先週のゴールド:一時急伸の展開

金相場は小幅上昇しました。週初は反落しました。前週末に付けた14ヶ月ぶりの高値から下げました。

トランプ大統領がメキシコからの全輸入品に課すとしていた制裁関税の発動を見送ったことで、リスク選好意欲が上向き、ドルが持ち直したことが売りにつながりました。また、米中貿易協議で合意するとの期待感から、株式に資金がシフトしたことや、それまでの急伸に対する利益確定売りが出たことも下落につながりました。

ただし、米連邦準備制度理事会(FRB)が利下げを実施するとの観測が高まったことで、ドルが圧迫されたことが金相場を下支えしました。その後は上昇しました。

トランプ大統領が、「中国が4~5つの主要なポイントに同意しない限り、貿易合意には関心がない」と発言した後を受けて、世界の株価が下落したことや、5月の米消費者物価指数(CPI)がわずかな上昇にとどまったことで、年内の利下げ圧力が強まったことが金相場を支えました。週末には急伸する場面がありました。

中国経済や香港での暴動を背景とした政治に対する不安感などから、一時1,358.04ドルと、昨年4月11日以来の高値を付けましたが、強い内容だった5月の米小売売上高を受けて、米経済が第2四半期に減速するとの懸念が和らいだことで、高値から下げました。

世界最大の金上場投資信託(ETF)であるSPDRゴールドトラストの保有高は6月7日の756.42トンから6月14日には764.1トンに増加しました。金融市場の不安定化を懸念した投資家の買いが入っています。

CFTC(米商品先物取引委員会)が公表したCOMEX金先物市場での大口投機筋の6月11日時点のポジションは18万4238枚の買い越しとなり、前週から2万8123枚の大幅増加となりました。買いポジションが9,637枚増加し、売りポジションが1万8486枚減少したことで買い越し幅が拡大しました。投機筋は前週に続いて新規の買いを増やす一方、売り方の買い戻しを進めています。

円建て金相場は急騰しました。ドル円が108円台で安定して推移する中、ドル建て金相場の急伸が押し上げにつながり、高値を更新しました。

【図表1】先週のゴールド 縦軸:円建てゴールド/グラム(単位:円)
出所:マネックス証券作成

今週のゴールド:手仕舞い売りに注意

金相場は引き続き高値圏を維持するものと思われます。前週までに1,350ドル近辺まで上昇したことで、利益確定売りが出ました。そのため一時的に下げましたが、その後は切り返すなど、堅調に推移しています。米利下げ観測が高まっており、これが金市場の下値を支えているといえます。

市場では、金に対する見方が徐々に変わってきた印象があります。投資家・投機家の買いポジションが着実に積み上がっており、徐々に資金が金市場に流入している様子がうかがえます。

今年に入ってから、多くの投資家は資金を株式から債券にシフトしました。その結果、世界的に金利は低下しましたが、金市場への資金流入は限定的でした。しかし、最近になって金市場への資金流入が拡大している背景には、金利面だけでなく、世界経済や国際情勢の不透明感があるものと思われます。

特にイラン情勢の不透明感は、投資家心理を不安定にさせる可能性があります。現時点で米・イランともに武力行使の意思は見せておらず、武力衝突の可能性は低いと考えられます。

一方で、安倍首相のイラン訪問の成果は限定的だったとの論評もあり、国際社会の目はかなり厳しいものがあります。さらに、オマーン湾でタンカー2隻が攻撃されるなど中東情勢の不透明感が強まっており、安全資産である金市場への関心が高まりやすくなっています。

6月28・29日に大阪で開催されるG20首脳会議では、この問題についても議論される可能性があります。また、米中貿易戦争への懸念も共有されることが想定される中、米中首脳会談が実施され、暫定的な合意に至る可能性についても注目が集まるでしょう。このように、現在の金市場を支える材料が一変するリスクもあります。

一方で、市場における利下げ確率が高まっており、FRBは市場による利下げ圧力を受けています。現時点で短期金利はFFレートを下回っており、少なくとも0.50%ポイントの引き下げが必要な状況にあります。この状況に対して、6月18・19日の米連邦公開市場委員会(FOMC)でFRBが近い将来の利下げを示唆した場合、株価が上昇する中で金市場がどのような反応を示すかに注目したいところです。

すでに高値圏にあるだけに、手仕舞い売りが出る可能性もあるため要注意といえます。まずは1,350ドルを明確に超えられるか、さらにこの水準を固められるかを注視したいと考えます。

円建て金相場も堅調さを維持すると考えます。ただし、ドル建て金相場が調整する可能性には要注意です。節目の4,800円を超えられないと、手仕舞い売りから急落する可能性もあります。ポジションの一部を解消するなど、利益確定を行いながら、4,700円までの押し目があれば買いを検討するといった柔軟な対処が肝要でしょう。

プラチナ:反落の展開

プラチナは反落しました。前週の高値を上抜けることができず、小幅に下落しました。金相場は一時急伸しましたが、プラチナ市場の反応は限定的でした。

6月12日には820ドルの高値を付けましたが、前週の5日につけた832ドルの高値を超えることができず、週末にかけて下落し、799ドルと、節目の800ドルを下回って引けました。

CFTC(米商品先物取引委員会)が公表した、NYMEXプラチナ先物市場における6月11日時点の大口投機筋のポジションは6,952枚の買い越しとなり、前週から117枚減少しました。買いポジションが781枚減少する一方、売りポジションも664枚減少しました。

プラチナ相場は4月に高値を付けたあと、5月末に底値を付けて以降はレンジ内での推移になっています。おおむね780ドルから830ドルのレンジとなっており、これを抜ける材料を待つことになりそうです。

プラチナ相場は金相場の動きにつれることも少なくありませんが、今は金市場を取り巻く環境がプラチナ市場にはほとんど影響がない状況です。また、根本的な材料となっている、需要の大半を占めるディーゼル自動車触媒向けの需要の伸び悩みが懸念されていることから、需給ひっ迫懸念も聞かれません。そのため、プラチナ市場はなかなか上値を試すことができずにいます。

また、最近は世界最大のプラチナ生産国である南アフリカの通貨ランドの対ドル相場の下落も、プラチナ相場の上値を抑えている可能性があります。

このように、プラチナ市場を取り巻く環境は芳しくありませんが、一方でプラチナ需要は工業用向けが大半であることから、株価が戻せば買われやすい傾向があります。世界情勢や株価の推移にも着目したうえで、プラチナ相場の動向を見ていくようにしたいところです。

目先は780ドルと830ドルの抜けたほうに動きやすいと考えておきます。ただし、780ドル以下になれば、生産コスト面からもかなり割安になりますので、下値は限定的と考えられます。

円建てプラチナ相場は安値圏でのもみ合いでした。3,000円が重い状況ですが、一方で下値も徐々に切り上がっています。ドル建てプラチナ相場の値動き次第ではありますが、3,000円を超えると上昇に勢いがつく可能性が高いと考えられます。その場合には、その流れに乗って買いを検討したいところです。一方で、いまは押し目買いは避け、より安全に上昇に乗ることを考えたいところです。

【図表2】プラチナ 縦軸:円建てプラチナ/グラム(単位:円)
出所:マネックス証券作成

シルバー:反落の展開

シルバーは反落しました。週初は金相場の下落につれる形で急落し、一時14.60ドルの安値をつけました。ここには重要なテクニカルポイントがあり、これを維持したことから反発し、金相場の上昇も伴い、週末14日には15.11ドルまで値を上げる場面がありました。しかし、金相場が同様に急伸した後に高値から急落したことにつれて値を下げ、14.87ドルで引けました。

CFTC(米商品先物取引委員会)が公表するCOMEX銀先物市場における6月11日時点の大口投機筋のポジションは2,660枚の買い越しとなり、前週の8,443枚の売り越しから買い越しに転じました。買いポジションが8,572枚増加し、売りポジションが2,531枚減少しました。

銀相場は週末に上値を試したものの、前週の高値である15.14ドルを超えられなかったことから、高値から急速に値を下げました。一方で、下値は切り上がっており、上向き基調を維持しているといえます。ただし、15ドル台を明確に上抜き、この水準がサポートになるほどの強さがみられないと、買いは入りづらいといえます。

金相場の動向につれやすくなっている一方、工業用需要がメインであることから、銀相場の上昇には株価の上昇が不可欠と考えられます。引き続き、世界情勢や株価動向に目を配りながら金相場の動向にも注目し、銀相場の動向を見極めたいところです。14.65ドルを維持できていれば、上昇に向かう可能性は残ると考えます。

円建て銀相場は大幅続伸となりました。節目の54円を超えて、強い動きにあります。ドル建て銀相場の値動き次第ではありますが、54円を割り込まずに上昇基調が続けば、買いを検討したいところです。

また、下落した場合、54円で押し目を形成すれば、その時点で買いを検討したいところです。ただし、54円を割り込むと調整が加速する可能性がありますので、安易な押し目買いは避けたいところです。

【図表3】シルバー 縦軸:円建てシルバー/グラム(単位:円)
出所:マネックス証券作成