の安値は買い場になると考えられます。今は横ばいの動きが続いていますが、少なくとも売り込む動きは見られません。

潜在的な買い圧力が下値を支えていると考えられ、いったん上向き始めると、比較的容易に値を上げていくのではないかと考えられます。すでにテクニカル調整が完了していることも上昇を後押ししそうです。いったん上向けば、再び1,550ドルを目指すものと思われます。

円建て金相場は5,200円と5,300円のレンジの中で推移しています。このレンジを抜けると大きな動きになりそうです。まずはドル建て金相場が上昇に向かうかを確認することになります。そのうえで、為替相場の動向を見極めながら対応することになるでしょう。5,300円を回復できれば、その流れに乗る形で買いを検討したいところです。

ただし、押した場合でも、5,200円を割り込まなければ、押し目買いの機会となるでしょう。横ばいの動きが続いているため、対応しづらいところですが、動きが出るのを確認できれば、即座に対応できるように準備しておきたいところです。

プラチナ:底値固めから上昇へ

プラチナは横ばいでの推移となりました。前週の上昇の反動で週初は下落し、10月16日には一時871ドルまで値を下げる場面がありました。しかし、それ以下の水準を売る動きは限定的で、週末にかけて水準を切り上げ、週末は889ドルで引けました。

CFTC(米商品先物取引委員会)が公表するNYMEXプラチナ先物市場における10月15日時点のポジションは2万8247枚のネット買い越しとなり、前週から1,433枚増加しました。買いポジションが1,726枚増加し、売りポジションが293枚増加しました。

プラチナ相場は明確な方向性が出ない中でも、下値を徐々に切り上げる展開になっています。そのため、875ドル水準を維持して推移できれば、いずれ一度は上値を試す可能性がありそうです。

今は重要な上値抵抗線が900ドル前後に位置しています。これをクリアできれば920ドル、さらに960ドルと上値を試すことになりそうです。ただし、その場合には相応の材料が必要でしょう。

とはいえ、今のプラチナ市場には、特段の目立った買い材料があるわけではありません。欧州のディーゼル車の販売は依然として低迷しており、ディーゼル車向けの自動車触媒需要の増加がプラチナ需給の引き締まりにつながる可能性は高いとは言えない状況です。

そのため、バリュー面で期待できる材料としては、世界最大のプラチナ生産国である南アフリカの通貨ランドが対ドルで上昇することで、ドル建てプラチナ相場の割安感が意識される中、バリュー面で上昇する可能性を見ていくことになりそうです。

先週の南アランドの対ドル相場は一時的に下落する場面もありましたが、その日はプラチナ相場も下げるなど、南アランド相場の動向が多少は意識されている可能性がありそうです。したがって、需給面に加え、南アランドの値動きにも注目しておきたいところです。

円建てプラチナ相場は下落しました。ドル円相場が小幅に円安となりましたが、上値の重い展開となりました。ただし、崩れているわけではなく、むしろ下値を固めて上値を試そうかという値動きに見えます。そのため、3,200円を明確に上抜いてくると、いったんは上昇を試しそうです。まずは3,200円超えとなるかを確認したうえで、その場合には買いを検討したいところです。

下げた場合でも、3,100円を維持できれば、上昇の可能性は残るでしょう。ドル円相場の動きにも注意しながら、3,100円での下げ止まりを確認したうえで押し目買いも併せて検討したいところです。

【図表2】プラチナ 縦軸:円建てプラチナ/グラム(単位:円)
出所:マネックス証券作成

シルバー:横ばいの推移

シルバーは先週も横ばいでの推移となりました。特段の材料がない中、金相場の動向もはっきりしないことから、狭いレンジでの推移に終始し、17.54ドルで週末の取引を終えました。

CFTC(米商品先物取引委員会)が公表するCOMEX銀先物市場における10月15日時点のポジションは4万3989枚のネット買い越しとなり、前週から買い越し幅が6,765枚減少しました。買いポジションが5,004枚減少し、売りポジションが1,761枚増加しました。上値の重さを認識した向きが買いポジションを縮小させる一方、新たに売りポジションを作る動きもみられました。

銀市場では依然として目立った材料がなく、上下ともに狭いレンジでの推移となっています。こうなると、いずれ大きな動きが出る可能性が高そうです。もともと銀相場はボラティリティが金などに比べて相対的に高いのが特徴です。

今は静かな値動きですが、いずれ大きな値幅につながるものと思われます。その場合には、上昇の可能性が高いと考えられます。とはいえ、まずは現行水準を固めたうえで、上値を試すことができるかを確認することになります。

無論、金相場次第と考えられるため、まずは金相場の動向を見極めるのが肝要です。金相場の堅調さが確認され、そのうえで銀相場が17.60ドルから17.70ドルを超える動きになれば、上げやすくなるものと思われます。

さらに、10月9日につけた高値の17.95ドルを超えるようだと、再び大相場に発展する可能性が高まりそうです。一方で、下げた場合でも、16.95ドルでサポートされれば、反発の可能性は残ると考えます。

円建て銀相場は小動きでした。ドル建て銀相場と同様に、方向感のない展開にあります。まずはドル建て銀相場の動きを見極めたうえで、63円前後で堅調に推移するようになれば、買いを検討したいところです。

逆に調整の動きが強くなった場合には、安易に押し目買いをせずに、反発を待つのが賢明と考えます。そのうえで、上昇基調に戻ったことが確認できれば、その流れに乗る形で買いを検討するのが良いと考えます。

【図表3】シルバー 縦軸:円建てシルバー/グラム(単位:円)
出所:マネックス証券作成