先週のゴールド:軟調な展開

金相場は反落しました。週初は続伸しました。中国が米国の追加関税に対する報復措置を発表したのを受けて、安全資産である金を選好する動きが強まりました。

一時は1ヶ月ぶり高値に近づく場面も見られました。米中貿易摩擦がエスカレートし、地政学リスクが高まったことでドルが下落し、株価が圧迫されたことで金相場が押し上げられました。

また、リスク回避の動きで世界的な株安となり、米長期国債の利回りが6週間ぶりの低水準となったことも買い材料視されました。その後は反落しました。

一時は1,303.26ドルと、4月11日以来の高値を付ける場面もありましたが、中国外務省報道官が「米中は貿易問題の解決に向けて対話を続けることで合意している」と表明したことを受けてドル高が進行し、株価が上昇したことから売られました。その後も下落しました。

米中貿易摩擦への警戒感が残る中、ドル高や良好な米経済指標が売り材料となり、5月16日には4月16日以来の下落率を記録しました。米国株高によるリスク選好意欲の改善とドル高が金相場を押し下げました。その後も続落しました。

良好な米経済指標を背景としたドル高が重石となり、一時1,274.51ドルと、5月3日以来の安値まで下落しました。週間ベースでは0.7%安となりました。

世界最大の金上場投資信託(ETF)であるSPDRゴールドトラストの保有高は5月10日時点の733.23トンから5月17日には736.17トンに増加しました。投資家は株価の不安定を理由に、これまでの売り姿勢を徐々に緩めているように見えます。今後は買いが膨らむかに注目したいところです。

CFTC(米商品先物取引委員会)が公表したCOMEX金先物市場での大口投機筋の5月14日時点のポジションは12万4536枚の買い越しとなり、前週から4万9125枚増加しました。買いポジションが4万560枚増加し、売りポジションが8,565枚減少したことで、買い越し幅が拡大しました。

投機筋の買い姿勢がさらに強まりましたが、週末にかけて金相場が下落しています。投機筋が再び手仕舞い売りを出したのかを週末のデータで確認したいところです。

円建て金相場は下落しました。ドル建て金相場の下落が影響しました。

【図表1】先週のゴールド 縦軸:円建てゴールド/グラム(単位:円)
出所:マネックス証券作成

今週のゴールド:底値を探る展開

金相場は下げ基調が続く中、底値を探る展開となりそうです。週初は高値を付け、節目の1,300ドル超えを試すかに思われましたが、ドル高が上値を押さえました。

市場を取りまく環境は引き続き不透明であり、安全資産である金への関心が高まりやすい地合いではありますが、いまはドルの強さが嫌気されているといえます。外部環境としては、米中貿易戦争の激化やイラン情勢の不透明感などが嫌気されやすい地合いです。

米中貿易戦争に関しては、米国と中国がお互いの政策を批判しあうなど、今後の話し合いに不透明感が漂っています。米国は追加関税をかけることを表明し、これに中国も呼応するように同様の政策を打ち出しました。一方で、米国は中国最大の通信機器大手ファーウェイへの輸出を禁止するなど、中国のハイテク企業への締め付けをさらに強めています。

このように、米中互いが妥協に向けた動きを全く見せておらず、通商交渉自体の打ち切りの可能性も指摘されつつあります。両国のこれまでの関税の引き上げで、世界の貿易量はすでに減少し始めています。これらの状況のうえに、さらに関税が掛かることになれば、経済への様々な影響が出ることは必至といえます。

また、ファーウェイへの輸出停止で様々な企業が悪影響を受けることになり、企業業績の悪化も想定されます。これらの影響は年後半にかなり明確に出てくる可能性があり、これが株安をもたらすことで、金利低下が金相場を支える可能性があります。

また、イラン情勢の不透明感も、地政学リスクの高まりから安全資産としての金の魅力を高める可能性があります。米国はイランに対する経済制裁を強める一方、イラン産原油の禁輸を各国に通知し、違反した国には制裁を加えることを通知しています。

多くの原油輸入国が影響を受けることになり、その中には中国も含まれます。米中通商交渉が暗礁に乗り上げる中、イラン関連の政策でも両者は反目しあう立場になっています。このように、様々な要因が今後の世界情勢や貿易・経済に悪影響を与えることになります。

トランプ政権は来年の米大統領選挙を控える中、これまでの政策の成果を強調するためにも、今後はさらに強硬姿勢を強める可能性があります。このような状況もあり、グローバル投資家は株式から債券への資金シフトをさらに進めています。これが金利低下を促し、金の保有コストの低下につながることになります。

また、米中貿易戦争に絡む関税引き上げにより、今後は物価への影響も出てきそうです。これも景気悪化につながる可能性があるでしょう。

金相場は当面は底値を探る展開が想定されるものの、上記の状況を背景に底値を固める中、反発に向かうものと思われます。1,270ドル前後を固めることができれば、再び1,300ドル前後を目指すと考えます。まずはドル相場の動向を確認したいところです。

円建て金相場は引き続き4,600円を維持できるかを確認したいと考えます。ドル建て金相場は下落していますが、いまはドル円相場が円安で推移していることが下値を支えています。ただし、株安基調になった場合には為替相場が円高に転じる可能性があります。

その際にドル建て金相場が上昇すれば、円建て金相場は上向く可能性もあるでしょう。そのうえで、4,650円を超えると上向き基調に転じる可能性があります。そのような動きになれば、買いを検討したいところです。

プラチナ:大幅続落の展開

プラチナは大幅続落となります。週初から下落基調が続く中、米中貿易戦争の悪化などを嫌気する形で売りが優勢となり、さらに金相場の下落もあり、週初の860ドル台から週末は813ドルで引けました。

CFTC(米商品先物取引委員会)が公表したNYMEXプラチナ先物市場における5月14日時点の大口投機筋のポジションは2万5750枚の買い越しとなり、前週から2,943枚減少しました。買いポジションが1,120枚減少し、売りポジションが1,823枚増加したことで、買い越し幅が減少しました。週末にかけてさらに相場が下げていることから、投機筋はさらに買いポジションを縮小させている可能性があります。

米中貿易戦争の激化や株式市場の不透明感など、工業品向けが需要のメインであるプラチナ相場は上がりづらい地合いになっています。さらに、4月までの上昇でさらなる上値追いを期待した向きの手仕舞い売りも出ている可能性があり、当面は下値を模索する展開が想定されます。独自の強材料に加え、市場を取り巻く環境が改善しない限り、短期間での反転は難しそうです。

英精錬大手ジョンソン・マッセイ(JM)は、プラチナの2019年の需給見通しについて、総需要は前年比9%増の265.5トン、供給量は同2%増の261.5トンとしました。供給不足は3年ぶりとなる見通しです。

鉱山やリサイクルからの供給が増える一方で、ETFなどへの投資需要の拡大で需要が供給を超過するとみています。JMは、1~3月期にはプラチナETFの購入に伴い、20トン以上の新規需要が生まれたとしています。ETFは価値の裏付けとして現物が必要であり、投資需要が増えると、プラチナの現物需要も増えるとみていることになります。

しかし、相場が崩れ始めており、今後もプラチナETFへの投資需要が膨らむかは不透明になっています。今後は、景気指標や株価に加え、投資家行動を見ていく必要がありそうです。

一方、中国の4月の新車販売台数が前年同月比14.6%減の198万500台となりました。10ヶ月連続で前年実績を下回っています。2ケタの減少は2ヶ月ぶりでした。4月は新たな減税策で販売増が期待されましたが、欧米の大手自動車メーカーの苦戦が続いています。

中国政府は4月から増値税(付加価値税)を引き下げ、自動車メーカーにかかる税率は16%から13%に下がりました。これに合わせてメーカーの多くが新車価格を2~3%程度引き下げましたが、販売増につながっていません。中国の自動車の大半がガソリン車と考えられ、プラチナ触媒を使用するディーゼル車はメインではありませんが、市況のセンチメントを悪化させる材料になり得るでしょう。

また、インドの4月の新車販売も前年同月比15%減の31万6221台となりました。5年に1度の総選挙の投票が4月に始まり、5月下旬の新政権発足を前に買い控えが広がったもようです。景気が不振な中、新たな景気刺激策の発表を期待する多くの消費者が、新車購入を見合わせたとみられています。

このように、世界的に自動車販売台数が低迷している状況は、プラチナ相場には決して良いとは言えません。これまではETF買いが相場を押し上げてきましたが、今後は注意が必要といえそうです。まずは節目の800ドル、さらに昨年12月から今年1月にかけて付けた安値の780ドル前後の水準を維持できるかを確認したいところです。

円建てプラチナ相場も大幅続落となりました。3,100円を下放れ、節目の3,000円に近づいています。これを割り込むようだと、心理的に下げが大きくなる可能性があります。

まずは、3,000円でサポートを形成できるかを確認したいところです。そのうえで、ドル建てプラチナ相場が反転するようであれば、その時点で買いを検討したいところです。いまは買い下がりは控え、底値確認を優先したいと考えます。

【図表2】プラチナ 縦軸:円建てプラチナ/グラム(単位:円)
出所:マネックス証券作成

シルバー:続落の展開

シルバーは続落しました。金相場が下落する中、徐々に上値を切り下げ、週末は14.39ドルで引けました。

CFTC(米商品先物取引委員会)が公表するCOMEX銀先物市場における5月14日時点の大口投機筋のポジションは2,209枚の売り越しとなり、前週から売り越し幅が1,252枚拡大しました。買いポジションが196枚増加しましたが、売りポジションが1,448枚増加したことで、売り越し幅が拡大しました。

投機筋は引き続き売り姿勢を強めています。銀相場は今年の2月に高値を付けて以降、下落基調が鮮明になっていす。さらに週末に安値を切り下げたことで、厳しい展開にあります。

独自の買い材料がない中、工業用需要がメインであることも、米中貿易戦争の激化やそれに伴う世界景気の鈍化懸念で上値が抑えられていると考えられます。また、金相場の下落も連動性の高さから嫌気されているものと思われます。

このような状況から抜け出すためには、株価の反発や米中通商交渉の進展などの外部要因の改善が不可欠でしょう。しかし、現状ではそのような状況は期待しづらいこともあり、銀相場の低迷が続くリスクがあります。

一方、市場では金/銀レシオの上昇に関心が集まっています。現在のレシオは88倍ですが、これは1993年以来の高水準であり、過去と比較してもかなりの高水準といえます。それだけ、銀が割安になっているといえます。

しかし、それが銀相場の反転につながると考えるのは早計といえます。やはり、まずは外部環境の改善を受けて銀相場が回復するのを確認したいところです。まずは節目の14ドルで下げ止まるのを待ちたいところです。

円建て銀相場は下落が続きました。ドル建て銀相場の下落を背景に心理的節目の55円を割り込み、さらに54円、53円も割り込むなど、極めて激しい下げとなりました。

このような動きになると、まずは明確に下げ止まるのを待つべきでしょう。そのうえで、底値固めから反転したことが確認されれば、その時点で買いを検討したいところです。現状では、少なくとも54円の回復を待ちたいところです。

【図表3】シルバー 縦軸:円建てシルバー/グラム(単位:円)
出所:マネックス証券作成