先週のゴールド:大幅続伸の展開

金相場は続伸しました。今年2月の高値を更新し、昨年4月以来の高値をつけました。米中貿易摩擦に加え、米国のメキシコに対する関税の脅しで、世界経済に打撃が及ぶとの懸念が広がったことが投資家の金買いを促しました。また、米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長が利下げの可能性を示唆したことから金利が低下したことも、金相場の押し上げにつながりました。

さらに、米中両国が互いの全輸入品に関税を上乗せする全面的な「貿易戦争」に突入するとの警戒感が広がったことからも、安全資産とされる金が「質への逃避先」として買われました。週末7日にはさらに上昇し、1,348ドルまで値を上げ、2018年4月以来の高値を付けました。

5月の米雇用統計がさえない内容だったことを受けて、FRBが年内に利下げに踏み切るとの見方が強まり、ドル安が進んだことが買いにつながりました。また、米国がメキシコや中国に仕掛ける貿易戦争が、世界経済の成長鈍化につながるとの懸念も金相場を押し上げました。

非農業部門の就業者数の伸びが前月から大幅に減速したほか、賃金の伸びも予想を下回りました。これを受けて、市場ではFRBが近く利下げに動く可能性がかなり高まったとの見方が広がったことも、金相場を支援しました。

一方、米国の対中制裁関税について、米政府が中国の輸出業者に対して関税引き上げの適用を2週間遅らせる方針を示し、株価は堅調に推移しましたが、金相場への影響はありませんでした。

世界最大の金上場投資信託(ETF)であるSPDRゴールドトラストの保有高は5月31に743.21トンから6月3日には一時759.65トンに増加する場面がありました。週末7日には756.42トンにわずかに減少しました。

CFTC(米商品先物取引委員会)が公表したCOMEX金先物市場での大口投機筋の6月4日時点のポジションは15万6115枚の買い越しとなり、前週から6万9427枚の大幅増加となりました。買いポジションが4万6014枚増加し、売りポジションが2万3413枚減少したことで買い越し幅が大幅に拡大しました。相場上昇で投機筋は新規の買いを増やす一方、売り方の買い戻しが急速に進んでいます。

円建て金相場は急騰しました。為替相場は引き続き円高基調でしたが、ドル建て金相場の急伸が押し上げにつながりました。

【図表1】先週のゴールド 縦軸:円建てゴールド/グラム(単位:円)
出所:マネックス証券作成

今週のゴールド:手仕舞い売りに注意

金相場は引き続き堅調さを維持するものと思われます。金融市場は米中貿易戦争への懸念を強めました。また、これに起因する世界景気の悪化を懸念する声も多く聞かれました。これらの動きを受けて、FRBのパウエル議長は利下げの可能性に言及したことで、金利のつかない金が買われやすい地合いにあります。

また、米雇用統計の内容が軟調だったことで、ドル安基調が強まったこともドル建てで取引される金相場にはポジティブな材料となりました。さらに、トランプ大統領がメキシコからの輸入品に関税をかけると発言し、その可能性が高いことを示唆していたことも、金相場を押し上げていた面があります。

このように、金市場を取り巻く環境はきわめて良好です。しかし、これは裏を返せば、それだけ金融市場が不透明であることを意味します。投資家は引き続き株式市場から資金を流出させていますが、一方では利下げ期待で株価が戻り始めています。そんな中でも金相場が高値を付けてきた背景としては、やはり低金利があるものと思われます。

一方、先週末にはトランプ大統領がメキシコへの関税を先送りする旨のコメントを出したことで、目先の市場の混乱が回避される可能性が高まっています。

その意味では、週明けの市場で株価が上昇し、ドルが下落するなかでも金相場がいったん頭打ちになる可能性もありそうです。これまで短期間で急伸したことや、節目の1,350ドルに近づいたことで、いったんは利益確定売りが出やすいものと思われます。したがって、ここからは慎重に見極める必要があると考えます。

一方、6月18・19日の米連邦公開市場委員会(FOMC)では、利下げが議論されるものと思いますが、今回は利下げには至らず、早くても7月になりそうです。もっとも、市場はすでに年内最低1回の利下げは織り込んでいますので、この状況を受けてFRBも利下げを実施せざるを得なくなっていると考えられます。

このような状況から、株価が高値を目指す一方で、金相場は一時的に調整した場合でも、いずれ高値を目指す可能性がありそうです。

円建て金相場も堅調さを維持すると考えます。ただし、ドル建て金相場が調整する可能性がありますので、その際にはすでに保有しているポジションの一部を解消するなど、利益確定も忘れないようにしたいところです。調整した場合でも、4,700円で下げ止まるようだと、相当強い相場であるといえます。その場合には、すかさず買いを検討したいところです。

プラチナ:反発の展開

プラチナは反発しました。前週の金相場の急騰への反応は限定的でしたが、金相場の続伸と株価の反発が同時に起きたことで、プラチナ相場にもようやく買いが入りました。6月5日には832ドルまで上昇する場面がありました。

しかし、テクニカル的に重要な830ドルを維持できなかったことで再び売りが優勢となり、翌6日には794ドルと、節目の800ドルを割り込む場面がありました。ただし、週末は金相場がさらに上値を試したことから反発し、806ドルで引けました。

CFTC(米商品先物取引委員会)が公表したNYMEXプラチナ先物市場における6月4日時点の大口投機筋のポジションは7,069枚の買い越しとなり、前週から822枚減少しました。買いポジションが516枚増加しましたが、売りポジションが1,338枚増加したことで、買い越し幅が小幅に減少しました。

金相場と株価の動きに翻弄される形できわめて大きな値動きとなりましたが、上値の重さが目立つ展開となっています。先週までの下落で5月以降の下落基調に歯止めがかかったように見えますが、一方でまだ上値の重さも感じられます。

市場の周辺の材料は依然として不透明感が強い状況にありますが、株価が上値を試すようであれば、800ドルを固めながら上値を試す可能性は十分にあると考えられます。プラチナ市場を取り巻く環境は決して明るいわけではありませんが、相場としての上昇余地は十分にあるといえます。

金が安全資産として買われやすい一方、プラチナ需要は工業用向けが大半であることから、株価が戻せば買われやすくなるといえます。いずれにしても、今週は今後の当面のプラチナ相場の方向性を見極めるうえで、きわめて重要な週になりそうです。

現時点では810ドルに重要なポイントがあります。これを上抜けるか、あるいは超えられずに下値をトライするかを確認したいと考えます。

円建てプラチナ相場は高値をトライしましたが追いきれずに、週末にかけて下げました。節目の3,000円を一時超えたものの、再び維持できずに下げています。今後反発に転じるには、まずは3,000円を明確に超え、水準を切り上げることが不可欠と考えます。

ドル建てプラチナ相場の値動きを注視し、そのうえで上値を試す動きになったことを確認してから、買いを検討したいところです。いまは押し目買いを避け、底値固めから反発の動きを待ちたいと考えます。

【図表2】プラチナ 縦軸:円建てプラチナ/グラム(単位:円)
出所:マネックス証券作成

シルバー:大幅上昇の展開

シルバーは急伸しました。金相場の上昇の動きに追随する形で上昇し、週末には一時15.14ドルの高値を付ける場面がありました。ただし、週末は節目の15ドルを割り込んで引けました。

CFTC(米商品先物取引委員会)が公表するCOMEX銀先物市場における6月4日時点の大口投機筋のポジションは8,443枚の売り越しとなり、前週から売り越し幅が1万3966枚縮小しました。買いポジションが2,990枚増加し、売りポジションが1万976枚減少したことで、売り越し幅が大幅に縮小しました。

前週に14.25ドルの安値を付けて以降、金相場の上昇を受けて、急速に水準を切り上げる動きに移行しています。連動性の高い金相場が米国の利下げ観測を背景に買われる一方、利下げ観測が米国株を押し上げたことで、工業用需要がメインの銀も買われやすい地合いにあります。

今後も株高基調が続いた際に、金相場が現在の上昇基調を維持できるかを注視しながら、株高基調が銀相場にポジティブに作用するかに注目することになるでしょう。

テクニカル面では、15.10ドルに重要なレジスタンスが位置しています。先週はこれを試し、一時超えたものの維持できずに下げています。したがって、これを超えられないと買われすぎ感が意識され、いったんは調整する可能性があります。

そうなった場合に14.85ドル前後でサポートされれば、短期間で反発に転じる可能性が残ると考えられます。しかし、14.85ドルを割り込むと、14.65ドルまでの調整となるものと思われます。その際は、まずは底値の確認を優先したいと考えます。

円建て銀相場は大きく値を上げました。ドル建て銀相場の上昇が押し上げにつながりました。53円を回復し、さらに54円も超えています。54円台を固める動きになれば、さらに上値を試す可能性があります。まずはそのような動きになるかを確認したいところです。

54円を明確に超えていけば、水準訂正の動きが強まり、比較的短期間で上昇する可能性が高まりそうです。ただし、再び54円を割り込むようだと、反発はいったん先送りされることになります。その場合には、押し目買いは避け、53円で下げ止まるかをまずは確認したいところです。

【図表3】シルバー 縦軸:円建てシルバー/グラム(単位:円)
出所:マネックス証券作成