先週のゴールド:続落の展開

金相場は続落しました。週初から下落し、心理的な節目の1,500ドルを下回りました。主要中央銀行による利下げ観測が支援材料となったものの、リスク選好意欲の回復や、米国債利回りの上昇が重石となりました。

9月10日にはさらに下落し、1ヶ月ぶりの安値を付けました。米国債利回りの上昇やドル高を受けて、安全資産としての魅力が低下し、一時は1,486ドルと、8月13日以来の安値を付けました。

9月11日には反発しました。世界経済の成長リスクへの懸念が続く中、主要中央銀行による金融緩和期待を背景に買われました。ただし、リスク資産に対する投資意欲が改善したことで上値は抑えられ、4週間ぶりの安値付近での値動きにとどまりました。

9月12日には一時急騰し、1,523.6ドルまで上昇する場面がありました。欧州中央銀行(ECB)が9月12日の定例理事会で、利下げや量的緩和の再開を含む包括的な追加金融緩和策の導入を決定しました。

利下げは2016年3月以来3年半ぶりで、中銀預入金利を現在のマイナス0.4%から過去最低のマイナス0.5%に引き下げました。また、昨年末で終了していた量的緩和については、11月から月200億ユーロの資産購入規模で再開することとしました。これを受けて、ユーロが対ドルで乱高下し、これを受けて金相場も上下に激しく変動しました。

週末9月13日は下落し、最終的に週間ベースでは3週続落となりました。堅調な8月の米小売売上高や米中貿易摩擦の緩和に対する期待感から、株価と米国債利回りが数週間ぶりの高水準に押し上げられたことが売りにつながり、1,488.45ドルで週末の取引を終えました。

世界最大の金上場投資信託(ETF)であるSPDRゴールドトラストの保有高は、9月6日の889.75トンから9月13日には874.51トンに減少しました。株価の上昇に伴い、投資家の金買いの動きが緩んでいることがわかります。

CFTC(米商品先物取引委員会)が公表するCOMEX金先物市場での大口投機筋の9月10日時点のポジションは26万9725枚のネット買い越しとなり、前週から3万822枚減少しました。買いポジションが3万1271枚減少し、売りポジションが449枚減少しました。金相場の下落の動きから、投機筋は買いポジションの削減を開始したようです。

円建て金相場は上昇しました。ドル建て金相場は下落しましたが、為替相場が円安基調となったことが押し上げにつながりました。

【図表1】先週のゴールド 縦軸:円建てゴールド/グラム(単位:円)
出所:マネックス証券作成

今週のゴールド:調整基調の継続を想定

金相場は引き続き調整基調が続く可能性が高いと考えます。米中両国の通商交渉に関して、双方が態度を緩和させており、これを受けて株価が堅調に推移しています。この結果、安全資産として買われてきた金への資金流入が止まり、今は流出の動きにあります。

また、金価格を押し上げる根幹的な材料だった米金利の低下にも歯止めがかかっており、理論的に金価格が上昇するとの見方がしづらい状況になっています。米金利に限らず、最近は世界の主要国の金利が上昇し始めており、これまでの基調から一変した感があります。

一方で、中央銀行は利下げの動きを強めています。前述のように、ECBは利下げと量的緩和のパッケージで、金利低下と資金供給により株価や景気を支えようとしています。

また、9月17・18日には米連邦公開市場委員会(FOMC)が開催されます。市場では、0.25%ポイントの利下げが織り込まれています。

したがって、注目点はむしろ、FOMC後の連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長の記者会見でしょう。そこで追加的な利下げや緩和策の可能性を示唆するかはきわめて重要なポイントになります。

直近の金利上昇もあり、これを理由に将来の利下げの可能性を排除するような発言が飛び出す可能性があります。そうなれば、金相場はひとたまりもなく、調整基調に入っていく可能性がありそうです。

まずは1,470ドル前後で下げ止まることができるかを確認したいところです。これを割り込むと、基調は明確な形で下向きになる可能性があります。直近の株価や金利の回復基調が続けば、その可能性は低くないと考えるため、注意深く見ておきたいところです。

一方で、1,515ドルを回復すれば、再び上昇に向けた動きが始まることも十分に想定されるでしょう。いずれにしても、FOMCの結果と市場の反応を見極めたいところです。

また、9月14日に発生したサウジアラビアの石油関連施設に対する攻撃を受けて、原油価格が急反発しています。これを受けて、週明けの市場では金が安全資産として買われる動きもみられています。情報が錯そうする中、各国の対応にも注意が必要であり、まずは事態の展開を見守りたいところです。

円建て金相場は一時5,300円を回復する場面がありました。ドル建て金相場の下落で下げ基調になりそうなところを、円安がサポートする構図です。下値は5,200円を維持しており、基調は保たれています。

ただし、目先はドル建て金相場の調整の可能性があるだけに、円安だけで支えられるかはきわめて不透明な情勢です。そのため、今は押し目買いを避け、早めに手仕舞い売りを行い、次の動きに備えたいと考えます。

5,200円を明確に下回ると、底抜けとなる可能性があるだけに、この水準にも要注意でしょう。一方で、5,300円を明確に超えるような動きになれば、その時点で買いを検討すればよいでしょう。

プラチナ:小幅続伸の展開

プラチナは小幅続伸しました。金相場の調整につれる形で値を下げ、9月10日には926.37ドルまで下落する場面がありました。その後は金相場の下げ渋りなどもあり、週末には一時952.74ドルまで上昇する場面がありましたが、引けではやや値を下げ、948ドルで週末の取引を終えました。

CFTC(米商品先物取引委員会)が公表するNYMEXプラチナ先物市場における9月10日時点のポジションは3万4919枚のネット買い越しとなり、前週から1,760枚増加しました。買いポジションが668枚増加し、売りポジションが1,092枚減少したことで、ネットの買い越し幅が拡大しました。この結果、投機筋の買いポジションはさらに積み上がったことになります。

また週末にかけて、プラチナ相場が上昇しているだけに、投機筋が買い増しているかに注目したいところです。直近のプラチナ相場は比較的堅調さを保っている印象があります。金相場が調整気味の展開にある中、つれて下げた後は底堅く推移しています。したがって、今後も株高基調が続くのか、さらにその基調に対して金相場が上昇していけるかに注目したいと思います。

現在のプラチナ相場は920ドルから975ドルのレンジで推移していますが、短期的な調整は終了した可能性が高まっている印象です。このまま節目の900ドルを割り込まずに上昇すれば、再び1,000ドルを目指す流れに回帰する可能性は十分にあるでしょう。

その場合には、株価の回復基調がより鮮明になっているでしょう。ただし、900ドルを割り込んだ場合には、市場動向をよく見極めることが重要かと思います。

プラチナの需要は工業用がメインであり、なかなか需要が盛り上がりづらくなっているといえます。この点はすでに解説したとおりですので、あらかじめ十分に理解しておきたいところです。また、新たな需給要因に関する報道にも、引き続き注意が必要でしょう。

円建てプラチナ相場も続伸しました。ドル建てプラチナ相場の上昇に加え、為替相場が円安基調になっていることが、円建てプラチナ相場の上昇につながっているといえます。一時は3,400円を割り込みましたが、引けではこれを回復し、3,500円をうかがう展開にあります。

このまま3,500円を回復できれば、その時点で買いを検討したいところです。また、為替相場の動向にも引き続き要注意でしょう。

【図表2】プラチナ 縦軸:円建てプラチナ/グラム(単位:円)
出所:マネックス証券作成

シルバー:大幅安の展開

シルバーは大幅な調整局面となりました。前週は金相場の調整につれる形で下落しましたが、その後はトレンドラインにサポートされる形で推移し、辛うじて値を保っていました。しかし、週末にはそのトレンドラインを下抜け、大きく下落し、週末は17.42ドルで取引を終えました。

CFTC(米商品先物取引委員会)が公表するCOMEX銀先物市場における9月10日時点のポジションは、6万231枚のネット買い越しとなり、前週から1,894枚減少しました。買いポジションが4,564枚減少し、売りポジションが2,670枚減少したことで、ネットの買い越し幅が縮小しました。

買い手と売り手の両方がポジションを縮小させており、相場の調整が進む中でポジションの解消が進んだことがわかります。ただし、週末に大きく下落していることから、買い越し幅はさらに大きく減少しているものと考えられます。今週末発表のデータで確認したいところです。

銀相場はこの2ヶ月間続いてきた上昇基調が崩れ始めています。これで16.80ドルにあるサポートを割り込めば、下落基調入りとなる可能性が極めて高いと考えられます。

以前から繰り返し解説してきたように、銀相場は他の銘柄に比べて投機的な動きになりがちです。今回も短期間で大きく上昇したのは、その表れといえます。しかし、今度はこれまでの上昇の反動で下げ始めており、これまでの上昇分を失う可能性もありそうです。

今回の上昇相場は15.50ドルを上抜けたところから始まっています。16.80ドル割れではその可能性が高まるだけに、注意深く見ておきたいと考えます。一方、18ドルを回復できれば、再び上昇基調に回帰する可能性が高まる点も念頭に置いておきたいところです。

また、銀需要は工業用がメインです。したがって、米中通商交渉の進展やそれを受けた株価上昇などは、銀市場にはポジティブな材料であると考えられます。この点にも注目したうえで、今後の銀相場の状況を見守りたいと考えます。また、連動性の高い金相場の動向にも引き続き注目しておく必要があるでしょう。

円建て銀相場は小幅に続伸しました。ドル建て銀相場は大きく下落しましたが、為替相場が円安基調となったことで下げ渋りから上昇しました。今後もドル建て銀相場の調整リスクがありますが、為替相場の動向も併せて総合的に見ていく必要があるでしょう。

65円前後の水準を維持できれば、上昇に転じる可能性は残りそうです。明確に上向くまでは、慎重に値動きを見極めたいところです。逆に64円を割り込むようだと、下げ基調が強まる可能性がありそうです。今は押し目買いは避け、底値を確認するのを優先させたいところです。

逆に65円を超えて、上昇基調が鮮明になれば、その動きに乗る形で買いを検討したほうがより安全でしょう。銀相場は今後も高いボラティリティの状況が続きそうです。引き続き注意深く市場動向を見極めたいところです。

【図表3】シルバー 縦軸:円建てシルバー/グラム(単位:円)
出所:マネックス証券作成