先週のゴールド:株価上昇で手仕舞い売り

金相場は続落しました。週初は上昇しました。低調な米経済指標を受けて景気減速懸念が強まったことや、米中通商問題、英国のEU離脱の不透明感により、安全資産としての金の魅力が高まりました。

また、イタリアの政局、香港の抗議活動など数多くの不確実性も金相場の支援材料になりました。9月4日には1,557ドルまで上昇し、6年ぶりの高値に上昇しました。

世界経済の減速や米中貿易摩擦への懸念を背景に、8月の米ISM製造業景況指数が景気の拡大・縮小の節目とされる50を2016年以来で初めて割り込んだことで、米10年債利回りが2016年7月以来の低水準となったことが材料視されました。

また、トランプ米大統領は中国との貿易交渉が長引いた場合、米大統領2期目には中国により厳しい対応を取ると警告したことも支援材料となりました。

一方、市場では香港情勢への関心も高まりしました。香港の林鄭月娥(りんてい げつが)行政長官は逃亡犯条例改正案の撤回を表明したことを好感して株価は上昇しましたが、一部議員は今回の措置が抗議活動の終結を促すか、引き続き不透明な状況としたことで、引き続き安全資産としての買いが入りました。

しかし、9月5日には急落しました。米中貿易摩擦激化に対する過度の警戒感が後退したことが材料視され、手仕舞い売りが出ました。週末9月6日にはさらに下落しました。

米雇用統計の非農業部門就業者数は予想を下回ったものの、米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長の米景気に関する上向きな発言や、投資家のリスク選好意欲改善が金相場の重石となり、1,506.70ドルで週末の取引を終えました。

パウエル議長はスイスのチューリッヒで行われた討論会で、「雇用統計が比較的強い労働市場と一致する」との見解を示し、米国の景気後退を予想していないとしました。

ただし、世界最大の金上場投資信託(ETF)であるSPDRゴールドトラストの保有高は8月30日の878.31トンから、9月6日には889.75トンに増加しました。3日には一時890.04トンに増加する場面がありました。

CFTC(米商品先物取引委員会)が公表するCOMEX金先物市場での大口投機筋の9月3日時点のポジションは30万547枚のネット買い越しとなり、前週から3709枚増加しました。買いポジションが2,776枚増加し、売りポジションが933枚減少しました。

金相場の上昇基調が続いたことから、投機筋は小幅ながら買いを積み増しました。ただし、週末にかけて大きく値を下げていることから、ポジション解消の動きを週末発表のデータで確認したいところです。

円建て金相場はほぼ横ばいで取引を終えました。ドル建て金相場は下落しましたが、為替相場が円安方向で推移したことが下値を支えました。

【図表1】先週のゴールド 縦軸:円建てゴールド/グラム(単位:円)
出所:マネックス証券作成

今週のゴールド:短期的な調整場面を想定

金相場の目先は調整場面になると考えています。米中通商協議の再開に関する報道もあり、これまで安全資産として買われてきた金に手仕舞い売りが出ています。不安定値動きだった株式市場にも買いが戻るなど、これまでのリスクオフムードが払しょくされた感があります。

さらに、金相場が6年ぶりの高値を付けるなど、堅調に推移していたこともあり、調整されやすい地合いになっています。今後、株式市場がさらに上昇基調を強め、金利が上昇した場合には、金利面と安全資産という両面の材料で金には売り圧力がかかる可能性があります。

これまで金相場は、低金利と投資家の不安心理を背景とした安全資産としての買いに下値を支えられてきました。しかし、このふたつの大きな買い材料が転換するのであれば、金相場はこれまでの高値を維持できないと考えられます。

世界的には引き続き米中貿易戦争の行方や、英国のEU離脱問題、さらに香港情勢などの不透明要因はありますが、これらの材料を背景に安全資産として買われることで金相場が上昇するのは難しくなっていくでしょう。

前週も解説したように、金相場の上昇には、本質的には金利の低下が不可欠です。特に米実質金利の低下が根本的な上昇要因になります。したがって、今後米金利が低下するかを慎重に見極める必要があります。

世界的に債券投資が加速する中、投資マネーの債券市場への流入の拡大が債券利回りを低下させてきました。しかし、これまで以上に投資資金が流入するかは不透明です。また、大手投資家のポートフォリオは多くが債券になってきています。

株式市場とのバランスが崩れる中、ポートフォリオにおける債券比率を引き下げる動きが進むようだと、思わぬ金利上昇から金相場が下押し圧力を受ける可能性もあります。世界的に超低金利になっていることもあり、低下に限界がみられるようだと、このようなリスクが顕在化することが想定されますので注意が必要でしょう。

市場では、9月17・18日開催の連邦公開市場委員会(FOMC)での利下げがほぼ織り込まれています。また、FOMCを前に、FRB高官は発言ができなくなるブラックアウト期間に入ったことから、金利低下が進みづらくなりそうです。これも、金相場には重石になりそうです。

目先は1,520ドルにあったサポートを割り込みましたので、まずは下値を確認することになります。節目の1,500ドルや直近安値の1,490ドル、さらに重要なトレンドラインが位置する1,460~70ドルがポイントになるでしょう。これらを下回った場合には、いったん大きく調整する可能性がありそうですので要注意です。当面は下値確認の動きが優先されると考えておきたいところです。

円建て金相場は一時5,400円に迫る場面もありました。しかし、ドル建て金相場の下落で値を下げています。目先は5,300円を明確に下回ると下げ圧力が強まりそうです。

円安基調が下値を支えますが、それ以上にドル建て金相場が下げ基調を強めれば、円建て金価格にも下押し圧力がかかることになるでしょう。したがって、5,300円割れではいったん利益確定を行い、次の押し目を待ちたいところです。

5,200円で下げ止まれば、再び買いを検討したいところですが、これを割り込むと上昇基調が完全に崩れる可能性があります。まずは、調整場面を想定し、下値確認を優先したいところです。

プラチナ:続伸の展開

プラチナは続伸しました。金相場の上昇につれる形で急騰し、一時997ドルと、節目の1,000ドル目前にまで上昇する場面がありました。ただし、金相場が一転して下げ基調となったため、そこからは急落し、9月6日には一時921ドル台にまで値を下げるなど、激しい値動きとなりました。週末は949.77ドルで引けました。

CFTC(米商品先物取引委員会)が公表するNYMEXプラチナ先物市場における9月3日時点のポジションは3万3159枚のネット買い越しとなり、前週から1万172枚増加しました。

買いポジションが1万894枚、売りポジションが722枚それぞれ増加したことで、ネットの買い越し幅が拡大しました。ただし、週末にかけて、プラチナ相場が調整しています。ネットの買い越し幅に変化があるかを最新のデータで確認したいところです。

プラチナ相場は出遅れ感もあり、先週も強い動きでした。しかし、金相場が調整したことから、さすがに週末にかけて調整しています。節目の1,000ドルを超えられなかったことで、高値圏を維持できるかがポイントになりそうです。

短期的な買われすぎ感もありますので、金相場が調整基調を強めるようだと、いったんは下げる可能性がありそうです。900ドルを割り込むようであれば、さすがにいったんは手仕舞い売りが出てきそうです。今週は大きく上下に変動する可能性がありそうです。

一方、ドイツの8月の新車登録台数は前年同月比0.8%減の31万3748台でした。電気自動車(EV)の比率が前年同月の0.8%から1.6%に倍増し、ハイブリッド車(HV)とプラグインハイブリッド車(PHV)の比率が6.3%と、前年同月の4.0%から拡大する中、ガソリン車は61.4%と、62.1%から低下し、ディーゼル車も30.2%と、32.6%から低下しました。

これらのデータから、ディーゼル車から排出される窒素化合物を抑制する自動車触媒の原料として使用されるプラチナの需要減退懸念はますます高まることになりそうです。そうなると、需要面からの相場上昇が期待しづらいといえます。

一方、プラチナの国際調査機関であるワールド・プラチナム・インベストメント・カウンシルは、2019年のプラチナ需要が2018年比で9%増の250トンと、3年ぶりの高水準になるとしています。ただし、これは上場投資信託(ETF)などへの投資需要の拡大が背景です。

ETF需要は前年の0.5トンから30トンに急増するとみられています。上半期ですでに22トンがETFに流入しているとのことです。ただし、これは相場上昇による投資マネーの流入が背景であり、持続的な相場押し上げ要因になるかは不透明といえます。

一方、自動車触媒向けは欧州などでの脱ディーゼル化の動きから前年比4%減と、3年連続の減少が想定されています。宝飾品も最大消費国の中国は持ち直しつつあるものの、香港での需要減から全体で5%減となる見通しです。一方、供給面では、鉱山・リサイクルともに増加し、過去最高の260トンが見込まれています。

主産地の南アフリカ共和国で在庫放出に伴い供給量が増えるとの指摘もあります。また、価格上昇が続くと、スクラップの供給増も見込まれます。

このように考えると、需給バランスが大幅に改善するとは考えにくく、プラチナ相場を押し上げる材料としては力不足といえそうです。プラチナ相場は金相場の上昇に助けられるように上昇してきましたが、目先は金相場同様に調整リスクを念頭に置いたほうがよさそうです。節目の900ドルを割り込むと、手仕舞い売りが拡大しそうですので要注意でしょう。

円建てプラチナ相場も上昇しました。ただし、ドル建てプラチナ相場が週末にかけて調整しており、このまま調整基調が続けば、円建てプラチナ相場も同様の動きになるものと思われます。

節目の3,500円を超えてから反落しており、3,400円も割り込んでいます。このまま3,300円を割り込むようだと手仕舞い売りが出そうです。いったん手仕舞い売りを行い、底値を確認したいところです。その場合、3,200円で下げ止まるようであれば、反発して再び上昇に向かう可能性が出てきそうです。

まずは目先の調整が進むかを確認したいところです。そのうえで、押し目買いを判断したいところです。

【図表2】プラチナ 縦軸:円建てプラチナ/グラム(単位:円)
出所:マネックス証券作成

シルバー:大幅調整の展開

シルバーも大きく調整しました。金相場の調整につれる形で下落しました。9月4日には一時19.64ドルまで上昇する場面がありましたが、その後は急落し、週末には一時17.96ドルまで下落し、節目の18ドルを割り込む場面もありました。週末は18.16ドルで取引を終えました。

CFTC(米商品先物取引委員会)が公表するCOMEX銀先物市場における9月3日時点のポジションは、6万2125枚のネット買い越しとなり、前週から2,273枚増加しました。

買いポジションが1,489枚増加し、売りポジションが784枚減少したことで、ネットの買い越し幅が拡大しました。ただし、買い越し幅の拡大がそれほど大きくなかったことは、それまでの買い意欲がやや減退していることがうかがえます。

さらに、週末にかけて銀相場が大きく調整していることから、投機筋が買いポジションを大幅に縮小していることが想定されます。週末発表のデータで確認したいところです。

銀相場はとうとう大きく下げました。過去にも複数回にわたり指摘していたように、投機的な動きになった後は急落の可能性があると指摘してきました。まさにその動きが先週は見られたことになります。これまでかなり投機的に上げてきましたので、下げに転じたときも調整幅が大きくなることは十分想定できていました。これが銀相場の特徴といえます。

今回のような急騰後に調整場面が来ると、それまでの相場上昇に乗って買いポジションを積み上げていた投機筋は、今度は一転して手仕舞い売りを行い、相場を押し下げる役回りとなります。

商品投資顧問(CTA)と呼ばれる先物市場を主体に投資を行うヘッジファンドは、相場が下げに転じたと判断すれば、今度は大きく売ってきます。その動きには要注意といえるでしょう。

その基準になりそうなのが17.80ドル水準といえます。これを割り込むと、いったん手仕舞い売りが大量に出てきそうです。そうなると、下げが加速し、16.80ドル程度まで下落する可能性がありそうです。まずは17.80ドルで下げ止まることができるかを確認することになります。

金相場の下げ基調が続けば、銀相場だけが再び上昇基調に転じるのは難しいでしょう。短期的な買われすぎ感もありますので、いったんは調整が進むことを想定しておきたいところです。

円建て銀相場は小幅に上昇しました。ドル建て銀相場の下落に対して、為替相場が円安基調となったことで辛うじて上昇基調は維持されています。しかし、ドル建て銀相場が調整すれば、さすがに耐えきれないものと思われます。

65円を割り込んだ場合には、いったん利益確定を優先させたいところです。また、64円を割り込むようだと、調整が加速することも想定されます。その場合には、押し目買いは避け、まずは底値確認を優先したいところです。

一方、調整が短期間で終了し、反発に転じた場合でも安易に買いつくのではなく、直近高値の69円を明確に上抜けるかを確認したところで買いを検討したいところです。銀相場は短期的にボラティリティが高くなりそうです。注意深く市場動向を見極めたいところです。

【図表3】シルバー 縦軸:円建てシルバー/グラム(単位:円)
出所:マネックス証券作成