先週のゴールド:続伸の展開

金相場は続伸しました。週初から続伸となり、6年ぶりの高値水準に上昇しました。トランプ大統領がイランに対して新たな制裁を科すと表明したことを受けて、安全資産とされる金の需要が高まり、6月25日には一時1,438.63ドルまで上昇し、2013年5月以来の高値を付けました。

ただし、米連邦準備制度理事会(FRB)関係者の発言で、大幅な利下げへの期待が後退し、上げ幅を縮小しました。6月26日には反落しました。FRBが7月の米連邦公開市場委員会(FOMC)で大幅な利下げはしないとの観測が浮上したことが売り材料視されています。

また、インドの宝石・宝飾品の業界団体が、同国の2019年の金需要が前年比10%低下し、3年ぶりの低水準に落ち込む可能性があるとの見方を示したことも重しとなりました。インドでは、国内価格が過去最高値を付けたことで、祝祭シーズンの時期の小売販売が圧迫されると予想されています。

中国に次ぐ世界第2位の金消費国であるインドの需要が落ち込めば、6年ぶりの高値を付けた金価格の上値余地が限られる可能性が指摘されました。ワールド・ゴールド・カウンシルによると、インドの2018年の金消費量は前年比1.5%減の760.4トンと、10年平均の838トンを下回っています。インドの金価格は、6月25日の取引で過去最高値の10グラム=35,960ルピーを付け、1ヶ月前の水準をすでに10%超上回っています。

金相場は週末28日には一時は1,424.24ドルまで上昇しましたが、その後は6月29日の米中首脳会談が両国の貿易摩擦緩和につながるかを見極める動きが強まり、引けでは高値から値を下げ、週末は1,409.10ドルで引けました。

6月はFRBの利下げ期待を背景に、月間ベースでは8%高と、3年ぶりの高い上昇率を記録しました。四半期ベースでも9.1%高と、2016年1~3月期以来の高い伸びとなっています。

世界最大の金上場投資信託(ETF)であるSPDRゴールドトラストの保有高は6月21日の799.03トンから6月28日には794.04トンに減少しました。6月24日には801.96トンにまで増加する場面もありましたが、その後は徐々に減少しました。金相場が頭打ちになったところで売りが出ているようです。

CFTC(米商品先物取引委員会)が公表したCOMEX金先物市場での大口投機筋の6月25日時点のポジションは23万6554枚の買い越しとなり、前週から3万2231枚の大幅増加となりました。買いポジションが2万3475枚増加し、売りポジションが8,756枚減少したことで買い越し幅が拡大しました。

先週は売りポジションを増やしていた一部の投機筋も金相場の上昇で買い戻しを余儀なくされています。また、価格上昇局面でも積極的な買いが入ってきていることがわかります。

円建て金相場は大幅続伸となりました。ドル建て金相場の上昇に加え、米ドル/円が円安方向で推移したことが押し上げにつながりました。

【図表1】先週のゴールド 縦軸:円建てゴールド/グラム(単位:円)
出所:マネックス証券作成

今週のゴールド:高値圏でのもみ合い

金相場は引き続き高値圏を維持すると考えます。短期間の急騰で調整リスクが懸念されましたが、想定以上に堅調な印象です。ドル安や米金利の低下を背景に、今後も金相場の上昇が続くと考える向きが増えてきているようです。

しかし、やはり短期間での上昇幅があまりに大きいため、さらに上値を切り上げるには、一定の調整も必要でしょう。その際に、どの水準で下げ止まるかが重要であると考えます。過去のチャートの節目となった1,350ドルから1,375ドルは、調整した場合のサポートとして意識されやすいと考えます。この水準を念頭に置きながら、市場動向を見ていくようにしたいと考えます。

一方、金相場を押し上げた米金利の低下観測ですが、市場における7月30・31日のFOMCでの0.25%ポイントの利下げ確率は100%に達しています。中には0.50%ポイントの利下げを想定する向きもいますが、これをFRB高官が否定するなど、市場の利下げ期待を戒める発言も聞かれるようになっています。

今月にはパウエルFRB議長の議会証言も控えており、今後の金融政策の考え方に注目が集まるでしょう。米景気が悪化しているわけでないため、現状でどのような理由で利下げを実施するのか、この点に注目したいところです。

1995年以降4回の米利下げ局面は、金相場はそれぞれ違う動きをしています。今回利下げが実施されれば、「予防的利下げ」との認識となり、株価が上昇するとの見方が根強いようです。その場合に、金相場がどのように動くのかを注視したいところです。ただし、金利が低い水準を維持しているうちは、金相場は底堅い推移が想定されるでしょう。

一方、6月29日に開催された米中首脳会談では、通商協議の再開で合意し、米国は追加関税を見送りました。ただし、問題の解決には程遠く継続協議となっており、市場の不安感の払しょくはできませんでした。週明けの市場で、市場参加者がどのような反応を示すかにまずは注目したいところです。

円建て金相場は高値圏で推移しています。4,900円が目先のサポートになりそうですが、これを維持できれば、5,000円超えからさらに上値を試す可能性があります。その場合には、再度上値を追いながら買いを検討したいところです。一方で、4,900円を割り込んだ場合には、4,800円までの調整が想定されます。この水準で下げ止まったのを確認してから、買いを検討したいところです。

プラチナ:急伸の展開

プラチナは週末に急伸しました。週初から週中にかけては、金相場やパラジウム相場の堅調さを背景に、徐々に下値を切り上げる展開となりました。週末には急激に上昇し、それまでの上値抵抗となっていた830ドルを上抜け、一時839ドルまで上昇する場面がありました。週末は833ドルで引けました。

CFTC(米商品先物取引委員会)が公表したNYMEXプラチナ先物市場における6月25日時点の大口投機筋のポジションは1,986枚の買い越しとなり、前週から16枚増加しました。買いポジションが1,834枚増加する一方、売りポジションが1,818枚増加しました。

これまでプラチナ相場は780ドルから830ドルのレンジでの取引が続いていました。しかし、先週末に突如として急伸し、直近高値を上抜けました。明確な材料は不明ですが、金相場の底堅さや同じ白金族系メタルであるパラジウム相場の堅調さが背景にあるものと思われます。

また、下値が切り上がってきたことや、週末に控えていた米中首脳会談を前に、ショート筋の買い戻しが入った可能性がありそうです。

今後はこれまでのレンジ上限だった830ドルを維持できるかがポイントになりそうです。これを維持できれば、840ドルにある重要なテクニカルポイントを超え、870ドルから900ドル超の動きにつながる可能性もありそうです。逆に830ドルを再び下回るようだと、再度780ドルを目指して調整することも想定されます。

繰り返すように、プラチナそのものの材料に乏しい状況が続いています。プラチナの需要は大半が工業用向けであり、世界景気の動向の影響を受けやすいといえます。特に最重要需要先であるディーゼル車の触媒向け需要の動向に懸念があります。ディーゼル車が主流の欧州の新車販売台数は依然として低迷しています。

今後は金相場の上昇などがプラチナ相場を押し上げる可能性はあるものの、その場合でも上昇率は限定的になる可能性がある点には要注意でしょう。

円建てプラチナ相場は引き続き安値圏でのもみ合いとなりました。2,900円が堅い一方で、3,000円も重い状況が続きました。目先はこのレンジのどちらに抜けるかを注視することになります。上抜けると、3,100円まで早い動きになる可能性がありそうです。現状では下値が堅くなっている印象がありますので、3,000円超えでの上昇に乗るのが賢明でしょう。

したがって、3,000円超の動きになった場合には、早めに買いを検討したいところです。一方で、2,900円を下回った場合には、急落のリスクがあるため、いったん撤退するのが賢明と考えます。

【図表2】プラチナ 縦軸:円建てプラチナ/グラム(単位:円)
出所:マネックス証券作成

シルバー:急伸の展開

シルバーは下落しました。週初は堅調な金相場の動きにつれる形で高値圏を維持しました。しかし、その後は徐々に値を下げ、週末は15.30ドルで引けました。

CFTC(米商品先物取引委員会)が公表するCOMEX銀先物市場における6月25日時点の大口投機筋のポジションは3万565枚の買い越しとなり、前週から1万6049枚増加しました。買いポジションが4,298枚増加し、売りポジションが1万1751枚減少しました。

金相場が堅調な動きをする中、新規の買いが小幅に入る一方、売りポジションが大きく減少しており、これまでの上昇で買い遅れた向きが慌てて買い戻している様子がうかがえます。しかし、その後は週末にかけて底堅いものの落ち着いた動きになっており、週末の米中首脳会談の結果を待つ動きになったものと思われます。目先はこの会談の結果に対する市場の評価を見極めることになるでしょう。

株価が上昇に転じるようだと、銀需要が工業向けが大半であることから、銀相場への関心が高まる可能性がありそうです。その場合、直近高値の15.55ドルを超えるかに注目することになるでしょう。一方、値動きそのものを見ると、いまは15.15ドル前後にあるサポートで維持されているように見えます。

したがって、この水準を下回るようだと、節目の15ドルまでの下落となる可能性が高そうです。そこで下げ止まれば、再び上昇する可能性は残るでしょう。まずは金相場や株価動向を確認し、そのうえで銀相場がどのような反応を示すのかに注目したいところです。

一方、金相場の相対的な堅調さを背景に、直近の金/銀レシオは92倍に上昇しました。これは1992年以来の高水準であり、いまの金と銀の相対的な価値の差が歴史的な大きさになっていることには留意が必要でしょう。

直近では、株価が上昇に転じる前の2003年の際には73倍でした。また、2008年のリーマン・ショックの際には79倍です。それを大きく上回っている状況にある背景には、低金利状態もあるでしょう。しかし、一方で、金/銀レシオの拡大が将来不安を示しているとすれば、やはり注意が必要といえそうです。

円建て銀相場は小幅に下落しました。55円を挟んだ水準で推移しており、どちらに放れるかを注視したいところです。上に放れた場合には、素直についていくのが得策と考え、買いを検討したいところです。一方で、下に放れた場合には、54円で下げ止まるかを確認したうえで、買いを検討したいと考えます。

【図表3】シルバー 縦軸:円建てシルバー/グラム(単位:円)
出所:マネックス証券作成