先週のゴールド:反発の展開

金相場は反発しました。週初は小幅に下げました。一時は3日以来の安値となる1,268.97ドルまで下げました。株式などリスク資産が買われる中、ドルが上昇したことで金が売られました。

5月22日発表の米連邦公開市場委員会(FOMC)の議事要旨の内容を受けて値を戻しました。また、米中貿易摩擦への懸念が再燃し、ドルが高値から急反落し、株価が下落したことが下値を支えました。

世界的な株安や米国債利回りの低下も支援材料となりました。一時は1,287.23ドルまで上昇し、1週間ぶりの高値を付けました。週末も小幅に上昇しました。株価の反発が上値を抑えましたが、ドル安と利下げへの期待感が下値を支えました。

また、米耐久財受注などの低調な経済指標を受けて、中国との貿易摩擦が米経済に悪影響を与えるとの懸念が高まったことも買いを誘いました。

トランプ米大統領が、中国通信機器大手のファーウェイ(華為技術)への禁輸措置について中国との通商合意の一環で問題解決される可能性があるとしたことで、米中貿易協議進展への期待が高まり、株価は世界的に上昇しましたが、金相場は高値を維持しました。

さらに、中東地域での不透明感も安全資産である金の需要を高めました。トランプ大統領は主に防衛目的で米兵1,500人を中東に増派する方針を表明しました。

世界最大の金上場投資信託(ETF)であるSPDRゴールドトラストの保有高は5月17日の736.17トンから24日には738.81トンに増加しました。不安定な株価を背景に、一部の投資家は金を買い始めたといえそうです。

CFTC(米商品先物取引委員会)が公表したCOMEX金先物市場での大口投機筋の5月21日時点のポジションは8万8805枚の買い越しとなり、前週から3万5731枚減少しました。買いポジションが2万2733枚減少し、売りポジションが1万2998枚増加したことで、買い越し幅が大幅に縮小しました。前週までの投機筋の買い姿勢が、金相場の急落で一転して売り姿勢に変わったことが確認できます。

円建て金相場は下落し、安値圏での推移が続きました。ドル建て金相場は反発しましたが、米ドル/円相場が円高で推移したことが上値を押さえました。

【図表1】先週のゴールド 縦軸:円建てゴールド/グラム(単位:円)
出所:マネックス証券作成

今週のゴールド:反発の展開を想定

金相場は反発が想定されます。米国を中心とした株高基調を背景に、1,270ドル前後での推移が続きましたが、ようやく底堅さが出てきました。また、米中貿易戦争の影響への懸念が残る中、投資家が安全資産である債券投資への動きを加速させており、これが米金利を低下させる一方、ドルの下落が金相場を支えています。

また、最近の下落でテクニカル的にも売られすぎ感が強まったことから、反発しやすい地合いにあることも重要なポイントといえます。2月に1,346ドルまで上昇した後、下落基調が続いてきました。4月に1,260ドル台の安値を付けたものの、その後は反発し、今回の調整ではこの水準を下回らなかったことで、基調は上向きやすいといえます。

市場の関心は、米中通商交渉の行方や激しさを増す米・イランの応酬などの地政学的リスクにも向かい始めています。米中通商交渉は当面続くことが想定されるため、これが投資家心理を不安にさせると考えます。

また、イラン情勢については、トランプ米大統領がイランとの緊張で国家非常事態にあるとして、サウジアラビア、アラブ首長国連邦(UAE)、ヨルダンへの80億ドル規模の武器売却を承認しました。米議会はサウジなどへの武器売却を阻止してきましたが、武器輸出管理法には国家非常事態の場合は議会で審議しなくても大統領が武器売却を承認できると規定されています。

ポンペオ米国務長官は声明で、「武器売却が同盟国を支援し、中東地域の安定性を強化するほか、イランから自国を守る一助となる」とし、議会を回避したことについては「1回限りの決定」としています。トランプ政権は3ヶ国に対して22件の武器売却を進めることを議会に通知しています。

米国とイランの間で戦争勃発といった最悪の事態に発展する可能性はきわめて低いものの、これらの事態が市場のリスク要因として懸念されることで、金相場が支えられると考えます。また、米金利の低下傾向が鮮明であり、これも金利がつかない金にとっては優位に作用するといえます。

このように、金市場を取り巻く環境は徐々にポジティブになりつつあります。このような状況の中、1,290ドルを回復すれば、再び節目の1,300ドルを試す可能性が高まるものと考えます。

円建て金相場も底放れすると考えます。円高基調が上値を抑えていますが、ドル建て金相場の反発が円建て金相場を押し上げると考えます。その結果、節目の4,600円を維持して反発し、4,650円を超えてくると上昇に勢いがつきそうです。そのような動きが確認できれば、積極的に買いを検討したいところです。

プラチナ:大幅続落の展開

プラチナは大幅続落となりました。先週からの流れを引き継ぐ形で下落基調が続き、週初から下げました。5月23日には一時791ドルまで下落するなど、節目の800ドルを割り込みました。ただし、週末5月24日には反発し、802ドルで引けました。

CFTC(米商品先物取引委員会)が公表したNYMEXプラチナ先物市場における5月21日時点の大口投機筋のポジションは1万5490枚の買い越しとなり、前週から1万260枚減少しました。買いポジションは1,437枚増加しましたが、売りポジションが1万1697枚増加したことで、買い越し幅が大幅に減少しました。

相場の下落に伴い、投機筋はさらに売り姿勢を強めていることがわかります。プラチナ相場は上場投資信託(ETF)への資金流入を追い風に年初から上昇し、4月には912ドルと11ヶ月ぶりの高値を付けました。しかし、それ以降は売りが優勢となり、13%超の下落となりました。

米中通商交渉の難航や景況感の悪化で非鉄金属など産業用の金属が軒並み下落する中、プラチナについても自動車向け需要が減少するとの観測が強まり、これが下押し圧力となっています。

英調査会社メタルズフォーカスは、今年の世界のプラチナ需給が19.6トンの供給過剰となり、供給過剰量は前年比8割増になるとの見通しを示しています。同社は「プラチナでガソリン車向け触媒を代替する動きが乏しい」と指摘しており、これも失望売りを誘ったとの見方があります。

このように、投資需要が剥落したことで、市場の関心が期待感の薄い実需に向かったことが、プラチナ相場の下落を促したといえます。このような状況の中で、大幅な反発は期待しづらくなっています。まずは、米中通商交渉の行方やそれに伴う株価動向などを注視しながら、相場が反転するかを見極めたいところです。

そのうえで、節目の800ドルを固めることができるかを確認したいところです。現時点では、反発に転じた場合でも、830ドルあたりが重くなりそうです。大幅な上昇を期待するよりも、いまはまずは底値固めの動きを確認したいところです。

円建てプラチナ相場も大幅続落となりました。節目の3,100円を割り込み、さらに下値を切り下げています。為替相場が円高に傾いたことも、下押し圧力となっています。

まずは下値がどの水準で止まるかを確認したうえで、反発を待ちたいところです。そのうえで、節目の3,000円を回復するなど明確な回復基調が確認できれば、その時点で買いを検討したいところです。いまは慌てずに、押し目買いを避け、底値固めから反発の動きをじっくりと見極めたいと考えます。

【図表2】プラチナ 縦軸:円建てプラチナ/グラム(単位:円)
出所:マネックス証券作成

シルバー:反発の展開

シルバーは反発しました。金相場が反発する動きに呼応する形で底値を固め、週末には上昇し、14.56ドルで引けました。

CFTC(米商品先物取引委員会)が公表するCOMEX銀先物市場における5月21日時点の大口投機筋のポジションは1万4662枚の売り越しとなり、前週から売り越し幅が1万2453枚拡大しました。買いポジションが2,060枚減少し、売りポジションが1万393枚増加したことで、売り越し幅が拡大しました。投機筋は引き続き売り姿勢を強めているといえます。

ただし、週末にかけて反発したことから、投機筋の売りが止まっているかを確認したいところです。銀相場も2月の高値からの下落基調が続いています。下げ止まりの動きがみられ始めていますが、下落トレンドの解消には少なくとも14.70ドルを超える必要があると考えられます。

引き続き、銀相場に独自の買い材料がない中、工業用需要がメインであることから、米中貿易戦争の激化やそれに伴う世界景気の鈍化懸念が上値を抑えやすい地合いにあるといえます。このような状況で、上昇への期待感が高まりにくい状況です。

しかし、一方でこれらの問題解決への期待が高まり、株価が上昇するようなことがあれば、反発も早いといえます。とはいえ、米中通商交渉の解決には相当の期間が必要と考えられます。したがって、解決への期待感が高まることで上昇した場合では、短期的な動きにとどまるとみたほうがよさそうです。

また、戻した場合でも、戻り売り圧力は強いものと思われますので、注意が必要と考えます。現状で節目の15ドルを大きく超えるのは簡単ではないでしょう。

円建て銀相場は小幅に反発しました。円高基調が続きましたがドル建て銀相場の上昇が押し上げにつながりました。53円を回復して反発したため、54円を超えると上昇しやすくなるものと思われます。為替相場の動向などをみながら、そのような動きが確認できれば、その時点で買いを検討したいところです。いまは押し目買いを避けたいと考えます。

【図表3】シルバー 縦軸:円建てシルバー/グラム(単位:円)
出所:マネックス証券作成