先週のゴールド:急騰の展開

金相場は急騰しました。週初は良好な米経済指標を受けて、米短期金利が上昇したことから売りが出る場面もありました。

トランプ米大統領がG20首脳会議に合わせて中国の習近平国家主席と会談すると表明したことを受けて、米中貿易戦争が早期に終結するとの期待感が高まり、株価が上昇したことで上げ幅を縮小しました。しかし、その後は上昇しました。

6月18・19日に開催された連邦公開市場委員会(FOMC)後の声明で、米連邦準備制度理事会(FRB)が経済の不透明感拡大や弱い物価上昇に対応して年内に利下げする可能性を示唆したことが支援材料になり、一時1362.10ドルまで上昇し、高値を更新しました。6月20日もこの流れを引き継ぎ、一時1390.38ドルと、2013年9月以来の高値を付けました。

この流れは止まらず、週末21日には1,410.78ドルまで上昇しました。また、米軍によるイランへの報復攻撃の可能性や世界の貿易摩擦への懸念も支援材料となった模様です。ただし、引けでは1,398.65ドルと、節目の1,400ドルを割り込んで引けました。

この日は、トランプ米大統領が、米無人偵察機を撃墜したイランに対する報復措置として軍事攻撃をいったん承認した後、撤回したとの報道が材料視されました。

世界最大の金上場投資信託(ETF)であるSPDRゴールドトラストの保有高は6月14日のは764.1トンから21日には799.03トンに急増しました。米金利低下を背景に、投資家が金を買う動きを急速に進めていることがわかります。

CFTC(米商品先物取引委員会)が公表したCOMEX金先物市場での大口投機筋の6月18日時点のポジションは20万4323枚の買い越しとなり、前週から2万85枚の大幅増加となりました。買いポジションが2万4519枚増加し、売りポジションが4,434枚増加しましたが、新規買いが多く、買い越し幅が拡大しました。ただし、一部の投機筋は割高と判断して空売りを入れているようです。

円建て金相場は急騰しました。米ドル/円は107円台に入るなど円高基調が強まりましたが、ドル建て金相場の上昇がきわめて大きく、大きく値を上げました。

【図表1】先週のゴールド 縦軸:円建てゴールド/グラム(単位:円)
出所:マネックス証券作成

今週のゴールド:調整リスクに注意

金相場は引き続き高値圏を維持するものと思われます。ただし、節目の1,400ドルに達したことや、短期間での急騰でもあり、利益確定売りには注意が必要と考えます。

今回の金相場の急騰の背景には、米金利の低下に伴う金の保有コストの低下に加え、地政学的リスクの高まりに対するリスクヘッジ先としての買いが入ったことがあります。今年に入ってから、多くの投資家は株式市場から資金を引き上げる一方、その資金を債券に投資していました。

その結果、債券利回りは急低下しており、FRBがコントロールする政策金利であるフェデラルファンド(FF)レートとの乖離が生じるほどの水準になっています。現在のFFレートの誘導目標は2.25~2.50%ですが、米2年債利回りが1.80%を下回るなど、市場の短期金利との乖離が拡大しています。これは、FRBが直ちに0.50%ポイントの利下げをする必要があることを示しています。

このような状況もあり、FOMCでは利下げの可能性が示唆されており、市場金利は利下げをかなり織り込んでいます。市場予想では7月30・31日開催のFOMCでの利下げ確率を高く見ています。
また、FRBがターゲットとする2%のインフレ目標についても、個人消費支出(PCE)物価指数のコアが前年同月比で1.6%と低迷しており、これも金利引き下げの理由になるものと思われます。

このように、現状の金利水準の低迷は、金利のつかない金の価値を相対的に高めることになります。もっとも、いまの1,400ドル前後の金相場の水準は、短期的に上げすぎのように見えます。

現在の市場における最大のリスクは「金利上昇」です。上記のように、多くの投資家が債券に資金を向けていることもあり、株式市場が変調をきたした際には、現金化を急ぐことで債券も同時に売られる可能性があります。

その場合には、金利が上昇しますので、金相場にも下押し圧力がかかる可能性があります。今の市場は「株高・債券高・金高」という、セオリーでは考えにくい組み合わせがみられています。この状況が長期化することはないでしょう。いずれ、市場が調整しますので、その際には金にも売りが出るリスクがあることを念頭に入れたうえで、金市場の動きを見るようにしたいところです。

イラン情勢の不透明感は心理的な金相場の下支えにはなりますが、実際に武力衝突がなければ材料としてはそれほど注視する必要はないでしょう。

それ以上に、6月28・29日に大阪で開催されるG20首脳会議の際の米中首脳会談で、両国首脳がどのような声明を出すのかに注目したいところです。暫定合意の可能性もあると考えますが、その場合には株高基調が続くでしょう。逆に話し合いがブレイクしてしまえば、株安となり、金市場にはポジティブに作用する可能性があります。

いずれにしても、これらの材料に対する金市場の反応を見たいところです。目先は1,380ドル前後で下げ止まることができるかを注視します。これを割り込むと1,350ドルがサポートになると考えます。

円建て金相場も堅調さを維持すると考えます。ただし、円高基調が上値を抑えやすい点には要注意です。ドル建て金相場が調整する可能性もありますので、4,900円を超えられないようだと、いったんは4,800円まで下げそうです。

そこでサポートされなければ、相応の調整となる可能性がありますので要注意です。今は利益確定売りを優先し、押し目が来るのを待つのが賢明と考えます。4,800円で下げ止まれば、反発も早そうです。

プラチナ:小幅上昇の展開

プラチナは小幅に上昇しました。ただし、5月後半からのレンジを抜けることができず、安値圏での推移に終始しました。金相場は急伸しましたが、プラチナ市場の反応はきわめて限定的でした。

CFTC(米商品先物取引委員会)が公表したNYMEXプラチナ先物市場における6月18日時点の大口投機筋のポジションは1,970枚の買い越しとなり、前週から4,982枚減少しました。買いポジションが539枚減少する一方、売りポジションが4,443枚増加しました。

プラチナ相場は引き続き780ドルから830ドルのレンジでの取引となっています。金相場が急騰しましたが、この動きに追随する気配もなく、上値は830ドル手前で見事に打たれています。しかし、780ドルを割り込むほどの売りも出ておらず。投資家の関心がかなり低下している印象です。

チャートを見ると、785ドル前後でいわゆるダブルボトムを形成しているようにも見えます。そうであれば、下値は徐々に固くなっているといえます。とはいえ、上値を試すには、プラチナ市場の独自の材料は見当たりません。プラチナ需要は工業用向けが大半ですが、世界景気の鈍化懸念などが上値を抑えている可能性があります。

一方、5月のEUの新車販売台数(乗用車、マルタを除く)は前年同月比0.1%増の140万518台でした。ドイツの需要改善に加え、中東欧諸国が堅調だったことで9ヶ月ぶりにプラスとなりました。1~5月の累計販売台数は、前年同期比2.1%減の673万7491台でした。

このように、欧州では引き続き自動車販売が低調であり、需要の大半を占める自動車触媒向けが伸び悩む可能性が指摘されています。このような背景が、潜在的なプラチナ市場の圧力になっているものと思われます。

現在の金相場の急伸でも反応が鈍いことを考慮すれば、明確な上昇相場に転じるには相当の材料がない限り難しいといえそうです。まずは830ドルの上値を抜けて、新たなレンジに移行できるかに注目したいと考えます。

一方で、現状の市場環境では、これまでのレンジの下限である780ドルを下回る可能性は低いと考えます。まずは価格動向をしっかりを見たうえで、下値も確認したいと考えます。

円建てプラチナ相場は安値圏でのもみ合いが続きました。2,900円まで下げる場面がありましたが、これを維持しており、ここ最近の2,900円と3,000円のレンジの範囲内での推移が顕著です。これは、レンジを抜けると大きな動きになる可能性が高いことを意味します。

ドル建てプラチナ相場の値動き次第ですが、3,000円を超えると上昇に勢いがつくでしょう。その場合には、素直に買いを検討したいところです。一方で、2,900円を下回った場合には、急落のリスクがあるため注意したいところです。

【図表2】プラチナ 縦軸:円建てプラチナ/グラム(単位:円)
出所:マネックス証券作成

シルバー:急伸の展開

シルバーは急伸しました。週初は金相場の下落につれる形で値を下げましたが、14.80ドルのサポートを支持しました。その後、金相場が急伸し始めると、銀相場もつれる形で上値を試す展開となり、週末には一時15.55ドルまで値を上げる場面がありました。

CFTC(米商品先物取引委員会)が公表するCOMEX銀先物市場における6月18日時点の大口投機筋のポジションは1万4516枚の買い越しとなり、前週から1万1856枚増加しました。買いポジションが8,050枚増加し、売りポジションが3,806枚減少しました。

銀相場は15.15ドルにあったレジスタンスを超えたことで、一気に値を上げました。銀市場に特段の材料が出たわけでないため、金相場の上昇を背景にテクニカル主導で上昇した可能性が高いといえます。そのため、いったん金相場が調整すると、銀相場は大きく調整する可能性があります。また、金相場の上昇のわりに銀相場の上げ幅が限定的であることも、銀相場の上値が限られることを示唆しているように見えます。

したがって、金相場がさらに上昇した場合でも、銀相場の上昇には限界があるといえそうです。いずれにしても、今後は金相場の値動きに注意が必要と考えます。

現在の金/銀レシオは91倍に達しており、1992年以来の高水準です。それだけ歴史的な動きになっていることを理解しておく必要はあるでしょう。15.50ドルを明確に上回れば、今年1月と2月につけた16ドル台を目指すことになるでしょう。それを超えると、2018年第2四半期につけた18ドルが視野に入るでしょう。

いずれにしても、銀相場独自の動きで変動する可能性は低いため、金相場の動向を注視したいところです。

円建て銀相場は大幅続伸となり、55円台を回復しました。ただし、今後の上昇は上記のように金相場次第といえそうです。54円を割り込むまでは基調が継続していると判断できますが、割り込んだ場合には手仕舞いを優先することを考えたいところです。

一方、56円を超えると、過去に重要な節目になっていたこともあり、強い動きになる可能性があります。その場合には、買い姿勢の継続がよいと考えます。

【図表3】シルバー 縦軸:円建てシルバー/グラム(単位:円)
出所:マネックス証券作成