先週のゴールド:反落の展開

金相場は下落しました。週初は米金利の上昇が上値を抑えました。米連邦準備制度理事会(FRB)のパウエル議長が追加利上げの必要性を「忍耐強く」見極めるとの立場を改めて強調したことで、米金利が低下し、ドルが売られたことが支援材料となり、上昇する場面もありました。

しかし、2月の米消費者信頼感指数が予想を上回ったことで上値を抑えられました。その後は一時2週間ぶりの安値を付ける場面がありました。

ライトハイザー米通商代表部(USTR)代表の発言を受けて、米中貿易摩擦が速やかに解決するとの期待が後退しましたが、米金利の上昇が嫌気されました。FRBのパウエル議長が上院銀行委員会での証言で、政策金利の変更について判断を急がない考えを改めて示したことが、金相場の下値を支える材料となりました。

また、インドとパキスタンの対立も地政学的リスクへの懸念から安全資産としての金買いを促す可能性が指摘されました。その後は下げました。昨年第4四半期の米GDP成長率が予想より強い内容となったことを受けて、ドルが持ち直してします。そのことから2週間ぶり安値を付け、一時は1,312.43ドルと、2月15日以来の安値を付けました。

週末には1%の下落となり、1月以来の安値を付けました。ドル高や世界的な株価上昇で投資家のリスク選好度が高まったことから、売りが優勢となっています。一時1,293.38ドルをつけ、1月28日以来の1,300ドル割れとなりました。週間ベースで2.6%安となり、2017年5月以来の下げ幅となりました。ドルや米短期金利の上昇が投資家の利益確定売りを促しています。

2月28日に発表された2018年10~12月期の米国内総生産(GDP)伸び率は前期を下回りましたが、市場予想を上回ったことで米国債利回りが上昇し、利子を生まない金の魅力が低下しています。

世界最大の金上場投資信託(ETF)であるSPDRゴールドトラストの保有高は2月22日の789.51トンから3月1日には772.46トンに減少しました。株式市場が堅調なことから、投資家の売りが続いています。

CFTC(米商品先物取引委員会)が公表したCOMEX金先物市場での大口投機筋の2月19日時点のポジションは14万5647枚の買い越しとなり、前週から4万773枚拡大しました。買いポジションが3万9916枚増加し、売りポジションが857枚減少しました。

CFTCは現在、データを火曜日と金曜日に公表しており、3月8日に通常のスケジュールの公表に戻る予定です。

円建て金相場は下落しました。ドル円相場は円安方向でしたが、ドル建て金相場が下げたことで下落しました。

【図表1】先週のゴールド 縦軸:円建てゴールド/グラム(単位:円)
出所:マネックス証券作成

今週のゴールド:長期的な上昇基調は継続

金相場は株価次第の展開になりそうです。先週まではいわゆる「リスクパリティ戦略」に基づく投資マネーの動きから、株高につれて金も買われてきました。しかし、株価が下げ渋る中、米金利が上昇し始めたことで債券が売られる一方、金利上昇の負担が大きい金市場では投資家の売りが出始めています。

その意味では、リスクパリティ戦略を行っていない別のタイプの投資家が売り始めていると考えられます。特に短期的なトレンドを重視するヘッジファンドなどが、トレンドの崩れを察知して早い段階から金に売りを出している可能性があります。

また、株市式場も強弱まちまちの米経済指標の発表が続く中、想定ほど内容が悪くないとの判断から株式に資金を投入しているようです。投資家がこのような発想で市場動向を判断しているとすれば、目先は金市場からの資金流出が続く可能性があります。

中期的に重要と考えられる1,295ドルのサポートを割り込んでおり、これを早期に回復できないようだと、1,275ドル程度までの調整になる可能性があります。もっとも、テクニカル的には売られすぎの領域に入っています。株式市場が調整すれば、金市場に資金が回帰することで、下値は維持されると考えます。

また、FRBは利上げを急がない姿勢を明確にしており、これが米金利を抑制すれば、金利がつかない金にとっては追い風となります。米金利次第の展開ではありますが、今後は米国を中心に景気の鈍化傾向が見え始める可能性が高く、金利は上がりづらくなるでしょう。

また、米中通商協議や英国のEU離脱など、国際情勢の不安定さもあり、安全資産としての金の魅力が高まる可能性があります。さらに、景気悪化が顕著になれば、信用リスクが台頭する可能性もあります。その場合も金への注目度が高まることになりそうです。

円建て金相場も上昇基調が続くと考えます。4,800円を下回りましたので、目先は調整色が強まる可能性があります。ただし、ドル建て金相場の下げが限定的になれば、4,700円までの調整になる前に反発する可能性があります。

まずは下値を確認し、反発の動きを利用して買いを検討したいところです。安値で保有している場合には手放さず、押し目買いのタイミングを計りたいところです。

プラチナ:急伸の展開

プラチナは大幅続伸となりました。先週の急伸を受けて上昇基調が続き、2月28日には876ドルまで上昇しました。週末は金相場の下落から下げましたが、それでも週間ベースで大幅高となりました。ただし、昨年11月の高値である877ドルを超えることはできませんでした。

CFTC(米商品先物取引委員会)が公表したNYMEXプラチナ先物市場における2月19日時点の大口投機筋のポジションは1,547枚の買い越しとなり、前週から3,153枚増加しました。2月12日時点では1,606枚の売り越しに転じていましたが、買いポジションが2,474枚増加し、売りポジションが679枚減少したことで、再び買い越しに転じました。

これまで低迷していたプラチナ相場が活気づいています。プラチナの需要の大半がディーゼル車の排ガス触媒です。世界的に自動車販売が減少し、需要減への懸念が強まることで、プラチナ相場は低迷してきました。一方で、鉱山会社の減産も見られず、生産量は維持されています。この状況が続いたことで、需給は緩和傾向となり、相場も安値圏が続きました。

しかし、それでも鉱山会社はプラチナ生産を減らしていません。その理由は、プラチナ鉱石を産出する際に同時に採掘されるパラジウムやロジウムの価格が高騰し、収益性が高いからです。

その結果、プラチナ鉱石の産出を抑制するインセンティブが働かず、供給が増えてきたという経緯があります。南アの鉱山会社の採算ラインは900ドルとされており、現在の水準はこれを下回っています。このように、採算割れとなれば、通常、鉱山会社は生産調整を行い、需給緩和を抑制しようとします。

2018年の世界のプラチナ生産量は190トンで、この数年と同水準です。世界最大のプラチナ生産国の南アでは、パラジウムのシェアも4割を占めます。これはロシアとほぼ同水準です。

南アではパラジウムやロジウムはプラチナ鉱石の副産物として生産されますが、採算性は低いとされています。しかし、同様にパラジウム供給の4割を占めるロシアでは、パラジウムはニッケルなど非鉄の副産物として産出されるため、プラチナ相場が下げても、パラジウム生産に与える影響は限定的です。

さらに、最近では供給不安やガソリン車向け需要の堅調さを受けて、過去最高値を更新しています。このように、同じ白金族系メタルでも値動きが異なってきました。しかし、さすがに出遅れ感があると見た一部の投資家などが、プラチナを買っていることが、プラチナ相場を押し上げている可能性があります。

南ア通貨ランドは、景気低迷を反映して安値が続いています。そのため、ドル建てプラチナ価格が多少低迷していても、ランド安がカバーしてくれます。このような事情から、パラジウムなどが一段高となれば、プラチナも需給緩和観測が高まる中で相場上昇となる可能性があります。

ただし、短期的には買われすぎ感が極めて強くなっています。そのため、金相場やパラジウム相場が下げるようだと、つれて手仕舞い売りが出やすい地合いにあります。また、昨年11月高値の877ドルを超えられなかった場合には、売りが出やすくなると考えられます。これらの動きに注意しておきたいところです。

円建てプラチナ相場も大幅続伸。ドル建てプラチナ相場の上昇に加え、円安が押し上げに寄与しました。ただし、節目の3,300円超えには至らずに下げていますので、目先は売りが出やすくなる可能性があります。3,200円程度で下げ止まるかをまずは確認したうえで、買いを検討したいところです。

また、すでにポジションを保有している場合には、一部あるいはすべてをいったん手仕舞いし、利益を確定するのも一考でしょう。その上で、押し目を確認して買いを検討したいところです。買われすぎ感が強まっていますので、高値を買わないことが肝要です。

【図表2】プラチナ 縦軸:円建てプラチナ/グラム(単位:円)
出所:マネックス証券作成

シルバー:反落の展開

シルバーは大幅反落となりました。上値が重くなる中、金相場が下落し始めたことで徐々に上値が重くなり、週中から週末にかけて手仕舞い売りが優勢となり、大幅に水準を切り下げました。

CFTC(米商品先物取引委員会)が公表するCOMEX銀先物市場における2月19日時点の大口投機筋のポジションは5万269枚の買い越しとなり、買い越し幅が前週から2,934枚減少しました。買いポジションが587枚減少し、売りポジションが2,347枚増加したことで、買い越し幅が縮小しました。

銀相場は金相場につれて大きく下げています。先週末は15ドルの節目でサポートされています。ただし、これを割り込み、さらに14.85ドルを下回るとサポートを失い、14ドルまで下げる可能性が高まりそうです。そのため、まずは下げ止まるかを確認することになります。

独自の材料がないだけに、まずは金相場の値動きを確認することが肝要です。現時点ではダブルトップを付けたように見えます。すぐに上値を試すのは難しい可能性がありますので、まずは下値を固めるのを確認したいところです。無論、すぐに15.70ドルを超えるような動きになれば、調整は短期間で終了したと判断できます。

円建て銀相場は下落しました。節目の58円を割り込んだことで、まずは57円を維持できるかを確認することになります。その上で、押し目を形成できるかを確認したいところです。

値動きを見ていると、一定のリズムがあるように思われます。そのため、一定の調整が完了すれば、下値を固めて反発に向かう可能性はありそうです。ただし、57円を割り込むほどの下げになった場合には、上昇基調がいったん終了したと判断できます。その場合には押し目買いは避け、まずは手仕舞い売りを行い、次の動きを確認するほうが賢明でしょう。

【図表3】シルバー 縦軸:円建てシルバー/グラム(単位:円)
出所:マネックス証券作成