先週のゴールド:続伸の展開

金相場は続伸しました。週初は米中貿易摩擦の先行き不透明感から、安全資産としてドルが買われたことで下落しました。米金利の低下は材料視されませんでした。その後は上昇しました。

米中貿易摩擦に解決の兆しが見られず、世界経済の減速懸念が広がったことが材料視されました。ただし、投資家が安全資産として主に債券を買っていることから、金相場の上値は限定的でした。その後も上昇しました。

米GDP統計でインフレ圧力が弱まる可能性が示されたことで、FRBの利下げ観測が浮上し、一時5月17日以来の高値となる1,288.87ドルまで上昇しました。2019年1~3月期の実質GDP改定値は年率換算で前期比3.1%増と、速報値の3.2%増からわずかに下方修正されました。

改定値でもトランプ政権が経済成長目標として掲げる「3%超」となりましたが、個人消費が3期連続で鈍化し、設備投資は速報値から下方修正されるなど、内需の弱さが確認されました。週末5月31日には7週間ぶりの高値を付けました。

トランプ米大統領がメキシコからの輸入品に関税を課すと発言したことで、世界的な景気下振れへの懸念が広がり、投資家が安全資産である金への投資を増やしたことで、一時4月11日以来の高値となる1306.64ドルを付けました。市場では、トランプ大統領の発言が米経済を悪化させるとの懸念から、米国株が急落しましたが、ドル高基調は継続しました。

世界最大の金上場投資信託(ETF)であるSPDRゴールドトラストの保有高は5月24日の738.81トンから5月31日には743.21トンに増加しました。株価の不安定さを背景に、投資家の金保有が拡大しています。

CFTC(米商品先物取引委員会)が公表したCOMEX金先物市場での大口投機筋の5月27日時点のポジションは8万6688枚の買い越しとなり、前週から2,117枚減少しました。買いポジションが9,165枚減少し、売りポジションが7,048枚減少したことで買い越し幅が縮小しました。相場下落で投機筋は手仕舞売りを出す一方、売りポジションも縮小させており、全体として取組高が減少しました。

円建て金相場は反発しました。為替相場が円高となりましたが、ドル建て金相場の上昇が押し上げにつながりました。

【図表1】先週のゴールド 縦軸:円建てゴールド/グラム(単位:円)
出所:マネックス証券作成

今週のゴールド:堅調な動きを想定

金相場は堅調な動きを想定します。トランプ大統領のメキシコからの輸入品に関税をかけるとの発言をきっかけに、世界的なリスクオフの動きが強まりました。これにより、ドルが安全資産として買われる一方、米国債利回りが低下したことで、金利のつかない金が買われています。

特に米2年債利回りが1.944%と、節目の2%を下回りました。この水準は、米連邦準備制度理事会(FRB)がターゲットとするフェデラルファンド(FF)レートを下回っており、現在の政策金利が市場金利を上回る状況となっています。

これは米経済にとって負担になることから、FRBはいずれ利下げを実施する可能性があります。市場では、7月の利下げ確率が40%と、1週間前の18%から上昇し、12月までの利下げ確率は90%となっています。利下げが現実的なものになれば、金相場の押し上げにつながると考えられます。

また、4月の米個人消費支出(PCE)物価指数は前年同月比1.5%上昇と、前月の1.4%上昇から加速しましたが、FRBが物価安定の目標とする2%に6ヶ月連続で届きませんでした。さらに、食料品とエネルギーを除いたコアの前年同月比も1.6%の上昇にとどまり、4ヶ月連続で目標に届きませんでした。

利上げの条件となるインフレ圧力の弱さが改めて示されたことで、市場では利下げを催促する動きが強まりそうです。利下げとなれば、一時的に株式市場が回復する可能性があります。しかし、過去の例を見ると、利下げは株安につながっていることが少なくありません。

今回も長期の株高基調となっていますが、これは低金利状態がサポートしてきた面があります。しかし、利下げとなれば、FRBが景気への懸念を抱いていることを示すことになるため、最終的には売り材料になる可能性が高そうです。したがって、今後は株価動向に加え、金利動向にも注意が必要といえます。

クラリダFRB副議長は「物価がFRBの目標とするインフレ率2%を長期的に下回れば、適切な金融政策運営スタンスを考慮に入れるだろう」とし、利下げを含めた金融緩和を検討する考えを示しています。

株価が不安定さを増し、債券が売られるようであれば、金利上昇から金は売られる可能性もあるため注意が必要です。

一方、現在の株安の直接的な要因となっている米中通商交渉については、長期化する可能性がきわめて高いと考えられます。したがって、短期的な解決を期待しないほうが賢明でしょう。

また、米・イランの応酬などの地政学的リスクも無視できません。これらも投資家心理を不安にさせるため、これも金市場にはポジティブに作用しそうです。これらから、金相場にとっては優位に作用するといえます。このように、金市場を取り巻く環境は徐々にポジティブになりつつあります。

このような状況の中、1,310ドルを超えるとさらに水準を切り上げることになりそうです。その場合には、3月高値の1,324ドルから2月高値の1,336ドル台を回復することも想定されます。まずは米国株やドル、米金利の動きに注意したいところです。

円建て金相場も上向くと考えます。ドル建て金相場の反発が押し上げにつながりそうです。一時割り込んだ節目の4,600円を回復しており、この基調が維持されるかを確認したいところです。上昇に勢いがつき、4,650ドルを超えるようだと、早めにロングを仕込みたいところです。

プラチナ:続落の展開

プラチナは続落しました。週初こそ反発する場面もありましたが、その後は株価の重さを背景に売りが優勢となり、週末にかけて軟調地合いが続きました。30日には一時784ドルまで下落し、週末は791ドルで引けました。

CFTC(米商品先物取引委員会)が公表したNYMEXプラチナ先物市場における5月28日時点の大口投機筋のポジションは7,891枚の買い越しとなり、前週から7,599枚減少しました。買いポジションが1,427枚増加しましたが、売りポジションが9,026枚増加したことで、買い越し幅が大幅に減少しました。

これまで連動性の高かった金相場は大きく値を上げましたが、プラチナ相場の上値は明らかに重くなっています。金が安全資産として買われやすい一方、プラチナ需要は工業用向けが大半であることから、株安が将来の景気鈍化を連想させ、プラチナ需要が減少するとの見方がプラチナ相場を押し下げているものと思われます。

このような見方が広がると、プラチナ相場は上昇しづらくなるものと思われます。したがって、値ごろ感から回復するとの見方は避け、まずは下げ止まりの兆候を見せるかに注目しておきたいと考えます。

米中通商交渉に進展が見られれば、リスク回避姿勢が後退することで、再び買われる可能性は十分にあります。まずは、少なくとも800ドル超えを再確認してからにしたいところです。

円建てプラチナ相場も大幅続落となりました。節目の3,000円を一時超える場面がありましたが、再びこれを割り込み、さらに下値を切り下げています。為替相場が円高に傾いたことも、下押し圧力となっています。まずは下値がどの水準で止まるかを確認したうえで、反発を待ちたいところです。

相場反転には少なくとも、2,900円を維持して反発することが不可欠と考えます。いまは慌てずに、押し目買いを避け、底値固めから反発の動きを待ちたいと考えます。

【図表2】プラチナ 縦軸:円建てプラチナ/グラム(単位:円)
出所:マネックス証券作成

シルバー:ほぼ横ばいでの推移

シルバーはほぼ横ばいで引けました。5月28日には14.25ドルを付けましたが、金相場が反発する動きに呼応する形で底値を固め、週末には上昇し、14.56ドルで引けました。

CFTC(米商品先物取引委員会)が公表するCOMEX銀先物市場における5月28日時点の大口投機筋のポジションは2万2409枚の売り越しとなり、前週から売り越し幅が7,747枚拡大しました。買いポジションが1,819枚減少し、売りポジションが5,928枚増加したことで、売り越し幅が拡大しました。

投機筋は引き続き売り姿勢を強めています。ただし、週末にかけて銀相場は反発しており、投機筋の売り姿勢に変化があるかを確認したいところです。銀相場は2月の高値からの下落基調が依然として続いています。この弱基調を脱するには少なくとも14.90ドルを超える必要があります。

銀相場に独自の買い材料がない中、金相場との連動性が高いとはいえ、今後は上値が重くなるリスクを考慮する必要がありそうです。繰り返すように、銀需要は工業用がメインであるため、米中貿易戦争の激化やそれに伴う世界景気の鈍化懸念の影響を受けやすいといえます。そのため、今後はこれまで以上に米国を中心とした株価動向に注目したいと考えます。

また、米中通商交渉に結論が出るのは相当先になると考えられており、この問題の解決に関して予断を許さないほうが良いといえます。そのため、今後も金/銀レシオは上昇する可能性があります。5月31日時点では89.5倍ですが、過去には95倍を超えた時期もあります。

その意味では、今後の金融市場の動向次第では金相場がさらに上昇し、レシオが95倍近くまで上昇することも想定されます。したがって、レシオの動きにも注目しておきたいところです。

円建て銀相場は下落しました。ドル建て銀相場は上昇しましたが、円高基調が上値を押さえました。53円割れの状況にあるため、まずはこの水準を回復するの確認したいところです。そのうえで、ドル建て銀相場や為替相場の動向などをみながら買いを検討したいところです。

【図表3】シルバー 縦軸:円建てシルバー/グラム(単位:円)
出所:マネックス証券作成