米国株は昨年12月の「クリスマス・クラッシュ」から大きく値を戻しています。注目された米主要企業の昨年第4四半期の決算もピークを過ぎ、おおむね市場予想を上回る結果となったことが、買い安心感につながっているようです。

また、1月の米雇用統計で、景気動向を反映する非農業部門就業者数の伸びが前月比30万4000人増と、市場予想の16万5000人増を大幅に上回ったことや、1月のISM製造業景況指数も56.6と、昨年12月の54.3から上昇し、市場予想の54.2も上回ったことで、米国景気への懸念が後退したことも、株価を支えているようです。

昨年末から米国景気の減速懸念は、良好な経済指標によって打ち消されつつあります。クドロー国家経済会議(NEC)委員長は、「今年の米経済成長率が3%になるとの見通しは維持されると予想している」とし、「雇用増がインフレ高進につながるとはみていない」との考えを示しています。政府関係者は強気な姿勢を崩していません。

しかし、政治面に目をやると、トランプ政権は最近は目立った成果を出せずにいます。米中両政府が1月30日・31日に実施した閣僚級貿易協議では、知財や技術移転問題で進展がみられたものの、合意には至りませんでした。通商協議の期限となる3月1日まで結論は引き延ばされる見通しですが、米中の溝が深く、簡単に収束することはないことが判明しました。不透明な状況は今後も続くでしょう。クドローNEC委員長は、「米中貿易協議は良好な雰囲気の中で進められ、技術移転問題の詳細をめぐり幅広い討議が行われた」としつつも、「合意に向けなお多くの課題が残されている」としました。一方で、いかなる合意も「明確な実施」を伴う必要があるとくぎを刺しています。これまでツイッターなどを通じて相手を脅し、自分に有利に交渉を進めようとするトランプ大統領流のやり方は、いよいよ通用しなくなってきたようです。

また、トランプ大統領は、メキシコとの国境沿いに壁を建設する財源を確保するために国家非常事態を宣言する可能性があると強弁しています。いつものように、「民主党が財源拠出の合意に向けて動いていないためだ」として、他人のせいにしています。国家非常事態が宣言されれば、議会が他の目的のために承認した財源の利用が可能になります。しかし、強硬姿勢に出れば、2020年の大統領選での敗北の可能性もありそうです。政府機関の閉鎖問題などで、民主党との交渉にすでに負けていることもあり、トランプ大統領の力は急速に衰えている印象が強いといえます。それを反映してか、多くの世論調査では、トランプ大統領の支持率は40%を下回り、不支持が50%台後半に急増しています。また、トランプ支持層の一部の白人層の支持率も50%にまで低下しており、不支持が50%に近づいているようです。こうなると、2020年の大統領選での再選はかなり厳しくなってきます。さらに、経済界で成功した著名人が無党派での立候補を検討しているとの報道も増えてきています。また、民主党でも白人ではない議員が出馬の意向を示し始めています。

6日には年頭の一般教書演説があります。トランプ大統領はこれまでの自身の政策の成果を強調する一方で、最近の政治の停滞を民主党のせいにするでしょう。しかし、そうすればそうするほど、政権基盤は軟弱になり、再選に最も重要な安定した経済成長の達成が怪しくなってきます。そうなれば、株価も崩れ、再選はきわめて難しくなるでしょう。いまトランプ政権はその方向に歩み始めてしまったようにも見えます。大統領3年目の年の米国株は、おおむね上昇するのが定説です。しかし、これまでとは全く異なる推移を辿ってきたトランプ政権下での株価は、トランプ大統領が自滅する形で思わぬ方向に進むことも十分にあり得ると考えています。

【図表1】米大統領3年目のS&P500の傾向
出所:各種資料からエモリキャピタルマネジメント(株)が作成