先週のゴールド:急伸の展開

金相場は上昇し、週初は心理的節目の1,500ドルを上回って推移しました。

世界経済減速や米中貿易摩擦に対する懸念で株価が下落し、安全資産とされる金が買われたのが大きな理由です。香港での混乱や米中の貿易に関する対立、さらに世界の中央銀行による緩和姿勢から、金相場が引き続き支援されているとの見方が強まりました。

トランプ米大統領が8月9日に、中国と合意する準備はできていないと発言したことで、9月に予定されていた米中貿易交渉が開催されるのかどうか不透明になったことも、金相場を押し上げています。トランプ大統領は先に、9月1日から3,000億ドル相当の中国からの輸入品に追加関税をかけると表明しており、中国貿易戦争の行方に不透明感が高まっています。

アルゼンチンペソ相場の下落や香港の情勢が材料視され、2013年4月以来の高値となる1,534.31ドルまで上昇する場面がありました。その後も堅調に推移しました。

しかし、米国が対中制裁関税「第4弾」について、一部製品への発動を延期すると発表したことや、米中両国が貿易協議の継続で合意したとの報道が金相場を圧迫し、8月13日には反落する場面がありました。

米国債の長短金利の逆転やユーロ圏の低調な経済指標を受けて、世界的な景気後退懸念が強まり、安全資産として金が買われています。米国債市場では、2年債利回りが10年債利回りを上回る「逆イールド現象」が12年ぶりに発生したことで、米国経済が景気後退に向かっている可能性があるとの見方が強まりました。

また、ユーロ圏の主要国がマイナス成長となっており、景気後退が実際に起きるリスクが懸念されたことも、金市場への関心を高めました。

ドイツの4~6月期はマイナス成長を記録し、中国の7月の鉱工業生産が17年超ぶりの低い伸びとなりなど、世界経済の鈍化懸念が強まっています。

週末8月16日には反落しました。欧米の株価が上昇したことで、投資家のリスク回避姿勢が後退したことで、安全資産として買われてきた金に売りが出ました。それでも、節目の1,500ドルを維持して週末の取引を終えました。

世界最大の金上場投資信託(ETF)であるSPDRゴールドトラストの保有高は8月9日の839.85トンから、8月16日には843.41トンに増加しました。8月12日には847.77トンまで増加する場面がありました。投資家の金買いの勢いがさらに増しているようです。

CFTC(米商品先物取引委員会)が公表するCOMEX金先物市場での大口投機筋の8月13日時点のポジションは、29万90枚のネット買い越しとなり、前週から2,455枚減少しました。買いポジションが4,335枚減少し、売りポジションが1,880枚減少しました。

金相場が堅調に推移するなか、ポジションが売り・買いともに減少しており、買い方の手仕舞い売りと売り方の買い戻しが進んでいるのが確認できます。

円建て金相場は上昇しました。ドル建て金相場の堅調さに加え、為替相場が円安で推移したことが水準を押し上げました。

【図表1】先週のゴールド 縦軸:円建てゴールド/グラム(単位:円)
出所:マネックス証券作成

今週のゴールド:高値圏での推移を想定

金相場は高値圏で推移が続くと考えます。市場では、世界の中央銀行の緩和策への関心が高まっています。このような動きから、米連邦準備制度理事会(FRB)への利下げ圧力はますます強まっています。9月の連邦公開市場委員会(FOMC)での利下げはすでに市場に織り込まれています。世界的な利下げ圧力は、金利のつかない金にとって価格を押し上げる材料になります。

また、市場は米国債券市場で、2年債と10年債の利回りスプレッドが逆転する「逆イールド現象」の発生にも注目しています。この逆イールド現象は、将来の景気後退のサインとして注目されています。

平均的には、この現象の発生から1年から1年半後に景気後退が起きるといわれていますが、景気動向に先行する株価はその前にピークアウトすることが多いことがわかっています。逆イールド現象の発生から3ヶ月以内に株価がピークアウトした回数も少なくないため、これが意識されるようだと、株価が下落に転じ、安全資産としての金への関心がさらに高まる可能性があります。

また、現在の市場の不安定さをもたらした、米国による対中追加関税についても、米国が一部を取り下げるなど、景気への配慮を見せています。トランプ大統領は追加関税を機に株価が急落したことで、懸念を強めているようです。

しかし、米国の景気拡大期が過去最長になっており、金利が何かのはずみで上昇するようなことがあれば、投資家のポートフォリオが大きく棄損し、株式市場への売りが出ることも想定されます。

このような状況になる可能性は決して低くないと思われます。その際に、金が安全資産として買われるのか、それとも金利上昇により他のリスク資産とともに売られるのか、注意深く見ておくことが肝要です。

当面は節目の1,500ドルを維持できるかを見ていくことになります。下落した場合でも、1,470ドル前後を維持できれば、中期的な上昇基調は維持されていると判断できるでしょう。

市場では金市場に関する話題が増えてきています。市場関係者から「金相場は2,000ドルを目指す」などの発言が出てくるようだと、注意が必要になってくるでしょう。今の時点ではまだそのような声は聴かれませんが、注意深く見ていきたいところです。

円建て金相場は5,200円を超えて、5,300円を目指す展開にあります。5,200円を維持できれば、高値圏での推移が継続しそうです。5,100円を割り込むまでは、保有しているポジションを維持しながら、高値を超えてきたところで買い増しを検討したいところです。

ただし、5,100円を割り込んだ場合には、いったん撤退し、5,000円で下げ止まるかを確認したうえで、押し目買いのタイミングを探りたいところです。

プラチナ:下値を探る展開

プラチナは前週までの上昇の流れから一転して、下げに転じました。860ドルを維持できなかったことで売りが出ており、週末にかけて830ドルを割り込む場面もありました。週末は辛うじて支えられ、840ドルを維持しました。

CFTC(米商品先物取引委員会)が公表するNYMEXプラチナ先物市場における8月13日時点のポジションは2万1676枚のネット買い越しとなり、前週から268枚減少しました。買いポジションが1,894枚増加し、売りポジションが2,162枚増加したことで、ネットの買い越し幅が縮小しました。

このパターンは前週と同じです。ただし、週末にかけて下落しており、ネットの買い越し幅がさらに縮小している可能性があります。最新のデータで投機筋の動向を確認したいところです。

プラチナ相場は、金相場の上昇についていくことができず、上値の重い展開にあります。7月25日に884ドルまで上昇するなど、反発への期待が高まっていましたが、その後は下落基調が続いています。

この動きを見ると、最大の需要先である自動車産業の低迷が重しになっている可能性がありそうです。特にドイツや中国などの経済データからは、米中貿易戦争の影響が確認されます。

両国は自動車産業にとってきわめて重要な拠点であり、市場でもあります。今後も実需面での好材料が期待しづらいことから、大幅な上昇を想定するのではなく、あくまで短期的な上昇や下落の動きをとらえることが重要であるといえそうです。

まずは830ドルを維持し、反発に転じることができるかを確認したいところです。そのうえで、直近高値の884ドルを超えることができれば、一段高も期待できそうです。

円建てプラチナ相場は下落しました。ドル建てプラチナ相場の下落が影響しました。節目の3,000円を割り込んだことから、いったん手仕舞いを検討したところです。3,000円を回復し、これを維持できるようであれば、その時点で買いを検討したいところです。いまはサポートを確認することを優先したいところです。

【図表2】プラチナ 縦軸:円建てプラチナ/グラム(単位:円)
出所:マネックス証券作成

シルバー:高値圏での推移

シルバーは上昇しました。金相場の堅調さを受けて、8月13日には一時17.50ドルまで上昇する場面がありました。週末にはやや下げましたが、それでも節目の17ドルを維持して取引を終えました。

CFTC(米商品先物取引委員会)が公表するCOMEX銀先物市場における8月13日時点のポジションは、3万9269枚のネット買い越しとなり、前週から1万563枚減少しました。買いポジションが8,514枚減少し、売りポジションが2,049枚増加しました。

これは前週と同じパターンです。高値圏でのもみ合いの動きになったことから、ひとまず利益を確定したい買い手の手仕舞い売りと、売り手の損失覚悟の買い戻しが入っています。週末にかけて、高値圏を維持したことから、さらにポジションの解消が進んでいる可能性がありそうです。週末発表のデータで確認したいところです。

銀相場は久しぶりに大相場になっています。工業用需要がメインであるため、最近の不安定な株価動向や、景気後退懸念の影響を受ける可能性もあるとみていましたが、想定以上に強いといえます。やはり、金相場の堅調さにつれてあげているといえそうです。

一時は92倍に達していた金/銀レシオは、一時86倍にまで低下しましたが、週末には再び88倍に上昇しています。まだまだ歴史的にも高い水準にあるといえます。とはいえ、これが銀相場の上昇につながるとは言い切れません。あくまで参考程度にみながら、銀相場の推移を重視したいと考えます。今後は高値を更新できるかを注視したいところです。

一方で、下げた場合でも16.70ドル前後を維持できれば、上昇基調は継続すると判断できるでしょう。また、今後も金相場の動向も併せて見ていきたいところです。

円建て銀相場は61円台を付けています。下値を切り上げており、堅調さがうかがえます。60円を下回るまでは買いポジションを維持し、上値を狙いたいところです。61円を超えると、さらに上昇に勢いがつきそうです。その場合には、買い増しも検討できそうです。

ただし、銀相場はボラティリティが高い傾向がありますので、下げ始めたときのスピードが速くなる可能性がありますので、注意したいところです。

【図表3】シルバー 縦軸:円建てシルバー/グラム(単位:円)
出所:マネックス証券作成