先週のゴールド:反落の展開

金相場は上昇しました。週初は下落し、米連邦準備制度理事会(FRB)が今月末の連邦公開市場委員会(FOMC)で大幅な利下げには踏み切らないとの見方が強まり、ドル高が進んだことが材料視され、1,400ドルを割り込む水準で推移しました。その後は上昇しました。一時1,386.11ドルと、7月2日以来の安値を付けましたが、安値拾いの買いが入りました。

7月10日には市場の関心を集めていた、パウエルFRB議長の議会証言が実施されました。この内容を受けて利下げ観測が広がったことから、ドルが下落して金相場を押し上げ、一時1,417.20ドルの高値を付ける場面がありました。7月11日には下落しました。

米消費者物価指数(CPI)が予想より高い上昇を示したことで、FRBが予想されているほど積極的に利下げを行うかについて疑念が生じたことで売りが出ました。ただし、一時は1週間ぶり高値の1,426ドルを付ける場面もありました。週末12日には小幅に上昇しました。利下げ期待が下値を支え、一時1,413.41ドルまで上昇しました。

世界最大の金上場投資信託(ETF)であるSPDRゴールドトラストの保有高は7月5日の796.97トンから7月12日には800.54トンに増加しました。わずかではありますが、投資家の買いが再び戻ってきたと言えます。

CFTC(米商品先物取引委員会)が公表するCOMEX金先物市場での大口投機筋の7月9日時点のポジションは、24万4763枚のネット買い越しとなり、前週から1万4183枚減少しました。買いポジションが6,597枚減少し、売りポジションが7,586枚増加しました。

円建て金相場はほぼ横ばいでの推移でした。一時は節目の5,000円を超えて高値を付ける場面もありましたが、ドル建て金相場の上値が重かったことに加え、ドル円相場が円高気味に推移したことが上値を押さえました。ただし、下値も切り上げており、底堅さが維持されました。

【図表1】先週のゴールド 縦軸:円建てゴールド/グラム(単位:円)
出所:マネックス証券作成

今週のゴールド:底値固めの展開

金相場は引き続き、底値固めから上値を試す可能性を探る展開を想定します。先週の市場の最大の関心は、7月10・11日に実施されたパウエルFRB議長の議会証言でした。

パウエルFRB議長は、米議会下院金融サービス委員会で証言し、「貿易摩擦をめぐる不透明感と世界経済の減速懸念が引き続き景気見通しの重しになっている」と警戒感を表明。成長を維持するため、早ければ7月末の政策会合で利下げを決める可能性を示唆しました。

議長が景気認識や金融政策について発言するのは、米中両国が6月下旬の首脳会談で制裁拡大の見送りで一致して以来初めてです。また、貿易戦争の「一時休戦」は「不確実性を完全に払拭していない」とし、米景気の下振れリスクが残っているとの認識を示しました。

さらに、「景気の現状は良好」とする一方、「この数ヶ月間で不確実性が高まった」と指摘し、米中貿易摩擦などを背景に設備投資の伸びが顕著に減速し、4~6月期の成長が鈍化したと分析しました。

また、物価動向についても「弱いインフレが想定よりも長引くリスクがある」として懸念を示しました。そのうえで、「やや緩和的な政策が必要な条件が整ってきた」と改めて説明し、金融緩和への方針転換を示唆しました。

金利先物市場では、7月のFOMCでの0.25%ポイントの利下げはすでに織り込んでいるだけに、今回のパウエル議長による議会証言はひとまず市場に安心感を与えたと言えます。

一方、同じ10日には6月18・19日開催のFOMCの議事要旨も公表されました。前回のFOMCでは、政策変更は見送ったものの、米中貿易摩擦などの不透明感に伴う「景気の重しが継続すれば近いうちの利下げが正当化される」として、早ければ7月末の次回会合での引き下げを想定していることが判明しました。

6月の会合は、米中両国が同月下旬の首脳会談で制裁関税の拡大見送りで一致する前に開かれました。議事要旨によると、米中貿易協議が5月に物別れに終わったことや、世界経済が減速していることを踏まえ、「景気下振れリスクは5月会合時から強まった」と指摘。個人消費は低失業率を背景に「堅調」としつつ、トランプ政権が発動した中国製品などへの追加関税は「いずれ耐久財消費の足を引っ張る可能性がある」と懸念を示しました。

また、底堅い労働市場環境が続く中、インフレ率が物価目標の2%を下回り続けていることに多くの懸念が示されました。複数の参加者は「目標達成が従来の想定よりも後ずれする」と主張しました。さらに、インフレ低迷を容認すれば、期待インフレの落ち込みなどを通じ、物価安定を目指す政策運営が難しくなるとしています。

一方で、一部の参加者は「利下げの条件はまだそろっていない」と反論しています。「景気は依然として良好」とし、「利下げを講じれば、金融不均衡を増大させる」として、株価など資産価格の行き過ぎた上昇を招く恐れがあるとしています。

6月の会合では政策金利を年2.25~2.50%に据え置くことを賛成多数で決定しましたが、景気の先行きを警戒し、「成長持続へ適切に行動する」と利下げ方針に転換する姿勢を示唆していました。採決では投票権を持つ10人のうち、セントルイス連銀のブラード総裁が反対票を投じています。

7月のFOMCでの利下げは確定的でしょうが、市場の一部が期待していた0.50%の利下げは9月のFOMCまで待つことになるでしょう。その間の市場動向次第では、政策はいかようにも変化すると考えられます。現時点では固定観念を持たずに見ていくことが肝要でしょう。とはいえ、利下げそのものは金相場には大きなサポート要因と言えます。

一方で、繰り返すように、現在の金利低下の背景には、投資家の過度な債券投資があることも事実です。景気がすぐに悪化し、株価が急落するとは考えにくい状況ではありますが、そのような状況が続く中で、多くの投資資金が債券市場に流入し続けたことが、金利水準を押し下げてきたこともまた事実でしょう。

したがって、何かしらの材料をきっかけに金利が上昇するようなことになれば、債券市場から資金が流出し、金利が上昇することで株式市場にも影響が出るものと思われます。そのような事態になった場合に、金市場がどのような反応を示すかに注目しておく必要があります。

目先は1,400ドルが重要なサポートです。これを維持できるかどうかで、目先の方向性が決まるでしょう。サポートされた場合には、再び1,435ドルを試す可能性がありますが、割り込んだ場合には、直近安値の1,380ドルで下げ止まるかを確認することになります。これも下回るようだと、1,350ドル程度までの下げになるものと思われますので要注意といえるでしょう。

円建て金相場は節目の5,000円超えを3回トライしましたが、いずれも維持することができませんでした。そのため、ドル建て金相場が下げに転じるようだと下げやすい地合いにあると言えます。また、為替相場は円高に向かうリスクもあり、上値が重くなる可能性がありそうです。

5,000円を明確に超えていけば、その流れに乗って買いを検討したいところですが、下げに転じて4,900円を割り込むようだと下げ幅が大きくなりそうです。その場合には、いったん撤退し、下値を確認したいと考えます。

プラチナ:反発の展開

プラチナは反発しました。前週末に急落しましたが、前週の安値をかろうじて下回らずに推移したことで反発し、週末は827ドルで引けました。

CFTC(米商品先物取引委員会)が公表するNYMEXプラチナ先物市場における7月9日時点のポジションは、6,693枚のネット買い越しとなり、前週から2,604枚減少しました。買いポジションが2,675枚減少し、売りポジションも71枚減少しました。前週末の急落を受けて、売りそびれた向きが戻り局面で手仕舞い売りを出した可能性が高そうです。

プラチナ相場は引き続き方向感のない展開にあります。ただし、これまでのレンジである780ドルから830ドルからやや水準を切り上げ、直近の調整場面では800ドルで下げ止まった格好となっています。

ただし、上値も830ドルで重くなっており、これを超えられるかが次の焦点となります。しかし、現時点でこの水準を明確に上抜くだけの材料はないと言えます。したがって、引き続き金相場の上昇などの外部要因次第となりそうです。

また、830ドルを超えた場合でも、840ドル水準には、6月末から7月初めにかけて形成された次のレジスタンスが控えています。最終的にはこれを上抜けることができるかどうかで、今後の展開が決まりそうです。

長期的に見れば、リーマン・ショック以降で730ドル水準を大きく下回ったことはありません。この水準は、2008年にピークを付けて崩壊したコモディティブームが実質的に始まった2004年のプラチナ相場の上昇の起点の水準でもあります。したがって、730ドルを下回ることは相当のことが起きた場合とも言えます。つまり、そう簡単には割れない可能性が高いといえるでしょう。

とはいえ、相場のことですから、実際の値動きを注視しながら対処することが肝要です。引き続き、最大の需要先である自動車産業の動向を注視したいところです。

円建てプラチナ相場も狭いレンジでの推移となりました。2,950円から3,000円がレンジの中心となっており、まずはこれをどちらに抜けるのかを確認することになります。抜けた場合には、その方向に相場が移行すると考え、上抜けた場合には買いを検討したいところです。

逆に下回った場合には、まずは2,900円で下げ止まるかを確認することになります。そのうえで、押し目買いを検討したいところです。今はドル建てプラチナ相場の方向性を探る展開でもあり、まずはその動きを確認したいところです。

【図表2】プラチナ 縦軸:円建てプラチナ/グラム(単位:円)
出所:マネックス証券作成

シルバー:反発の展開

シルバーは反発しました。前週末に急落しましたが、その際の安値である14.85ドルを割り込まずに反発し、15ドル台を回復して週末の取引を終えました。

CFTC(米商品先物取引委員会)が公表するCOMEX銀先物市場における7月9日時点のポジションは、2万5151枚のネット買い越しとなり、前週から5,304枚減少しました。買いポジションが3,659枚減少し、売りポジションが1,645枚増加しました。

銀相場が安値圏で推移する中、投機筋はひとまず買いポジションを整理し、売りポジションを積み上げたもようです。銀相場は辛うじて前週の安値を下回らずに戻しています。その結果、わずかではありますが下値を切り上げた状態にあります。

一方、値を戻したとはいえ、直近の上値抵抗である15.25ドルを超えておらず、上値も限定的となっています。したがって、上値を試すにはまずはこの水準を明確に超えることが不可欠でしょう。超えた場合には、6月高値の15.55ドルを試すことになるでしょう。さらにこれを超えると、一気に16ドル台が視野に入ってくると考えます。

ただし、現段階でこのような動きは期待しづらいと言えます。上昇基調に転じるには、金相場が再び地合いを強めて上昇トレンドに戻すなど、外部要因のサポートが必要でしょう。

一方、直近の金/銀レシオは引き続き93倍の水準です。これは1991年以来の高水準であり、金と銀の相対的な価値の差は歴史的な大きさになっています。それだけ金相場が相対的に強いと言えます。一方で、銀相場の水準自体は長期的に見ると、13ドル台後半が下値になっており、これ以下の水準に大きく値を下げることも考えにくい状況にあります。

したがって、慎重さは必要なものの、下値はある程度限定的と考えておくことも必要と考えます。

円建て銀相場は54円台半ばから55円を上限とした狭いレンジでの値動きに終始しました。ドル建て銀相場が上昇・下落のどちらに動くか次第ではありますが、55円を超えると相応の上昇相場が期待できそうです。その場合には、そのトレンドについていく形で買いを検討したいところです。

そのうえで、下げ止まるのを確認したうえで買いを検討したいところです。逆に54円を割り込むような下げになった場合には、押し目買いは避け、下値を確認したいところです。

【図表3】シルバー 縦軸:円建てシルバー/グラム(単位:円)
出所:マネックス証券作成