先週のゴールド:高値更新の展開

金相場は上昇し、直近高値を更新する場面がありました。週初は下落しました。中国の経済統計が発表され強弱感が交錯する内容だったものの、投資家は強い内容を注視したことで世界的に株価が上昇し、これが金相場を圧迫しました。

また、6月の米小売売上高が市場予想を上回り、米連邦準備制度理事会(FRB)による大幅利下げの期待感が後退したことでドルが上昇し、これも下押し要因となりました。

その後は反発に転じました。対ユーロでのドル安を背景に買いが入りました。6月の米住宅着工件数が低調だったことで、米利下げ観測が強まり、対ユーロでドル安が進行したことが買い材料視されました。

さらに、7月18日には一時1,432.20ドルまで上昇し、7月3日以来の高値を付けました。NY連銀のウィリアムズ総裁が、「より迅速に金融緩和に踏み切る必要がある」と発言したことが注目され、利下げ観測が再燃し、これがドル売り・金買いの動きを促しました。

また、米海軍がホルムズ海峡でイランの無人機を撃墜したと発表したことで、地政学的リスクが台頭したことも、金相場の支援材料となりました。週末7月19日にはFRBのハト派的な姿勢を手掛かりに、一時は2013年5月以来の高値となる1,452.60ドルまで上昇しました。ただし、その後はドル高や利益確定売りに圧迫され、1,424.91ドルで引けました。

世界最大の金上場投資信託(ETF)であるSPDRゴールドトラストの保有高は7月12日の800.54トンから7月19日には820.49トンに増加しました。この水準は今年1月末以来であり、投資家の金買いの動きが戻ってきていることがわかります。

CFTC(米商品先物取引委員会)が公表するCOMEX金先物市場での大口投機筋の7月16日時点のポジションは、24万5501枚のネット買い越しとなり、前週から738枚増加しました。買いポジションが3,430枚増加し、売りポジションが2,692枚増加しました。

投機筋の中には売りポジションを増やす向きも出てきており、金相場の水準を割高と判断している向きがいることはわかります。ただし、買いポジションを積み上げる投資家も存在しており、強弱感が対立しているといえます。

円建て金相場は上昇しました。節目の5,000円を明確に超えられない動きが続いていましたが、ドル建て金相場の上昇を受けてようやく抜けてきました。

【図表1】先週のゴールド 縦軸:円建てゴールド/グラム(単位:円)
出所:マネックス証券作成

今週のゴールド:高値圏での推移を想定

金相場は高値更新の動きが続くと考えます。市場の関心は、7月30・31日の連邦公開市場委員会(FOMC)での利下げの幅に向かっています。金利先物市場における0.25%の利下げ確率は100%となっており、市場では利下げが完全に織り込まれた状態にあります。

また、0.50%の利下げについては22.5%の織り込みとなっており、先週末時点では市場は0.25%までの利下げを見込んでいるといえます。一時はNY連銀のウィリアムズ総裁の発言で、大幅利下げの可能性が高まりましたが、ひとまず0.25%の利下げにとどまりそうです。

ウィリアムズ総裁は、政策金利をこれ以上引き下げられなくなる「ゼロ金利制約(ZLB)」の問題に対処するためには、より迅速に金融緩和に踏み切る必要があると発言しました。そのうえで、「米国を含む多くの先進国では、人口高齢化や生産性の伸び率低下に伴う低成長によって中立金利が非常に低い水準にある」と指摘し、各国中央銀行にとって問題になっているとしました。

さらに、ゼロ金利制約に陥らないためには「経済の悪化の最初の兆候が見えたら、迅速に政策金利を引き下げることが重要」と指摘しました。また、「政策金利を長期に低く維持することで中期的な経済成長を促し、インフレ上昇につながっていく」とし、「一時的にインフラ率の上振れも許容することで、長期的な物価安定につながる」との認識を示しました。

ハト派でもあるウィリアムズ総裁の発言は、市場に大きな影響を与えましたが、それでも市場の反応は比較的落ち着いているといえます。一方、これまで指摘してきたように、投資家の資金フローが債券に傾きすぎており、これが金利低下を促してきた面があります。この行き過ぎた金利低下が反転するようなことになれば、市場は想定外の混乱を引き起こす可能性があります。

また、米国株が過去最高値を更新する展開が続いてきましたが、割高感が指摘できる水準にまで上げてきました。調整が進むようだと、これも金融市場の一時的な混乱につながる可能性があります。その際に、金市場にリスク回避の資金が流入するかに注目しておきたいところです。

現時点では、投資家の金買いの動きが顕著であり、押し目は買われる可能性が高いものと思われます。ただし、投資家の債券売りが加速し、金利が上昇した場合、金相場の下押しにつながる可能性があるだけに、注意は必要と考えます。下落した場合、節目の1,400ドルで下げ止まるかに注目しておきたいと考えます。

一方、上昇基調が続いた場合には、最終的に2012年10月につけた1,795ドルを目指す展開が想定されます。この水準まで上昇するケースは、金融危機的なショックが起きた時でしょう。

米景気の拡大期間が過去最長になる中、景気のピークアウトの可能性はゼロではないことから、資産保全のためのリスクヘッジのツールとしての金への取り組みを検討すべきといえそうです。

円建て金相場は節目の5,000円超え、下値を切り上げる一方、高値も切り上げてきています。さらに5,200円を超えるようであれば、上昇に勢いがつきそうです。5,000円を割り込むまでは、上昇基調維持と判断し、保有ポジションは維持して利を伸ばすのが得策でしょう。

また、調整局面となった場合、5,000円までで下げ止まれば、その時点で押し目買いを検討したいところです。金相場は久しぶりに歴史的な動きになりつつあることを十分に理解したうえで、市場動向を見極めたいところです。

プラチナ:続伸の展開

プラチナは続伸しました。これまで引け値ベースで上抜けることができなかった840ドルを超えました。7月19日には一時860ドルまで上昇し、今年5月以来の高値を付けました。

CFTC(米商品先物取引委員会)が公表するNYMEXプラチナ先物市場における7月16日時点のポジションは1万5592枚のネット買い越しとなり、前週から8,899枚増加しました。買いポジションが207枚増加し、売りポジションが8,692枚減少しました。相場の上昇を受けて、投機筋はまず売りポジションの解消を進めているといえます。

プラチナ相場は、これまで重かった840ドルを超えてきました。この水準でサポートを形成できれば、一段の上昇の可能性が高まりそうです。ただし、今の上昇は、金相場の上昇に加え、銀相場も急伸するなど、他の貴金属銘柄の上昇に押し上げられている面があるものと思われます。

したがって、今後のプラチナ相場の上昇の持続性は、引き続き金・銀の市場動向次第となる可能性があるため、これらの動きを注視しておきたいところです。

一方、今後も最大の需要先である自動車産業の動向には注意が必要と考えます。プラチナ触媒を使用するディーゼル車は主流の欧州における6月のEUの新車販売台数(乗用車、マルタを除く)は、前年同月比7.8%減の144万6183台でした。

前年に比べ営業日数が少なかったことで、2ヶ月ぶりにマイナスとなりました。また、1~6月の累計販売台数は前年同期比3.1%減の818万3562台となっており、低調な販売状況が鮮明となっています。実需面でのサポートの有無は、持続的かつ長期的な上昇に不可欠であるだけに、今後も注視していく必要があるでしょう。

短期的には、840ドルを再び割り込むようであれば、調整基調に入る可能性があります。その場合には、まずは800ドルで下げ止まるかを確認する必要があると考えます。

円建てプラチナ相場は節目の3,000円を明確に超え、3,100円超えを狙う展開にあります。ドル建てプラチナ相場の上昇が続けば、さらに上値を切り上げる可能性があります。買いポジションを保有している場合には、節目の3,000円を割り込むまでは維持して利を伸ばしたいところです。また、調整した場合には、3,000円で下げ止まれば、その時点で押し目買いを検討したいところです。

【図表2】プラチナ 縦軸:円建てプラチナ/グラム(単位:円)
出所:マネックス証券作成

シルバー:急伸の展開

シルバーは急伸しました。7月16日に直近高値を更新した後、投機的な買いが入ったもようで、水準を大きく切り上げる展開となりました。週末7月19日には一時16.58ドルまで上昇する場面があるなど、投機的な動きがさらに強まりました。

CFTC(米商品先物取引委員会)が公表するCOMEX銀先物市場における7月16日時点のポジションは、3万7425枚のネット買い越しとなり、前週から1万2274枚増加しました。買いポジションが4,369枚増加し、売りポジションが7,905枚減少しました。

銀相場が急伸したことで、新規の買いが入る一方、売り方の買い戻しが急速に進んでいます。週末にかけてさらに値を上げていることから、投機筋は買い戻しを急いでいるものと思われます。来週のデータで確認したいところです。

銀相場は低位での動きが続いていました。また、この数ヶ月間は15ドル台半ばを上抜けることができない状況が続いています。ただし、その一方で、5月末につけた14ドル台前半を底値に徐々に下値を切り上げる展開が続いていました。徐々にではありますが、上値を狙う素地ができていたといえそうです。

このまま上昇基調が続けば、昨年6月につけた17.31ドルを目指す展開が想定されます。これを上回れば、2017年後半から2018年前半の上値水準だった17.50ドル前後を目指すことになりそうです。いずれにしても、金相場の動向次第の面が強いことは否めません。

金/銀レシオは先週時点で93倍台でしたが、これが銀相場の急伸により、88倍をやや下回る水準にまで低下してきました。これまでの歴史的な水準に調整的な動きがみられることに注目しておきたいところです。

以前にも解説したように、銀相場はいったん動き出すと、金相場の変動を大きく超えることが多く、今回はまさにその典型的な相場展開になっています。そのため、今後もボラティリティを伴った変動が想定されるだけに、注意が必要でしょう。

まずは、節目の16ドルを維持できるか確認したいところです。そのうえで、さらに高値を更新するかにも注目したいところです。

円建て銀相場は急伸しました。上値のめどとなっていた55円を明確に上抜け、一時59円水準にまで上昇しました。短期間で急騰しただけに、目先は手仕舞い売りに注意したいところです。そのうえで、58円を割り込むまでは、買いポジションを維持しながら利を伸ばしたいところです。

また、押し目が形成された場合、56円で下げ止まるようだと買いを検討したいところです。一方で、56円を明確に割り込むようであれば、ポジションを解消して状況を見極めたいところです。

【図表3】シルバー 縦軸:円建てシルバー/グラム(単位:円)
出所:マネックス証券作成