先週のゴールド:上昇基調が継続

金相場は上昇し、10ヶ月ぶりの高値を付けました。世界の経済成長への警戒感が下支えしたためです。米中貿易協議の進展に対する楽観的な見方を背景に、ドルが先週に付けた2ヶ月ぶりの高値から軟化したことで、投資先としての金の魅力が高まりました。その後は下落しました。

前日発表された、1月29・30日開催の米連邦公開市場委員会(FOMC)の議事要旨で、FRBの政策スタンスがこれまで考えられていたほどハト派的ではないことが示唆されたことが売りにつながりました。また、それまでの上昇に対する利益確定の売りも出ました。

週末には反発しました。米国の低調な経済指標や米中通商摩擦解決への期待を受けてドルが弱含んだほか、世界の経済見通し悪化への懸念が強材料となりました。

世界最大の金上場投資信託(ETF)であるSPDRゴールドトラストの保有高は2月15日の793.03トンから2月22日には789.51トンに減少しました。株式市場が堅調なことから、投資家の売りが続いているもようです。

CFTC(米商品先物取引委員会)が公表したCOMEX金先物市場での大口投機筋の2月5日時点のポジションは10万9095枚の買い越しとなり、前週から9,502枚拡大しました。買いポジションが5,882枚増加し、売りポジションが3,620枚減少しました。

CFTCは現在、データを火曜日と金曜日に公表しており、3月8日に通常のスケジュールの公表に戻る予定です。

円建て金相場は、ドル建て金相場に連動する展開でした。一時高値を付けましたが、その後は売りに押されて下げました。ただし、週間ベースでは上昇しました。

【図表1】先週のゴールド 縦軸:円建てゴールド/グラム(単位:円)
出所:マネックス証券作成

今週のゴールド:上昇基調は継続

金相場は堅調地合いが続くと考えます。最近の金市場の動きを見ると、株価に連動する展開にあることが分かります。

2月21日には米国株が下げる中で金相場も下落し、2月22日には逆に株価の上昇で金相場も上げています。いわゆる「リスクパリティ戦略」における投資家の資金フローの影響が大きいように思われます。

これは、ボラティリティの低い資産への投資配分を増やす戦略です。買いの戦略を基本とする投資家は、相対的にボラティリティの低い銘柄への資産配分を増やそうとします。

現在、株価のボラティリティがかなり落ち着いており、「恐怖指数」と呼ばれるVIXが低水準にあります。このような状況の際には、株式への資産配分が増えますが、一方で米国債や金などの安全資産も同時に買われています。これらの資産のボラティリティも低下しており、一緒に買われる傾向が強まっているといえそうです。

その結果、米国株、米国債、金が同時に買われるという、セオリーでは考えにくいことが起きています。これは、逆に言えば株価が下げて市場全体のボラティリティが上昇した場合には、一緒に売られるリスクがあることを意味します。したがって、今後は株価が下げた場合には、安全資産の米国債と金も同時に売られる可能性があります。

ちなみに、このような現象はリーマンショックのときにみられていますので、十分に起こりうることを認識しておきたいところです。もっとも、この戦略がいったん終了すれば、従来型の相場展開になるものと考えます。つまり、株安傾向が続く中で米国債と金が買われる構図に戻ることになるでしょう。

一方、世界経済の不透明感や政治リスクが高まっており、安全資産としての金の魅力は今後さらに高まるでしょう。また、景気悪化が顕著になれば、信用リスクが台頭する可能性があります。その場合も金への注目度が高まることになりそうです。

円建て金相場も上昇基調が続くと考えます。ドル円が下げるようだと一時的に調整が進む可能性がありますが、4,700円台半ばを維持できれば、上昇基調は継続していると判断できるでしょう。調整した場合、4,700円半ばで下げ止まるのを確認したうえで押し目買いを検討したいところです。

プラチナ:大幅続伸の展開

プラチナは大幅続伸となりました。前週末に急伸した流れを受けて上昇基調が続き、週中に重要なポイントだった815ドルを上抜けています。週末にはさらに上昇幅を広げ、840ドルまで上昇し、1月の高値水準を超えました。

同じ白金族系メタルのパラジウム相場が過去最高値を更新するなど、堅調に推移したこともプラチナ相場の押し上げにつながったものと考えられます。さらに、世界最大のプラチナ生産国である南アフリカの鉱業会議所は2月22日に、少なくとも鉱業会社15社が翌週のスト予告通知を受け取ったと明らかにしたことも材料視された可能性があります。

CFTC(米商品先物取引委員会)が公表したNYMEXプラチナ先物市場における2月5日時点の大口投機筋のポジションは5,994枚の買い越しとなり、前週から1,377枚増加しました。買いポジションが1,396枚減少しましたが、売りポジションが2,773枚減少したことで、ネット買い越し幅が拡大しました。

プラチナ相場は急速に地合いを強めています。南アのストに関しては、生産大手のシバンエ・スティルウオーターの労働者が賃金問題と人員削減に抗議するストを実施しており、これを支援する動きが拡大する可能性が材料視されているようです。

鉱山労働者・建設組合連合(AMCU)は昨年11月半ば以降、シバンエの産金部門でストを続けています。シバンエのプラチナ部門やAMCUの労働者が所属する他のすべての鉱山に拡大することを計画しているようです。ストの可能性があるのは、アングロゴールド・アシャンティ、ハーモニー・ゴールド、アングロ・アメリカン・プラチナム、ロンミンなど、大手生産者です。

これまで需要動向を懸念した上値の重さが目立ちましたが、このような生産者サイドの材料にも注目しておきたいところです。現在のプラチナ相場は、これらの材料に加え、金相場の反発やパラジウム相場の上昇基調の継続も背景にあります。

今回の上昇で、1月の高値水準だった830ドルを超えましたので、これを割らずに推移することができれば、昨年10月高値の877ドル水準を超える可能性があります。もっとも、目先は買われすぎ感が強まっており、徐々に高値警戒感が高まる可能性がありますので注意が必要と考えます。

また、株価動向にも引き続き注意したいところです。需要面では、将来のディーゼル車向け需要の減退が意識されていますが、一方で排ガス規制が厳しくなっており、プラチナの使用量が増えるとの見方もあります。これらの材料にも要注目といえます。

円建てプラチナ相場は急伸しました。節目の3,000円を大きく超え、さらに3,100円超えをうかがう展開にあります。ドル建てプラチナ相場がさらに上値を試すようであれば、その動きにつれて高値を更新する可能性があります。

ただし、買われすぎ感が強まっている印象がありますので、上値が伸びきれなかった場合には、いったん手仕舞い売りを入れることも検討したいところです。特に3,050円を割り込むような下げになった場合には、押し目買いよりもまずは利益確定を優先すべきと考えます。

【図表2】プラチナ 縦軸:円建てプラチナ/グラム(単位:円)
出所:マネックス証券作成

シルバー:小幅続伸の展開

シルバーは小幅続伸となりました。金相場の上昇につれる形で下げる場面もありましたが、最終的には辛うじて前週末比プラス圏で引けました。

CFTC(米商品先物取引委員会)が公表するCOMEX銀先物市場における2月5日時点の大口投機筋のポジションは5万7095枚の買い越しとなり、買い越し幅が前週から2,812枚拡大しました。買いポジションが3,794枚増加する一方、売りポジションが982枚増加しましたが、買い越し幅は拡大しました。

銀相場は金相場につれて下げる場面もありましたが、15.8ドルの重要なサポートラインに支えられています。この水準を維持できれば、再び高値を目指す可能性があります。

もっとも、目先は1月末に付けた高値の16.18ドルと、2月20日に付けた高値の16.21ドルでダブルトップを形成したようにも見えます。そのため、今後も上昇基調が続くかを慎重に見極めたいところです。銀独自の材料がないだけに、引き続き金相場の動向を見ながらの展開になりそうです。

また、15.8ドルを明確に下回った場合には、いったんは上昇基調が終了したと考えることになりそうです。引き続き、連動性の高い株価動向にも注目しておきたいところです。

円建て銀相場は上昇しました。一時59円を超える強い動きとなる場面もありました。押した場合でも58円を維持できれば、買いを検討したいところです。ただし、57円を割り込むほどの下げになった場合には、上昇基調がいったん終了したと判断できます。その場合には押し目買いは避け、手仕舞い売りを行うのが賢明と考えます。

【図表3】シルバー 縦軸:円建てシルバー/グラム(単位:円)
出所:マネックス証券作成