先週のゴールド:続落の展開

金相場は下落しました。週初は米連邦公開市場委員会(FOMC)を控える中、ポジション調整の売りが広がりました。また、3月の米個人消費が前月比0.9%増と2009年8月以来、9年7ヶ月ぶりの高い伸びを示したことなどを受けて、米国株が底堅く推移したことも安全資産とされる金の売りにつながりました。その後は反発しました。

中国の4月の製造業購買担当者景況指数(PMI)は50.1と、前月の50.5から低下したことを受けて、世界的な景気減速懸念が再燃する中、安全資産とされる金への買いが先行しました。また、ドルが対ユーロで下落したことで、ドル建て金相場に割安感が生じたことから買いが入り、金相場は一時1,288.20ドルまで上昇しました。1日には反落しました。

FOMCの結果を受けて、ドルが上昇したことが影響しました。ただし、4月のISM製造業景況指数が市場予想を下回ったことから買われる場面もありました。しかし、FOMC声明と米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長の記者会見を受けて、最終的にはドルが上昇し、押し戻されました。

週末5月3日には反発しました。ドルが対ユーロで下落したことに伴う割安感から買われました。この日発表された4月の米雇用統計は、景気動向を示す非農業部門の就業者数が季節調整済みで前月比26万3000人増と、市場予想の18万5000人増を大幅に上回り、失業率も49年4ヶ月ぶりの低水準となりました。しかし、物価上昇の先行指数として注目される平均時給は予想に届きませんでした。

また、4月のISM非製造業景況指数(NMI)は55.5と、前月の56.1から低下し、市場予想の57.0も下回りました。このため、外為市場ではドル安・ユーロ高が進行し、ドル建て金相場の割安感から買われました。

世界最大の金上場投資信託(ETF)であるSPDRゴールドトラストの保有高は5月3日時点で740.82トンとなりました。これは、3月29日時点の784.26トンや昨年末の787.67トンと比較しても、大幅な減少となっています。投資家が株高を背景に金ETFの保有高を減らしていることが確認できます。

CFTC(米商品先物取引委員会)が公表したCOMEX金先物市場での大口投機筋の4月30日時点のポジションは6万6219枚の買い越しとなり、前週から2万8824枚増加しました。買いポジションは584枚増加でしたが、売りポジションが2万8240枚減少したことで、買い越し幅が大幅に拡大しました。

円建て金相場は4月26日時点では上昇していました。為替相場は円高で推移しましたが、ドル建て金相場の上昇が押し上げに寄与しました。

【図表1】先週のゴールド 縦軸:円建てゴールド/グラム(単位:円)
出所:マネックス証券作成

今週のゴールド:上値をうかがう展開に

金相場は底値固めから上値をうかがう展開になると想定しています。米国株高に注目が集まりやすい地合いにありますが、一方で米金利は低迷したままです。米国の物価指標が低迷しており、FRBが目標とする2%を下回った状態が続いています。そのため、FRBが利上げする可能性を市場は織り込んでおらず、これがドルの上値を抑えつつあります。

また、投資家は利回りを求めて、相対的に高い利回りを維持している米国債やハイイールド債などを購入しており、これも金利上昇を抑制する動きにつながっています。米国株高で安全資産である債券や金に資金が向かいづらい状況の中、債券市場への資金流入は顕著であり、株高と債券高が共存する展開となっています。

しかし、このような状況が長続きすることはなく、最終的には株価の調整が始まると考えるのが妥当でしょう。その際には、投資資金は安全資産である債券に流入することで、金利はさらに低下することが想定されます。ドルも下落することになり、金相場にはきわめてポジティブな市場環境になる可能性が高いといえます。

パウエルFRB議長は、利上げの可能性を排除しない姿勢を見せていますが、現在のインフレ率を考慮すれば、利上げの可能性は皆無といってよいでしょう。もっとも、利下げを行う状況でもなく、当面は金融政策の影響を懸念する必要はなさそうです。トランプ政権からは、FRBの金融政策への批判が相次いでいますが、FRBはこれらの発言に反応することもないと思われます。

このような状況から、金相場は1,270ドル前後を固め、徐々に上値を試すでしょう。1,285ドルを明確に超えると、1,300ドル近くまで上昇する可能性が高そうです。さらにこれを超えるようだと、上昇に勢いがつくでしょう。3月下旬に付けた1,324ドルを試す場面もそう遠くない時期に到来する可能性があるでしょう。

ワールド・ゴールド・カウンシル(WGC)の最新四半期レポートによると、2019年第1四半期(1~3月期)の世界金需要は前年同期の984.2トンと比べて7%増の1,053.3トンでした。中央銀行による金の購入増が押し上げ要因となっています。中央銀行の1~3月期の金購入量は145.5トンと、前年同期比68%増加しました。2018年は651.5トンと、1967年以来で最大でした。

WGCは、中銀の購入の勢いは今後も続くと予想し、今年は中銀による買い付けの見込みを500~600トンとしており、これらの公的機関の購入が金相場を支える可能性は十分にあります。

一方、ロイター調査によると、今年の金相場は2013年以来の高値になる見通しです。2019年の平均予想価格(中間値)は1オンス=1,322ドルで、2020年は1,369ドルとみられています。

3ヶ月前の前回調査では、2019年が1,305ドル、2020年が1,350ドルの予想でしたので、今回の予想は上方修正されたことになります。市場関係者の見通しのように金相場が上昇に向かうとすれば、久しぶりの大相場に発展する可能性もありそうです。

円建て金相場も上昇に向かうと考えます。為替相場が円高で推移しており、これが上値を抑える可能性がありますが、上記のようにドル建て金相場が上昇するとみており、これが円建て金相場を押し上げるでしょう。

4,700円を回復するような展開になれば、トレンドに沿う形で買いを検討したいところです。一方で4,650円前後の水準に下落した場合には、押し目をしっかりと拾いたいところです。

プラチナ:大幅反落の展開

プラチナは大幅に反落しました。節目の900ドル水準を明確に超えることができなかったことなどから売りが優勢となり、これまでの上昇トレンドに一服感が広がっています。

CFTC(米商品先物取引委員会)が公表したNYMEXプラチナ先物市場における4月30日時点の大口投機筋のポジションは3万3322枚の買い越しとなり、前週から2,242枚増加しました。買いポジションが1,045枚増加し、売りポジションが1,197枚減少したことで、買い越し幅が拡大しました。

プラチナ相場の上昇には、ファンダメンタルズ材料が不可欠な状況です。また、工業用需要がメインであることから、景気指標の悪化や株安には敏感に反応しやすい傾向がある点は要注意です。また、需要の大半がディーゼル車の自動車触媒向けであることには常に注意が必要です。

ディーゼル車が主流のドイツでは、連邦自動車局(KBA)が発表した乗用車統計で、4月の新車登録台数は前年同月比1.1%減の31万715台でした。ガソリン車とディーゼル車の登録が減る一方で、ハイブリッド車(HV)とプラグインハイブリッド車(PHV)は54.9%、電気自動車(EV)は50.4%とそれぞれ増加しました。

また、ドイツ自動車工業会(VDA)が発表した乗用車統計では、4月の輸出台数は30万5800台と、前年同月比23%落ち込みました。世界市場の冷え込みや国際的な貿易摩擦、英国のEU離脱の行方など一連の不確実要因がブレーキをかけました。生産台数も15%減の41万4300台と軟調です。

国内販売(新車登録台数)は1%減の31万700台でした。1~4月累計の生産台数は前年同期比12%、輸出は14%とそれぞれ減少しました。国内販売は横ばいでした。

このように、自動車産業は引き続き厳しい状況に置かれています。それでもプラチナ相場が安定しているのは、これまでの低迷による割安感や、プラチナ現物を裏付けとするETFの発行および保有高の増加が挙げられます。しかし、繰り返すように、重要なのはファンダメンタルズ面であり、特に今は需要サイドの動向を注視しておきたいところです。

目先は830ドルを維持できるかが最大の焦点です。これを維持できれば、再び上昇に向かう可能性はあるでしょう。ただし、830ドルを割り込むと、これまでの上昇トレンドはいったん終了したと判断することになるでしょう。

一方で、870ドルを超えて、さらに885ドルを超えると、再び900ドル超えを試す可能性が一気に高まるでしょう。いずれにしても、ファンダメンタルズ面の材料に目を向けておきたいところです。

円建てプラチナ相場は4月26日時点では軟調でした。引き続きドル建てプラチナ相場と為替相場の動向を見極めることになります。3,300円を維持できれば、押し目買いを検討したいところですが、割り込むようだと大幅安となる可能性があります。その場合には、まずは下値を確認することが先決でしょう。

一方で3,400円を明確に超えるようだと強い相場に発展することになります。その場合には、上昇トレンドに追随する形で上値を買ってもよさそうです。今はドル建てプラチナ相場がやや不安定になっています。大きく上げた後でもあり、次の展開を慎重に見極めることが肝要です。

【図表2】プラチナ 縦軸:円建てプラチナ/グラム(単位:円)
出所:マネックス証券作成

シルバー:反落の展開

シルバーは反落しました。前週までの横ばいでの推移から一転して売りが優勢となり、一時14.52ドルまで下落し、昨年12月以来の安値を付けました。

金相場の下落の影響が大きかったものと思われます。ただし、週末には米雇用統計の結果を受けて金相場が大きく値を戻したことから、銀相場も連れる形で安値から大きく反発して週末を終えました。

CFTC(米商品先物取引委員会)が公表するCOMEX銀先物市場における4月30日時点の大口投機筋のポジションは2,136枚の買い越しとなり、前週の110枚の売り越しからネット2,246枚の買いが入り、買い越しに転じました。買いポジションが1,231枚増加し、売りポジションが1,015枚減少しました。

新規材料に乏しく、金相場次第の値動きが続いています。この傾向は今後も続きそうです。もっとも、需要の構成を考慮すれば、景気や株価動向の影響を受けやすく、これらの材料には注意が必要でしょう。

投機筋のポジション動向を見る限り、年初に積み上げた買いポジションをおおむね処理した格好となっていることから、次の展開を待っている状況にあるといえます。株安になった場合には、再び売り越しに転じる可能性もありますので要注意でしょう。

価格動向を見る限り、今年1月と2月の高値から下げ基調が続いており、ダブルトップを形成したようにも見えます。下落基調を打破するには、少なくとも15ドル台への回復が不可欠です。まずはそのような動きになるかを確認します。

15ドルを回復し、さらに15.40ドルを超えるようだと、再び上昇トレンドへの回帰の可能性が高まるでしょう。しかし、14.60ドルを割り込み、安値を更新すれば、当面は低迷相場が続きそうです。

円建て銀相場は4月26日時点では底値圏での推移が続いていました。その後も下げており、さらに為替相場の円高水準にありますので、まずは節目の55円を維持できるかを確認したいところです。そのうえで、反発基調が鮮明になった段階で買いを検討したいところです。

今はドル建て銀相場がやや不安定ですので、為替動向も併せて慎重に見極めたいところです。一方で、56円を明確に上抜けると、下落トレンドを抜け出ることができますので、その時点で買いを検討すればよいと考えます。

【図表3】シルバー 縦軸:円建てシルバー/グラム(単位:円)
出所:マネックス証券作成