先週のゴールド:底堅い推移

金相場は上昇しました。週初は小幅上昇しました。世界的に株価が下落したことを受けて買われました。

5月6日にトランプ政権が中国からの輸入品に対する追加関税を引き上げる考えを示したことで、安全資産を選好する動きが強まりました。また、金利が低下したことも金には追い風となりました。さらに地政学的リスクの台頭も材料視されました。その後は下落しました。

5月8日に一時1,291.39ドルと、4月15日以来の高値を付けましたが、中国が貿易合意を望んでいる兆しがあるとの米ホワイトハウスのコメントを受けて、安全資産の金に対する需要が減退しました。市場では、インドの祝祭シーズンにおける現物需要が金相場を押し上げたとの声も聞かれました。その後は小幅反発しました。

米中貿易協議の行方に対する警戒感から安全資産としての買いが優勢となりました。米中政府は5月9日に閣僚級貿易協議を再開しましたが、米国は対中制裁関税の引き上げを正式に通告しました。これに対して中国商務省は報復の構えを見せました。

協議の行方は全く予断を許さず、米中貿易摩擦が激化すれば世界景気が減速するのではないかとの懸念が再燃し、投資家のリスク回避姿勢が強まる中、米国株が寄り付きから大幅に下げると、金は安全資産としての買いが活発化しました。ドル安・ユーロ高でドル建て金相場の割安感につながったことも上昇を後押ししました。

週末は上昇しました。米国が対中追加関税を引き上げたことで、世界経済の減速に対する懸念が強まり、安全資産とされる金が買われました。また、イラン情勢の不透明感やドル安も押し上げにつながりました。

世界最大の金上場投資信託(ETF)であるSPDRゴールドトラストの保有高は5月3日の740.82トンから5月10日時点では733.23トンとなりました。投資家は株価が不安定になる中、依然として金ETFの保有高を減らしています。

CFTC(米商品先物取引委員会)が公表したCOMEX金先物市場での大口投機筋の5月7日時点のポジションは7万5411枚の買い越しとなり、前週から9,192枚増加しました。買いポジションが8,526枚増加し、売りポジションが666枚減少したことで、買い越し幅が拡大しました。投機筋の買い姿勢は変わっていないといえます。

円建て金相場は下落しました。ドル建て金相場は上昇しましたが、円高基調が押し下げにつながりました。

【図表1】先週のゴールド 縦軸:円建てゴールド/グラム(単位:円)
出所:マネックス証券作成

 

今週のゴールド:堅調な推移を想定

金相場は引き続き堅調さを維持すると考えます。米中貿易戦争の懸念の再燃は、市場にとってはサプライズとなったようですが、この問題は来年の米大統領選挙の行方を左右するきわめて大きな材料であるだけに、そう簡単には解決しないと考えます。

トランプ大統領は交渉の成功を自らの手柄として、大統領選での勝利に結びつける算段でしょう。そう考えると、今の交渉が簡単には終わらないことが理解できます。また、米国は自国の利益になるまで、中国との合意は行わない可能性が高く、このことも交渉を長期化させるでしょう。

このような不透明な状況の中、投資家は株式投資に振り向けていた資金を引き上げ、安全資産に振り向ける動きを強める可能性があります。すでにグローバル投資家は債券への資金シフトを進めていますが、この動きは今後も続くでしょう。その結果、市場金利は上がりづらくなり、金の保有コストの低下につながります。これが金にとってのサポート要因になるものと思われます。

また、イラン制裁などの地政学的リスクの台頭もあり、地政学的リスクの面からも金市場への関心が高まる可能性があります。このように、今の金市場には売り材料が見当たらない状況です。また、米中貿易戦争の物価への懸念にも注意が必要でしょう。

4月の米消費者物価指数は前年比2.0%に上昇しています。徐々にではありますが、インフレになりつつあります。今後は関税引き上げの影響が徐々に物価にも反映される可能性があります。これがインフレ懸念につながれば、ドルが下落し、金市場への関心を高める可能性があるでしょう。

一方、米中貿易戦争への懸念で株式市場が不安定化すれば、これも金利低下・ドル安につながりやすくなります。通貨先物市場では、ドル買いポジションが歴史的高水準にまで積み上がっています。これが巻き戻されるような状況になれば、ドルが売られ、金が買われやすくなるといえます。株式市場では、先週まできわめて楽観的なムードが広がっていただけに、徐々に警戒的な動きになりつつあります。

このような状況から、金相場は1,280ドル前後を固め、1,300ドル前後を目指す展開が想定されます。株価の調整がより顕著になれば、3月下旬に付けた1,324ドルを試す場面もあるでしょう。

円建て金相場は4,600円を維持できるかを確認します。ドル建て金相場は堅調に推移すると考えますが、為替相場に円高リスクがあります。そのため、円建て金相場が押し下げられる可能性があります。その場合でも、4,600円が維持されれば、押し目買いを検討したいところです。

プラチナ:小幅反落の展開

プラチナは小幅反落しました。一時884ドルまで上昇する場面がありましたが、上値を追い切れなかったことや株価が不安定になったことから下落し、週末は861ドルで引けました。

CFTC(米商品先物取引委員会)が公表したNYMEXプラチナ先物市場における5月7日時点の大口投機筋のポジションは2万8693枚の買い越しとなり、前週から4,629枚減少しました。買いポジションが2,331枚減少し、売りポジションが2,298枚増加したことで、買い越し幅が減少しました。

投機筋は、相場の頭打ち傾向から買いポジションを減らし始めているようです。2月中旬以降に上昇基調が鮮明になりましたが、4月初めにつけた914ドルが天井となり、その後は上下動を繰り返しながら、徐々に上値を切り下げる展開となっています。

その背景には、米中貿易摩擦の激化への懸念を背景とした株安があるものと考えられます。また、世界経済の減速懸念や、プラチナの需要の半分を占める欧州を中心としたディーゼル車向けの触媒用需要の減退懸念も重石になっています。その背景には、環境規制があります。これは長期的なテーマとして弱材料になると考えられ、これが上値を抑えやすい構造にあります。

また、需要全体の3割を占める中国の景気減速懸念も需要の落ち込みを想起させ、これが上値を抑えている可能性があります。プラチナ生産量の7割を占める南アフリカでの余剰在庫を利用したETFの組成が、相場上昇につながったとの見方もあります。現物が余っていることから、これを利用して現物の裏づけのあるETFを組成し、それを販売することで相場の押し上げを狙ったとの見方も一部にはあります。

また、金相場に対して割安に見えることもあり、投資マネーが流入したとの見方もあります。世界の主要なプラチナETFの現物保有残高は5月上旬時点で年初から2割以上も増加しているとの指摘もあります。

このような柔軟な資金フローが、プラチナ相場に一定の影響があったことだけは確かでしょう。ただし、今後も継続するかは不透明ですので要注意です。

プラチナ相場は840ドルにあるサポートを維持できるかを注視したいと考えます。これを維持できれば、再び上昇に向かう可能性は残ります。ただし、工業用需要がメインですので、世界景気の鈍化懸念や株価の下落にはネガティブに反応しやすい点に引き続き要注意です。830ドル割れとなれば、基調が大きく崩れるリスクがある点も念頭に置いておきたいところです。

円建てプラチナ相場は大幅続落しました。ドル建てプラチナ相場の下落に加え、為替相場が円高基調となったことが押し下げ要因となりました。節目の3,300円を割り込んだことも、下げを助長した可能性があります。まずは下げ止まりを確認することが先決でしょう。そのうえで、基調が上向いたことを確認し買いを検討したいところです。

過去にサポートを形成した3,100円や心理的節目の3,300円あたりが下値のめどになりそうです。これらをサポートするかを注視し、3,200円を回復できれば、買いを検討してもよさそうです。

【図表2】プラチナ 縦軸:円建てプラチナ/グラム(単位:円)
出所:マネックス証券作成

シルバー:続落の展開

シルバーは続落しました。15ドルを前に上値の重い展開が続く中、株価の下落などもあり、徐々に上値を切り下げる展開となり、14.75ドルで引けました。

CFTC(米商品先物取引委員会)が公表するCOMEX銀先物市場における5月7日時点の大口投機筋のポジションは957枚の売り越しとなり、前週の2,136枚の買い越しから再び売り姿勢に転換しました。買いポジションは226枚増加しましたが、売りポジションが3,319枚増加しました。

投機筋は銀相場の上値の重さから、なかなか買い姿勢に転じることができないようです。現在は2月以降の下落基調から脱することができず、上値の重い展開が続いています。また、新規材料に乏しく、さらに工業用需要がメインでもあり、世界景気の鈍化懸念や株安が上値を抑えやすくなっています。特に、米中通商協議の不透明感は、銀などのメタルには弱材料になりやすいといえます。

金相場は底堅さを見せていますが、投資対象という観点では、銀は金に劣ると言わざるを得ません。したがって、今後も金相場の値動きをにらみつつも、むしろ世界経済や株価動向を注視したほうがよさそうです。

2月以降の下落基調から脱するには、まずは節目の15ドルを回復することが先決です。その後、15.50ドルを超えると、基調が上向く可能性が高まります。しかし、現時点ではその可能性はそれほど高くないように思われます。

一方で、5月2日に付けた安値の14.52ドルを割り込むようだと、基調は下向きになります。その場合には、昨年9月から11月のような14ドルの大台割れの可能性も出てきますので、要注意です。

円建て銀相場は下落が続きました。ドル建て銀相場の下落に加え、円高基調が水準を押し下げました。心理的節目の55円を割り込んだことから、まずは54円で下げ止まるかを確認したいところです。そのうえで、ドル建て銀相場の反発が確認され、55円を回復できれば、買いを検討したいところです。

まずは、為替動向も併せて慎重に見極めたいところです。今は安易な押し目買いは避けたいと考えます。

【図表3】シルバー 縦軸:円建てシルバー/グラム(単位:円)
出所:マネックス証券作成