先週のゴールド:反落の展開

金相場は反落しました。週初は上昇し、2週間ぶりの高値を付けました。ユーロ圏の低調な経済指標を受けて、世界的な景気後退懸念が強まり、投資家らによる金への逃避買いを促しました。

さらにトランプ米大統領に対する弾劾手続きを求める声が上がる中、株価が下落したことや、9月の米消費者信頼感指数が低下し、米金利が低下したことなどが金相場を一段と押し上げ、9月24日には一時1535.60ドルと、9月5日以来の高値を付けました。

また、トランプ米大統領が9月24日、国連総会で行った演説で中国の通商を巡る慣習を改めて非難し、米中通商協議で望ましくない合意は容認しないとの考えを示したことも材料視されました。その後は反落しました。

トランプ米大統領の弾劾へ向けた動きに注目が集まる中、株高・金利上昇で利益確定売りが優勢となりました。米司法省がトランプ米大統領とウクライナのゼレンスキー大統領の7月の電話会談記録を公表すると、金相場は下げ幅を一段と拡大しました。

来年の米大統領選の有力な対立候補であるバイデン前副大統領が絡む問題に関して、トランプ米大統領がウクライナに調査を働き掛けていたことが記録によって明らかになったものの、トランプ罷免へのハードルは高いとの見方から、市場のリスク警戒ムードが後退したことが売りにつながりました。

週末の金相場は下落しました。一時1486.6ドルまで下落したものの、米政府が中国企業の米国株式市場での上場廃止を検討しているとの報道を受けて、下げ幅を縮小しました。また、米連邦準備制度理事会(FRB)が10月に再び利下げをするかどうか疑念が生じる中、ドルが3週間ぶりの高値を付けたことが重石となりました。

世界最大の金上場投資信託(ETF)であるSPDRゴールドトラストの保有高は、9月20日の894.15トンから、9月27日には922.88トンに急増しました。9月25日には一時924.94トンに増える場面もありました。投資家の金買いの動きがかなり鮮明になっています。

CFTC(米商品先物取引委員会)が公表するCOMEX金先物市場での大口投機筋の9月24日時点のポジションは31万2444枚のネット買い越しとなり、前週から2万9845枚増加しました。買いポジションが2万8882枚増加し、売りポジションが963枚減少しました。投機筋による買いの勢いが再び増しています。

ただし、週末にかけて下げましたので、その後の投機筋の動向を最新のデータで確認したいところです。円建て金相場は下落しました。為替相場は円安基調でしたが、ドル建て金相場の下落が影響しました。

【図表1】先週のゴールド 縦軸:円建てゴールド/グラム(単位:円)
出所:マネックス証券作成

今週のゴールド:底打ちの動きを想定

金相場は底堅さを維持する展開を想定します。日米欧の中央銀行の政策決定会合が終了し、市場の関心が米中通商交渉に集まる中、10月10、11日には両国による閣僚級会合の実施が決まったと報じられています。

一方で、トランプ米大統領は、中国は2001年の世界貿易機関(WTO)加盟時に示した確約を順守しておらず、米国やその他の国の雇用を大量に奪う略奪的な通商慣習を実施していると指摘し、「改革を実施するとした確約を反故にしただけでなく、大規模な市場障壁、手厚い政府補助、為替操作、強制的な技術移転、知的財産権の侵害などに依存する経済モデルを構築した」と非難しました。

そのうえで、「米国が関する限り、こうした日々は終わりを告げた」と指摘し、「米中通商合意は得られる」との期待を示しました。その一方で「両国の関係の再均衡化に向けた合意を望んでいる」とし、「米国民は中国との関係の再均衡化に絶対的にコミットしている。双方に恩恵をもたらす合意が得られると期待している。これまでも明確に示してきた通り、悪い合意は容認しない」と述べました。本音と建前が見え隠れする中、通商交渉を有利に進めようとする姿勢がうかがえます。

また、香港の反政府デモに対する中国当局の対応と米中通商協議を関連付ける姿勢を示し、「米政府は香港情勢を緊密に注視している」と指摘しました。また、「中国の香港情勢への対応は、中国が将来的に世界の中でどのような役割を果たしていくかを如実に示す。中国の習近平国家主席は偉大な指導者であると期待している」としています。

このあたりも、通商交渉への圧力と考えることができます。これまで市場は、米中通商交渉の動向や、それに関するトランプ米大統領の発言に振り回される展開が続いてきました。この状況は今後も継続するでしょう。

今週は中国の建国70周年と国慶節で、中国市場が休場となりますが、その中で米中政府が何らかの動きを見せるのかに注目が集まりそうです。また、今週は米国でISM製造業景況感指数や雇用統計の発表も控えています。最近の米国経済指標はまちまちですが、特に8月に節目の50を割り込んだISM製造業景況感指数が再び50割れとなるかに注目が集まりそうです。

イラン情勢に関しては、トランプ米大統領は経済制裁を中心にした「最大限の圧力」で対話に導く方針への同調を各国に求め、包囲網強化を図る考えを表明しています。また、「イランの核保有を認めない」と訴え、「すべての国は行動する義務がある」と強調し、「イランが脅迫的な行動を続ける限り、制裁は解除されない」と言明しました。

一方で、「米国は平和を望む者と友好関係を築く用意がある」とし、イランと核合意に代わる「新合意」に向けた交渉を引き続き求める構えを示しています。このように、地政学的リスクに関しても不透明感が残っています。これらは金市場におけるサポート要因になり得るでしょう。

また、トランプ米大統領が、民主党のバイデン前副大統領が絡む問題の調査に協力するよう圧力をかけた疑いで、民主党の執行部はトランプ氏弾劾手続きの開始を決定しました。これにより、与野党の対立が先鋭化しています。

トランプ米大統領は、ゼレンスキー氏との昨年7月25日の電話の直前に、ウクライナへの軍事支援4億ドルを保留するよう政権幹部に指示を出していたとの一部報道を認めましたが、「米国のウクライナ支援が多すぎることが理由だった」とし、「支援は調査協力と引き換えではなかった」と関連を否定。そのうえで、「ゼレンスキー氏に対して圧力はかけていない」と弁明しています。

バイデン氏は副大統領だった2016年、次男が役員を務めるウクライナのガス会社を捜査していた同国の検事総長を解任させようと働き掛けたとされています。トランプ米大統領の調査協力要請は、来年の米大統領選の有力対立候補のバイデン氏への打撃を狙ったものとみられ、民主党内で弾劾を求める声が高まっていました。

ただし、米上院を共和党が抑えていることから、トランプ米大統領が弾劾・罷免となる可能性はほとんどないとの見方が大勢です。もっとも、市場はこれを材料に上下動する可能性はあります。この点には注意が必要といえます。

このように、当面は金融政策動向よりも、市場を取り巻く政治的な動きが市場の関心事になるでしょう。ただし、これらの要因が金相場の方向性を決定づける本質的な材料にはならないとの見方は変わりません。

やはり、金利が低下することが、金相場を押し上げると考えるのはきわめて論理的でしょう。株価が下落し、リスク回避的に債券市場に資金が流入することで金利が低下すれば、これが金相場の押し上げにつながると考えるのがセオリーでしょう。したがって、今後も米国の金利とインフレ動向を注視したうえで、金相場の動向を見るようにしたいところです。

1,480ドル前後を維持できれば、中期的な上昇基調は継続しているとしてきました。このリズムを理解することがきわめて重要であるといえそうです。米国は「株価資本主義」ですので、株価が大きく下げると、個人消費が減少し、GDP成長率が低下します。それを避けるために、基本的には株価が上昇するように政策を打ちだします。この点を理解したうえで、金融市場や金相場の動きを見ていくことが肝要です。

短期的には、株式市場にやや上値の重さが感じられます。米中通商協議への懸念が高まっていることが背景にあります。市場がそれを感じ取っていることが、現在の金相場の底堅さの背景にあるといえます。

FRBは金利を低下させましたが、重要なことは市場金利が低い水準を維持し、さらに地政学的リスクなどが高まることです。これらが、金相場上昇の必要条件になります。特に短期的には、安全資産として買われることが金相場上昇には不可欠といえます。1,480ドルをサポートしたこともあり、いまは徐々に下値を切り上げる動きにあります。直近高値の1,557ドルを上抜けるかを確認したいところです。

もっとも、繰り返すように、米実質金利から見た金価格の理論値は1,400ドル台です。現在の金相場の水準がすでに割安ではないことは念頭に置いておきたいところです。逆に1,480ドルを割り込むと、これまでの上昇基調はいったん終了です。この点も注視しておきたいところです。

円建て金相場は一時5,300円が重く、下げ基調です。ドル建て金相場の下落が影響しており、まずはこれが下げ止まり、反発するのを確認したいところです。そのうえで、5,200円を割り込まずに上向けば買いやすくなります。まずは、5,200円割れ回避の動きを確認したうえで、押し目買いを検討したいところです。

プラチナ:底堅い展開を想定

プラチナは反落しました。週前半は堅調に推移し、9月24日には一時963ドルまで上昇する場面がありました。しかし、週末にかけて金相場が下落したことから連れて調整し、9月27日には一時916ドルまで下げる場面がありました。引けは930ドルでした。

CFTC(米商品先物取引委員会)が公表するNYMEXプラチナ先物市場における9月24日時点のポジションは3万4979枚の買い越しとなり、前週から1,331枚増加しました。買いポジションが813枚増加し、売りポジションが518枚減少しました。プラチナ相場は方向感がなくなりつつあります。

プラチナを取引する向きは、方向性を見出すうえで金相場の動きを見ていると考えられますが、金相場がやや軟調だったことで、いったん売られやすくなっています。もっとも、下値も920ドル前後でサポートされており、崩れてはいません。したがって、金相場が反転・上昇すれば、再び上値を試す可能性は十分にあると考えられます。

もっとも、プラチナ独自の材料が見当たらないことから、外部要因次第の展開は変わらないでしょう。したがって、引き続き金相場の動向に注意しながら、945ドル前後にあるレジスタンスを超えることができるかを確認したいところです。そのうえで、960ドルを超えることができれば、再び上値を試す動きにつながりそうです。

逆に920ドルを割り込めば、当面は調整基調になりそうです。その場合には、節目の900ドルで下げ止まるかを確認することになりそうです。また、繰り返すように、重要な需要先であるディーゼル車触媒向け需要の低迷が懸念されるなど、需要面でのサポートがあまりない点には引き続き注意が必要です。

円建てプラチナ相場は続落しました。ドル建てプラチナ相場の軟調さが影響しました。目先は3,300円を維持できるかを確認することになるでしょう。維持できれば、押し目買いを検討したいところです。

また、3,400円を超える動きになれば、その動きに追随する形で買いを検討できるでしょう。まずはドル建てプラチナ相場の動きを確認し、ドル円が円高基調に向かわなければ、上昇に転じる可能性はありそうです。そのため、為替相場の動きには注意しておきたいところです。

【図表2】プラチナ 縦軸:円建てプラチナ/グラム(単位:円)
出所:マネックス証券作成

シルバー:反落の展開

シルバーは反落しました。9月24日には18.73ドルまで上昇する場面がありましたが、その後は急落し、9月27日には17.28ドルまで下落する場面がありました。引けは17.54ドルでした。

CFTC(米商品先物取引委員会)が公表するCOMEX銀先物市場における9月24日時点のポジションは5万0729枚のネット買い越しとなり、前週から5,249枚減少しました。買いポジションが623枚減少し、売りポジションが4,626枚増加したことで、ネットの買い越し幅が縮小しました。

下落基調の中、投機筋がポジションを縮小する一方で、売りを増やしていることがわかります。週末にかけて相場が下落していることから、同様の動きになっているかを最新のデータで確認したいところです。

銀相場は独自の材料に欠ける中、金相場の値動きにつれやすい展開です。また、金相場の動き以上に変動しており、銀相場の特徴的な動きも確認できます。もっとも、先週は下げたものの、重要なサポート水準である17.30ドル前後では下げ止まっています。したがって、これ以上の下げにならなければ、売られすぎ感が強まることで自律反発的な動きが想定されます。

もっとも、独自の材料がないことから、金相場が反発しなければ、買いが細る中で売りが優勢となり、下値を試す動きになる可能性も否定できません。そのうえでも、まずは金相場の値動きを確認したいところです。上向いた場合には、先週高値の18.73ドルを超えるかを確認したいと考えます。

円建て銀相場は下落し、直近安値を更新しました。ドル建て銀相場の下落が大きく影響しています。63円前後での推移となっていますが、62円を維持できるかが重要と考えます。これを割り込まずに反発できれば、買いやすくなりそうです。

もっとも、ドル建て銀相場が上向くことが上昇の条件になるでしょう。そのうえで、64円を回復するような動きになれば、上昇に追随する形で買いを検討することできそうです。また、為替相場の動きにも注目しておきたいところです。円高基調になった場合には下げやすくなりますので、要注意です。

【図表3】シルバー 縦軸:円建てシルバー/グラム(単位:円)
出所:マネックス証券作成