米国景気後退に陥る「いかなる兆候も出ていない」

米国株は過去最高値圏に迫っています。徐々に雰囲気が良くなってきた感じもします。米中通商協議の進展の可能性が、投資家心理を和らげているようです。

ムニューシン米財務長官は、中国との貿易協議は「大きく前進した」としました。ただし、合意事項を履行する仕組みなどを含め、「多くの課題がまだ残っている」とし、詰めが必要との認識を示しています。

一方で、米国景気は中国や欧州経済の減速に伴い「控えめな影響を受ける」との見通しも示しています。もっとも、法人減税の効果などは「数年続く」とした上で、「米国は世界で最も明るいスポットだ」と景気の強さに自信を表明しました。

さらに、景気後退に陥る恐れがあるとの懸念に対して「いかなる兆候も出ていない」と反論しました。このように、トランプ政権の中枢部からポジティブな見方が出てきたことは、市場心理の好転につながります。

海外投資家の米国株買い直しと株価のピーク

一方、米主要企業の今年1月~3月期の決算発表が始まっています。前半は米大手金融機関の決算への関心が高まっていますが、JPモルガン・チェースが良かったことや、ゴールドマン・サックス、シティグループの決算もおおむね市場予想を上回ったことで、安心感が広がっています。

調査会社リフィニティブによると、米主要企業500社の純利益は前年同期比2.1%減と11四半期ぶりのマイナスとなる見通しです。決算発表が進むにつれて、減益見通しの幅が縮小するようだと、市場はこれをポジティブにとらえ、株価の押し上げにつながる可能性があります。

というのも、2月の対米証券投資統計によると、海外投資家の米国株への投資は106億7000万ドルの売り越しでした。1月も312億1000万ドルの売り越しでした。海外勢による米国株の売り越しは10ヶ月連続です。

おそらく、3月も売り越しだったと思われますので、今年に入ってから海外投資家は米国株を売り続けていることになります。その分を債券への投資に振り向けているわけですが、株価が上昇する中でポートフォリオに占める株式ポジションの比率が低下している可能性があります。

こうなると、これらの投資家が、いずれ株式ポジションをニュートラルに戻すため、米国株を買い直すのではないかと推察されます。そうなると、株価が上がる中、彼らの買いがさらに株価を押し上げる可能性があります。

その後、株式ポジションが想定したポートフォリオの比率に達したとき、彼らは買いをやめるでしょう。そして、おそらく、かなり高い確度でその時点が株価のピークになるものと思われます。

4月に入り、新たな四半期に入りました。四半期ごとにポートフォリオの組み直しをしている投資家が多いとすれば、このような見方が成り立ちます。4月に入ってからの堅調さの背景に、このような投資行動があるとすれば、いずれ株価はピークアウトしますので要注意とも言えます。

10連休中の経済指標次第で市場が急変する可能性も

また、テクニカル指標はすでに行き過ぎであることを示すものが多くなっています。恐怖指数(VIX)は12ポイント台で低水準です。過去の例から見れば、まだ低下余地はありますので、もう一段下げると市場の楽観度も行き過ぎになりそうです。

また、VIX先物の投機筋の売りポジションも16万枚に達し、昨年1月に株価がピークをつけたときの水準に近づいています。いずれ買い戻しをせざるを得ませんので、その際にはボラティリティは大きく上昇し、これが株価の押し下げにつながりやすいといえます。

【図表1】S&P500とVIX先物の投機筋のネットポジションの推移
出所:各種資料からエモリキャピタルマネジメント(株)が作成

また、中期的な移動平均線からの株価の乖離率も過去と比較するとかなり大きくなっており、これも過熱感を示しています。

金利が低水準ですので、市場は安心しているようですが、再び金利が上昇するようだと、再び「逆イールド」のリスクが懸念されるかもしれません。今はハイイールド債の価格が上昇しており、まだ市場は楽観的です。

しかし、リスク回避的になり、これまで買われてきたハイイールド債に売りが出るようだと、市場は一気に崩れるかもしれません。もともと、米国株は企業業績から見れば、割高感が出始めています。これらのポイントもぜひ念頭に置いておきたいところです。

10連休中には米国の主力ハイテク企業の決算発表や、米連邦公開市場委員会(FOMC)の結果、さらにISM製造業景況感指数や米雇用統計など主要な経済指標の発表が目白押しです。これらの内容次第では、市場が急変する可能性もあります。

せっかくの長期休暇の期間ではありますが、世界の市場を動かす米国の動向から目を離さないようにし、いつでも対応できるように取引できる体制を整えておきたいところです。

さて、本欄の寄稿は今回が最後です。これまで読んでいただき、ありがとうございました。読者のみなさまの参考になっていたとすれば、それは望外の喜びであります。
また機会があればお会いいたしましょう。