先週のゴールド:反落の展開

金相場は反落し、週初に大きく値を下げました。6月28・29日開催のG20首脳会議に合わせて実施された米中首脳会談で、米国と中国が貿易協議を再開することで合意したことで楽観的な見方が広がり、株式やドルが上昇するなどリスク資産が選好されました。これにより金が売られ、7月1日に一時は1,381.51ドルまで下落し、6月20日以来の安値を付けました。

しかし、翌7月2日には一転して上昇しました。世界経済の成長に対する懸念に加え、貿易への新たな警戒感が生じたことで米国債利回りが低下し、金相場を下支えました。さらに7月3日には1,435.98ドルまで上昇する場面がありましたが、株価の上昇を受けて安全資産とされる金の魅力が低下し、横ばいでの推移となっています。

一方で世界的な成長懸念や、ハト派的な金融政策が講じられるとの観測が引き続き下支えしていましたが、週末7月5日には下落しました。6月の米雇用統計で景気の底堅さが示され、連邦準備制度理事会(FRB)による7月の大幅利下げの公算が小さくなり、一時は1,386.52ドルまで値を下げました。

6月の米雇用統計によると、非農業部門の就業者数は22万4000人増で、5ヶ月ぶりの高水準でした。市場予想の16万人増を大きく上回り、前月から大きく回復しました。また、ドルが対主要通貨で2週間超ぶりの高値になったことも地合いを悪化させました。

一方、インドのシタラマン財務相は予算演説で、金などの貴金属に課す輸入関税を10%から12.5%に引き上げたことを明らかにしました。これにより、正規ルートの金輸入の減少が想定される一方、密輸が増えるとの指摘も聞かれます。インド政府は、2013年8月に経常赤字の抑制とルピー安阻止のため、金の輸入関税を10%に引き上げています。

世界最大の金上場投資信託(ETF)であるSPDRゴールドトラストの保有高は6月28日の794.04トンから7月5日の796.97トンに小幅増加しました。7月1日には800.20トンに増加する場面もありました。

CFTC(米商品先物取引委員会)が公表するCOMEX金先物市場での大口投機筋の最新のポジションは、4日が独立記念日の休場だったことから、先週末時点では発表されていません。

円建て金相場は反落しました。一時は節目の5,000円を超える場面がありましたが、その水準を維持できませんでした。また、ドル建て金相場が値を下げたことで、円安基調だった為替相場の影響は限定的でした。

【図表1】先週のゴールド 縦軸:円建てゴールド/グラム(単位:円)
出所:マネックス証券作成

今週のゴールド:底値固めの展開

金相場は底値固めの展開を想定します。6月の米雇用統計が予想を大幅に上回る堅調な内容となったことで、FRBの利下げ幅に対する期待感がやや後退し、これが金相場の上値を抑えています。

市場では、7月末の連邦公開市場委員会(FOMC)での0.25%の利下げを織り込む一方、0.50%の利下げを見込む向きも少なくありませんでした。これまで利下げ観測から米国株が買われる一方で、債券も買われ、金も買われるといった、非常に興味深い展開が続いていました。

しかし、景気指標の好転で利下げの必要性に疑問が残る中、市場ではひとまず0.25%の利下げで当面は止まるのではないかとの見方が浮上しています。追加的な利下げがなくなるとの見方が強まれば、現時点で市場ではすでに利下げが織り込まれているだけに、市場が失望し、金相場が大きく調整する可能性があります。

今週はパウエルFRB議長の議会証言があります。そこで、FRBとしての今後の政策方針に関する言及があれば、それがヒントになるでしょう。いずれにしても、市場では利下げへの期待があまりに過熱していると感じます。この点には要注意でしょう。

一方、市場では債券投資が過度に進んでいます。そのため、利下げへの期待が剥落し、債券売りが出るようだと、金利が上昇し、株式が売られる可能性もあります。その場合、金市場はリスク回避で買われるのか、あるいは金利上昇で売られるのかを見極める必要があるでしょう。

このように、金利面から見ると、いまの市場構造は複雑です。したがって、今後も金利動向を注視したうえで、金市場がどのように反応するかを注視したいところです。

目先は1,380ドルが重要なサポートです。これを維持できるかどうかで、目先の方向性が決まると考えられます。サポートされた場合には、再び1,435ドルを試す可能性があるでしょう。逆に下回った場合には、1,350ドルから最大で1,330ドル程度までの下落リスクがあるため要注意でしょう。

円建て金相場は徐々に上値が切り下がっており、下落リスクに注意が必要と考えられます。もっとも、基本的には押し目買いを検討したいところです。まずは4,900円で下げ止まり、2番底を形成するのを待ちたいところです。一方、再び5,000円を上回り、これを維持できれば、素直にその動きについていきながら買いを検討したいところです。

プラチナ:急反落の展開

プラチナは週末に急落しました。週初から週中にかけては、これまでのレンジの上限である830ドル台で推移していましたが、週末に急落し、一時800ドルを割り込む場面もありました。引けでは辛うじて800ドルを維持しました。

CFTC(米商品先物取引委員会)が公表するNYMEXプラチナ先物市場における最新のポジションは、7月4日が独立記念日の休場だったことから、先週末時点では発表されていません。

プラチナ相場は780ドルから830ドルのレンジでの取引が続いていましたが、このレンジの上限付近での動きが続いていたため、レンジを超えてさらに上値を切り上げるかに見えました。しかし、結果的に840ドルの壁は厚く、週末の金相場の下げにつれる形で大きく値を下げました。

このような動きを見ると、プラチナ相場は金相場の堅調さに支えられていた可能性が高いとの見方になりそうです。そうなると、今後の金相場次第の展開になりそうですが、一方でプラチナの需要の大半が工業用向けであることから、世界の景気動向の不透明感が嫌気される可能性がありそうです。

特に、最重要需要先であるディーゼル車の触媒向け需要の動向に懸念があります。ドイツ自動車工業会(VDA)が発表した乗用車統計(暫定)によると、2019年上半期(1~6月)の生産台数は、外需の落ち込みを受けて、前年同期比12%減の249万1600台となりました。

輸出台数は世界的な市場悪化を背景に15%減の186万5800台となりました。ただし、国内販売(新規登録台数)は1%の小幅増となり、ここ10年で最高の184万9000台を記録しました。

一方で6月単月では、生産台数は前年同月比24%減の37万4700台でした。労働日数が3日少なかったことが影響しました。輸出台数も27万3000台と25%減でした。国内販売は5%減の32万5200台でした。受注台数は国内向けが11%落ち込む一方、輸出向けは3%上向きました。これらの数値を見る限り、自動車販売の先行きは楽観しづらいといえます。

触媒向け需要の伸び悩みで、需要面からの価格押し上げは期待しづらいといえます。したがって、まずは金相場の動向を確認し、そのうえで節目の800ドルや従来のレンジ下限である780ドルで下げ止まるかをまずは確認することになるでしょう。そのうえで、下値が堅くなれば、反発の可能性を探りたいところです。また、今後も世界情勢や米中貿易戦争などの材料にも注意が必要と考えます。

円建てプラチナ相場も反落しました。ただし、戻り高値の水準でのもみ合いとなりました。ドル建てプラチナ相場は急落しましたが、円安基調が強まったことが下値を支えました。節目の3,000円を維持しており、まずはこの水準を維持できるかを確認したいところです。そのうえで、下値が高くなったのを確認したうえで、買いを検討したいところです。

一方、3,000円を割り込んだ場合には、まずは2,900円を維持できるかを確認したいと考えます。この推移は過去にも重要なサポートになっており、これを維持できれば、反発の可能性は残ると考えます。ただし、下値を割り込んだ場合には、急落のリスクが高まる可能性があるため、いったん撤退するのが賢明と考えます。

【図表2】プラチナ 縦軸:円建てプラチナ/グラム(単位:円)
出所:マネックス証券作成

シルバー:急落の展開

シルバーは週末に急落しました。週初から週中にかけては、金相場の動きにつれる形で15.30ドルを上限に狭いレンジでの推移が続きました。しかし、週末に金相場が米雇用統計の結果から値を下げたことを受けて、シルバーも大きく値を下げ、節目の15ドルを割り込んで引けました。

CFTC(米商品先物取引委員会)が公表するCOMEX銀先物市場における最新のポジションは、4日が独立記念日の休場だったことから、先週末時点では発表されていません。銀相場は前週の高値水準だった15.50ドルから先週は15.30ドルに上値を切り下げ、週末に値を大きく下げました。

このような動きを見ると、いったん上値を確認したように見えます。これまで金相場が低金利を背景に買われてきましたが、銀相場には独自の材料がない中で金相場につれて高値を目指す動きになっていただけに、金相場が下げるともろいといえます。目先は14.85ドル前後に重要なサポートがありますので、まずはこの水準を維持できるかを確認することになりそうです。

金利が今後も反発基調を強めるようだと、金相場の上値が重くなる可能性がありますので、注意が必要といえそうです。また、直近の金/銀レシオは前週の92倍から93倍にさらに水準を切り上げています。これは1991年以来の高水準であり、金と銀の相対的な価値の差は歴史的な大きさになっています。それだけ低金利状態の金相場への影響が大きいといえそうです。

一方で、銀相場の水準自体は長期的に見ると14ドルが下値になっており、この10年間でかなり低い水準であることも事実です。この点も念頭に入れたうえで、今後の値動きを注視したいと考えます。

円建て銀相場は小幅に下落しました。先週に続いて55円を挟んだ水準での推移が続いています。まずはどちらに放れるかを注視したいところです。上に放れた場合には、その流れに素直についていく形で買いを検討したいところです。一方で、下に放れた場合には、保有しているポジションはいったん手仕舞い、54円で下げ止まるかを確認したうえで、再度買いを検討したいと考えます。

【図表3】シルバー 縦軸:円建てシルバー/グラム(単位:円)
出所:マネックス証券作成