先週のゴールド:反落の展開

金相場は反落しました。米金利上昇やドル高が重石となり、週初は下落しました。米中閣僚級協議の開催を10月10日に控える中、両国高官の前向きな発言を受けて貿易協議に対する楽観的な見方が強まったことも売り材料視されました。

10月8日には反発しました。一時は1,487.23ドルまで下落し、1週間ぶり安値を付ける場面もありましたが、米中貿易協議や英国のEU離脱の不透明感が株価を押し下げ、投資家による安全資産への逃避買いを促しました。その後は、9月の米連邦公開市場委員会(FOMC)の議事要旨が公表され、追加利下げ期待が広がったことが下値を支えました。しかし、米国と中国が貿易協議で合意することへの期待感からリスク地合いが高まり、金相場の上昇を抑制しました。

10月10日には一時1週間ぶり高値となる1,516.76ドルまで上昇しました。しかし、中国が貿易摩擦の激化を回避するため、米国との合意を望んでいるとの報道を背景にその後は値を消しました。

週末10月11日には下落しました。米中貿易摩擦と英国のEU離脱への懸念が和らいだことを受けて、リスク資産への買い意欲が回復し、金は売られました。

米中両政府はワシントンで閣僚級貿易協議を実施し、トランプ米大統領も協議に合わせて訪米中の中国の劉鶴副首相と会談しました。前日夕方に「協議が非常に順調だった」と発言し、ツイッターに「かつてよりも好感触だ」と肯定的な発言を投稿しています。

これを受けて、協議進展への期待で株価は終日大幅高となり、米金利も上昇したことから、安全資産である金は売られ、1,489.45ドルで週末の取引を終えました。

世界最大の金上場投資信託(ETF)であるSPDRゴールドトラストの保有高は、10月4日の923.76トンから、10月11日には921.71トンに小幅ながら減少しました。

CFTC(米先物取引委員会)が公表するCOMEX金先物市場での大口投機筋の10月8日時点のポジションは27万5563枚のネット買い越しとなり、前週から6,570枚増加しました。買いポジションが1万1583枚増加し、売りポジションが5,013枚増加しました。押し目とみる向きが買う一方、少しでも戻したところで売りたいと考える向きが売りを出すなど、新規の売り買い両方の動きがみられます。

円建て金相場は小幅下落しました。ドル建て金相場が下げる一方、為替相場は円安になったことで小幅な下げにとどまりました。

【図表1】先週のゴールド 縦軸:円建てゴールド/グラム(単位:円)
出所:マネックス証券作成

今週のゴールド:底堅めの動きを想定

金相場は底値固めの動きを想定します。先週は市場の関心を集めていた米中通商交渉における閣僚級会合が実施されました。

トランプ米大統領は終了後、「重要な第1段階の合意に達した」と表明しました。中国による米農産物の購入拡大や知的財産権保護、通貨安誘導の抑止などで部分的に合意し、米国は10月15日に予定していた対中追加関税の引き上げを見送ることとなりました。

米中首脳は来月にも会談し、成果文書の署名を目指す方針です。貿易戦争の激化で世界経済に一層深刻な打撃が及ぶ事態は当面回避されたといえます。トランプ米大統領は中国交渉団代表の劉鶴副首相とホワイトハウスで面会した後、「貿易戦争の終わりに非常に近づいている」と成果を強調し、劉氏も「大きく前進した」としました。

ただし、米国が対中協議の本題と位置付ける技術移転の強要など構造改革問題の一部は「継続協議」とし、先送りしています。とはいえ、米中両国が昨年7月に制裁・報復関税の応酬に突入して以降、貿易問題に関する初めての具体的な成果となります。第1段階の合意には農業や知財、通貨、金融サービスが含まれ、今後4~5週間で文書をまとめる方針です。

トランプ米大統領は南米チリで来月開かれるアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議に合わせ、中国の習近平国家主席と会談することを視野に入れています。トランプ米大統領は、中国からの輸入品2,500億ドル分に対する制裁関税第1~3弾の税率を25%から30%へ引き上げる措置について「今月15日の実施を延期する」としました。

一方、12月15日に予定する中国製品ほぼすべてに課税対象を広げる制裁第4弾の発動見送りについては、米通商代表部(USTR)のライトハイザー代表は「決定していない」とし、今後の第2段階の交渉で中国の出方を見極めて判断する構えです。

今回の会合を前に、市場では部分合意に対する期待が高まっていました。実際に期待通りの結果となったことで、株価は上昇し、米金利も上昇しました。しかし、25%の関税はかかったままであり、さらに制裁第4弾の発動見送りについては決定していません。

これまでトランプ米大統領は「大きな取引を望む」と強調し、国有企業を優遇する中国の補助金や米企業への技術移転強要問題を含む「包括合意」を目指してきました。しかし、米景気の腰折れ懸念や、弾劾調査に発展したウクライナ大統領への圧力疑惑など国内には逆風が吹き荒れています。

来年の再選を狙うトランプ米大統領には、妥協してでも対中貿易の成果を急いで「失点」の穴埋めを図る思惑もあるのでしょうか。いずれにしても、これまで「有言実行」を貫いてきたトランプ米大統領らしからぬ合意といえます。その意味では、失望感もあります。

一方、中国の習近平国家主席も、国内景気の減速や香港民主化デモなど、国内問題の収束が見通せない状況にあります。10月7日にはトランプ米政権がウイグル族弾圧を根拠に中国企業への経済制裁を決定するなど、他国の人権問題にまで踏み込んできました。中国は貿易協議で当初、米国が発動済みの追加関税の全廃を合意の条件に掲げてきましたが、事態打開へ目先の合意を優先したといえます。

このように、先送りした難題の成否は見通せません。中国は新たな法整備を伴う構造改革に慎重姿勢を崩しておらず、他国の圧力で自国の法律が変えられるようなことは到底受け入れられないでしょう。

他方、トランプ米大統領も、合意発表時に「今後数週間で破談になる可能性もある」として、中国の出方をけん制しています。これまでトランプ米政権は、中国といったん決めた「関税棚上げ」の合意をたびたび破棄しています。今回に関しても、再び強硬姿勢に転じる可能性は否定できません。市場の今回の反応はあまりに過剰であるといえます。

また、米連邦準備制度理事会(FRB)が、月額600億ドルの財務省証券の買い入れを開始します。これをFRBは「量的緩和策とは違う」としています。しかし、短期金利は一時的に低下する可能性があり、実際に長短金利差は拡大傾向にあります。

今のように、銀行が資金不足になっている理由は、国債を担保に資金を借り入れしすぎていることがあります。国債を固定してしまっていますので、流動化しません。最も現金化しやすい資産が固まって動かないわけですから、市場での資金が不足するのも当然です。

逆に言えば、買い入れを行うだけの財務省証券が市場に潤沢にあるのかも不明です。FRBが想定しているほど、スムースに資金供給ができない可能性があります。そうなると、短期金利がおもわぬ急騰を招き、これが金融市場を揺るがす可能性もありそうです。FRBの政策は万能ではないことを理解しておきたいところです。

このように考えると、金利動向は気になりますが、市場が混乱すれば、安全資産としての金への関心が再び高まると考えられます。株価の調整もそれを支援するでしょう。

また、季節性の面からも、11月から2月は上昇しやすい傾向が明確であり、10月の安値は買い場になります。直近では節目の1,500ドルを下回っていますが、良い押し目場面にきているように思われます。いったんは高値を付けた金相場ですが、すでにテクニカル調整は完了しています。あとは周辺材料が整えば、再び1,550ドルを目指す展開になると考えています。

円建て金相場は節目の5,200円を維持し、上値を試す値動きとなっています。ただし、円安基調が支えている面があります。今後は円安基調の継続に加え、金相場が上向くかを注視したいところです。そのうえで、5,300円を回復できれば、その流れに乗る形で買いを検討したいところです。また、5,200円を割り込まなければ、押し目買いの機会も利用したいところです。

プラチナ:上昇基調が継続

プラチナは上昇しました。前週の流れに乗る形で徐々に下値を切り上げ、一時は900ドルを上回る場面がありました。ただし、週末には金相場が下落したことから値を下げ、週末は889ドル台で引けました。

CFTC(米先物取引委員会)が公表するNYMEXプラチナ先物市場における10月8日時点のポジションは2万6814枚のネット買い越しとなり、前週から216枚増加しました。買いポジションが1,150枚減少し、売りポジションが1,366枚減少しました。

プラチナ相場は明確な方向性が出ない中、買い手・売り手がそれぞれポジションを縮小させたことがうかがえます。ただし、週末にかけて小幅に上昇したため、投機家の動きを確認したいところです。

プラチナ相場は下値が堅くなってきたように見えます。下値余地が限られることから、900ドル割れを売るインセンティブは徐々に低下しているように感じられます。そのため、株高や金相場の上昇などがあれば、それらにつれる形で上昇しやすい地合いにあると考えられます。

引き続き目立った買い材料はありませんが、900ドル台を回復し、さらに910ドルを超えるようだと、買い意欲がさらに高まる可能性もありそうです。そのような動きになれば、上値を試しやすくなるでしょう。そのうえで、920ドルを超えると再度960ドルの上値を試す可能性が高まりそうです。

ファンダメンタルズ面の下支え材料はほとんどありませんが、先週も解説した南アフリカの通貨ランドの対ドルでの上昇が、プラチナ相場を支える可能性があります。

南アは世界最大のプラチナ生産国ですが、通貨ランドが上昇すると、ドル建てプラチナ相場は上昇しやすくなります。そのランドが先週末に大きく上昇しています。これが少なからず、ドル建てプラチナ相場の下値を支えるものと思われます。南アランドの動きにも目を配るようにしたいところです。

円建てプラチナ相場は反発しました。ドル建てプラチナ相場が小幅に上昇する一方、円安基調が押し上げに寄与しました。3,100円を維持して上向いており、再び上値を試す可能性が高まってきました。3,200円を明確に超えてくれば、その流れに乗る形で買いを検討したいところです。ドル円相場の動きにも注意しながら、押し目買いも併せて検討したいところです。

【図表2】プラチナ 縦軸:円建てプラチナ/グラム(単位:円)
出所:マネックス証券作成

シルバー:ほぼ横ばいの推移

シルバーはほぼ横ばいでの推移となりました。金相場が上値を試した際には同時に値を上げ、9日には一時17.95ドルの高値を付ける場面がありました。しかし、その後は小幅に反落し、週末には17.54ドルで引けました。

CFTC(米先物取引委員会)が公表するCOMEX銀先物市場における10月8日時点のポジションは5万754枚のネット買い越しとなり、前週から939枚増加しました。買いポジションが125枚増加し、売りポジションが814枚減少しました。大きな動きはみられていません。

銀市場では目立った材料がなく、金相場次第の状況が続いています。大相場の後ですので、動きづらくなっていることも、横ばいでの推移につながっているといえます。しかし、そのような相場展開が長続きすることもないでしょう。

目先は調整しやすい地合いにありますが、調整した場合でも16.75ドルでサポートされれば、反発の可能性が残ると考えられます。この水準は直近安値であり、かつ重要なトレンドラインが位置している水準です。したがって、下押しとなった場合には、この水準を注視しておきたいと考えます。

そのうえで、反発した場合には、17.75ドルから18ドルを超えていけるかを確認したいところです。銀市場独自の材料がないため、引き続き金相場の動向を見ながら、銀相場の重要な節目に注目しておきたいところです。

円建て銀相場は上昇しました。ドル建て銀相場は横ばいでしたが、円安基調が相場を押し上げたといえます。63円を超えると上昇しやすくなると考えられます。そのような動きになった場合には、その流れに乗る形で買いを検討したいところです。

下げた場合でも、62円で下げ止まれば、押し目買いを検討できるでしょう。また、引き続き為替相場の動向にも注意しておきたいところです。

【図表3】シルバー 縦軸:円建てシルバー/グラム(単位:円)
出所:マネックス証券作成