米中通商協議の進展期待も株価を押し上げる

米国株の堅調さが際立っています。これまでの悲観的な見方はかなり和らいできた印象があります。

先週までは、長期金利と短期金利が逆転する「逆イールド」が株式市場の最大の関心事となり、株価は調整する場面がありました。しかし、好調な景気指標などを受けて、米10年債利回りが反発し、3ヶ月物TB(米財務省証券)利回りを上回ったことが材料視されています。

また、米中通商協議の進展期待も株価を押し上げているようです。米中両政府は3月29日までの2日間、北京で閣僚級貿易協議を開きました。

ホワイトハウスは「率直かつ建設的な議論を行い、進展が見られた」とする声明を発表し、中国国営の新華社通信も「新たな進展があった」と報じました。両政府は4月3日からワシントンで協議を再開する予定です。貿易摩擦解消に向けた期待が広がる中、キャタピラーやボーイングなど中国との取引が多い銘柄に買いが入っています。

今回の逆イールド現象はFRBの年内利上げゼロが影響

先週までの金融市場では、世界経済の減速懸念が広がる中、債券市場で主要国の長期金利が急低下しました。米国で不況の予兆とされる「長短金利逆転=逆イールド」という異例の現象が出現したことで、投資家の不安を増幅させました。

緩やかな利上げ路線の転換を決めたばかりの米連邦準備制度理事会(FRB)に対して、利下げを催促する声も出始めています。

欧米の製造業景況指標の悪化をきっかけに、ドイツ10年債利回りが2年5ヶ月ぶりにマイナス圏に低下し、米債券市場では12年ぶりに3ヶ月物TB利回りが10年債利回りを上回る逆イールドとなりました。3月27日には欧州中央銀行(ECB)のドラギ総裁が、2020年以降に先送りした利上げを再延期する可能性を示唆し、主要国の金利低下に一段と拍車が掛かりました。

逆イールド現象は、米国で1975年以降、景気が後退局面に入る前に必ず見られてきました。今回の出現には、FRBが3月20日の連邦公開市場委員会(FOMC)で、今年の利上げ想定を従来の2回からゼロとしたことが影響しています。FRBが「超ハト派」に転換したことで、市場が気付いていないリスクを把握しているのではないかとの見方もあります。

市場が予想するFRBが年末までに利下げする確率は6割超まで上昇するなど、個人消費や企業業績に陰りが見え始める中、早ければFRBは6月にも利下げに追い込まれるとの観測も浮上しています。これらの状況から、投資家行動はより慎重になっているようです。

バンク・オブ・アメリカ・メリルリンチ(BAML)が公表した週間調査(3月27日まで)によると、債券価格の上昇を背景に、世界の債券ファンドに86億ドルが流入しました。一方、株式ファンドからは125億ドルが流出しました。ドイツ国債利回りがマイナスとなり、米長短金利が逆転する中、債券ファンドは12週連続で流入超となっています。

一方で米国株式ファンドから77億ドル、欧州株式ファンドからは48億ドルがそれぞれ流出しました。欧米株式ファンドは、第1四半期でも流出額上位のファンドで、米国株式ファンドの流出額は376億ドル、欧州株式ファンドは393億ドルでした。

株式セクター別では、最も資金が流出したのが金融株で15億ドルとなっており、金利低下による収益悪化が嫌気されているようです。一方でディフェンシブ銘柄のヘルスケアと公益株は流入超でした。

短期筋のモメンタム投資が指数を押し上げる可能性

このように、ある程度長期的なスタンスで投資を行うファンドマネージャーたちは、比較的慎重なスタンスで投資をしているようです。それでも主要な株価指数が上昇しているのは、指数に投資する短期的なスタンスの投機筋などがモメンタム投資を行っているからでしょう。

株式市場に投入される資金量に対して、株価指数が上がりすぎているとの指摘もあります。しかし、その背景には、直近の中国の製造業購買担当者景況指数(PMI)が節目の50を回復し、さらに3月の米ISM製造業景況感指数が回復したことなどが挙げられるでしょう。

【図表1】中国製造業PMIと株価指数の推移
出所:各種資料からエモリキャピタルマネジメント(株)が作成

直近のこれらのデータを見て、中国経済が同国政府の政策効果で意外に底堅いなといった見方が広がれば、一時的に株価は上値を試す可能性があります。

長期的にはいずれ株価の調整が起きるとみていますが、短期的には想定以上に強い動きになる可能性がありそうです。

株価上昇は半年から最大で1年程度と見ていますが、それまでは一時的に回復した景況感などを背景に、短期筋のモメンタム投資が指数を押し上げる可能性があります。その場合には、低下していた金利も多少反発しそうです。ただし、これらの見方はあくまで短期的なものであり、割り切って考える必要もあるでしょう。今は長期的な戦略と短期的な戦術を分けて対応する時期といえそうです。