先週のゴールド:反落の展開

金相場は下落。週初は上昇し、3週間超ぶりの高値を付けました。ドル安に支援されたほか、世界経済の減速懸念で安全資産としての金需要が高まり、一時1,324.32ドルまで値を上げました。その後は反落しました。

米景気後退の可能性に対する懸念が和らぐ中、ドルやリスク選好意欲が回復し、安全資産としての需要が低下しました。その後は世界経済への懸念で世界の株価が下落し、米金利も低下しましたが、安全な投資先と見なされてきた金への支援効果は限定的でした。

ドルが対欧州通貨で上昇したことも売り材料となりましたが、3月28日には急落しました。ドルの上昇を背景に1%の下落となり、主要なサポート水準の1,300ドルを割り込み、2週間超ぶりの安値を付けました。

世界の中央銀行がよりハト派的になっていることや、欧州中央銀行(ECB)がより長い間低金利を続けるとの見方が強まっていることを受けて、ドルが他通貨に対して上昇したことが金売りにつながっています。

週末には米経済統計が低調な内容だったことを受けてドルが下落する中、金相場は上昇しました。1月の個人消費が予想されたほどの伸びにならなかったことや、2月の個人所得の伸びも小幅にとどまったことを受けてドルが下げたことが材料視されました。

世界最大の金上場投資信託(ETF)であるSPDRゴールドトラストの保有高は、3月22日の781.03トンから、3月29日には784.26トンに増加しました。投資家の金ポジションの積み増しの動きが続いています。

CFTC(米商品先物取引委員会)が公表したCOMEX金先物市場での大口投機筋の3月26日時点のポジションは11万9741枚の買い越しとなり、前週から3万1345枚増加しました。買いポジションが1万122枚増加し、売りポジションが2万1223枚減少したことで、買い越し幅が拡大しました。

円建て金相場は続落しました。ドル建て金相場の下落が押し下げにつながりました。

【図表1】先週のゴールド 縦軸:円建てゴールド/グラム(単位:円)
出所:マネックス証券作成

今週のゴールド:底堅い展開を想定

金相場は底堅い展開を想定しています。ドル建て金相場の変動要因として注目しておきたいのは米金利の低下とドルの推移です。米金利は米連邦準備制度理事会(FRB)がハト派に転じて以降、低下傾向が鮮明です。そのため、利子のつかない金にとっては支援材料となります。

一方、米金利の低下でドル安になりやすくなります。しかし、FRBのハト派への転向で、他の中央銀行もハト派色を強めており、これが相対的なドル高につながるという興味深い展開になっています。

欧州中央銀行(ECB)のドラギ総裁は、「物価目標の達成がさらに遅れると予想される状況になれば、新たなインフレ見通しを反映するため、政策金利に関するフォワードガイダンスを変更する」と発言しました。

ECBは3月の定例理事会で、政策金利に関するフォワードガイダンスを変更し、「少なくとも2019年の夏まで」としていた据え置き期間を「少なくとも2019年末まで」に先送りしています。しかし、ドラギ総裁はさらに据え置き期間を延長する可能性もあることを示唆しています。

また、ニュージーランド準備銀行(中央銀行)が、「景気見通しの下振れリスクが増したため、次は利下げの可能性が高い」と表明し、世界成長鈍化に直面する中で新たにハト派色を打ち出したこともドル高要因になっています。

このように、ドルが対主要通貨で堅調に推移しており、金相場は上昇しづらくなっています。したがって、米金利と為替動向をにらみながら、金相場の方向性を確認することになりそうです。一方、安全資産としての金の魅力は維持されると考えられます。

3月28日に北京で再開された閣僚級の米中貿易協議の行方は不透明です。米国の要求を中国が飲まない限り、合意に至らないことを考えると、この材料は当面の間、懸念材料として存在し続けることになります。

また、英議会下院は3月29日に、既に2度否決されている欧州連合(EU)離脱案の3度目の採決を行いましたが、反対多数で否決されました。メイ首相は進退を懸けて賛成を呼び掛けましたが、反対姿勢を貫く与党・保守党議員らの切り崩しが不調に終わり、英国の新たな離脱期限は2週間後の4月12日となりました。

英国は今後、4月12日の時点で混乱を招く「合意なき離脱」を受け入れるか、EU離脱を最大2年程度の長期間にわたって延期するかの決断を迫られることになりそうです。否決を受けてトゥスクEU大統領は、4月10日に臨時のEU首脳会議を招集すると表明しました。

メイ英首相は3月27日に、離脱案が承認されれば辞任する意向を表明しましたが、EUからの独立を重視する強硬離脱派や、メイ内閣に閣外協力している北アイルランドの地域政党・民主統一党(DUP)の賛成を取り付けることができず、メイ首相の捨て身の戦術は失敗に終わりました。

英国が離脱の長期延期を選択する場合、EU加盟国として5月下旬の欧州議会選への参加を義務付けられますが、メイ首相はEU残留を印象付ける選挙への参加は「誰の利益にもならず、受け入れられない」と拒否しており、「合意なき離脱」に直面するリスクが依然としてくすぶっています。英国のEU離脱問題は混迷を極めており、重要な材料になる可能性があります。

一方、市場の関心は引き続き「逆イールド現象」に向かっています。これは、長期金利と短期金利の関係が逆転することを意味します。この現象は景気悪化の予兆ともされており、今後は株式市場の動向に注意が必要と考えます。

株価が下落するようだと、安全資産としての金の魅力が高まる可能性があります。FRBは米経済が減速しつつあると示唆しており、世界の他の国々の成長が減速している可能性があるとの見方が広がっていることも、金相場を支えるでしょう。

金相場は節目の1,300ドルを割り込みましたが、1,280ドル前後で下げ止まることができれば、日柄調整後に再び上向くものと考えます。

円建て金相場は底堅めの動きになると考えます。ドル建て金相場の下げ止まりが条件になりますが、一時割り込んだ4,700円を維持するようであれば、買いを検討したいところです。ただし、4,700円を明確に割り込んだ場合には、4,600円で下げ止まるかを確認したうえで、押し目買いを検討するのがよいでしょう。

プラチナ:反落の展開

プラチナは反落しました。週中に上値を試し、一時870ドル目前まで上昇しましたが、その後は金相場の下落に加え、同じ白金族系のパラジウムが過去最高値を更新したあとに急落したことが嫌気され、週末は845ドルで取引を終えました。

CFTC(米商品先物取引委員会)が公表したNYMEXプラチナ先物市場における3月26日時点の大口投機筋のポジションは2万4207枚の買い越しとなり、前週から6,626枚増加しました。買いポジションが147枚増加し、売りポジションが6,479枚減少したことで、買い越し幅が拡大しました。

市場の関心は、これまで堅調だったパラジウムの動向に向かっています。3月21日には昨年8月の水準の2倍近い1,620.52ドルの過去最高値を更新しましたが、先週は急反落の展開となっています。これまでの上昇が急激過ぎるとの懸念が高まったことや、テクニカルな水準を割り込んだことで機械的な売りが出たもようです。

さらに、アングロ・アメリカンのCEOが、パラジウム相場を「バブル」と指摘し、需要の8割を占める自動車メーカーがパラジウムの代わりにより安価なプラチナを使う可能性があるとの見方を示したことも急落につながったもようです。さらに、景気減速が需要に打撃を与えるとの懸念が影響した可能性が指摘されています。

いずれにしても、このような値動きになると、底値が見えづらくなります。テクニカル上の弱さも売りを誘っており、当面は底値を探る展開になりそうです。プラチナ相場はこの影響を受ける形で、軟調な地合いが続く可能性があります。

もっとも、上記のように、パラジウムの代替として買われる可能性も否定できません。実際にそのような動きが実需で見られない場合でも、思惑でプラチナが買われる可能性があります。

また、金相場の調整が終了すれば、反発しやすくなるでしょう。株式市場は引き続き不安定ですが、上記のような外部要因をよく見ながら、価格動向を見極めたいところです。

目先は840ドル前後で下げ止まるかを注視したいと考えます。また、割り込んだ場合でも、820ドル前後でサポートされれば、反発の可能性は残るでしょう。

円建てプラチナ相場は続伸しました。為替相場が円安基調になったことが材料視されました。今後は、ドル建てプラチナ相場が底値を固めることができるかを確認したうえで買いを検討したいところです。

ただし、3,100円のサポートを割り込んだ場合には調整が大きくなる可能性がありますので、その場合には保有しているポジションをいったん手仕舞い売りし、その後の動きを確認したほうがよさそうです。

【図表2】プラチナ 縦軸:円建てプラチナ/グラム(単位:円)
出所:マネックス証券作成

シルバー:大幅反落の展開

シルバーは反落しました。金相場の急落につれる形で下げました。15.50ドル前後に位置するレジスタンスを超えられなかったこともあり、売りが出やすくなったことも下げに拍車をかけた可能性があります。

週末には一時14.94まで下落し、節目の15ドルを割り込みましたが、最終的には15.13ドルで取引を終えました。

CFTC(米商品先物取引委員会)が公表するCOMEX銀先物市場における3月26日時点の大口投機筋のポジションは2万6189枚の買い越しとなり、前週から2,879枚増加しました。買いポジションが857枚増加し、売りポジションが2,022枚減少したことで、買い越し幅が拡大しました。

銀相場は結果的に15.50ドルを明確に上抜けることができなかったことが、下げにつながっています。また、金相場に加え、パラジウムが大きく下げたことにも多少影響を受けた部分があるでしょう。

また、世界経済への懸念やそれを受けた株式市場の不安定さも、工業品向け需要がメインの銀にとっては買いづらい状況だったといえます。目先は節目の15ドルがきわめて重要な水準になっており、これを割り込むとかなり厳しい下げになりそうです。先週末時点では15ドルを維持しています。

この水準はテクニカル的に重要なことから、いったんは買い戻しでサポートされる可能性があります。ただし、15ドルを下回った場合には、14.50ドル前後までの下げになると考えられますので要注意です。

円建て銀相場は急落しました。ドル建て銀相場の下げが大きく影響しました。週末には下げ止まりましたが、まずは56円水準を維持できるかを確認したいところです。そのうえで、買いを検討したいところです。

56円は今年に入ってからの重要なサポートになっていますので、明確に割り込むようだと、大きく下げる可能性があります。その場合には、いったんポジションを手仕舞いしたうえで、状況を確認したいところです。

【図表3】シルバー 縦軸:円建てシルバー/グラム(単位:円)
出所:マネックス証券作成