先週のゴールド:高値圏を維持

金相場は上昇しました。週初は堅調に推移しました。米連邦公開市場委員会(FOMC)を控えて様子見ムードが広がる中、利下げ期待を背景に下値の堅い展開が続きました。

7月30・31日に開催されたFOMCでは、FRBが10年半ぶりの利下げに踏み切ったものの、市場は既に織り込み済みだったことで、材料視されませんでした。しかし、パウエルFRB議長が利下げに積極的なハト派的見通しを示さなかったことで、投資家が買いを手控えたことから、一時は1,411ドルまで下げる場面がありました。その後8月1日には急反発し、1,445ドルまで上昇しました。

トランプ大統領が中国製品に対する追加関税の発動を表明したことを受けて、米中貿易摩擦の激化懸念が高まり、ドルが下落したことが材料視されました。また、株価が大きく下落したことで、安全資産としての買いが入ったことも、大幅高につながりました。週末8月2日は小幅に下げました。

7月の米雇用統計を受けてドル安が進んだことで、高値圏を維持し、週間ベースでは6週間ぶりの高値で週を超えました。

7月の雇用統計によると、景気動向を示す非農業部門の就業者数は前月比16万4000人増と前月から鈍化し、好調の目安とされる20万人を下回りました。前月分は下方修正され、雇用拡大ペースに鈍化の兆しが出ている可能性が指摘されています。失業率は3.7%と横ばい、平均時給の伸びは前年同月比3.2%でした。

世界最大の金上場投資信託(ETF)であるSPDRゴールドトラストの保有高は7月26日の818.14トンから、8月2日には830.76トンに増加しました。この水準は昨年7月末以来であり、投資家の金買いの勢いがさらに増していることが確認できます。

CFTC(米商品先物取引委員会)が公表するCOMEX金先物市場での大口投機筋の7月30日時点のポジションは、25万4388枚のネット買い越しとなり、前週から3,138枚増加しました。買いポジションが333枚増加し、売りポジションが2,805枚減少しました。相場が高止まりする中、投機筋は買いポジションを小幅に積み上げ、売りポジションの解消を進めています。

円建て金相場は下落しました。ドル建て金相場は高値圏を維持しましたが、米ドル/円相場が下落し、円高水準で推移したことが押し下げにつながりました。

【図表1】先週のゴールド 縦軸:円建てゴールド/グラム(単位:円)
出所:マネックス証券作成

今週のゴールド:引き続き高値圏での推移を想定

金相場は高値圏で推移が続くと考えます。市場が注目したFOMCでは、予想通り0.25%の利下げが決定され、フェデラルファンド(FF)レートは年2.00~2.25%となりました。米中貿易摩擦や世界経済の減速で不透明感が強まる中、景気が悪化するリスクを警戒し「予防的」な金融緩和に踏み切りました。

利下げはリーマン・ショックを受けた2008年12月以来10年7ヶ月ぶりです。FRBが2015年12月に始めた利上げ路線を転換したことで、世界的な緩和の流れが鮮明になりました。

FOMC後に公表した声明では、利下げの理由として「世界経済の見通しと抑制的なインフレ圧力」を指摘し、「先行き不透明感が残っている」と説明するとともに、「景気拡大の持続へ適切な行動をとる」と改めて強調し、追加利下げを示唆しました。

また、今年9月末に終了する予定だった保有資産の圧縮を7月末へと2ヶ月前倒しすることも決めました。金融を引き締める圧縮を打ち切ることで、利下げ効果を高める狙いがあるとみられます。

さらに、「6月のFOMC以降に入手した情報は、労働市場が力強く推移し、経済活動が緩やかなペースで拡大していることを示している」と表明し、「雇用の伸びは概してここ数ヶ月堅調で、失業率は低いままだった。家計支出の伸びは今年初めから上向いたが、企業の設備投資の伸びは軟調だった」としました。

利下げはインフレがFRBの目標である2%に上昇する一助となるとの見方を示したものの、「この見通しに対する不透明感は残る」としました。しかし、政策決定は投票権のある10人のうち賛成が8人でした。

ボストン連銀のローゼングレン総裁とカンザスシティー連銀のジョージ総裁の2人は金利据え置きを主張し、反対しました。ローゼングレン総裁は「好景気下での利下げは不要」と指摘。景気拡大が継続し、失業率が50年ぶりの低水準にある中での利下げに疑問を呈し、金利据え置きを主張しました。

利下げ決定をめぐっては、トランプ大統領が過去の利上げは誤りだったと批判し、利下げを執拗に要求していたことから、政治圧力に屈したとの見方も残ります。トランプ大統領は「小幅利下げでは不十分」と明言しており、口先介入を今後も強めるのは確実な情勢です。

一方、パウエルFRB議長はFOMC後の記者会見で、利下げの背景には軟調な世界経済や通商戦争のほか、低過ぎるインフレ率を押し上げる意図があったと説明しましたが、「今回の決定は利下げサイクルの開始であるとはみていない」と言明しました。さらに、「今回の利下げは、サイクルの半ばにおける調整的な性格を持つ」と説明しました。

これが今後、大幅な利下げが実施されることを示唆する発言ではないと受け止められ、株価が急落する場面がありました。

これらから、FRBは一枚岩ではないことが露呈し、さらにパウエル議長の発言で、今回の利下げはあくまで一時的なものであり、今後は利下げのサイクルに入るわけではないことも明確になりました。もちろん、今後景気が悪化し、金融市場が不安定化すれば、追加利下げの可能性はあるでしょうが、現時点のFRBのスタンスは中立と考えるのが賢明でしょう。

このように考えると、今後は株式市場が不安定化したり、金利が乱高下するなど不測の事態が起きるかどうかが焦点になりそうです。また、利下げ余地が限られていることもあり、FRBとしても積極的に利下げを行うことも難しいでしょう。

もっとも、トランプ大統領が8月1日に、制裁関税の対象外となっている3,000億ドル相当の中国産品に、9月1日から10%の関税を上乗せするとツイッターで表明し、中国からの輸入品ほぼ全てに制裁関税を拡大することになったことは、経済面での不透明要素といえます。

米中両政府は前日の7月31日までの2日間、上海で閣僚級貿易協議を実施しましたが、具体的な進展はありませでした。双方は9月に米国で再び協議を行うことで合意しましたが、トランプ大統領はツイッターに「中国が米国産農産物を大量に購入することに最近同意したが、実行しなかった」と書き込み、不満を示していました。

米国は中国に対して、今後も圧力をかける可能性があり、その場合にはさらに世界経済が不安定化する可能性があります。その場合には、すでにみられているように、株式市場が下落し、投資資金が債券市場に向かうことで金利が低下し、一部の資金が安全資産である金に向かう可能性があるでしょう。

このように、現在の金融市場はFOMCとトランプ制裁関税を受けて、きわめて不安定になりつつあります。そのため、金市場への関心は引き続き高い状態が続きそうです。そのため、投資家の押し目買い意欲が維持されることで、節目の1,400ドルを維持しながら、高値をうかがう展開が続きそうです。

また、高値を更新すれば、さらに新規の投資資金が流入しそうです。1,450ドルを超えた場合には、さらに上値を試す可能性があると考えておきたいところです。無論、FRB関係者が追加利下げの可能性を示唆すれば、金市場にはポジティブに作用するでしょう。

円建て金相場は節目の5,000円を維持できるかがポイントになりそうです。ここを維持できれば、これまで抑えられてきた5,100円を超えて、高値を切り上げる動きに移行しそうです。まずは、5,000円での押し目を確認したいところです。その上で、5,100円を超えていけば、その流れに乗って買いを検討したいところです。

逆に5,000円を割り込んだ場合には、いったん手仕舞いを行い、次の買いのタイミングを探りたいところです。もっとも、下落リスクは低いと考えられます。ただし、注意すべきは為替相場です。米ドル/円が106円台に下落するなど、円高リスクが高まっています。円高が上値を抑える可能性には要注意といえます。

プラチナ:反落の展開

プラチナは反落しました。週初は金相場の堅調地合いに支えられる形で高値圏を維持しましたがFOMCをきっかけに下落に転じ、8月2日には一時837ドルまで下落する場面がみられました。週末は842ドルで引けましたが、過去に重要な節目となっていた840ドルは維持して週の取引を終えました。

CFTC(米商品先物取引委員会)が公表するNYMEXプラチナ先物市場における7月30日時点のポジションは2万5768枚のネット買い越しとなり、前週から4,878枚増加しました。買いポジションが1,095枚減少しましたが、売りポジションも5,973枚減少し、ネットの買い越し幅が拡大しました。

7月30日までは高値圏を維持していましたが、その後は週末に向けて下落していることから、買いポジションが減少している可能性が高そうです。今週末発表のデータで確認したいところです。

プラチナ相場は、7月25日に884ドルまで上昇する場面がありました。その後も高値圏を維持したことから、投資家の買いが増えるとみられました。しかし、FOMCをきっかけに上値を抑えられ、今は調整の完了を待つ状況です。プラチナ相場の調整は、株安も背景にあるものと思われます。

工業用向け需要がメインのプラチナは、景気との連動性が意識されやすいといえます。米中通商協議の難航が意識されやすいといえます。一方、最近は自動車向け触媒需要の減退懸念など、需要面の材料に目が向くことが多い状況ですが、供給面からの材料はあまり聞かれません。

また、以前は連動性が高かった主要生産国である南アフリカの通貨ランドとの関係にも変化がみられます。そのため、市場ではあまり材料視されていないように思われます。これらの状況を考慮すれば、今後も当面は自動車関連の需要サイドの材料に注目することになりそうです。

価格動向については、840ドルを割り込むと下げやすくなりそうです。その場合、820ドルで下げ止まるかが重要です。割り込めば、再び節目の800ドルから790ドルまで下げることになりそうです。一方、840ドル前後で下げ止まれば、反発の可能性が残ると考えられます。ただし、直近高値の884ドルを上抜けるには、外部環境の相応の好転が不可欠と考えられます。

金融市場がやや不安定になっていることを考慮すれば、いまは上昇よりもむしろ調整のリスクが高いように思われます。

円建てプラチナ相場は急落しました。節目の3,200円を一時的に超える場面があったものの、それを維持できずに下げがきつくなっています。節目の3,100円も割り込んだことから、まずは心理的節目の3,000円で下げ止まるかを確認したいところです。その上で、反発の兆しがみられれば、買いを検討したいところです。

逆に、3,000円でも下げ止まらないようだと、基調はかなり弱まることになりそうです。その場合には、早めに手仕舞いを行い、買いのタイミングを待ちたいところです。

【図表2】プラチナ 縦軸:円建てプラチナ/グラム(単位:円)
出所:マネックス証券作成

シルバー:反落の展開

シルバーは反落しました。7月30日には上昇しましたが、前週の高値の16.64ドルを超えることができず、金相場も上値追いとならなかったことで売りが優勢となり、8月1日には一時15.88ドルまで値を崩す場面がありました。しかし、ここには重要なサポートがあったことから一段安とはならず、買い戻されて、16.21ドルで週末の取引を終えました。

CFTC(米商品先物取引委員会)が公表するCOMEX銀先物市場における7月30日時点のポジションは、6万4297枚のネット買い越しとなり、前週から9,536枚増加しました。買いポジションが1,153枚増加し、売りポジションが8,383枚減少しました。

7月30日までは上昇基調が維持されていましたが、7月31日以降は大きく値を崩しており、買いポジションが減少している可能性があります。今週末のデータで確認したいところです。

銀相場は、金相場の堅調さにつれる形で上昇基調を強めてきましたが、金相場の動きがやや止まったこともあり、手仕舞い売りが優勢になりました。また、工業用需要がメインでもあることから、米中貿易摩擦の再燃や景気減速への懸念などによる需要減退への連想から、上値が重くなっている印象です。

今のところ、需要なトレンドラインで辛うじてサポートされている状況ですが、16ドルを再度割り込むようだと、下落リスクが高まりそうです。まずは最近の上昇による過熱感が解消され、高値を維持できるかを確認したいところです。

16ドルを割り込めば、15.30ドル程度までの調整となる可能性がありますので、今週の動きは重要といえそうです。

円建て銀相場は大幅反落しました。節目の60円を超えられずに下落し、直近でもみ合った59円も下回ったことから、上値を確認したかのような値動きとなっています。そのため、まずは手仕舞いを行い、下値を確認するのが先決でしょう。58円を割り込んでいることで、目先は56円程度までの調整が想定されます。

また、米ドル/円相場は円高基調にあるため、これも円建て銀相場の下押し圧力になりやすい点には注意が必要です。まずはサポートを確認することを優先し、その上で買いを検討するのがよさそうです。

【図表3】シルバー 縦軸:円建てシルバー/グラム(単位:円)
出所:マネックス証券作成